【眠りの螺旋】沈黙小夜曲
|
■シリーズシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:5 G 47 C
参加人数:9人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月01日〜04月07日
リプレイ公開日:2008年04月05日
|
●オープニング
リンデン侯爵は未だ、眠り続けている――。
先日、侯爵家長男セーファスへ嫌がらせじみた事をしている者達を炙り出すため、長男自らが囮となっての狩りが行われた。
結果、セーファスは落馬の危機に晒されたのだが、その原因を作った私兵の一人は同僚のオリヴィスという私兵の「獲物を追い込んでくるから仕留めろ」という言葉を信じての行動だったという。近づいてくるものが、てっきりオリヴィスの追い込んできた獲物だと思ったらしい。彼に嘘をついている様子はないのだが――
――果たしてこれは故意か、偶然か?
状況証拠ばかりだが疑われるべき立場にあったオリヴィスを冒険者達が探した。そして、目撃した。
彼と女性が何か話している所を。
その女性がオリヴィスから白い玉を取り出し、笑みを浮かべて掻き消えた所を。
倒れたオリヴィスの顔は青白く、まるで生気を吸い取られたようだった。他に狩場で同じ様な被害を受けたのは、セーファスを誤って射ろうとしてしまった者だけであった。
だが、事件がおきたのは狩場だけではなかった。
時間としては狩場で事件が起こる前。一行が狩場へ向かっている間に当たるだろうか。
アイリスにある侯爵邸でも三人の人物が倒れている所を発見されたのである。
庭師、見張りを行っていた私兵、そしてメイド。
メイドにいたっては倒れる前になにやら言い争いの様な声を聞いたという証言もある。
倒れた彼らの共通点は――?
冒険者と支倉純也の予想では「邸内でセーファスを狙った者」ではないかというところである。
倒れた彼らは意識こそ取り戻したが、まるで病気の様な様子で顔色も悪いという。
恐ろしいのかそれとも他に何かがあるのか、彼らはセーファスが事情を尋ねても一様に「覚えていない」「知らない」と繰り返す。オリヴィスも、女性の事は「知らない」「覚えていない」の一点張りだという。
狩場だけでなく邸内でも起こってしまった原因不明の事件。
目覚めない侯爵に引き続き、使用人達の不安は募るばかりである。
だがそんな中で、夫人だけが落ち着き払っているという。それは侯爵夫人としての使命感からか、はたまた別のものからきているのかは解らないが――。
今回の依頼も、セーファス直々のものである。
依頼内容は「謎の女性の正体を突き止めること」。
いわずもがな、謎の女性とは狩場でオリヴィスから白い玉を奪って消えたあの女性である。そして出来れば他の使用人達が倒れた理由も究明してもらえればと思っている。
侯爵子息の自分には話しづらいことも、聞き方を変えればもしかしたら何か聞き出せるかもしれない、彼はそう考えているという。
現在は倒れた5人全てが養生中だが、意識ははっきりしているため彼らに話を聞いても差し支えはない。
オリヴィス、セーファスを誤射した私兵、警備していた私兵は私兵宿舎に。
メイドと庭師は使用人部屋にいる。
屋敷内の侯爵の私室、夫人の私室以外は全て出入りの許可が出ている。
もちろん、アイリスの街へ出ることも可能だ。
そして今回からはレインリィを連れて行くことも出来る。メイドのローラの死により彼女の容疑は晴れているので現在侯爵家、及びレインリィの生家ヴィンターニュ家では秘密裏に彼女の行方を捜しているという。
彼女を連れて行くということはセーファスやレインリィに信頼を寄せる使用人達、そして病床についているという彼女の父の信頼を得ることに繋がるだろう。ただし彼女に濡れ衣を着せた犯人の目的がはっきりしていないといえばはっきりしていない。死人に口なし――そんな言葉が冒険者達の脳裏をよぎる。万が一まだ彼女を狙う者がいた場合、彼女が再び危険に晒される可能性もある。彼女の同行については慎重に検討してほしい、と純也は言う。
「あと気になる点といえば‥‥やはり夫人とセーファス様の間にある確執らしきもの、でしょうか」
それが過去の事件に関係あるような証言を得ることが出来ているが、まだ肝心の事件の全容が明らかになっていない。もしかしたらこの過去の事件が明らかになれば、残りのピースも全てはまるのではないか、そうも思える。
「第三者よりも当事者であるセーファス様や夫人、当時侯爵近くに使えていたというレインリィさんのお父様あたりの方が真実に近い内容が聞けるとは思いますが‥‥」
相当彼らの信用を得ていないと難しいかもしれません。緘口令が敷かれたという事件らしいですからね、純也は困った顔をして首をかしげた。
「一番難しいのは夫人でしょう。逆にセーファス様からは、人によってはかなりの信頼を得られているようなのでもしかしたら聞き出せるかもしれません」
これが侯爵邸に入らず、仲間の情報の中間地点として街に待機していた純也の見解。
「それと‥‥謎の女性はカオスの魔物である可能性もあります。十分注意してください。言うまでもありませんが、万が一邸内で戦闘になった場合、人命を優先してください」
純也は厳しい顔で集まった冒険者達を見渡した。
●リプレイ本文
●真実を
セーファスの私室は勉強中ということで人払いをしてあった。その上ソフィア・ファーリーフ(ea3972)がバイブレーションセンサーを発動させており、仲間以外の者が近づいてきたらわかるようになっている。ここには護衛という名目でランディ・マクファーレン(ea1702)とラフィリンス・ヴィアド(ea9026)も同席している。いったい何が始まるのだろうか――。
「何か大切なお話があると伺いましたが」
勉強中という名目なのでお茶をお出しできず申し訳ありません、そう前置きしてセーファスはソファに腰をかける。ソフィアはその向かいに座り、ランディとラフィリンスはその後ろに立った。
「まず始めに、俺達冒険者はレインリィの依頼によってここにいる」
「レインリィは生きているのですか!? 一体どこに‥‥」
ランディの口からもたらされた思わぬ真実に、セーファスは腰を浮かせる。それを手で制し、ソフィアが口を開いた。
「彼女は無事です。ただ、暗殺される危険性が残っているので居場所をお教えすることはできません」
「無事なら‥‥いいのです。もうこれ以上、私は周りの人に死んで欲しくなどない‥‥」
「それは十年前の事件と関係ありますか?」
「!?」
ラフィリンスの問いかけに、ほっとしてソファに座りなおしたセーファスの顔色が変わる。
「無理に話を聞きたいわけではありませんが、私達は十年前の事件の情報が、現在起こっている事件の早期解決の為に必要だと考えています」
「謎の女性の正体を突き止める為にも、十年前に侯爵夫人とセーファスさん、そしてクレストさんの間に何が起きたかを知る必要があるのです」
「‥‥‥‥‥‥」
ラフィリンスとソフィアからの嘆願に、セーファスは表情を硬くして俯いた。そして前髪をかき上げながら上げられた彼の顔は、苦渋に歪んでいた。
「‥‥わかりました、お話しましょう。あの忌まわしい事故を。私の罪を‥‥」
セーファスの口から語られるのは、十年前の事故の話。
当時8歳だったセーファスは暖炉に火の焚かれた暖かい部屋で本を読んでいた。その部屋には這い這いができるようになり、動きが活発になってきた弟クレストもいたのだ。夫人やメイドもいたが、何用かで夫人やメイドなどの大人達が席を外したほんの一瞬の隙にその事故は起きた。
這いずって暖炉に近づいたクレストは暖炉の火に手を伸ばし――その衣服に、身体中に火が回るのに時間はかからなかった。本に夢中になっていたセーファスがその事に気がついたのは、弟の恐怖と苦痛に歪んだ激しい泣き声を聞いた時である。
泣き声を聞きつけたメイドと夫人が急いで戻って来、状況を見て悲鳴を上げた。機転の利くメイドがクッションで火を叩いて消そうとしたが、火はなかなか消えない。執事が桶に水を汲んでクレストに掛けた時、その小さな命はすでに燃え尽きようとしていた。
程なく、クレストは息を引き取った。
「私があの時しっかりクレストを見ていれば、あんな事には‥‥」
「なるほど、それであの夫人の態度も合点がいった」
ランディはため息をつく。夫人が異常なまでにセーファスとディアスの接触を拒否する理由。それはディアスをクレストの二の舞にさせぬという気持ちからだろう。
「夫人は、その事故をセーファスさんのせいだと思っているのですか?」
「実際、僕が見ていれば防げたかもしれない事故ですから。僕があの時素早く動いて火を消していれば、クレストは生きていたかもしれない‥‥」
だが8歳の子供に、そんな状況に直面した時に素早い対応を求めることは難しいだろう。
「セーファスさんのせいではないと思います。責められるべきは、そんな赤子を放置して離席した大人達だと思います」
ソフィアの意見は尤もだ。だがセーファス自身はその事件にトラウマめいた感情を持っており、また夫人は息子の死はセーファスのせいだと思っている。
「邸内で起こっている事件ですが‥‥その十年前の事件が元で、何者かがカオスの魔物に操られている、もしくは利用されている可能性があります」
「カオスの魔物が邸内に入り込んでいるというのですか?」
ソフィアの推論に、セーファスは目を見開いて驚く。まさかカオスの魔物が出てくるとは思いもしなかったのだろう。そんな彼の前に銀の短刀が差し出された。ランディだ。
「セーファスも謎の女が消えるのを見ただろう? あれが恐らくカオスの魔物だ。‥‥これを。他人を害するのは褒められた事ではないが、他人を害してでも生き残るべき場合もある。憶えておいて欲しい」
「‥‥はい」
短刀を受け取るセーファスの手は、僅かに震えていた。
●蝶の示す先
再び邸内の護衛として潜入したフィリッパ・オーギュスト(eb1004)は、石の中の蝶を手に邸内を歩き回っていた。表向きは邸内の見回り。本来の目的はもちろん、カオスの魔物と思われる謎の女性を探すことである。石の中の蝶の探査範囲は30m。広範囲を探査できて便利なのだが、反応があった場合反応元を特定するのがいささか大変だ。
「(‥‥先ほどからゆっくりと羽ばたいてはいるのですけれど)」
指輪の中の蝶はゆっくりと羽ばたいている。それはどこかにカオスの魔物が存在するということを示していた。
「(こちら‥‥ではない、こちら‥‥?)」
蝶の反応を見ながらあっちでもないこっちでもないと歩き回るフィリッパ。はたから見れば多少挙動不審かもしれないが、咎められそうになれば機転と笑顔で切り抜ける。
「ここは‥‥」
蝶の羽ばたきが強い。そこは出入りを許されていない部屋。侯爵の寝室。
多少はしたないが背に腹は変えられない。フィリッパは扉に耳を近づけて中の様子を伺った。
「なぜ目覚め‥‥‥‥あなた、変な‥‥でしょうね!?」
「‥‥てないわ。‥‥‥とは契約‥‥から」
途切れ途切れにしか聞き取れない。だが室内では誰かが言い争っているようだ。声から察するに片方は夫人、片方は女性の声だ。
「戻るわ‥‥‥消す‥‥忘れないで」
「!」
その時フィリッパのいる出口に中から近づいてくる気配がした。彼女は急いで扉から離れ、廊下の曲がり角へ身を隠す。
カチャリ
扉が開かれて出てきたのは、夫人一人だった。会話の相手はまだ室内に残っているのだろうか。それとも――?
●ヴィンターニュ家へ
初めてアイリスへ足を踏み入れたアルトリア・ペンドラゴン(ec4205)は自身で何をするか決めていなかったため、どうしたらいいのかわからずに途方にくれていた。そんな彼女を見かねて声を掛けたのはファング・ダイモス(ea7482)だ。彼は街で倒れた五人のことについてや謎の女性を見た者がいないか調べていたが、そちらはいまいち芳しい成果は得られないでいた。故にレインリィの生家、ヴィンターニュ家を訪れるルメリア・アドミナル(ea8594)と同行し、レインリィの父親の警護に当たろうと考えていた所である。
「すいません、助かりました」
アルトリアは頭を下げ、ファングとルメリアに同行する。ヴィンターニュ家の屋敷はアイリスの街中にあった。雀尾煉淡(ec0844)もレインリィの父親の警護のため、同行している。
「突然の訪問、失礼いたします」
ルメリアが丁寧にレインリィからの手紙を預かっているので屋敷の主人に会いたい旨を伝えると、取次ぎに出た執事が慌てて奥へと確認に入り、そして暫くして四人は一つの部屋に通された。そこは寝室のようで、大きなベッドに上半身を起こした壮年男性がいた。
「レインリィからの手紙を預かっていると聞いたが、娘は無事なのか」
彼が病に倒れたレインリィの父なのだろう。心なしか顔色が冴えない。
「はい。再び狙われる可能性があるため今回はお連れで来ませんでしたが、お手紙を預かってあります」
ルメリアが差し出した手紙と、そして彼女達が事情をかいつまんで話したことで父親は彼らを信用するに至ったようだ。
「郊外で再会を‥‥か。だが私はこの通り現在病床についている身だ。街の外へ出るのは少し辛い」
「それもそうですね‥‥では後日また決まった日時にレインリィさんとお引き合わせします」
ファングの力強い言葉に父親も安心したのか、頷いて見せた。
「ところで、差し支えなければ10年前に起きたとされるクレスト様絡みの事件についてお聞きしたいのですが」
「それはレインリィの安全、そして侯爵家のために必要な情報なのかね?」
父親の問いに一同は重々しく頷く。すると父親はよかろう、と一息ついて話し出した。
内容としてはクレストが大人の目の届かないところで誤って暖炉に手を入れ、焼死した事。その時側にいたまだ子供のセーファスを夫人は疑い、責め、取り乱したこと。目を離した大人の、夫人自身の不注意でもあるのだが、夫人は息子を失った悲しみを、セーファスを責め、憎むことでしか耐えられなかったのだろうということだ。
「しかしレインリィが狙われたのか‥‥となると、もしかしたら」
「何か心当たりでもあるのですか?」
煉淡の問いかけに父親は頷く。
「夫人の擁するディアス様派が本格的に動き出したのかもしれん。私が病に倒れた事が、彼らに行動を決意させたのかも知れぬ」
「ディアス様派‥‥?」
「まあ、次期侯爵にディアス様を、と考えている人達のことだ。だが夫人を中心とした少人数の使用人などであり、侯爵様もそんなに深刻視なさってはいない。セーファス様とディアス様は年も離れているし、親族達もたいていの使用人もセーファス様が次の侯爵になられる事に異論はないからな」
「なるほど、となるとやはり‥‥」
ルメリアがぼそりと呟く。怪しい人物が、浮かんでくる。
「だが侯爵は眠られたままだと聞く。今のままならセーファス様が代行なさるのが筋だろう。万が一のことがあれば、まだ幼いディアス様よりセーファス様が爵位に就かれるのが至極当然」
父親は心配ないと楽観視しているようだが、セーファスが襲われた事を知っている冒険者達の内心は穏やかではなかった。
「お父様、貴方も狙われる可能性があります。私達が数日間護衛をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
丁寧な煉淡の申し出を、父親は問題なく受け入れた。
●羽ばたき
夜――服部肝臓(eb1388)は夫人の部屋のバルコニーに潜んでいた。昼間夫人が怪しい会話をしていたと純也経由でフィリッパから連絡を受けたからである。
こそり、聞き耳を立てるとなにやら話し声が聞こえてきた。どちらも女性のようだ。
「長男の雇ったらしい人物が私のことを探し回っているみたいよ? さっさとセーファスを殺しちゃう?」
「だめよ‥‥今セーファスを殺したら私が疑われるに決まっているじゃない」
「何のために使用人を使ったのよ。彼らをまた使えばいいわ。彼らに実行させて貴方は知らぬ存ぜぬで通せばいいのよ」
「でも、彼らの口から私のことが漏れたら?」
「使用人の言葉と夫人の言葉、どちらが影響力があるか考えれば一目瞭然でしょう? 彼らは自分達がやったことがばれても貴方が助けてくれると信じているわ。だから『夫人は貴方達を切り捨てる気でいる。夫人に切られた時に助けてあげる』って言ったら慌てて魂を差し出したもの」
片方は夫人だろう。もう片方の女はあは、はははは、と可笑しそうに笑った。
「けれども主人が目を覚まさなければだめよ。セーファス派の筆頭、ヴィンターニュ家の小娘は片付けたというのに、あの時盛らせた毒はたいしたものじゃないのに、すぐに解毒させたのに、なぜあの人は目を覚まさないの?」
「そこまでは私もわからないわ。だって別に私が何かしたわけじゃないもの。ところで約束、忘れていないわよね?」
「勿論。復讐が叶ってディアスが次期侯爵になることが決まったら、私の魂なんてくれてあげますわ」
「そう、その貴方の悲しみと憎しみ、それがいいのよ。もっともっと憎みなさい。もっともっと欲望を強く持ちなさい」
伝言と共に借り受けた石の中の蝶は、これでもかというほど羽ばたいていた。
「(大変なことを聞いたでゴザル!)」
肝臓はするりとバルコニーから身を躍らせ、連絡の為に純也の待つ店へと向かった。
●五人の共通点は?
数名が調べていた五人の共通点。レインリィの父の話していた「ディアス派」という言葉を元に邸内の人物に聞き込みをすると、それは驚くほど簡単に繋がった。明らかに「ディアス派」だと認知されている者もいればそうでない者もいたが、五人全員がここの所夫人によく呼ばれていたのだという。
「最初にセーファスを狙ったのは、本気だった。それは侯爵がすぐに目覚めると思っていた故か?」
ランディの呟きに答えるのはソフィア。
「だが侯爵は目覚めなかった。ディアスさんはまだ幼く、侯爵位に就いても執務をこなすのは難しい。夫人の計画では侯爵が生きていて、セーファスさんがいなくなるのがちょうどいいということでしょう。セーファスさん派筆頭のヴィンターニュ家を最初に狙った辺り、用意周到です」
「二度目以降の嫌がらせじみた行動は『警告』でもあり、それ以上手を出せなかったということでもある、か」
「侯爵が目覚めないのは計算外だったということですね。今回、カオスの魔物は表に出てきていません。フィリッパさんと肝臓さんが声を聞いたのみです。どうにかしてカオスの魔物を表に出して、退治することはできないものでしょうか」
ラフィリンスの言葉に一同は頭をひねる。この場には邸内警護として館に入っていたフィリッパもいた。そのフィリッパが口を開く。
「夫人も現状、手詰まりの様子。始末したと思ったレインリィさんが生きているとわかれば、何か行動を起こすのではないでしょうか。もしくは――例の五人を使ってセーファス様殺害を再び企てるかもしれません。使用人なんていくらでも切り捨ててしまえるものですから」
「レインリィさんを囮にするかもしくは、セーファスさん殺害を指示しているところを抑えることができれば――」
ラフィリンスが呟く。
いずれにしろ、これからが重要な山場となるのは間違いなかった。一歩間違えれば誰かが死ぬ。事態はそんな重要な局面に差し掛かっていた。