【竜の王子 精霊の王子】関所解放作戦

■シリーズシナリオ


担当:天音

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月26日〜08月31日

リプレイ公開日:2009年09月08日

●オープニング

 エイデル領サクラアンシュは領主アンゼルマ・ルイドを取り戻し、バの支配から街を解放した。そしてエイデル領はマクシミリアン王子と彼と供に戦う勇者達の元で、マクシミリアンを排そうとするエアハルト王子と、ひいてはその背後にあるバと対立する事を宣言したのである。

 この事件は瞬く間にジェト国内に広がり、勿論王やエアハルト王子の耳にも届いた。マハト領領主コスタス・ルイドなどはエイデル領を武力行使で制圧するべきだと上申したという。だが王都が行ったのは、直接的な武力行使ではなかった。

 エイデル領への進入禁止、及びエイデル領からの人の流出禁止。

 北にルイド領とマハト領を持つエイデル領へ、商人だけでなく一般市民の移動も禁じたのだ。数箇所に設けられた関所で、兵士達が人々を止めている。
 勿論、通常流れてくる物品も流れてこなければ、エイデル領の方針に賛成する民のエイデル領入りも叶わない。また、逆にエイデル領の方針に賛成しない者の他領への移動も禁じられていて、まるでエイデル領に住んでいる者は全て敵対したと見られている、そんな状況である。
 ルイド領のジェトスについた商船の荷物は、様々な手段でマハト領やエイデル領へと運ばれている。つまりエイデル領への進入が禁止されるということは、それら商人の行き来も禁止されるということだ。今はまだ大丈夫だとしても、この状態が長く続けば民達から不満の声が上がるのは想像に難くない。

「マクシミリアン王子蜂起の報を聞いて、ジェトスからエイデル領へと渡ろうと考える下級兵士や民達もいたようです。けれどもことごとく関所で足止めされて‥‥人によっては関所の牢屋に閉じ込められてしまっているとか」
「ただの民や兵士を牢屋に閉じ込めるとは思えない。何らかの情報を握っている人物に違いない」
 シフールのアルトゥールの報告を受け、マクシミリアン王子は考えるような仕草をとった。王都の情報がほしい――だが、顔が知れている分、自由に動きづらい今の状況。
「関所は複数ありますが、牢屋があるのは一番大きな関所だけです」
「私はまだサクラアンシュに居ると思われているのだな?」
「恐らくは」
「それでは関所を奪還し、囚われている人々から情報を引き出す‥‥だが」
 今回はメイディアからゴーレムシップでジェトスへ降り、そこから南下すれば嫌がおうにも目立つ。ジェトスでの船の検閲と、行き先のチェックも厳しいだろう。不自然なペットを連れて行くのも危ない。関所に到着するまでに何度も呼び止められるかもしれない。
 もう一つ、ゴーレムシップを一隻借り受けて、ジェトスへ寄らずにそのまま南下、エイデル領に入りサクラアンシュの東にゴーレムシップを停泊させ、そして北上して関所を目指すという手もある。だがこちらの場合は見つかれば不法入国船として後を追われる事になるだろう。王子がメイに潜伏している事がばれる可能性がある。航海時間や航路に気を使うことにはなるが、同伴ペットの問題はなくなる。
「関所に居るのはバの兵士だということです」
「どこもかしこもバの兵士ばかりか‥‥ジェトの名が廃るな。それとも『兄上』にはジェトの兵士を動かすだけの力がないのか」
 皮肉っぽく述べて、マクシミリアンは地図をすっと撫でた。



●関所見取り図(建物内警備体制不明)

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴/兵士/∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
∴■■■■■■■窓窓■■■■∴∴/∴∴/∴∴■■■■■■■窓窓■■■■
∴■階∴扉∴∴■∴∴扉∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴扉∴∴■∴∴扉∴∴■
∴■∴∴扉∴∴■∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴扉∴∴■∴∴■∴∴■
∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■
∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■
∴■∴∴■■扉■∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■∴∴■
∴■∴∴■∴∴■扉■■■∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴■扉■■■∴■
∴■∴∴■∴∴∴∴∴∴■∴入∴∴/通路/∴∴入∴∴■∴∴∴∴∴∴■∴■
∴■扉扉■■■■■■扉■■■∴∴/∴∴/∴∴■扉扉■■■■■■■■扉■
∴■∴∴■∴∴∴■∴∴∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴∴扉∴∴∴∴■
∴■∴∴■∴∴∴■∴∴∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■∴∴∴■∴∴∴∴■
∴■∴∴■■∴∴■扉■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴■■∴∴■■■∴∴■
∴■∴∴∴■∴∴∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴∴■■扉■■■∴∴■
∴■∴∴∴■∴∴∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴∴■∴∴∴∴■∴∴■
∴■∴∴∴扉∴∴∴∴■∴∴■∴∴/∴∴/∴∴■∴∴∴扉∴∴∴∴■∴階■∴
∴■■■■■■■窓窓■■■■∴∴/∴∴/∴∴■■■■■■■窓窓■■■■
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴/兵士/∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

・入…入り口
・階…地下牢屋への階段

便宜上←側の建物をA、→側の建物をBと呼ぶ。

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 eb1004 フィリッパ・オーギュスト(35歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8642 セイル・ファースト(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec1201 ベアトリーセ・メーベルト(28歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 ec4322 シファ・ジェンマ(38歳・♀・鎧騎士・パラ・メイの国)

●リプレイ本文


「メイの、王子に対する支援の件はどうなったかわかるか?」
 ジェトへ出発前、風烈(ea1587)は支倉純也に尋ねた。以前はマクシミリアン王子一個人を依頼人として冒険者を派遣する事しかできないという感じの返答だったが、あれから変化はあったのだろうか。
「残念ながら、まだ正式には動く事が出来ません」
 純也は苦笑を交えてそう言った。ジェト国王がマクシミリアン王子を反逆者として公布している為、公式には動けないという。内々に支援の申し入れがあれば何らかの支援は行うだろうが、公式のものではない。
「正式に行動が起こせるのは、エアハルト王子が連れているのがカオスドラゴンであると証明するか、王子そのものが偽者であると対外的に証明できる証拠をメイに対して提示できなければ無理でしょう」
 それができなければ、マクシミリアン王子が傭兵を雇ったところメイの軍人と思われる人が多数混じっているといったところや、乗り込んでいるのは冒険者だが船が軍船だといった形になるらしい。明朗な敵対行為はとらないけれど、マクシミリアン王子の主張の信憑性に応じて、武装や兵力を支援する状態ということだ。
「海軍をジェト近海にも派遣して、バの軍船の足止め位は出来るかもしれません」
「そうか‥‥」
 純也の言葉に烈は少し考え込むような様子を見せた。純也も同じように考え込む様子を見せて。
「ジェトと縁の深いメイの要人に、非公式でもいいからと支援に頼みに行くのも良いかと思います」
「なるほど。ありがとう」
 そのアドバイスを聞いて、烈は笑んでギルドを後にした。



 シファ・ジェンマ(ec4322)の手腕により行商人に扮した一行は、堂々とメイディアのゴーレムシップから降りてジェトスの街を通過する。ルイス・マリスカル(ea3063)の「収穫の秋に備え、ジェトの農産物の出来高・輸入相場を予想するため」という口実が信じられたのだろう。
「人の口に中々戸は立てられないから‥‥何か活気が無い気がするな」
 次の作戦に備えてと歩みながらも人々の話し声に耳を傾けるのは音無響(eb4482)。ジェトスの街並みは、所々破壊されたような跡がみられる。
「マクシミリアン王子が本格的に蜂起されたと‥‥」
「エアハルト王子は、バの支援を受けているから‥‥」
「そんなにバに頼って大丈夫なのかね」
「王子には竜の加護が‥‥」
「でも、その竜が‥‥」
 その言葉を聞いて響は城を仰ぎ見たが、その屋上に竜の姿は見えなかった。まさかこの街の破壊は、竜が行ったものだというのか?
 人々は、今まで信頼を寄せていた王子が突然反逆者として扱われている事、王子同士が対立している事、ジェトスが戦場になるかもしれないという事に不安を感じているようだった。



 関所にて。二つの棟を同時に攻略する事にした冒険者達は、王子も含めて2つの班に分かれた。
 事前に烈、響、セイル・ファースト(eb8642)が偵察した結果を元に、夜を待って突入する。外に置かれている見張りの数はそれほど多くないと知れた。その分検問や建物内の見張りに費やしているのかもしれない。
「みんな、こっちだ!」
 見張りを眠らせた響に導かれ、シファ、ルイス、マクシミリアンが後に続く。こちらはB班。
「行きましょう」
 スタンガンを手にしたベアトリーセ・メーベルト(ec1201)がそっと仲間に声をかけた。彼女とフィリッパ・オーギュスト(eb1004)、セイルと烈がA班である。
「鍵はかかってないようですね」
 入り口に立っていた見張りを押しのけてドアノブに手をかけたルイスが、その感触に呟く。牢屋としての機能だけでなく兵士達の休憩所、宿舎も兼ねているからだろう、建物の入り口に鍵はかかっていなかった。その代わりに見張りが立っているということだろう。
『そちらはどうですか?』
『こちらも鍵はかかっていないようだな。突入する』
『了解です』
 セイルとテレパシーで会話した響が、突入の合図を告げる。
 がちゃりと突然開けられた扉に中の兵士が一瞬顔を上げた。そしてその表情が強張る。次の瞬間飛んだのは誰何の声。
「何者だ!」
「‥‥後で研ぎに出すからな」
 オーラ系魔法で自身を強化したセイルが、レミエラで強化した愛刀に詫びを入れ、大きく振りかぶる。そして――

 どがーんっ!

 バーストアタックで目の前の壁を破壊した。階下へ降りるには、真っ直ぐ壁を破壊して行ったほうが早い。
 関で通過者を検める任を負っていた兵士達が、破壊音を察知して近づいて来る足音が聞こえる。建物内からも兵士達が集まって来る。だがこちらは全員が建物に入れたわけではない。
「先に行ってください! 後ろは私達が足止めします!」
「よろしくお願いします!」
 フィリッパが殿で叫ぶと、ベアトリーセがセイルの開けた穴を通過して行く。続けて烈が飛び込み、壁を破壊する音が再び響いた。その合間に聞こえるうめき声は、ベアトリーセのスタンガンによるものだろうか。
「少しの間、おとなしくしていてくださいね」
 フィリッパのコアギュレイトが外から寄ってきた兵士達の動きを止めていく。
「時間がないんでね、卑怯ですまね」
 セイルは最初の部屋に留まり、他の方向から沸いて出る敵の武器を狙って破壊を重ねていく。
「コアギュレイトの効果もそう長いものではありませんから、どうしましょうか」
 建物内に入ってきたフィリッパが、セイルによって武器を壊されたバの兵士達を束縛していく。
 不殺を心がけるのは良かったのだが、動きを封じるにも魔法や気絶では時間に限りがある。後で地下の人々からゆっくり事情を聞きだすには、バの兵士達をしっかりと動けなくしておく事が必要だった。


 B班は建物に入ると、すぐ右手の扉を開けた――開けようとしたら自動的に開いた。それに驚いたのは扉を開けようとしたルイスだけでなく、向こう側に立っていたバの兵士もだ。恐らく別棟から響く破壊音の原因を確かめるために出てこようとしたのだろう。
 敵が誰何の声を発する前にルイスが武器を振るう。
「こちらからもきました!」
 その後ろでマクシミリアン王子を守るようにしていたシファが、別方向からの敵の襲来を告げる。同時にコンバットオプションの合成技で敵を襲っていった。戸口で敵と向かい合っているルイスよりも室内で戦っているシファの方が助力しやすいと感じたのだろう、マクシミリアンはシファが攻撃した兵士に剣を振るう。
「外の兵士は眠らせたよ!」
 建物入り口に立って外からの襲来に備えていた響が、建物内へと駆け込んで来る。そして扉付近でたたかっているルイスのフォローにとスリープを発動させた。
「先に参りますね」
 眠りに落ちた兵士をまたいで、ルイスが次の部屋へと進む。響もそれに倣う。
「王子もあちらへお進みください」
 倒れたバの兵士をそのままに、シファは自分達も殿を守りながら進み行くことを告げた。
「わかった」
 マクシミリアンは小さく頷き、そして戸口をくぐった。



 先に道を切り開いたベアトリーセと烈、ルイスと響が地下牢に到達したのを確認して、まずは気絶や拘束、眠りで動きを封じていたバの兵士達をどうにかする事にする。建物内を探してロープやシーツ、テーブルクロスなど拘束に使えそうな道具をかき集め、早く動けそうになりそうな兵士から拘束していく。そして逆に牢屋に閉じ込めておいた。動けるようになった兵士を再び拘束して、の繰り返しなので不殺を通したA班のほうが多少時間がかかった。
 牢に囚われていたのはジェト王宮に出入りしていた商人や王宮勤めの兵士、そして若干の貴族。いずれもエイデル領に向かおうとしたところを足止めされていたのだという。
 彼らを牢からだし、一箇所に集まって事情を問おうとした冒険者達。マクシミリアン王子は念の為に後方に下がって遠めに様子を覗うようにしていた。
「我々はマクシミリアン王子と共に立ち上がった冒険者です。早速ですが、いくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか」
 ルイスの丁寧な言葉遣いに、人々は自身が助かった事を察して頷いた。中にはまだバの兵士が襲ってこないか気にしている者もいるようだったが、シファとセイルがその間関所を見回って、捕らえ残しがないかチェックしているところだ。
「バの兵士が大勢となっているようですが、指揮系統はどうなっているのでしょうか?」
「今王宮では、全ての指揮をエアハルト王子がとっておられました。ジェトの兵士は順に閑職に回されて、バの兵士が幅を利かせるようになりました」
「しかし何故ジェト兵を使わないのかが謎ですね。仲間を殺したくないからという大義名分でも、他国に頼りすぎでは威信が損なわれます」
 兵士の言葉にフィリッパが首を傾げる。響が不思議そうに呟いた。
「エアハルト王子、そんなに人気ないの?」
 その言葉に兵士や商人は顔を合わせて困ったような表情を見せた。
「最初は大変な人気でしたが‥‥マクシミリアン王子が反逆者だと告知された辺りから、少し雲行きが怪しくなり始めました。兵士はどんどんとって代わられるし、竜は、時折街を襲ったりしました」
「エアハルト王子と竜の存在はジェトスの民や兵士にはどのくらい影響がありますか? ジェトの兵士達はエアハルト王子に不満を募らせているようですが、民達はどうですか?」
 ジェトスの者達にはエアハルト王子が連れている竜がカオスの者だとはわからないはずだ。だから影響が心配だとベアトリーセは尋ねる。
「閑職に飛ばされたジェト兵はエアハルト王子を疎ましく思っている者も多いです。民は‥‥ドラゴンに生活を壊されて怯え、怒る者と、それでも信仰篤く、竜を崇める者達で二分されています」
「先ほどのお話によれば政治権限はエアハルト王子が握っているようですが、王は健在ですか?」
 ルイスの言葉に答えたのは貴族の一人だ。そこまで高位の貴族ではないようだが、王宮に招かれる事はあったらしい。
「王は晩餐会で‥‥少しですがお見かけしました。家臣団の方々にもお会いしましたが、彼らはエアハルト王子の熱狂的な信者、の様に見えました。それまでマクシミリアン王子を支持していたあの方々が、何故突然主張を変えたのかは解りません」
「‥‥それは、おかしいな。ジェトは質実剛健の武勇の国。そう簡単に全員が意見を変えるなど‥‥。当初は人質でもとられているのかと思ったが」
「人質をとられて何かに怯えているといった様子ではなかったです。むしろ怖いくらいにろ堂々としていて‥‥ってあなた様は!?」
 それまで黙って話を聞いていたマクシミリアンだったが、聞くに堪えなかったのだろう、口を挟んだところで貴族が驚いて頭を下げた。彼の顔は知っていたらしい。
「兵士達には味方が多いが、家臣団は敵というわけか」
「一応見回ってきましたが、他にバの兵士はいないようです」
 戻ってきたセイルとシファも、話を聞くべく輪に加わる。
「何か、不可視の力が働いているのかもしれませんね」
「カオスの魔物とか、かな?」
 フィリッパの言葉にベアトリーセが可能性を投げかける。だが誰もそれを否定する事は出来なかった。バとカオスドラゴンが絡んでいる以上、十分に考えられる事だからだ。
「サクラアンシュでアンゼルマさんとマクシミリアン王子が起ったことはジェトスにも伝わっているよね?」
 響の問いに彼らは頷いて。それを聞いたからエイデル領へ行こうとしたのだと語る。
「他のジェトス住民の反応はどう? 攻め入るときに住民が味方してくれるかって大きいと思うから」
「そうですね‥‥不安があるのは皆一緒だと思いますよ」
「不安ですか?」
 シファの言葉に彼らは頷く。
「ジェトがバに支配されてしまうのではないか、という――」
「エアハルト王子は、ジェトをバに売り渡すつもりなのではないかという意見も出てます」
「それは、貴族達も気づき始めているとみていいか? あなた以外にマクシミリアン王子側につこうとする貴族は?」
 今は少しでも味方が欲しい。烈の言葉に貴族は考えて。
「あまり位は高くない貴族が多いですが‥‥お一人だけ、以前家臣団の中でも王の側近を努めていらしたディルク・ボッシュ前侯爵という方が、現在のジェトを憂えていると聞いてます。ただご高齢を理由に側近を辞した方なので、表立った行動は起こしておられませんが」
「王子、知ってるか?」
「ああ。幼少の頃よく世話になった」
 烈に問われ、マクシミリアンは頷いた。王の側近を勤めたとなれば、王子とて顔を合わせる機会は多かったはずだ。
「その方と連絡を取ることは可能ですか?」
「ジェトスに戻れば‥‥」
 ベアトリーセに問われた貴族は、力強く頷いた。


「竜の王子の戦力ならこちらに勝てるのに、何故実行に移さないのだろうか」
「こちらをジェトスで迎え撃って倒す事で、住民に対する更なるパフォーマンス性を期待しているとかじゃないか?」
 烈の疑問に答えたセイルの言葉は半ば冗談だったが、ありえないことではなかった。
「地獄の時のように、裏に潜むカオスが戦争を泥沼化させて力を増やそうとしているのではないかと思うが‥‥バハムートはカオスの関与に関してどう思う?」
「んー‥‥」
 ベアトリーセに頭を撫でられていたバハムートは、顔を上げて首を傾げて。そんな姿が可愛らしく思えるのは、彼が子供の姿をしているからだろうか。
「可能性は否定できない、かな。少なくともジェトの家臣団が突然エアハルトを支持したっていうのに、何らかの力がかかっていると思うから」
「エアハルト王子は何を考えているのでしょう?」
 シファの言葉に誰しもが思考の渦に落ちて言った。

 竜の王子のやり口はまるで――ジェトをバの支配下に置くようなものだからだ。