【ブライトンの騎士】Ready fight!

■シリーズシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 97 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月01日〜08月08日

リプレイ公開日:2007年08月09日

●オープニング

「あなたは‥‥いつまで腐っているつもりかしら?」



 エアク・ウェルナーはブライトンの中を歩いていた。彼は少し前までは職も持たずにただブラブラと生きていただけの人間である。
 その時はみずぼらしかった格好も今ではすっかり改善され、黒い瞳の中にも光を持つようになっていた。清潔な真紅の髪に、手入れされた鎧と剣。特に念入りに手入れされているは腰のところにぶらさげている短剣――とはいっても最近のゴブリン退治やオーク退治で抜いた事は無いが――更正する前とは見違えるように変わっている。
 そんな彼がブライトンの中を歩いているには理由があった。それは‥‥1人の人物と出会う為。
「あら、またぶらぶらと歩いて。仕事を探してるの?」
 やっぱり現れた――そう思いながら心の中で指を弾きながらエアクが振り向くと、そこに立っていたのは女性。
 よく手入れされた銀色の髪に白い肌。まるで貴族のような立ち居振る舞いを思わせるが、あくまでも着ている服などは一般的なものという不釣合いな格好をしている女性。彼女の名はセアラ。エアクを立ち直らせる依頼を出した張本人でもある。
「いや、今回は仕事を探してるわけじゃない」
 セアラの姿を認識すると、体ごと向き直るエアク。彼の目的はセアラに出会う事。だがそれは仕事の為ではないという。
「あんたに聞きたい事があってな」
「ふぅん、何かしら?」
 世間話をするのも面倒かのように、即座に本題に入るエアク。セアラはそんな彼の様子に特に疑問を抱く事なくそれを聞く。まるで、次に彼が何を言うのかも分かっているかのように。
「あんた‥‥一体何者だ?」
「‥‥‥」
 やっぱり。セアラの表情はそんな思いを端的に表していた。
 とはいえ、エアクの疑問も尤もなものだろう。どう見ても怪しい人物にゴブリン退治を依頼し、その後もオーク退治を依頼する。またエアクが剣を扱える事を聞いても不思議に思わない。エアクが過去に何をしてたのかを知らない限り、そのような事は有りえない。
 そしてエアクは自身の記憶の中で、目の前にいる女性との接点があるとは‥‥どうしても思えないでいた。
「それは‥‥あなたがエアク・ウェルナーである限り教えない、と言ったと思うけどね?」
「俺が‥‥俺である限り、だと?」
「あなたは‥‥本当にエアク・ウェルナーなのかしら?」
「‥‥‥っ‥‥」
 途端、何か痛いところを突かれたのか言葉を発する事ができないエアク。そんな彼を見たセアラは、出来の悪い子を見る母親かのような顔を浮かべながら溜め息を1つ。
「‥‥仕方ないわね。ちょっとここで待ってなさい」
「あ、あぁ」
 彼女は何をするのだろうか、分からないがとりあえず承諾するエアク。そんな彼を見るとセアラはさっさと背中を向けて街の人込みの中へと消えていった。
 きっと待てと言った以上戻ってくるのだろう。離れるわけにもいかないエアクは、手ごろな壁にもたれてセアラが戻ってくるのを待つ。


 ある程度時間が過ぎただろうか。
 エアクは自分のところに歩いていくるセアラの姿を見つけ、声をかけようとしてから‥‥絶句する。何故なら。
「いや、その後ろに連れてる人たちは何なんだ!?」
「え、何って見てわからない?」
「いや分からなくはないが意味が分からないんだよ!」
 セアラの後ろについて歩くように数人の人物がいた。だがどう見ても一般人とは言いがたい。
 彼らは‥‥武装していた。鎧を着込み、ある者は剣を、ある者を槍を、ある者は弓を携えて。彼らに相応しい職名を当てはめるとしたら『騎士』がまさしくぴったりだろう。
「何で騎士を連れて歩いてるんだ!?」
「いいからついてきなさい」
 エアクの質問に答える事無く、また歩き始めるセアラ。騎士達はそんな彼女に特に異論を挟むでもなくただ付き従うのみ。呆気に取られるエアクだが、その場に取り残されても意味はないので結局彼女らについていく。
 そしてセアラらがエアクを案内した場所は街の外であった。
「何で街の外なんかに‥‥」
「いいからあれを見て」
 セアラに疑問の声をぶつけるエアクだが、セアラは意に介さずある一点を指差す。仕方なくそのポイントを見やるエアク。それなりに距離は離れているが別に見えない距離ではない。そこには赤い何かがあった。
「あれは‥‥旗、か?」
「えぇ、その通りよ」
 1本の赤い旗が丘の上に突き刺さっていた。それを確認するとセアラはまた別の所を指差す。エアクもやはりその指差す先を見る。そこには‥‥今度は青い旗が刺さっていた。
「赤い旗と青い旗‥‥それがどうかしたか?」
 刺さっている旗を見せられてもそれでエアクの疑問が解消したわけではない。意図をはかりかねるようにセアラに聞く。
「簡単な事ね。旗が2本別々の場所に立っていて、私の後ろには戦闘ができる者が数人いる」
 セアラにそう言われて、エアクは旗とセアラ、そして騎士達を見やって少し逡巡してから口を開く。
「‥‥まさか、所謂模擬戦闘、か?」
「ふふ‥‥正解よ」
 そう、簡単な事である。2つのグループがお互いの陣地にある旗を奪い合う剣も魔法も使っていいゲーム、だ。
「これに‥‥あなたが勝ったらあなたの知りたい事を教えてあげるわ」
「なっ‥‥つまりそこの騎士達と戦えって事だろ!? 俺1人で出来るわけないだろうが!」
「別に1人で戦わなくてもいいのよ? あなたは‥‥ゴブリン退治やオーク退治の時に1人で戦ったのかしら?」
 セアラの言ってる事はつまり、冒険者に手を借りて構わない‥‥という事である。
「大体、何で騎士達があんたに従って――」
「それも勝てば分かるわ。‥‥まぁ、こんな風に騎士を使うのは少々不本意ではあるけどね」
 苦笑いを騎士達に向けるセアラ。騎士達はそんなセアラに特に声をかけるわけでもなく。
「で、結局‥‥やるのかしら? やらないのかしら?」
「‥‥‥」
 考え込むエアク。だが、考える振りをして実際は考えは固まっているのだろう。
「分った、やってやるよ‥‥!」
「ん、よろしい」
 セアラを睨むように言うエアクだが、セアラはその様子を気にする事無く満足げに頷く。
「それじゃ、1人あなたの傍に置いておくから都合のつきそうな日時を教えてね」
 セアラは1人の騎士を呼び寄せるといくつか言い含めてから、その騎士を残してその場を去る。
 恐らく伝言係のようなものだろう。
「ところであんた‥‥」
 エアクはセアラの姿が見えなくなると残された騎士に向かって話しかける。
「キャメロットギルドまで依頼をしにいってくれるか?」
 さすがにそれには首を横に振る騎士であった。



 後日、エアクからの依頼がギルドへと貼りだされる事となった。そこには騎士との模擬戦闘をする事、事前に決められたルールなどが書かれていた。 
 勝負の勝利条件は相手の陣地に刺さっている旗を手にする事。冒険者側は青の旗、騎士側は赤の旗を守る。
 場所は基本はなだらかな平野だが、旗の間に大きな森がある。相手陣地に向かうにはその森を抜ける必要がある。それ以外では特徴といったものはない。陣地間の距離は相当に広い。地形の事前の下見は構わないが、戦闘前に何かを仕掛ける事は禁止。ペットの使用も禁止。
 真剣による攻撃や魔法の使用も構わないが相手を殺さない事。戦闘続行が不可能と思える傷を負ったらすぐに離脱する事。治療班も待機している。

●今回の参加者

 eb1476 本多 空矢(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2874 アレナサーラ・クレオポリス(27歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 ec0335 アッシュ・ゼスクルード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec1858 ジャンヌ・シェール(22歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec2025 陰守 辰太郎(59歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ec3138 マロース・フィリオネル(34歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

ヒナ・ホウ(ea2334

●リプレイ本文

●戦いの火蓋
 雲ひとつ無い晴れ模様だった。清々しい空気で、目の良い者が見通せばどこまでも見れるようなそんな感覚。
 依頼を受けた冒険者達はブライトンの近くに集まっていた。依頼人であるエアク・ウェルナーと共に、だ。
「今回はエアクさんからの依頼なんですね。一緒に頑張りましょう!」
「あ、あぁ‥‥相変わらずだな」
 エアクとの再会を喜びながら、いつも通り彼の手を取りながら微笑みかけるジャンヌ・シェール(ec1858)。やはりというかジャンヌの勢いにエアクは押され気味だ。
「健在そうで何よりだ…が今回は今までと違って人が相手だ。やり辛いだろうが、問題ないか?」
「‥‥‥あぁ。問題は、ない」
「模擬戦闘とは、やってくれるわね。いいわ、うけてやろうじゃないの」
 模擬戦とはいえ人に剣を向けるという事の覚悟をエアクに問うアッシュ・ゼスクルード(ec0335)。少しの間があったもののエアクは問題ないと答える。フィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)は自分の得意分野である対人戦という事でやる気十分のようだ。
「私は後方の魔法支援ですね」
「私は自分のできることで、役割を果たそうと思います。エアクさん、今回も連携お願いしますね」
「あぁ、頼む」
 アレナサーラ・クレオポリス(eb2874)は旗を守る者として戦う意思表示を見せて、マロース・フィリオネル(ec3138)は攻める者としてエアクとの連携をするつもりだ。エアクはそんなに2人に信頼しているように頷く。
「話は後で聞くとして先ずは依頼を済ませてしまおう」
 本多空矢(eb1476)もエアクに聞きたい事などは色々あるのだろうが、それは戦闘の後ということで、目前に迫る模擬戦闘に対して気合を入れる。
(「クウェル・ナーリシェンという騎士‥‥ですか」)
 そんな中、陰守辰太郎(ec2025)はただ黙ってエアクを見る。道中でフィオナに聞いた騎士の名を頭の中に浮かべながら。
「準備をお願いします」
 冒険者達の近くにいる1人の男性が告げる。彼もまたセアラが手配した連絡係だ。
 事前の下見などを既に済ませた冒険者達は打ち合わせを済ませ、自陣へと歩いていく。
「それにしても」
 先頭を飛んでいたフィオナが何かを思い出したかのように振り向く。
「何で揃いも揃って男性陣は忘れたのかしら」
 それを聞いて気まずそうに顔を背ける冒険者の男性陣。‥‥忘れたというのは保存食の事だ。お陰で高値で買う羽目になったのだが。
 何はともあれ、戦いの幕が上がる。

●攻める者
「始めてください!」
 連絡係の男性が告げる。男性の視線の先には煙のようなものが上がっていた。開戦の合図なのだろう。
「‥‥余り、難しく考え過ぎても駄目だな。シンプルに、成すべき事を成そう」
「事は単純だ。旗を奪う、それだけだ」
「‥‥まぁ、簡単にそれが出来れば苦労しないんだがな」
 言いながら歩き始めるアッシュ。並行するように空矢とエアクも歩く。この3人が敵陣へと攻める前衛の攻撃の基点というわけだ。
「それでは行ってきますね」
 マロースも軽く陣に残る者達に手を振ってから歩き始める。彼女は盾による防御支援だ。
「さて、と‥‥」
 フィオナが上空へと高く飛びたつ。彼女の役目は敵の情報を偵察する事だ。飛行のスピードも相まって1人先行する形となる。

 フィオナが森の上空へと差し掛かる頃、敵となる騎士の姿が遠目であったが彼女の目に入った。こちらに向かってきているのは剣を持った騎士、槍を持った騎士、そして弓を持った騎士が2人である。事前に聞いた話から考えると、陣地に残っているのは剣の騎士、槍の騎士がそれぞれ1人ずつ、ウィザードが2人だろう。
 彼女はその情報を仲間に伝える為にすぐに戻っていく。テレパシーの有効範囲は意外と狭いので、声が届くぐらいの距離まで近づかなければいけないのだ。

 そして4人は森を抜ける。幸いな事に騎士達とぶつかる事は無かった。事前にフィオナが森のどの辺りから入ったかを見てくれたお陰だろう。森を抜けた4人の目に映るのは旗を守る2人の騎士と2人のウィザード。敵もこちらを恐らく視認したのだろう。各々の武器を構え、少し前に出る。
「行くぞ!」
 取られる前に取る為に、冒険者達は駆ける!
 そんな冒険者達と騎士達がぶつかる寸前なのを上空から見ているフィオナ。今の彼女にはいつものようなおちゃらけた様子は一切感じ取れない。
「こちら鷹の目、前衛が敵と接触した。戦闘開始だ」
 その情報を自陣を守ってる仲間たちに告げる為、フィオナは飛ぶ。

 敵陣の旗へと向かって武器を構えて駆ける冒険者達! お互いがぶつかるまでまだ少し距離があるだろう。騎士が前に出る様子はあまり見られない。
「水際の攻防戦、というわけか‥‥?」
 空矢がそう思ったとき、騎士から何かが飛んでくるのが見えた。いや、正確には騎士からではない。騎士に隠れるようにしているウィザードからだ。
 飛んできたのは小さな火の塊。だがそれが冒険者達の目の前に着弾した時、球形の爆発を起こす!
「ぐっ! ファイヤーボムか!」
 毒づくアッシュ。その火の魔法は少なくとも魔法の初心者が撃ったものではない威力であり、巻き込まれた者の肌を焦がすには十分すぎる。マロースだけ少し離れていた為に巻き込まれずに済んだ。
 更にほぼ同時のタイミングで飛んでくる別の魔法! 直線状に飛んでくる黒い帯のような魔法――グラビティーキャノン! もう1人のウィザードが放ったものだ。
 今度は先ほどのファイヤーボムに巻き込めなかったマロースを狙うように撃ちこまれる!
「く‥‥この攻撃は‥‥!」
 地に倒されそうな衝撃を受けるが何とか耐えるマロース。グライビティーキャノンの威力を全て受ける事なく、抵抗に成功した彼女であるが軽減された威力を肌に受けた彼女は実感する。‥‥直撃すれば戦線離脱は免れない、と。
 だが、歩みを止めるわけにはいかない! 手痛い先制攻撃を食らいアッシュとエアク、マロースはリカバーポーションで傷を回復しながら走る。エアクの持っているポーションは前回の依頼で貰ったものである。
「近づけば恐らく魔法は撃てない! その為にも走るんだ!」
 弓が使える者が攻撃に参加していればここまでの苦労は恐らくしなかったが無いものねだりしても仕方ない。エアクの指示通り、冒険者達は走る!

●守る者
 攻撃組が森を抜けた頃だろうか。騎士の攻撃組もちょうど森を抜けていた。
「来たな‥‥」
 一番目の良い辰太郎が真っ先にそれに気づく。ちなみに見通しが良いからさすがに鳴子を仕掛ける意味は薄いと判断している。
「ここは通しませんよ!」
 ジャンヌも純白の弓へと矢を番え、騎士達を迎撃する態勢へと移る!
 そんな冒険者達の様子に気づいているのかいないのか、騎士達は旗に向かって走る!
 走ってくる騎士達の出鼻を挫くように辰太郎が赤い弓から矢を放つ――しかも2本同時にだ!
 狙いは弓を扱う騎士である。騎士の想定以上の射程から飛んでくる矢に、反応もできずに2本とも命中する! 威力は大した事ないのだが、2本ならばそれなりのダメージになる。
「サンレーザー!」
 だが接近するのを止めない騎士達に向かい、アレナサーラは魔法を発動する! 太陽の光を熱線として発するその魔法はやはり弓を持つ騎士に命中する! 更に追い討ちをかけるかのようにジャンヌの放った矢もまたその騎士に命中する!
 遠くからなるべく集中攻撃して数を減らしていく作戦のようだ。

 それでも騎士達は前進を止めず、弓を扱う騎士は2人とも倒れたが、剣と槍を扱う騎士達は攻撃を加えれるぐらいに接近していた。
「くっ‥‥!」
 ジャンヌは今まで装備の重量のせいで中々連発できなかった弓を地に置いて、使い慣れた剣を構えて迎撃の態勢に入る!
 だが目の前の騎士との実力差も考えると、このままでは突破されてしまう事は想像に難くない。
「応援に来たわよ!」
 しかし、ここで前線で戦闘が始まった事を伝える為に来たフィオナが援護に入る! 彼女の魔法はこの場では非常に有効なのだ。
「何としても食い止めるんだ!」
 辰太郎が激を飛ばす! そして剣や槍が振るわれ、弓と魔法が飛ぶ乱戦が始まる!
 ここに来て数で勝っている冒険者達であるが実力で勝る騎士を止めるには前衛が1人では些か厳しいのは事実。
「このままでは‥‥あっ!」
 壁を厚くする為にもアレナサーラが剣を握るが、僅かな間隙を縫って1人の騎士が旗に向かい走る!
 このままでは旗が奪われる―――その時!

「そこまで!」

 連絡係の男が告げる。彼の視線の先には騎士側の陣から立ち上がる連絡用の煙。
 そう、冒険者達が先に騎士達から旗を奪い勝利したのだ!

●驚愕の真実
 辛くも騎士達に勝利した冒険者達は予定通り待ち合わせ場所に集合する。そこには勿論セアラもいた。
「負けるとはね、中々やるじゃない」
「約束だ。話してもらうぞ」
 感心したように言うセアラに、エアクは前置き無しで単刀直入に言う。
「せっかちね‥‥ん?」
 1人の騎士がセアラの傍までやって来て一言二言告げる。セアラはその騎士に返事をしてから冒険者達に顔を向ける。
「ごめんなさいね。どうも時間が無いようだから手早く言うわね。‥‥私の本当の名はライカ・アムテリア」
 セアラ――ライカがその名を告げた時動揺したのは、ブライトンについて少しでも調べた事があるものだ。
「ブライトンの領主よ」
「な、なんだってぇぇ!?」
 ライカが告げた真実に驚愕したのは誰か‥‥全員かもしれないが。
「時間が無いから詳しい事はまた後日ね。エアク・ウェルナー‥‥いえ、クウェル・ナーリシェン?」
 呆然とする冒険者達を残してさっさと立ち去ってしまう、やはり風のようなブライトン領主。
「‥‥‥クウェル・ナーリシェン、ですか?」
「あ」
 ジャンヌがぼそりと言う。後に残ったのは冒険者達から質問攻めに合うエアク――否、クウェル・ナーリシェンだった。