【花嫁育成計画】ドワーフの若奥様

■シリーズシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月17日〜01月22日

リプレイ公開日:2005年01月25日

●オープニング

 それは、いつもの様にギルドで受付嬢が茶をすすっていた時だった。
「あら、これ美味しいわね」
「ええ。実家の方から送ってきてくれるんです」
 今度のお茶の相手は、フリーウィルのお騒がせ教師、ミス・パープルである。いつもの衣装に加え、首から銀のネックレスがぶら下がっていた。
「いいわねぇ。うちなんか、教会が実家みたいなものだがから、クリスマスは出て行くばっかりだし」
「良かったら、帰りに分けてあげますよ」
 そう言って、小さな布袋を用意してくれる受付嬢。と、そんな昼下がり、からんと扉のベルがなった。
「失礼しまーーーす! ここ、花嫁さんを育ててくれる場所って聞いたんですけど!!」
 そう言いながら、ギルドにどたどたと重い足音で駆け込んでくるドワーフ女性。長く伸ばしたヒゲを、三つに分けて綺麗に編み込んだ、赤毛のいかにもそれらしい体格の少女である。
「いや、ここはギルドであって、花嫁育成場所じゃないんですけど‥‥」
 困ったような表情で、そう答える受付さん。が、そこへパープル先生が異を唱える。
「あら、面白そうじゃない。何を困ってるの?」
「って、先生〜‥‥」
 止めようとする彼女に、先生はしーっと人差し指を唇に当てて、黙らせた。その様子を見て、ドワーフの少女は、こう訴える。
「私、ぼっちゃまの若奥様になりたいんですっ。でも、ぼっちゃまのお父上は、若奥様として完璧じゃないと、花嫁として認めないって言うんですっ。それで、お友達のランスくんから、ギルドの話聞いて、私も花嫁さんにしてもらおうと思ったんですッ」
 まぁ、良くある『結婚に反対するご両親』っとゆー奴である。話を聞くと、どうやら種族は人間らしい。
「若奥様として完璧ねぇ。ほかに何か言われたの?」
「はい‥‥。実は、花嫁さんには、これが必要だって言うんです」
 そんなドワーフの娘さんが、かばんから取り出したのは、真っ白いエプロンである。幅広で、ドワーフの体型でも、無理なく前面を覆う事が出来る代物だ。
「なるほど‥‥。そう言う事ね‥‥」
 ニヤリと笑うパープル先生。なにやら、悪巧みを思いついたご様子。
「先生に任しておきなさい。アナタを立派な花嫁にしてあげるわ」
 そう言って彼女は、受付嬢に依頼を出すよう指示を出すのだった。

 そして。
「舞踊試験に紛れ込ませる‥‥って、どう言う事ですかぁ?」
「どうも、その商人さんは、質の良い踊り子さんを提供するのに、定期的に試験を開いているらしいの。5日後に、その試験があるみたいだから、それまでに、このドワーフさんを最高の踊り子に仕上げて、商人の前でご披露してあげて頂戴☆」
 彼女が用意したのは、ミニタイプの制服、ドワーフ少女の持ってきたエプロン、ハロゥインに出てくるようなカブ、んでもってリボンで装飾の施された枝である。
「試験は私も見に行くから、がんばってね」
「いいのかなー」
 不安なのは、どうやら受付嬢さんだけのようだった。

●今回の参加者

 ea4675 ミカエル・クライム(28歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea8255 メイシア・ラウ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8761 ローランド・ユーク(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea8870 マカール・レオーノフ(27歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea8877 エレナ・レイシス(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

 ミカエル・クライム(ea4675)の提案で、生徒達は、ドワーフ嬢から『事情を聞く』と称して、お茶会を開いていた。
「な、長い‥‥。女ってのは、どうしてこんなに恋の話で盛り上がれるんだー!」
「女の子は他人の恋愛が好きだからですよ。いいじゃありませんか、微笑ましくて」
 時々、きゃあきゃあと黄色い悲鳴が聞こえている。取り残された形となったローランド・ユーク(ea8761)が、ティーカップを持ったまま呆然としているのを見て、メイシア・ラウ(ea8255)がそう慰めた。
「うるさいなー。研究にならんじゃないか」
 と、そこへ相変わらず仏頂面して乗り込んできたのは、すぐ上の階で古文書を読んでいたエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)である。
「やっぱりお前か、パープル嬢」
 こう言う騒動を起こすのは、たいてい彼女だと知っているエルンスト、ハーブティ片手にそう言ったパープル嬢に、眉をしかめて見せた。
「まぁまぁ、そんなに目くじら立てないで下さいよ。我々は、こちらのドワーフのお嬢さんを、手助けしてあげようと思いまして」
 放っておくと、何やら剣呑な雰囲気になりそうなのを見て、マカール・レオーノフ(ea8870)が割って入る。それを聞いて、エルンストは事情を悟り、ため息混じりに、パープルへ文句をつける。
「‥‥パープル嬢、依頼を受けるのはいいが、他人の真剣な恋心は、面白半分で、扱う事じゃないぞ。依頼人の乙女心に傷を残すのは、後味が悪いからな」
「あぁら。あたしは生徒を信じてるわよ。でなかったら、話さないわ」
 本気なのか、そうでないのか、判別しかねる意味ありげな笑みで、彼女はそう答えてくる。
「あの。お嬢さんに1つ聞きたい事があるんですが、よろしいでしょうか?」
 小首を傾げる彼女。この辺りは、普通の女性だ。と、そんな彼女に、マカールはやや厳しい表情を浮かべながら、真剣な眼差しで問うた。
「異種族恋愛が、タブー視されている事は、御存知ですよね? もし、コレが上手く行けば、異種族婚になります。人間とドワーフですから、私のようなハーフは生まれません。ですが、周囲の目は厳しいです。それに耐えぬく覚悟はできていますか?」
 悲しげな顔をしながら、そう諭すマカール。今でこそ、受け入れられているが、彼もまたハーフエルフ。口ではいえない迫害を被った事もあったのかもしれない。
「も、もちろんです。何が起ころうとも、私はぼっちゃまへの愛を貫いてみせますわ!」
「出来ているなら、言う事はありません。頑張ってください」
 ファイティングポーズを取ってみせるドワーフ嬢に、マカールはほっとした顔で、そう答える。
「やれやれ。話はまとまったようだな。5日でどこまで本職に迫れるか。嬢ちゃん、あんたの愛次第だぜ?」
「はいっ」
 ローランドがそう言うと、彼女はこっくりとうなずく。と、そこへ扉が開いて、エレナ・レイシス(ea8877)が大荷物を抱えながら、乱入してきた。
「すみませーん。パープル先生、こちらにいらっしゃいますかぁ?」
「ちょうど良く、教材が来たようね。エレナ、そのまま手伝って頂戴」
 どうやら、彼女が何か頼んだらしい。パープルの頼みに、エレナは衣装箱を床に置きながら、輪に加わった。
「ところで‥‥。これ、全部使うんですか? そのまま被ると、ひげがしめっちゃうよー」
「確かに、湿気ると髪の毛も髭もふわふわにならないんですよね。では、こうしておきましょうか」
 ハロウィン流用品のカブをひっくり返しつつ、エレナが首をかしげると、彼はひげのふわふわを保てるよう、くりぬいた内側に布を張つけてみせた。出来上がれば、カブの湿気を布が吸収してくれると、解説しながら。
「よーし、被りものは、これでOKっと。あとは、衣装だっ」
 首から上はOKになったらしい。ミカエルがおめめをきらきらさせながら、選別に入るのを見て、マカールは苦笑しながら、女性陣に席を譲る。
「うーん。なんか足りないなぁ‥‥」
 数分後、制服にエプロンをつけてエプロンドレス風にし、小脇にカブを抱え、右手にリボン杖を持った立派なドワーフの魔法少女が誕生していた。だが、ミカエルは何か不満そうに、そう呟いている。
「なら、こいつを使うといい」
 そこへ、エルンストがレインボーリボンを差し出した。
「ここにいいものがある。使え。試験までそれほど時間がない事だし、彼女の個性を生かす方向で、他の参加者との差別化を計った方が良いだろう」
 そう付け足しながら、エルンストは理美容道具一式を差し出した。相変わらず仏頂面だが、手伝ってはくれるらしい。
「えぇと、じゃあこれとこれと、これを使って‥‥?」
「そう、そんな感じだ。どうせなら、自分らしさを見てもらい、その上で若奥様になった方が。後々、相手に嘘をつく事もないだろうからな‥‥」
 しかも、年長者らしいアドバイスつきである。

 衣装が決まった所で、いよいよダンスの練習である。
「じゃあ、基本とかは、ローランドさんがメインで、レクチャーしてね」
「おう。任せておけ」
 ミカエルが「まぁいいか」と呟きながら、一通りの事を押し付けると、彼は軽く胸を叩き、偉そうに答えていた。
「それでさぁ、テーマが魔法少女と言うからには、やっぱり決めポーズが無くっちゃね♪」
「そうですね。ドワーフの方は。元々器用の値が高いと申しますし、複雑な決めポーズも、特訓すれば、大丈夫でしょう」
 ミカエルの提案に、マカールがそう答えている。もの覚えが悪いほうではなさそうなので、ステップをマスターすれば、他の参加者にも見劣りはしないだろうと。
「試験中は、喋っても良いのですか?」
「募集要項には書いてないな。だが、ドワーフらしい地に、足のついた感じを踏まえて、決めポーズを考えた方が無難だと思うぞ」
 メイシアの問いに、エルンストは、首を横に振る。無理に、プロっぽいものを目指すよりは、自分らしいものをやった方がいいだろうと言う考え方らしい。
「はいはーい。なんか決めポーズ案がある人は、実演してみてー」
「と、言われましても、私は社交ダンスしか知りませんし‥‥。スカートの裾をつまんで、こう一礼するくらいしか‥‥」
 ミカエルが片手を上げて、意見を集めると、マカールが苦笑しながら、社交ダンス形式の礼を実演して見せた。
「やってみますか? 一応、極めれば深いですよ。止めの角度とか、足の位置とかね」
「はーい☆」
 彼の問いかけに、さっそく、今見たばかりの礼を真似てみるドワーフ娘さん。
「‥‥そりゃ、ダンスじゃねぇ。いちから指導しなおしだなー」
 が、やはり付け焼刃では、そう簡単には上手く行くもんでもない。

 ともあれ数日後、何とか見れるものに仕上げた一行は、ケンブリッジ郊外にある舞踊試験会場へと訪れていた。
「いいですか。教えた事をよーく思い出して、落ち着いて踊って下さいね」
「はははは、はいっ」
 メイシアが、肩に軽く手を乗せながら、そう言っている。だが、ドワーフ娘さんは、緊張しているのか、震えが止まっていない。身体も固くなっているようだ。
「そんなに硬くなっていては、実力がだせませんよ。音楽にあわせて、軽やかに舞う。ステップを確認しましょう。いち、に、さん」
 まぁ、大勝負の前である。致し方ないと言ったところだろう。メイシアは、そう言いながら、舞台に音が響かないように、ラストレッスンを行う。
「いち、に、さん。いち、に、さん‥‥」
「そうそう、その調子。練習どおりにやれば良いんです」
 音楽にあわせて、ステップをふむだけ。それだけ。何も、飾る必要も、取り繕う必要もない。ドワーフらしいダンスを披露すればいいだけと、彼女は最後に告げた。
「すっかり舞い上がっちゃってるわね」
「ふ。そんな時はオレに任せておけ!」
 ミカエルがどうしようかなーと考えあぐねている表情で、そう言った直後、ローランドがそう言いながら、姿を見せる。
「って、何よ。その格好は‥‥」
「へっへっへ。アイツに色々と教え込んでいる家に、俺の中に眠っていたダンサーの血が目覚めたんだよ。んで、こうしてエントリーしてきたってわけだ」
 笑いを堪えきれない様子のミカエルの前で、ローランドはそう言ってのける。コートを外して見せると、そこにあったのは、マジカルシードの女子制服に、六尺褌と、なんとも奇妙ないでたちだ。
「次は、エントリーナンバー24番。テーマは、武闘派だそうです。でわ、どうぞ!」
「よし、行ってくるぜ!」
 司会のコールに、彼は持っていたフライングブルームへとまたがる。紫のリボンがついている所を見ると、パープル女史から、無断で拝借して来たのだろう。バレたら巻き起こされるであろう悲劇に、メイシアとミカエルは、人知れず合掌。
「汚い大人は、この魔法少女ろーら・ゆーりぃが許さない! ぶっ」
 そのローランド改めろーらちゃんは、決め台詞もそこそこに、派手に墜落して、大爆笑を取っている。踊りそのものは、ラテンのリズムで、槍をぶん回していると言うスタイル。時々、男の子ボイスで、可愛らしい掛け声がえいっと飛んだ。
「夜空に煌くお星さま、私の願いをかなえてっ、ペガサス☆」
 最後の決めポーズは、右手に槍を点に向け、左手は愛らしく地に向け、そう言いながら、観客への投げキッスである。なお、観客の反応は、ツボにハマって受けてる奴と、思いっきり引いちゃった奴が半々。まぁ、本職のお笑い芸人ではないので、この程度で上出来と言う奴だろう。
「大丈夫さ。俺に比べりゃまともに見えら」
 舞台を降りたろーらは、ローランドの顔に戻り、ドワーフ娘にそう言った。道化になる事で、彼女の引き立て役に徹したらしい。
「さぁ嬢ちゃん、素敵な若奥様になりたいんなら、ここまで上がってきな」
「はい!」
 その手を取り、ドワーフの魔法少女は、愛する殿方の為、舞台へと踊り出るのだった。

 エプロンドレスな制服をきたかぼちゃが、リボンの枝をくるくると回している。
「必死ですね」
「そりゃあ、正念場だしね」
 見守るエレナに、ミカエルがそう言った。ここで、高得点を叩きださなければ、二度と想い人には会えなくなってしまうかも知れない。必死なのも頷ける。
 そんな中、少女は教えられた通り、螺旋を描くように踊っている。途中で姿を変えるようにカブを脱ぎ捨て、ひげがふわりと舞った。そして、頭上に掲げた枝をくるくると回しながら、一回転。再び顔が見えた所で、枝を水平に構えて止まる。
「さて、審査員の得点はー‥‥」
 恋の魔法をかけちゃうぞ☆ と言った様子のダンスを見て、司会がそう煽りたてた。まぁ、合計得点は気にしない方向でと言うのが、お約束だ。その結果に、司会が感想を聞こうと、声をかける。
「チャンスよ。ほら、勇気を出して」
「告白しないと、一生後悔しますよ。坊ちゃまだって、来てるんですから」
 こそこそと、舞台袖から、そう勧めるミカエルとメイシア。娘さんは息をのみ、思い切って、何故この試験に臨んだかを、正直に告白した。その‥‥想いと共に。
「わ、わかった。真剣なようだし‥‥」
 件の商人は、渋い表情ながらも、そこまで言われては、認めざるを得ないようだ。そんな、微笑ましい光景に、パープルは観客席で満足げにこう言った。
「何とか丸く収まったじゃない」
「そりゃ、そうだがな‥‥」
 エルンスト、腑に落ちない。美味い事、ノセられた様な気がするといった表情だ。
「あたしもいつか‥‥、ああなれるといいな‥‥」
 そんな中、ミカエルはどこか寂しそうな表情で、そう呟く。