Princess of Light #2 -飛べない小鳥の詩-

■シリーズシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月25日〜11月30日

リプレイ公開日:2004年12月03日

●オープニング

「うふふv また口説かれちゃった☆ お医者様から怒られちゃうよ。どうしよう♪」
 ブリジットは嬉しそうな顔をしながら受付カウンターにやってきた。
「いいわねぇ‥‥モテモテで‥‥。彼氏もいるのに‥‥。わたしなんて‥‥ううぅ」
 対して、受付嬢はシクシク泣きながらブリジットに依頼書を渡す。
「どうやら、冒険者達がお嬢様のお医者様を見つけてくれたようだから、今回はご対面のセッティングね」
「あら、そうなんですか。何人かの方がギルドにも調べにこられたんですが、ここには情報が無くて。大丈夫かと思ってたんですけど、よかったですね。今度は、わたしのお医者様を見つけて下さい」
 ブリジットが書き終えた依頼書を渡すと、受付嬢は真面目な顔をして言った。かなり真剣なようだ。
「大丈夫よ。そのうち、心の傷を癒してくれる素敵なお医者様が現れるから」
「‥‥そのうち現れる、と待ち続けてかれこれ5年になるわねぇ‥‥」
 受付嬢は溜息を吐きながら依頼書をチェックする。
「それで、ブリジットさん。今回のセッティングはどのようにお考えなのですか?」
「全部、冒険者に任せようと思うの。場所とか、演出とか、どうやってご対面させるか、とか」
「そのほうがいいかも知れませんね。でも、やっぱり2人きりで?」
「そこが難しいところなのよねぇ‥‥冒険者達とワイワイ楽しくやったほうが緊張しなくていいかもしれないしねぇ。そこも冒険者にお任せね。彼らはお嬢様のことを真剣に思って行動してくれているから、あたしが口出すよりいいと思うわ」
「そうですか。それから、お医者様はどこにいるのです?」
「夜になったら酒場で歌を唄っているようね。すぐに見つけることができるわ」
「わかりました」
 受付嬢が依頼書にその内容を書き込むと、ブリジットが思い出したように付け加えた。
「あ。それと、パートナー参加募集も一緒にお願いするわ。冒険者にもカップルがいるかもしれないからね」
 もし、相方がいる冒険者が参加してくれれば、付き合い方についてアドバイスをしてくれるかもしれない。ブリジットはそう考えた。


   *


「何でみんな、こんな事で一生懸命になってくれるのかしら‥‥」
 エンフィルド家の屋敷。
 ミリエーヌは窓の外を見ながらふと思った。
 冒険者達と仲良くなれるのは本当に嬉しい。
 でも、自分のつまらない恋愛事にこんなにも力になってくれるなんて‥‥
 噂では、ブリジットがこの為だけに冒険者に依頼を出しているらしい。しかも、自費で。
「そういえば、ブリンクキャットも冒険者のおかげで今の彼氏がいるって言ってたっけ‥‥」
 何故、ブリジットが冒険者に協力を頼んでいるのか。
 それは、彼女の経験からなのかもしれない。

●今回の参加者

 ea0286 ヒースクリフ・ムーア(35歳・♂・パラディン・ジャイアント・イギリス王国)
 ea0418 クリフ・バーンスレイ(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea0459 ニューラ・ナハトファルター(25歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3657 村上 琴音(22歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea6226 ミリート・アーティア(25歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「はぁい♪ 元気だった?」
 待ち合わせ場所にいたリオン・ラーディナス(ea1458)とイェーガー・ラタイン(ea6382)に、ブリジットが明るく声を掛けた。
「今回も宜しくお願いします」
 にこやかに挨拶をするイェーガー。対象的にリオンは‥‥
「オレは傷が一つ増えたケドナ‥‥」
 やや引き攣った顔をしていた。
「安全にピクニックが出来る場所とかはご存知ないですか?」
 イェーガーが本題を切り出す。
「そうだ。彼女の足、ちょっと外に出るくらいなら大丈夫か?」
 顔を変えたリオンもミリエーヌの容体を尋ねる。
「足は大丈夫よ。逆に外に出るようになってから元気になっちゃったわね」
 ブリジットは優しく目で笑った。
 冒険者達と出会ってからミリエーヌは自分で外に出たいと言う様になり、元気になったのも皆のおかげと感謝している。
「場所はどこがいいかしらねぇ」
「出来れば、告白しやすい場所がいいのですが‥‥」
「そんな都合のいい場所あるかしら♪」
 イェーガーの注文に悪戯っぽく微笑むブリジット。結局、近くの公園でピクニックをすることになった。


 クリフ・バーンスレイ(ea0418)とリ・ル(ea3888)はリュミナスがいる酒場に来ていた。暫くしてイェーガーも駆けつける。
「1曲頼んでもいいかな。そうだな‥‥お薦めの曲、いや、君が一番好きな曲をお願いするよ」
「ありがとうございます。心を込めて唄わせていただきます」
 リ・ルはリュミナスをテーブルに呼んで歌を頼んだ。
「あ、あなたは‥‥」
「こんにちは。こうして会話するのは初めてですね」
 ニコリとクリフが笑うとリュミナスも微笑を返し、リュートを奏でる。
「それでは‥‥」
 リュートの音色と共に、リュミナスの透き通った声が酒場に流れる。
 リ・ルは目を閉じながら唄に耳を傾けた‥‥本当はミリエーヌをここに連れてきたかった。冒険者とて、全てが良い人間だけではない。そんな現実を見てもらいたかった。
「ご清聴を感謝します」
 歌い終わったリュミナスが頭を下げる。
「誰か想い人でも思い浮かべながら歌っているのですか?」
「え!?」
 クリフの不意に突いて出た言葉にリュミナスはその想いを顔に表してしまった。
 白面の表情を少し赤らめ、否定できない自分にもどかしさを感じているようだった。
「やっぱりそうなのですか。素敵な恋をされているみたいですね‥‥」
 クリフとリュミナスはしばらく会話に興じた。
 お互いの事、興味がある事、そして、恋愛について。
「今度、ピクニックをするんだが、よかったら一緒に来ないか?」
「一人の女の子について相談したい事があるのですが‥‥」
 リュミナスと仲良くなったところで、リ・ルとイェーガーが目的を告げる。
「それで、実は会って欲しい人がいるんだ」


 ヒースクリフ・ムーア(ea0286)はミリエーヌの両親にピクニックの許可を取る為、屋敷を訪れた。
「最近、お嬢様は明るくなられたご様子ですね。今度、是非外に出て野に遊ぶ楽しみを教えて差し上げたい」
 彼女の両親は冒険者を非常に好意的に思っている。特にヒースクリフをはじめとする参加者には絶大な信頼を寄せているので、ピクニックに関しても二つの返事で許可を出した。
「しかし、姫君と旅の詩人か‥‥難しい恋愛だね‥‥」
 許可を貰ってもヒースクリフは難儀な表情をしていた。
「でも、閉じ篭ってきた彼女が初めて抱いた外へ向いた想い。それが叶わぬ想いだとしても、そのまま埋もれさせたくは無い」
 叶えるのが難しい望みをヒースクリフは全力で手助けする事を誓う。

「今日は絶好のピクニック日和です♪」
 ニューラ・ナハトファルター(ea0459)は目的地を下見していた。
 本日は晴天。頬を撫でる微風は少し冷たいけども、それもまた気持ちいい。
「この辺りがいい感じです♪ みんなに伝えて、準備は万全なのです♪」
 ニューラは2人の距離を縮める為にある作戦を考えていた。

   *

「やっほ〜☆ ピクニックだよ♪ い〜っぱい楽しもうね♪」
 ピクニック本番。ミリート・アーティア(ea6226)は一番乗りで屋敷に来ていた。
「ミリートちゃん、今日もよろしくね」
 出迎えてくれたミリエーヌを見るなり、ミリートはギュッと彼女を抱きしめる。
「久しぶりの「ぴくにっく」なのじゃ。あせらず、のんびり行きたいものじゃの」
 村上琴音(ea3657)も荷物運搬用の愛馬を引き連れて屋敷に到着した。
「外は少し寒いから、暖かい格好して行こうね」
 ヒースクリフが暖かい格好で出発するように勧めた。外の天気は良くても、季節は冬である。長い時間外にいると体調を崩したり、風邪を引くかもしれない。
「お待たせ。厨房を借りて食事を作ってきたよ」
 やはり、ピクニックの楽しみといえば、外で食べる食事! ということで、リオンは屋敷の厨房を借りてピクニック用の軽食を作ってきた。食材はブリジットが用意してくれたので、費用は掛からなかった。
「それでは、出発なのじゃ」
 琴音の合図で一行は楽しいピクニックに出発した。

「前に頂いた花を取りに行くときも、こんな景色だったのですか?」
 ミリエーヌがヒースクリフに尋ねる。
「そうですね。ゲンティアナを取りに行った時も、今日みたいな良い天気の日でした。もっとも、場所は山の中ですが」
「ジャパンでは「竜胆」という名の花じゃな。綺麗な花なのじゃ」
 ヒースクリフと琴音が花の話をミリエーヌに聞かせた。
「私も前に依頼で山に登ったよ♪ 山の中ってとっても気持ち良いの♪ 空気が澄んでて涼しいんだよ♪ でも、気をつけないと熊さんが『がお〜☆』って出てきちゃうんだ♪」
「きゃー☆」
 妙にコミカルな仕草で熊の真似をするミリート。
「無理しないで、ゆっくり歩いて行こうね。あ、転びそうになったらオレの方に倒れてきていいから‥‥って、だーっ! それ、危ねーよ!」
 リオンはミリエーヌの歩行を心配しているのだが‥‥少々おふざけな言い方を聞いたミリートはダーツでリオンを狙い、琴音は釣竿を構える。少しドタバタしつつも、楽しい道中であった。

「よう! 待ってたぜ! こっちだよ」
 ピクニックの場所でリ・ルが手を振って待っていた。クリフとイェーガーも先に到着している。
「こんにちは、リ・ルさん」
「よくここまで来れたな。そうだ、みんなから君にプレゼントがあるんだ」
「えっ!」
 驚くミリエーヌ。そして、リ・ルが合図をすると木の影に隠れていたリュミナスが恥ずかしそうに出てきた。
「あっ‥‥」
 さらに驚くミリエーヌ。頬に朱を注いでいく。
「こ、こんにちは‥‥また会えるなんて‥‥」
「わ、わたしも‥‥」
 硬直する2人。
 まるで魔法に掛かったかのように。
「あ、それでは、食事でもしましょう」
 魔法を解いたのはイェーガーの言葉だった。スイートベルモットを取り出し、リオンも準備してきた食事を広げる。
 しかし、2人はやはり緊張の色を隠せない。
「あ、それは『サラダ』の『皿だ』」
 食事を準備するリオンが絶妙なタイミングでオヤジギャグを発動。一瞬、2人の緊張が崩れる。
「よかったら、リュミナスさんの歌を聞いてみたいですね」
「私もリュミナス兄さんの歌を聞きたいな♪」
 その瞬間を逃さず、クリフとミリートがリュミナスに歌をリクエストした。
 コクリと頷くと、リュミナスはリュートを手にミリエーヌに捧げた歌を唄う。リュートの音色に釣られて、ミリエーヌとミリートも一緒に歌を口ずさむ。
「‥‥うっ。あ、目に、ゴミが‥‥っ」
 強い想いを表す歌にリオンの目頭が熱くなった。
 歌が終わった後も、食事をしたり、会話を楽しんだりと和んだ時間が過ぎた。
 そして、お互いの事を語り合い、主役の2人も、冒険者も心の距離を縮める。
「旅は‥‥好きですか?」
 さり気無くイェーガーが尋ねる。
「はい‥‥でも、今はキャメロットを離れる事ができない理由ができましたから‥‥」
 リュミナスが答えた。
(「この様子なら大丈夫のようですね」)
 イェーガーはリュミナスの旅への思いが障害になると考えていたが、それは問題ではなさそうだ。
「大変です、あっちで馬が暴れてて止める人がいなくて困ってるです! 助けに行きましょう!」
 穏やかにピクニックを満喫する一行。そこへ、ニューラが慌てて飛び出してきた。無論、これが作戦の合図である。
「それは大変だ。直ぐに助けに行こう」
「私たちが帰ってくるまで護ってあげてくださいです♪」
 ニューラがリュミナスの耳元で囁くと、冒険者達はその場を離れた。
 2人だけの空間。
 リュミナスはミリエーヌの瞳を見つめ、何か言っているようだが、冒険者の耳には届かなかった。
「ふふふ。いい感じなのです♪」
 テレスコープで様子を覗くニューラ。
「ミリエーヌちゃん、がんばってね」
 ミリートが影から2人を見つめる。他の冒険者も2人の成り行きを見守る事にした。
「酒場で聞いてみたものの、今一つ「恋」とはわからぬものじゃの」
 琴音は茂みに隠れ、2人の会話を聞いていた。「異性同士が一緒にいたいと強く思う気持ち」とは何かを知る為に。
「僕は‥‥あなたの為にこの詩を捧げます‥‥」
「わたしも‥‥籠の中ではなく、これからはあなたの傍で歌いたい‥‥」
 抽象的な言葉を琴音は理解できたであろうか。


「この前は興味本位でお茶にお誘いしたりしてすみません」
「あら、いいのよ。気にしなくて♪」
 依頼の報告の為にギルドへ来ていたクリフとブリジットが会話をしていた。
「僕も恋愛なんてする時が来るのでしょうか‥‥」
「もう、してるわよ。そうでないと、あたしを誘ったりなんてしないでしょ? どこかに、あなたを待っている人が必ずいるんだから♪」
 そう言うと、ブリジットはクリフにウィンクして喧騒する街の人ごみの中へと消えていった。
 暫くして、ギルドの中から頭を垂れたリオンが出てきた。
「はぁ‥‥これで5人目か‥‥」
 何があったかは言わずともご理解いただけると思う。