【伊賀<百地砦>】 くじけるな!(弐)

■シリーズシナリオ


担当:紺一詠

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 48 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月13日〜08月19日

リプレイ公開日:2006年08月21日

●オープニング

●前回までのチョーあらすじ
(前略)いろいろ(中略)あった(後略)。

●二度目ですっ。
 暑中お見舞い申し上げます。
 ――あ、残暑見舞いでしたっけ。もう。
 こんにちはっ。毎日お暑いなか、皆さん、御苦労様です。暑いときに冷たい飲み物もいいですが、地下水のひたひた沁みる、冷たい地下での探検もたいへんよろしいかと存じます。そういうわけでっ、さてはて今日も、上野左が伊賀までの道案内をつとめさせていただきます。
 今日もがんばって(ミラさん命名)に参りましょう。でも、今回は前回ほど甘くはいかないのです。
 どうやら埴輪がいるみたいです、かわいいですね。
 ――‥‥だから、埴輪です。左手あげてー、右手さげてー、おくちひらいてー、はい素焼き。の、赤褐色の埴輪。
 古墳じゃないはずなんですけどね、あそこは。でも、どうしてかいるんですよ。結構な数。
 あれがカタカタと邪魔したり、しなかったり。攻撃はなにか条件があるみたいですけど、よく分からないですね。だから皆様なんとか乗り越えながら、がんばってください♪

 じゃ、左から応援のベーゼを♪
 で、ベーゼってどういう意味なんでしょう?

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・質問その1:どこから入る?
甲、乙、丙、丁

・質問その2:なにが好き?
花、鳥、風、月、左

●今回の参加者

 ea6433 榊 清芳(31歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 eb1565 伊庭 馨(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1838 結城 冴(33歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2018 一条院 壬紗姫(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb5289 矢作坊 愚浄(34歳・♂・僧兵・河童・ジャパン)
 eb5379 鷹峰 瀞藍(37歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb5431 梔子 陽炎(37歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●御挨拶なのでし(←誰だおまえ)
 前回とは一名の入れ替えになって、今日は来れなかった埋め合わせのようなかたちになった結城冴、上野左に挨拶をしたあと(「はーい、よろしくおねがいしまーす」どうやらこちらへ付いてくるらしい)、道行きの道連れ、瀞藍にも声をかける。と、瀞藍、たわむれに翡翠、子狐さん♪とじゃれていた手を、おぅ、と、会釈代わりにひらめいた。
「結城さん、今日はよろしくな」
「女性でなくて申し訳ない。せめて巫女服でも着ておきましょうか?」
 すると瀞藍は、いましがたニヤリとゆがめた容貌を、案外あどけなく、きょとんとさせる。
「俺、男もそんなに嫌いじゃないけど? 結城さん、美人さんだし」
 ――‥‥。やがて瀞藍、冴の肩が小刻みにふるえているのを知る。
「どうしたの。心配なら手ぇつないでやろうか?」
「いえ、ひとりでも平気ですから」
 冴、巫女服をなんとなくそそくさと背袋にしまいこんで、着るとなにげにやばい気がするよっ。とまぁ、こんな調子でいつものヤツ、まだたったの二回目だけどね、まいります。
「個人的には、薬研だけでもわりとホクホクなんだけど‥‥」
 ステラ、でも奥になにがあるか興味もあるしね、と、ひとりごちる。えぇ今日こそは、せめて勝てはしないまでも負けはしないように、がんばるぞ、と、ふわふわぐろーぶでぽにぽにになったになった右手をこぶしにかためて、えいえいおぅ。うっそりと決志にたぎっていたから、ステラは早々気付けなかったのだ。
「ス・テ・ラさん、ヨ・ロ・シ・ク☆」
 いつのまにやら。陽炎が盗み足でステラの背面に忍び寄り、ステラの耳朶にふぅっと息をふきかけていたことを。
「わぁっ」
 淑女らしくないどよめきをはりあげながら、のめりかけるステラ、あぁなんとかだいじょうぶ。転ばずにすんだようだ。転んでないから負けてないよ!
「‥‥我ながら、基準を落としすぎだと思うわ」
 そうじゃないのよ、そう勝負というのは、たとえば「どれだけ、ぼうふらを見付けるか!」――それもぜったいに違う。もしかしたらステラ、ひとり遊びの上手さは陽炎を上回ったかもしれない。
「皆さん、仲がよろしいですね」
「そうなのか?」
 馨のほうを、清芳、不思議そうに眺めやって、彼女にはこの事態、あまりそうは見えないのだけれども。
 行く手に、埴輪、が待ち受けているそうだけれども、他にも何事か恐るべきたいそうなものがあるかもしれないけれども。
「仲良くやっていければ、困難な障害などありませんよ。いえ、仲良いといっても浮気ではありませんが」
「‥‥そうか。浮気ってなんだ、伊庭さん」
 何故。
 何故、そこだけ抜き出す。しかも、この文脈で。それをやっちゃうのが清芳とあらためるいとまもなく、馨、彼女のうしろに天然のフレイムエリベイションをみとめた。
「あのですね。清芳さん、浮気というのは」
「浮気ってなんだ、伊庭さん」
「環状の浮き具です」
「それは浮き輪。浮気ってなんだ、伊庭さんー」

●甲1(壬紗姫、愚浄)
 小咄の煮え加減もさっくりほどよいこの頃、唯一掛け合い漫才をのがれた、壬紗姫と矢作坊愚浄。愚浄は似合いの禅杖に代わって中棍棒をみちみち突いて、それより少し前方を先日は調子のよかった壬紗姫、棒、10ふぃーと伝説(伝説だったの?)にしたがって、これまた適度につっつきまわして。
「埴輪に出会うかもしれないそうですね」
「いかにも」
 ――埴輪。
 なんとなく知っているような気がする。馨と清芳によれば、なんだかけっこう愛らしい、ようで。焦点は「和む、かわいい、いじめる?」などのようだ。どれをとっても、なんと耳触りのいい言葉たちだろう。壬紗姫、はふぅ、と、たっぷりと夢見心地のつまった少女の吐息、十九歳。
「矢作坊殿は見学なさったことはございますか?」
「否。古(いにしえ)の墓守と聞知するが‥‥」
 とすると、ここは奥津城所か――‥‥愚浄、それをしかと刻み付けた目で見渡せば、土の下の薄暗さ、古寂びた霊気が甲羅の裏っ側にまでひんやりと凍みるような気がした。そういえば、いちばん初めにここには死者が出たと聞いたのだった。
 まぁ、数寄者が外界へ持ち出すこともよくあるはなしだが、それも、墓場の墨守という付加価値があってこそだろう。守る使命――が、あるからには、守られる対象もあるはずなのだ。
「以前、亡き父様の声を聞いたような気もしますが‥‥父がここに葬られているわけもありませんし」
 壬紗姫、ぽつん、と。それはきっと、天だ。こっからじゃよく見えないけれど、お空の向こうだ。
 そして、いた。
(一時中断)

●乙(ステラ、陽炎)
 陽炎、曰く、すべての罠にはきっかけがある。その条件になるのは、たいがいは分かりやすく目方だ、衝撃などもその亜種だろう。気色だけで発動する罠がないでもなかろうが、それは魔法の装置にしても相当だ。
「‥‥」
 はぁ、そうねぇ、と、ステラは納得するばっかりだ――ぼうふらは諦めた。べつに探しに来たわけじゃない。ステラだってむろん周囲を警戒してないわけではないけれども、陽炎の気配りは始終その上や先をゆくので、こう、出番がない。
「だから、頭上よりも足元の方が注意が要るのねえ。上に仕掛けても、触れられないしぃ。もちろん連結して動き出すかもしれないけれども、わざわざこちらから動かしてやることもないでしょ」
「そうねぇ」
 と、ステラが相槌を打つあいまにも、陽炎は口ばっかりじゃなく案外楽しそうにてきぱきと体を動かす。ステラはなんとなく手持ち無沙汰だ、だって、陽炎を放ってがしがし前進するわけにもいかないじゃないか。せめて確認ぐらいしましょ、と、視線をうつろわせた、そのとき。
「あ、あれあれ!」
「どしたのん?」
「‥‥あれが埴輪よね?」
「あら、ほんとうに埴輪」
 はーにーわー(効果音)。
 ずらり、と、ならんだ土製品。四つほど? 埴輪には馬や家形をかたどったものもあると聞いたが、そこにあるのはどうやら人物ばかりのようだ。顔面らしきところに三つ開いた穴から、じぃっと、目玉なんかないはずだのに「じぃっ」という擬音といっしょに、どうやらこちらを観察しているらしい。
「か、かわいい‥‥」
 埴輪は欧州でいうゴーレムにあたるとの下知識はあった。ステラ、きちんとウィザードですから。が、目と鼻のあいだにする埴輪は――ゴーレムという単語の主観ほど威圧的ではない。とゆうか、反対。
「触ってもだいじょうぶかしら」
 ステラ、そろりと手を伸ばす。そうっと、一歩、二歩――と、はぐり。
「やだぁ。かみつかれたぁ」
「落ち着いて。咬んでないわよん、埴輪なんだから」
「そ、そうよね」
 さほど、友好的でもないようだ。残念なことに。積極的に攻めてくるわけでもないけど、ここから先は通さないぞっぽい空気をありありとただよわせている。ステラ、詠唱にとりかかりながら、ふと思う。もし、もし、あれの動きを止めたら。
「一体ぐらい抱き上げて、お持ち帰りしてもかまわないかしら」
「あれ、重いから」
 ちょっと億劫ねぇ、と、陽炎は背嚢から鎚をとりだす。岩でできている埴輪は、刃や矢などが効きづらいそうだから、わざわざ調達してきた代物。
「ごめんなさい、ちょっと邪魔するわよ。大和撫子のお通りよ♪」

●丙(清芳、馨)
「伊庭さん、浮気ってなんだ」
「卵焼きの芯に鰻の蒲焼をつかったものですね」
「それは、卯巻。江戸のほうでは甘い味付けになるらしいけど、焼き菓子とおなじというわけにはいかないだろうな‥‥。い、いや。伊庭さん、浮気ってなんだ」
 ずっとこの調子らしい。飽かず、清芳はただひとつの文法をくりかえしている。辛抱強くはぐらかしつづける馨も馨だ。
「清芳さん、そろそろおなかがすいたのでしょう?」
「‥‥む」
「我慢しなくていいのですよ。そのための、おやつなのですから」
「伊庭さん、うわ」
「ほぅら、清芳さん、おやつはこちらですよ。私を追いかけてらっしゃい、うふふー」
「あははー、マテマテー‥‥――って伊庭さん! のってしまったじゃないか! そんなことしている場合じゃないだろう」
 では、今まではいったいどんな場合だったのだろう、てなツッコミはさておき。まぁ、いったん、きちんと腰を据えよう。前回、なんだかとんでもない企み、馨が説くことに「妄想に反応する罠」だそうで、はっと清芳、今更とゆうか、感付く。こうして馨の差し出してくるものこそ、執着の種になるではないか、と。
「そ、そういうときこそ、読経だ。あーめん、そーめん、ひやそーめん、だ」
 宗教からなにから、まちがってます。が、今日の道程はさほどつらくない。意地悪な罠のようなものも見当たらない。現に、こうしてわりと今まで平気の平左で来れたではないか。
「そうでもないみたいですよ」
 で、こちらにも。
 のほほん、としてはいるが、こうしてみると数をまとめてみるとどことなく貫禄もあるような、馨、さすがは大地の恩恵の具現と妙な感心をした。死者の弔い、それとも参列だったか? 古代の事情はさすがに、暗い。
「ここは、話し合いでまいりましょう」
 と、馨はがさごそと荷をすくって、
 ――まるごとはにわ。装備すると、男前度が三割増します(※嘘)。
「壊したくはありません。なにとぞ、私たちに道をゆずってくださいませんか」
 じぃっ、と目で訴える。
 負けじ、と、じぃっと見返す埴輪。がらんどうの覗き穴のはずだのに、それともそれだから、どこか無垢なものに見入られていると思うと、心根がしゃんとする。これは、やっぱ、うわ(終了)。
 そして、それを清芳は見守って、馨と気持ちは同じ、できれば傷付けたくない。バーストアタックでばきばき音をたてて打ち壊してゆくのが有効だとは小耳に挟んだが、彼等は製作の意図どおりに動いてるのだから、とゆうかそんなしんどいの、馨も清芳もできないし。傷めるにしたって、あとで戻してあげられたらいいな――そんなことばかり考えていたせいか、清芳、埴輪にひょいと先手をとられる。
 もらったばかりの、おやつが、取られちゃった。
「伊庭さん、おやつが。‥‥おやつが」
「‥‥分かりました。とりかえしましょう」

●丁(冴、瀞藍)
 埴輪はそこここで平等だった。よいことなのか、わるいことなのか。
 ――学者らしく、冴、思案にくれながら進む。例をあげれば、猫と埴輪はどちらがかわいいのだろうか、とか、埴輪はなんと鳴くのだろうか。それ以前に、どうやって鳴くか、が問題だと。
「にゃーとか、はにーとか。‥‥はにーでしょうか」
 それとも――冴、ひとしきり考察する。冴の想像する埴輪によく似て、他に鳴くものといえば。
「コーホー(参考:暗黒面に落ちたどこぞの神聖騎士)とか」
 いや、かなりやばい。それ。
 冴はここが初めてだから、と、瀞藍が道の先に立って、左も、いちおう使命感でもあるのやら、その傍に。瀞藍、にっ、と青い瞳をたわませる。
「やぁ、両手に花でうれしいぜ」
「やぁん、花だなんて☆」
 左の好みはご多分に漏れずもう少しジャイアント寄りの肉体派なのだが、賛賞はなによりの美容だというどこぞの至言もあったような、だから、左とて悪い気はしない。頬染めてちょいと恥じらうそぶり、まぁそうしてるとかわいいような。
 ――ところで、花って。
 ここにいる、瀞藍以外の人員といえば、左と冴のみ、それから瀞藍、見掛けはどうあれ(そういう断り書きが必要なこと自体、すでにおかしいともいえる)、生まれは殿方ばっかり。冴、その意味をじっくり検討することはせず、道のようにまっすぐな背をまた、すこしだけ、ふるわせた。
 あぁ、話を元に戻す。埴輪だ、やっぱ、こっちにも。
「‥‥癒し系ですね」
 とっくりと観察のあとに、そう結論づけたあと、冴はテレパシーを試みたが、通じなかったのは埴輪にその気がなかったからか、埴輪の知性が低すぎて高度な返答に応じられなかったかは、定かでない。――瀞藍には別な感慨があったようだが。
「つか、これって、さぼて」
 ぶったぎり。ほれ、現代でいう仙人掌だー、まだ発見されてないし? といってるまに、動いたぞ、埴輪、冴がとりかこまれた! 瀞藍は、ぴん、と綱を渡す。
「おい、掴まれ!」
「私のことなど、かまわずお先に」
「置いてけるかよ」
「いいえ。というより、ぜひとも置いていってください、私のことなど、おふたりでどうぞ、どうぞ」
 冒頭の危機感、いまだつづいていたようだ。
「私はここで埴輪と添い遂げますから」
 危機感じゃないものも、つづいていた。‥‥いいのか? 初夜の相手が埴輪だぞ。いいのか?
「そうだぞ、地上ではおまえを待つ花嫁さんが、にゃーと、待ってるぞ?」
「はっ」
 すいません、埴輪さん。私にはあなたひとり(いっぱいいるけど)に決めるなど、できそうにもありません。
 と、氷柩にひとつずつかたづける。瀞藍はさぼて、じゃない、埴輪の上を歩く。って、戦え。愛は、強い。

 ちなみに、埴輪の鳴き声?はちょっとコーホー系だった。

●甲2(もどってきたよ)
 遭遇。
「はにわですね」
「埴輪であるな」
 それは、まるで、鏡をみているようでもある。いや、右と左じゃ大違いの像なのだが。愚浄や壬紗姫が一挙一動するたび、向こうも、手足がさほど自由でないからか、全身ごと、ごとん、と身動ぎする。
「‥‥不器用なかんじが、保護欲をそそりますね」
 とは、壬紗姫の感想。やけにそっけない口振りだけれども、握った棒、あぁんこれでどこを・いつ・つつこうか、それともそんな意地悪はせずに正攻法でいっちゃおうか、いや、ここはもっと思い切って!? と、天の父様を草葉の陰に召喚しかねないこと、考えていたわけだが。
 では、愚浄はといえば、
「(‥‥)」
「矢作坊殿?!」
 詳しくは、記すまい。ってか、できません。はにゃーほにゃーふにゃー、だったとしか。埴輪とおなじ恰好と表情をたしかめた、としか。が、埴輪にはなんらかの変成が――いや、それは愚浄のほうだったか。
「‥‥ふむ、往年よりの責務を果たさんと、永らくこの地にて佇立に尽くしておった、と」
「どうして分かるんですか?」
 愛(嘘)。
「やはり最奥には何かあるようだな。が、彼等ももはやそれがなんであるか忘却している様子」
「どうして分かるんですか?」
 愛(苦しくなってきた←とっくに)。
「我々を通してくだされば、経文を奉じることも叶うであろう。」
 嘘ではない根拠に、と、愚浄は合掌。と、埴輪ども、するりと道を開け放したのである。

●今回の結果
>踏破率
榊清芳(ea6433) 20+34=54%
伊庭馨(eb1565) 20+28=48%
結城冴(eb1838) (20)+36=56%
一条院壬紗姫(eb2018) 36+31=67%
ステラ・デュナミス(eb2099) 27+32=59%
矢作坊愚浄(eb5289) 25+37=62%
鷹峰瀞藍(eb5379) 23+33=56%
梔子陽炎(eb5431) 39+25=64%