【ブライトンのカマ】介入するカマ
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■シリーズシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 46 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月07日〜12月14日
リプレイ公開日:2007年12月15日
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●オープニング
村は平和な村であった。
特に目立った争いも起こらず、外から襲ってくる山賊達もいない平和な村であった。
ただ、小さな喧嘩などが起きてしまうのは仕方のないことだろう。それに喧嘩しても翌日には謝りあって笑いあえる、そんな村だった。
「お前それは違うって!」
「いーや、この考えは譲れないね!」
ある日、そんな村で喧嘩している二人の男がいた。喧嘩の理由は単純というか、他の人にとってはどうでもいい内容‥‥つまりは肉はどう料理すれば一番おいしいのかといったものだった。
だが、他の人から見たらどうでもいい内容でも、当人達にとってはそうはいかないというのが喧嘩する人間の心理である。男達の口論は次第に過熱していき、ついには取っ組み合いにまで発展してしまう。そんな様子を見る村人たちの感想は『また馬鹿やってるよ』程度のものであり、止めるのも面倒だから好きにやらせてやれといった感じであった。
実際、このまま放置しておけば当人同士で勝手に和解して喧嘩は終わったであろう。
――――だが、世界には空気が読めないやつらというのが実在するのも然り。
「エクス、紛争を確認。介入する」
その冷たさを思わせる静かな声音と共に、男達の背後にいつの間にか一人の男が立っていた。
いや、その一人の背後に更に一人、更に一人と‥‥最終的にはそこに立っていたのは四人の男。
「おいおい、エクス。初めての介入だからって先走るな」
「デュオスもお守り大変だね」
「キュメス。俺達の仕事はお守りじゃないんだぞ」
「‥‥バーチ、お前はもうちょっと空気を読むスキルをな」
村人達を無視しているかのように好き勝手に話している四人の男達を見て、思わずぽかーんと口を間抜けに開けたまま呆然としてしまう村人。
話している内容から察すると、最初に現れた小柄な青系の服を着ている何故かやたらと剣をぶらさげている男――少年といってもいいかもしれない――がエクス。次に現れた緑系の服を着たどこか軟派そうな気配を持つ弓を持っている青年がデュオス。その次のオレンジ系の服を身に纏い、裏がありそうな笑顔を貼り付けた、何故か体が柔らかそうな印象を持つ青年がキュメス。最後に現れた、黒の鎧を纏い、鎧のせいなのかやたらと太っているように見えるそれでも美形の少年‥‥バーチ。これが彼らの名前のようだ。
「あ、あんたら一体何なんだ!?」
「いやぁ、あんた達、争ってただろ?」
唐突に現れた謎の集団に向かって当然疑問をぶつける村人の男。デュオスは答えるが、その答えはどうにも要領を得ない。
「だから何だっていうんだ!」
「我々は‥‥紛争に対して、カマ力(かまちから)によって介入を行う!」
「はぁ!?」
瞬間。エクスは宣言すると同時に二人の村人に向かい、すれ違うように剣を振るう!
だが、村人達が血に染まる事はなく‥‥切り裂かれたのは服だけ。
「な、これは―――!?」
「ようし、エクス。上出来だ。後はこのデュオスが‥‥狙い撃つ!」
「ってどこを狙ってんだアッー!」
それと同時にデュオスが村人のどこかを狙い‥‥撃つ!
その日から、村で喧嘩する男達は殆どいなくなったという。
「カマ‥‥俺がカマだ‥‥!」
ブライトン。領主であるライカ・アムテリアの屋敷の執務室にて、部屋の主であるライカの下に、彼の護衛の騎士であるクウェル・ナーリシェンが手に何か報告書を持ってやってきていた。
「例の村の調査をした結果が出たぞー」
「で、どうだったの?」
例の村、というのは以前変態集団ブラッディペインに所属する二人の変態を退治した時に、彼らの本拠地を聞きだそうとしたのだが、その結果彼らの褌に何故か地図が描かれており、それに記載されていた村の事である。ちなみに誰がその褌に描かれている地図を確認したかは言及しない。
「そこでも変なやつらが現れてるってさ。まぁ、ブラッディペインの者とみていいだろ」
「‥‥やっぱり」
「男が争う度に現れて、その当人達を襲って争いを無くす‥‥とか主張してるらしい」
「いっその事、今のブライトンで起きてる問題に介入してくれたらいいのに。‥‥ごめん、嘘ついた」
新たに現れた変態のせいで頭に痛みを覚えながらも、彼らを退治する為にまた冒険者へと依頼をするのであった。
●リプレイ本文
●紛争を発見
ブライトン周辺にあるとある村に冒険者達はやってきていた。
「み、妙な村ですね」
冷や汗をかきながら呟くのはアレナサーラ・クレオポリス(eb2874)だ。彼女の言う通り、村には不穏な空気が漂っている。しかしそれも仕方のない事だろう。
「わぁ、今回は、4人もカマがいるんだね? 無事退治できるだろうか?」
「まあ、これだけのカマが一度に現れるのも珍しいですね‥‥。対処方法はいつも通りですけど」
シュヴァルツ・ヴァルト(eb0529)の言うように、この村には4人もカマが現れるのだ。マロース・フィリオネル(ec3138)もある意味感心した風に言う。ちなみにいつも通りの対処方法とは男性陣を囮にしている間に女性陣が観戦―――ではなく、隙をついて倒すというものだ。
「変態って‥‥ほんとに色んな変態がいるんですね‥‥」
「前回もいっぱい絵を描けたので、今回もいっぱい描くぞ!」
今回現れるカマは何故か紛争に介入し、襲ってそれを無理矢理解決させようとする正直何がやりたいか分からない集団である。そのカマ達について呆れながら言うのはサクラ・キドウ(ea6159)だが、チョコ・フォンス(ea5866)にとってはまた面白い絵が描けるチャンスという事でこれはこれで良いのだろう。主旨が違う気がするが、女性陣にとっては些細な事だろう。
「ついにカマの本拠地に辿り着くかと思ったら、又、濃い連中が‥‥カマ根絶は、夢の又、夢なのか‥‥」
どこか遠い目をしながら言うロッド・エルメロイ(eb9943)。そんな彼が視線を向けた先には二人の口論をしているらしい男。ロッドは決意を固めると、彼らに向かい歩き始める。
「ダンディズムってのは、美学に殉ずる人。つまりは、僕みたいな人間の事を指すと言っても過言でないね」
「違う! ダンディズムとは隠しながらも滲み出るそんなものだ!」
「違う!? 僕はこの英国で生まれ育ったんだよ、僕こそ英国紳士の鑑じゃない!」
口論の内容には敢えて触れないでおこう。片や自信満々に言い放つ英国紳士(らしい)レイジュ・カザミ(ea0448)。片やイギリスには珍しい河童であり、特徴的な大きなモミアゲを持つ雷瀬龍(eb5858)だ。龍のモミアゲが妙に動いているように見えるのは気のせいという事にしておく。
ちなみに、今回参加した冒険者のうち、レイジュ、サクラ、アレナサーラの3人はまともに保存食を持ってきていない。ブライトンにてかなりの高値の保存食を買う羽目になったが、恐らく保存食を忘れてしまった恥ずかしい冒険者と噂されるだろう。
閑話休題。ともかく村の中で口論しているレイジュと龍の2人にロッドも加わり、口論はさらにヒートアップしていく。
「紛争を発見‥‥これより介入する」
そこにやはり誘き出された4人のブラッディペインのカマスター達が姿を見せる!
●カマ力による介入
4人のカマスター達が目の前に現われたのを見て、口論をしていた3人の視線は彼らへと移る。
そこへ待機組であるシュヴァルツが駆けつけ、口を開く。
「カマスターのお兄さん達に聞きたい事があるんだけど」
「断る」
バーチの即答。
「少しぐらいは聞いてやってもいいんじゃねぇか?」
「答える義理はない」
「やっぱ空気読めねぇな‥‥」
デュオスがとりなそうとするが、やはりバーチには取り付く島もない。
「あなた達は‥‥何の為に争いに介入するんですか!?」
そんな会話を断ち切るように言うのはロッドだ。バーチとの問答に付き合えば話が進まないから仕方ないだろう。
その質問に口を開いたのはエクスだ。
「世界から‥‥戦いを無くす為だ!」
宣言。
「‥‥正気?」
「ある意味、正気じゃこんな事できないだろうね」
あまりに突拍子もない答えにシュヴァルツは思わず本音を洩らす。それに答えたのはキュメスだ。
「えーい、ともかく! 英国全土にカマ力を広げようとしているみたいだけど、そんな強引で力づくのやり方で、うまくいくと思っているのかい!? 僕はキャメロットにこの人有と言われた、葉っぱ男のレイジュ・カザミ! いわばキャメロットの伝説さ。ブラッディペインを広げるというなら、まずは僕に勝てなきゃ話にならないね!」
一気にまくし立てることで相手を威圧しようとするレイジュだが、肝心の相手であるバーチには‥‥。
「自分で伝説とは片腹痛い」
やはりどこ吹く風。
そんな中、今まで沈黙していた龍が己の武器である龍叱爪を構える。
「河童とカマは語呂が近いし、彼奴らのような輩が居ると河童が人間のケツが好きだのと誤解を受けかねん‥‥」
そう誰かに話しかけるわけでもなく呟くように言う龍の声に、その場に居た者達が視線を彼に向ける。
「我が種族のエロガッパなる不名誉な呼び方を打破する為にも必ず倒す! シェンロンの裁きを受けよ!」
「いやその理屈はおかしい!」
誰かがつっこんだが、そんな事はお構いなしとエクスへと走る!
今イヤな感じに戦いの幕が開く!
●観戦側です、どーぞ
「はい、というわけで戦いが始まりましたが、どちらが有利とみますか、アレナサーラさん」
「やはり、カマスターの方々ではないでしょうか?」
カマスター達と戦っている男性陣を尻目に、事前に購入した菓子などを広げて観戦している女性陣。スクロールを広げて様子をメモしているのはマロースだ。メモする為にもわざわざ実況するといった感じか。
「まあ囮頑張って‥‥。なるべく早く駆けつけられるように善処はするから‥‥」
「うんうん、頑張るから。あぁ、もうちょっと体こっちに向けてほしいわね」
サクラがまったく善処していないように見えるのは気のせいだろうか、気のせいでしょう。チョコは相変わらず絵を描いているが、世に出すには、もうちょっと世がアレな方向にはっちゃけないと無理だろう。
「あぁ、やはり龍さんが一番最初に倒されましたか」
「‥‥迂闊な突撃は死に繋がる、というやつですね‥‥」
「あの、シュヴァルツさんもちょっと危ないんですけど、いいんですか?」
「んー、もうちょっと待ってもまだ大丈夫でしょ。もう少し描きたいし」
女って、怖い。
「ロッドさんのムーンフィールド、一発で破られましたね」
「ああなると、接近戦に弱いロッドさんは‥‥」
「‥‥むーざん、むざん‥‥」
「これはこれで‥‥うん、良い感じ」
「お前らさっさと助けろー!!」
今の叫びは誰のものだろうか。もしかすると男性陣全員の叫びかもしれない。
「あ‥‥しまった。お茶のみに来たんじゃなかった‥‥」
「報告書もこれぐらい書けばよいでしょう」
サクラが思い出したように立ち上がると同時、マロースもペンを置く。
「うん、こっちも大体描けたわ」
「‥‥手遅れじゃないですよね?」
チョコが描いた絵を傍目で見て、比較的善良な――あくまでも比較的だ――アレナサーラは冷や汗を流すが、他の女性陣は特に慌てた様子は無い。
●変革する世界
「くっ‥‥なんと言う気配、全ての紳士・淑女の憎悪を自ら望むようだ」
倒れながら言うロッド。彼の服はとこどころ焦がされていたり切られていたり、ある一点に矢が突き刺さっている。命に別状が無いから問題ないだろう。
「河童は人間に対してそのケは無い! や、やめろーっ! ‥‥ア――っ!」
まるでモミアゲまで真っ白になるかの絶望を味わったのか龍の叫び。そのケとは何だろう、何をされたのだろう。勿論、お約束だが言及はしない。
既に2人の男は脱落してるといっていいだろう。シュヴァルツも微妙に無事とは言いがたい。エクスによって切られた服がはだけた姿は、むしろ一部の趣味の方が『こんな可愛い子が女の子なわけないじゃないか』と言い出しかねないものだった。そしてカマスター達はその趣味の持ち主であった。シュヴァルツ、最大の危機である。
レイジュはひたすら回避に専念していた為か、まだ無事である。
「それでは、そろそろ終わらせるとしましょう」
言いながらコアギュレイトを唱えるのはマロースだ。対象はキュメス。さっきまでノリノリでファイアーボムなりを撃ち込んでいた彼だったが、動きが止まる。
「俺の中に入ってくるんじゃねぇ!!」
‥‥彼にとってコアギュレイトを食らって動きが止まる感覚というのはそういうものなんだろう。
さくっ☆
「何‥‥!?」
「他人の後ろに突き刺すなら‥‥自分も同じことをされることを知っておきましょう‥‥」
いつの間にかデュオスの背後に回っていたのか、サクラのデュオスへのポイントアタック。
そんな中、ウインドスラッシュとライトニングサンダーボルトで適当に攻撃しながら――その適当が何故か効果的なのだが――バーチに接近するチョコ。レイジュへと気を引かれていたバーチは彼女への対応が遅れてしまい、チョコの接近を許してしまう!
「どうする?」
チョコはいつの間にか持ってきたのか、ペットに積んでいたロープを使いバーチを拘束するかのように絡める!
「それでも‥‥!」
その直後、バーチに起きた異変。どういう仕組みなのか、彼は瞬く間に鎧を脱ぎ去りその拘束を脱したのだ! 兜が外れると同時に赤い長髪がふぁさりと広がる。鎧の下の格好はお約束通りと言っておこう。
「脱ぎ勝負なら負けない」
そんなバーチに対抗心を燃やしたのか、レイジュも衣服を全て脱ぎ去ると葉っぱ一枚の格好となり、ポージングを取る!
「この姿を晒すとは‥‥!」
バーチは怒りのままに目の前でポージングを取るレイジュへと攻撃を仕掛けるが、あまりにも周りが見えてなかった。
包囲していた女性陣にその隙をつかれて倒されたのは言うまでもない。
ちなみに、エクスはいつの間にか誰かの手によって倒されていた。すごく地味に。
「これ‥‥まだ変態いるんですね‥‥。というか変態を統べる最後の変態ってどんなのやら‥‥」
遠い目で言うサクラ。彼女の視線の先をずっと辿れば、そこにはブライトンがあるだろう。
‥‥そこが決戦の地である。