ノルマン大迷宮(アウレリア旧街道)
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■シリーズシナリオ
担当:DOLLer
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月11日〜06月16日
リプレイ公開日:2007年06月24日
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●オープニング
「ヴァイキング集落跡から東南東‥‥」
地図士シェラは複数枚の地図を並べながら、新たな地図作りに没頭していた。今書いている地図はノルマン王国全体を描き、その中に、小さな点をつけては都市の名前が書き込まれていた。並べられた参考用の地図はまるで鳥になって見下ろしているかのような鮮やかな色つけがなされていたり、事細かな書き込みをなされて誰からも実用的であると思えるものであったが、目の前のそれは、ところどころに絵が描き込まれているばかりだ。
左上をみるなら、海賊兜のドワーフが白いドラゴンと戦っているし、南に下ればアリーナ、原始人が洞窟で暮らしているようなものもある。
「なんですか、これ」
不意に背中から声をかけたのはブランシュ騎士団一の食わせ物、フラン・ローブルであった。
全く物音も立てずにシェラの背中にたったそれは騎士以外の何かの適性を強く匂わせたが、シェラは全く気にする様子もなく、その地図を作り込むばかりであった。
「大迷宮の全体地図ですわ。遺跡同士を結んで、活動拠点にしていることはおおよそ分かりましたもの。そうしたら、遺跡や洞窟をあらかじめ探っておいて、それで線をつないだ方が楽じゃないかしらと思って」
地図に描かれたイラストはすべて何かしらの遺跡のようであった。とすると、海賊と白いドラゴンのイラストは、先日向かったヴァイキング集落跡ということだろうか。
「なるほど、こうして見るとノルマン全土、遺跡だらけですね」
「遺跡だらけじゃない国なんて存在しませんわ。人の歴史と同じだけ、遺跡は存在しますのよ。ないと思うのは単に見えていないだけですわね。ですから増えることはあっても減ることはありませんわ」
それにしても、これだけの遺跡をよく調べられたものだ。実際に足を運んでいたら間に合わないだろう。独自の情報網か何かしらそれをかぎつける能力が彼女には備わっているに違いない。地図士ではなく純粋なトレジャーハンターであるなら彼女はとっくに誰もが知らない新発見で世界に名だたる存在になっていたことであろう。
「それで、前回出てきた出入口から向かうことのできる次のポイントってどこでしょうか」
「アウレリア旧街道だと思いますわ」
そう言って、シェラは幾何学的な模様のつけられた石畳が続いているイラストの一つを指さした。それは間違いなくノルマンの中央であるパリに近づいている。フランは何でもない顔をしながら、その周辺のことを頭に思い描いていた。
「この、アウレリア旧街道ってどんなところなんでしょう?」
「道が敷かれたのは、神聖歴100年前後ですわ。馬車や戦車などが発展した時期で、それに合わせて街道は石畳で整備されるようになりましたの。アウレリアはノルマンディーにおける街道遺跡の代表格ですわね。といっても、今は迷宮の中ですけれども。当時は先進的な事業として‥‥昔の貴族は道沿いに墓を建てたと云われて。その墓も含めて大きな遺跡とされるのですわ」
考古学者顔負けの知識に、フランは、ははぁと生返事を返した。昔の人もそれなりに需要を考えてのことだったのであろうが、今そのあたりがそれだけの大規模工事をするような重要性は持っていない。世の中の移り変わり悲しいことこの上ない。
「で、その墓には虫がいるんですかね。虫使いとか、虫の好きな姫サマとか、後は人間に寄生するような虫とか」
「虫?」
突拍子もないフランの質問にシェラは首をかしげた。
「いえ、昔はどうか知らないのですけどね、その辺り最近ラージビーの亜種が発生したところでして、もう少し先に行けばリブラ村もありますし、虫は関係しているのかな、と」
この遺跡マップを見ただけで、そこがリブラ村の近くであることなど、そうそう連想できるわけでもあるまい。ハナから預言の部分で謎に包まれていたものがこの大迷宮に隠されているのだろうという頭で来ているに違いない。
「虫は、わかりませんわね。あ‥‥でも、虫の伝承なら聞いたことはありますわ。もっと詳しい詩人にでも聞けば分かるのではないかしら」
なるほど。フランは前回大迷宮に挑んだメンバーを思い返した。あのメンバーなら、迷宮を踏破しつつ虫使いの伝承を解き放ち、虫大量発生の謎を解き明かせるかもしれない。預言の闇に迫れることに思いを馳せるフランを見て、シェラはくすりと笑った。
アウレリア旧街道は先ほども言ったように、貴族が墓を建てたりなど、モニュメントも多い。それはつまりお宝をゲットするチャンスではあるのだが。この仕事熱心な騎士様に伝える必要はあるまい。
冒険者にはどう伝えようかしら。シェラはシェラでこのダンジョンアタックに夢を駆けているのであった。
大迷宮のセカンドステージはアウレリア旧街道。
ここで待ちかまえる関門は虫。『預言の闇』を照らしてほしい。
●リプレイ本文
●油3本目・進入
前回の出口から再侵入し、それからほどなくしてじめじめとした土だけで構成されている洞窟に変化が生まれた。土の地面に混ざって石畳が姿を現し始め、ゆるやかに曲がりくねっていた道は次第にまっすぐへと続くようになった。
「もう直にアウレリア旧街道ですわ」
シェラはいくつもの道具を確認しながら、そう言った。
「確かに‥‥新しいステージに近づきつつあるようだな。はてさて、大迷宮の中はどんな事になっているんだろうな」
ジェイス・レイクフィールド(ea3783)は冒険心を刺激するこの光景に喜びの表情を隠そうともせず、まだ続く闇の先を見ようとした。
「たくさんのお宝があるといいんですけれどね。むしろ、なければ困ります‥‥!」
ジェイスと異なり、引き締まった表情を見せるのはカラット・カーバンクル(eb2390)だ。目指すは全部のお宝ゲット! その執念の炎を燃やす彼女には笑顔なんてしていられないのだ。笑顔は誤魔化して逃げる時に使うものだから。
「そ、それもいいのですが、できれば、虫を何とかして欲しいものですがのぅ」
マリス・エストレリータ(ea7246)はストーンゴーレムの首筋にぎゅぅと掴まりながら、やたら目立ってきた虫を胡乱気な目つきで見つめていた。他の人には大して気にならない虫たちだが、シフールのマリスにとっては『大して』ではすまない。大きな虫になると彼女の体の1/3を占めることだってあるのだ。ジャイアントサイズなど比べるまでもない。
「フランが虫と関係あると踏んでいたのは正解だったんだな。確かに虫と関係あるようだ‥‥さすがだ♪」
フランの恋人(?)である大宗院奈々(eb0916)は彼の予想が当たっていたのでちょっと鼻が高かった。今回はお宝もたくさん見つけて帰って、もっと喜んで貰おうと画策中。
「大丈夫ですか? できるだけ灯りを遠くにしておきますね。虫はきっと灯りに反応して集まっているだけですから、これだけでも少し違うと思いますよ」
マリスに優しく声をかけるのはソーンツァ・ニエーバ(eb5626)。前回もこのノルマン大迷宮に挑み、共に死線をくぐり抜けてきた仲だ。
「お、見えてきたぜ。輝かしきローマの栄光だ」
神聖ローマ帝国出身のアルフレドゥス・シギスムンドゥス(eb3416)は一瞬だけ皮肉な笑みを浮かべて、目の前にゆるりと姿を現した整然とした道を見てそう言った。
アウレリア旧街道を作ったのは、ノルマンのヴァイキングではなく、西欧でも随一の支配力を誇った神聖ローマ帝国である。それが今や土の中、帝国も内部での争いが見え隠れし、緩やかな斜陽の状態。思わず心の中で皇帝に問いかけたくなるというものだ。
●油4本目・作戦会議
「広いですね‥‥」
国乃木めい(ec0669)はどれだけ照らしても延々と暗闇に消えるまで続く回廊を眺めた。天井部は自然の土や岩などでできており、地面は平らに磨かれた石畳で完全に舗装されていた。道を縦に三等分するように窪みができているのはきっと馬車の往来による轍の痕だろうか。道はまるで測ったかのようにまっすぐに伸び、途中いくつもの崩れかけた石柱やオブジェの類が天と地をつないでいるようであった。
「どこからいったもんかね」
アルフレドゥスはシェラが作っている地図をのぞき込んだが、当然、地図はまだ未完成であり、真白い世界が広がっている。しかし今まで歩んだ道はちょっとしたカーブでも正確に記録されているのは心強い。
「そういえば虫の伝承って何か知っているか。ローマにはそんなものはなかったと思うんだが‥‥」
「虫姫と云う逸話がジャパンで聞いたことありますけれど‥‥」
めいは唸りながら、聞き及んだ内容を話した。その昔、虫と心を通わせる姫がいた、ということくらいだけれど。
「虫使いという職種もあるらしいぞ。虫を飼ってな。薬にしたり、治療道具にしたりするそうだ」
「‥‥う」
奈々の情報にカラットは眉をしかめた。薬にするってことは、やはり食べるとかするのだろうし、治療道具だとすれば、やっぱり体内に‥‥ああああっ!! 気持ち悪い想像させないでっ!! カラットはふるふると頭を振って浮かんだ映像を振り切った。
「その、虫使いとやらはどうやって虫を集めているんだ? 犬みたいに知能があるわけじゃなさそうだし」
「光や音、それから臭いですな。自分の血を餌にしているのもいるらしいですし」
ジェイスの質問に、マリスがぽそりと返答し、それをさらにカラットにいやな想像を復活させる。ああ、考えただけで全身がかゆい。
「それでは、不審な光や音、臭いに注意するとして、後はどう踏破していくかですね。遺跡も回っていきたいところですし。私はできるだけ戦団長の遺跡ですね」
ちょっと見ただけで、その広さは肌で実感することができるこの迷宮を踏破するのが容易ではないことはすぐ理解できる。これを限られた時間の中で効率的に回って行くにはある程度取捨選択をしなければ‥‥。
「私は、聖職者の遺跡から進んだ方が、デビル退治に関する英知をいただけるのではないかと思うのですが」
皆それぞれ向かいたいところはある。あーでもないこーでもないと皆で相談しているとカラットがぐっと拳を握って言いきった。
「とりあえず、全部遺跡は回るんですよ!」
ダンジョンアタックは攻略率100%になってたら次のステージに進むのが基本っ。と言わんばかりの発言に。
「そうだな。宝は多い方が良い」
「俺もそう思うぜ」
皆、反対はしなかった。
とりあえず、回る順番だけはもめそうだったので、ここは奈々のダウジングペンデュラムをシェラの地図の上に垂らして、決めていくことに決定した。
「よしじゃ行くぞ。‥‥フランの欲しい宝はどーこーだー」
「なんだってー!」
持ち主の特権をフルに生かした奈々のダウジングにマリスが驚嘆の叫びを上げた。みんなも唖然とするが、やってしまったものはしょうがない。この際、やったもん勝ちである。ペンデュラムはふらふらと東に向かって揺れるのを見て、奈々は立ち上がった。
「よし、右の通路を行くぞ!!」
●油9本目・遭遇戦!
「ここか」
「きたぞっ!!!」
石の扉を開くと同時に正面に立っているソーンツァめがけてブリットビートルが弾丸のように飛び出してきた。それをソーンツァは正面から受け止め、衝突の衝撃で一瞬動きが止まったブリットビートルをみんなで攻撃していく。まだまだ飛び出てきそうな勢いの羽音を聞いて、ジェイスがソードボンバーでなぎ払い、僅かの隙をついてカラットがバキュームフィールドを展開した。同時に揚力を失った羽虫たちはそのまま地面にぱらぱらとこぼれ落ちていく。
「他に罠や生き物がいる様子はないな‥‥」
アルフレドゥスは灯りを差し込みながら、油断なく上下左右を確認しながら、一歩踏み出した。
奥を照らすとセーラ神とかたどっていると覚しきレリーフが飾られているだけで特に他には何も見つからなかった。
「ここもはずれ、か。まあ仕方ないな。どっちにしろ次で最後だ。あそこで行き止まりだろう」
シェラの地図を確認してジェイスは言った。先程からぐるりと残った一つの扉が隔てる部屋の周囲を歩いてきた。二階や地下があるのかもしれないが、見ている限り何かの災害で砕けているのでそれほど遠くもあるまい。
「多分、玄室ではないでしょうか‥‥」
死者を冒涜することになるのかもしれないなと思い、短い祈りをささげためいはそう言った。
アルフレドゥスはその間に扉を調べ、仕掛けられていた罠をちゃっちゃとはずしていく。
「古典的な罠だな。もう大丈夫だ。それじゃ、お宝とのご対面といきますか‥‥」
ゆっくりと扉が開かれる。
そこは暗い空間であった。天井はどこか地上部とつながっているのか、小さく光が差し込んでいるのがわかるが、見渡せるような光量ではない。そしてあたりはごつごつとした壁で覆われ、耳障りな音が、静かに響いていた。
「音‥‥注意が必要ですな」
直感能力の高いマリスは本能的な危険を感じていた。そこに視界がどうあるかなんて関係ない。
「とりあえず、進まないと何も始まりませんよっ」
カラットはそう言って、果敢にも玄室への第一歩を踏み入れ、そして激しく後悔した。
壁が動いている。空間が波打っている?
ヴヴヴヴ゛ウ‥‥‥‥‥ォォォォオオオワワワワワワァァアアアアアン!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ」
それが誰の悲鳴であったかなんて確認する余地すらなかった。視界を埋め尽くす、虫、ムシ、蟲!!
それが一斉に襲いかかってくる様子はミドルドラゴンサイズのスライムが襲いかかってくるような戦慄があった。ジェイスが全力でソードボンバーを放つが雲霞のごとくわき出る無数の虫には、焼け石に水である。カラットも部屋の中から出てこないように必死でアイスブリザードを放つがそれでも全く勢いが減ったように見えない。
「逃げるぞっ!!」
奈々はたいまつを投げ入れ、油の付いた矢を打ち込むが着火した様子はない。あまりにも多い虫達に矢の勢いが受け止められてしまうのだ。
一行は慌てて元来た道を全力で駆け戻っていく。途中、大群に飲まれそうになっては、ジェイスのソードボンバーで打ち払い、正面に回り込んできた虫はソーンツァの持っていたたいまつで退けながら、少しずつ距離を開けていく。
「あぁん、魔力が持たない〜、もったいない〜」
泣きながらカラットはソルフの実を口にしていた。そうでもしないとお金より生命を浪費してしまうからだ。
危険はまだ去らない。
「正面!! ギガントビーだ!!!」
「なんだってーっ!!?」
正面からいつぞや大穴に巣を作っていたというラージビーよりさらに大きいギガントビーが2匹もこちらに向かって来るではないか。人間よりさらに大きなギガントビーが2匹も居れば、さすがにその横をすり抜けるなどという芸当はできない。
「どうしたもんですかの。ここは名探偵マリスの知恵を絞って‥‥」
「そんな時間ありませんって。いきますっ!」
ソーツンァは剣を振りかざして、襲いかかるギガントビーの腹部を切り裂いた。直後に横から襲いかかるもう一匹のギガントビーに同時に3本の紅蓮の矢が突き刺さる。奈々の弓技だ。
「ここであたしが死ぬとフランが悲しむからな」
‥‥あれ、ソーンツァくんの為じゃないんだ。
一瞬、微妙な間があったが、それでもアルフレドゥスのダブルアタックで瀕死の蜂にとどめをさし、残る一匹は、めいのコアギュレイトによって凍り付いた。
「ふぅ」
「ふぅ、じゃない〜。これ以上後ろもたないんだからっ」
後ろからまだまだやってくる軍隊はカラットのアイスブリザードに頼り切りだったことを思い出し、一行は再び走り始めた。
やがて、遺跡から走り抜けた瞬間、廃材で組まれた櫓が見えた。アルフレドゥスの口元に笑みが浮かぶ。
「何事も準備しておくものだな。それじゃあなっ」
一行が走り抜けると同時に、マリスが櫓の中に火を投げ入れた。とたんに広がる爆炎。虫達が炎をまとって舞い踊る。
●油26本目・休憩中
キャンプ中。一行はすすだらけの服を思い思いの方法で洗っていた。もっとも着替えなんてあるわけないので、着たままバフバフとはたいているだけなのだけれど。
というのも櫓による火計には成功したものの、炎は押し寄せる虫を道にして遺跡の中を突っ走った。そして玄室の中まで綺麗に焼き尽くしてくれたのである。敵がいなくなったのはいいのだけど、その代償がこれだ。
「それにしても、こんな錫杖で虫を集めていたとは驚きですな」
奈々の持っているヤドリギでできた錫杖を眺めてマリスはため息をついた。それは握って念じるだけで、様々な光を生み出せるアーティファクトであった。もちろん魔力は使うし、閃光のように強い光も出せないので、あまり便利なアイテムではないと思われたが、安置されていた状態で光を放っていたものをまねると、虫がすぐさま集まってきた。
「きっと虫達には心地よい明かりなのかもしれないな。大迷宮はノルマン全土に広がっていると仮定すると、何かの拍子にこの迷宮に迷い込んだ虫は自然とここに集まってくるのかも知れない」
リブラ村の決戦では蟲笛の出す音で操っていたという話もある。これだけ膨大な数の虫を集め、必要な分だけ笛でコントロールできるとしたらかなり強力な兵器だろう。
めいはその杖を見た瞬間、精霊の森にいたという賢者キロンの遺産の一つだろうということはすぐ閃いた。以前、デビルが森に侵入し遺産を荒らして回ったと言うが、その財産の一つに違いない。
「その錫杖どうしましょうか‥‥」
「もちろん、フランへのお土産にするんだ。結婚指輪と一緒に渡してもいいな」
とりあえず所有者である奈々はフランへのいい手みやげができたと顔がゆるみっぱなし。そしてお礼と共に熱〜い夜を、なんて考えているのは、言わなくてもみんなわかっている。
●油37本目。撤収!
「き、貴様ら、どこから入ってきた!?」
「というか、なんで人間がいるんだ」
舞台は戦団長の遺跡。厄介な虫は光操の錫杖を使って振り払い、さぁ、と乗り出したところばったりであったのは、怪物でも悪魔でもなく、人間だった。
「とりあえず、どこかから迷い込んできた、というわけではなさそうですね」
色めき立つ人間に敵意を感じて、ソーンツァは油断なく剣に手をかける。どう考えてもこんなところで真っ当な人間が生活しているとは考えられない。
その予想を裏付けるようにその後ろで巨大な虫の姿が見え隠れし、目線を交わす。
「虫の生態研究所といったところですな‥‥」
マリスの指摘に、人間達は恐ろしい形相になって、後ろに見える奇怪な虫を前面に押し出した。
「知られてしまっては仕方ない!! くらえっ、ギガントマンティー‥‥」
ぽい。
奈々が光操の杖を放り込む。光の状態は集虫の光だ。
‥‥。
戦闘終了。
「杖で虫を集めて、マッドアルケミストに虫を改造させていたのか」
ジェイスはぼやきながら、荷物をまとめていた。荷物の中には洞窟に入ったときにはないモノで一杯だ。
「これで虫の騒動は減るでしょうね」
めいはにこりに笑って、そう言った。彼女の手には曰くありげな拳ほどもあるエメラルドが握られている。それは精霊の森の遺産です。と彼女は言った。他のメンバーもそれぞれにアイテムを手に入れている。
奈々は光操の錫杖を手に入れたが、これはフランに手渡される予定である。代わりにペットの仏蘭に可愛い耳飾りをプレゼントされてのだが、それはまた別の話。
「油がもうありませんし、出口に向かいましょうか。聖職者の遺跡に外に繋がる光があったので、次はまたここから再スタートできますわ」
シェラも地図をしっかり書き込めたのでおおよそ満足であったようだ。