●リプレイ本文
●ということで
──シーハリオン麓の地下遺跡・その外
ふうふうふうふう‥‥
額に流れる汗を拭いつつ、ミハイル・ジョーンズ教授が周囲を見渡す。
目の前には、巨大なる嵐の壁。
そして足元には、地下遺跡へと向かうための3m四方の台座。
その手前で、シン・ウィンドフェザー(ea1819)とオルステッド・ブライオン(ea2449)の二人が、がっちりとミハイルを両側からガード。
台座の上に全員が集ると、シルバー・ストーム(ea3651)が台座にプレートを装着する。
──キィィィィィィィィィン
激しく高鳴る音。
そして瞬時に全員が地下遺跡の祭壇へと『転移』していった。
──地下遺跡祭壇の間
前回の調査では、ここの壁の奥に何かが存在しているというのは確認。
但し、隠し扉は確認できず、何かギミックがあるのではという考えで、一行はやって来ていた。
「それじゃあ、俺はこの辺りの白骨死体でも調べるとするか‥‥」
と呟くと、無天焔威(ea0073)は大量に転がっている白骨を一つ一つ調べはじめる。
何か傷でもあれば、そこから死因が断定できるというのだろう。
「さて、見た所、白骨には傷らしいものは存在せず。倒れている位置からも、特に方向性というのは感じられず‥‥さてさて、どうしたものか‥‥」
と告げつつ、手にしたナーガの大腿骨でコンコンと肩を叩く無天。
と、視線が『埋まっている回廊』に差し掛かると、無天はある事に気が付いた。
埋まっている土砂の中にも死体が確認できるということ。
そしてそれらの白骨が、あちこち『不自然に』傷がついているということまで見えていた。
「むう‥‥ナーガでは対処できない外敵でも入り込んだのか‥‥まだ、この遺跡に居たら厄介だよねー」
と呟きつつ、回廊の所まで向かうと、落ちている白骨を幾つか拾い上げる。
「牙の跡がいくつも食い込んでいる‥‥やっぱりねぇ‥‥」
と、その辺りの調査を念入りに開始した。
──一方その頃
「輝いているのは両側の月の紋章と、彫像の首ですか‥‥」
手にした『リヴィールマジック』のスクロールを丸めつつ、アシュレー・ウォルサム(ea0244)は静かに近くに居る仲間にそう告げた。
「つまり、その部分に魔法的細工が施されているということか?」
と問い掛けるシンに、アシュレーは静かに肯く。
「ああ。そのようなんだが。シルバー、判るか?」
と、アシュレーはシルバーに話を振る。
「ちょっと待ってください‥‥」
と、突然話を振られたシルバーが返答すると、そのまままずは右側の月の紋章に手を掛ける。
「?」
見た感じでは、とくになにも怪しい突起などは存在していない。
だが、その中央に、『目に見えない取っ手』が就いているのを、シルバーは確認できた。
かなり小さいものであり、そうであると判らなければ、見落とし、そして気付くことは無かったであろう。
「小さい取っ手。これを引くと何かが開くギミックだけれど。ちょっと待っていてくださいね‥‥」
と、周辺を細かく調査するシルバー。
「??」
その取っ手の近くで、さらに『指で触れなければ判らない刻まれた文字列』を確認。
『陽が指し示す二つの影‥‥貴方はだれ?』
と記されている。
「さて、これは謎解きですか‥‥」
しばし思考するシルバー。
「ファングさん、申し訳ありませんが、ここに来て頂けますか?」
と近くで調査しているファング・ダイモス(ea7482)に声をかけるシルバー。
「ああ、それで、ここでどうするんだ?」
「こちらから指示を出すまではそこで待機していてく下さい」
と告げて、シルバーは隣の紋章に向かう。
やはり目に見えない取っ手、そして『触れなければ判らない文字』を確認。
『陽が指し示す二つの影‥‥貴方はだれ?』
と、やはり先程と同じ文字が刻まれている。
「つまり‥‥ファングさん、そこの取っ手を思いっきり引いてください。皆さんはファングさんから離れて、万が一の為に戦闘準備を。そちらの準備が出来次第おねがいします」
そのシルバーの掛け声と同時に、全員が一斉に戦闘準備にはいる。
そしてそののち、ファングが全員を確認すると、一気に取っ手を引く!!
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
中央の彫像の首が回転し、ゆっくりと左を向く。そしてそれと同じくして、左の壁がスライドし、隠し部屋へと繋がる回廊の姿を現わした。
「さて、何がでることやら‥‥」
と呟きつつ、回廊に向かっていくミハイル教授。
──パチィィィィィィン
と、シンが指をならすと、アシュレーとオルステッドの二人がミハイルの両腕を掴む。
「ということだ。じゃあ内部調査を先に頼む」
というシンの言葉で、イコン・シュターライゼン(ea7891)と無天の二人がまず回廊を見渡す。
「奥にはアンデッドなどの不死者の気配は感じませんので、ご安心してください」
と告げるのはアリアン・アセト(ea4919)。
前回に引き続き、今回もこの奥の存在にたいして『ディテクトアンデット』を発動させる。
だが、このアトレランティスには『アンデッド』という存在は皆無である。
そのため、それらの襲撃はないということを改めて一行に告げると、無天達は一通りの荷物を纏め始める。
そしてシルバーがトラップの有無を最前列で確認しつつ、3名は回廊の奥へと進んでいった。
──そして回廊の奥
巨大な空間。
天井はなく、その遥か頭上では、ぽっかりと空洞が開いている。
空洞の直径は200m超。現在いる場所が一体どこなのか、一行には全くといって良いほど見当がつかなくなっていた。
「位置的に考えると、あの上はおそらく『嵐の壁』の内部なんじゃないかな♪〜」
と無天が告げると、イコンもまた上空を見上げる。
「そうかも知れませんね。ただ、遺跡の位置が正確にわからないので、断定は出来かねますね」
と告げるイコン。
「この場所では、おそらく先日までは何か巨大なものが住んでいたのでしょう‥‥」
と告げると、シルバーが、床に付いている巨大な足跡に気が付いた。
「ということは、この前の巨大な何かのいた場所ということか‥‥」
と呟く無天。
──スッ
と、一瞬、一行が何かの影に横切られる。
それは遥か上空を飛んで居るのであろう、ここの洞窟の主。
──ゴクッ‥‥
その場の全員が息を呑み込む。
だが、決して頭上を向くことは鳴く、そのまま静かに奥に進む。
やがて洞窟奥の回廊にたどり着くと、一行はそのまま全力でダッシュ!!
奥に在った幾つかの部屋を調べると、小さな小部屋の台座に、目的の『月光鎧』が安置されていた。
「これか‥‥さて」
と、無天が静かに手を伸ばす。
ちなみにこの時点で、無天は『知識の兜』と『道標の剣』を装着済み。
──キィィィィィィン
静かに鳴動する『月光鎧』。
そして、瞬時に姿が消えると、月光鎧は無天の体に装着されていた。
「ミッションコンプリートですね。では帰還しましょう‥‥」
と告げるイコン。
ということで、一行は皆の待っている神殿へと戻っていった。
●その頃の神殿
──神殿
「ええ。これは私の推測でした‥‥ここにいる白骨、すなわちナーガ達は通常の手段で回廊から神殿に入った。その後回廊が崩れ、彼らは神殿に閉じ込められたのではないでしょうか?」
そう告げるアリアンに、ミハイルはしばし頭を捻る。
「しかしのう‥‥どうも引っ掛かるのぢゃよ」
「ええ。教授の引っ掛かっている部分はその魔法の仕掛けですわね。けれど、前回使用した魔法リフトは、起動アイテムが神殿の外にあったことから、内部からは使用できず、彼らは餓死したのではないでしょうか?」
との言葉に、ミハイルは取り敢えず納得。
「教授‥‥このエクリプスドラゴンなんだが‥‥」
そう告げるのはファング。
「うむ、どうしたのぢゃ?」
「ジ・アースでは一体どういう存在なんだ? このアトランティスで、ジ・アースと同じ竜を信仰している者たちがいる。それも、精霊武具の封じられている洞窟で‥‥何かの共通点はないのか?」
「それなんですけれど、ミハイル教授、私達が探している精霊武具ですけれど、ジ・アースとここの精霊武具は同一のものですか? 今探しているのは、向こうから持ち込んだ武具ではなく、こちらに従来から存在していた武具なのでは?」
とアリアンも問い返す。
「うむむ。ドラゴンについてはワシはあまり詳しくはない。が、エクリプスドラゴンは『深遠なる知識』を有するドラゴン。全ての過去を知る存在。ゆえに、ここにそれらにまつわる何かがあってもおかしくはないのじゃが‥‥と、そうそしう、アリアンの問いに付いても返答しておこう。それはありえん。実際、ワシの被っていた『知識の額冠』もまた、ワシのサインが入っていたのぢゃからのう‥‥」
なんて罰当たりな!!
「それはそれで、何か間違っていませんか?」
というアリアンの突っ込みは置いておくとして。
●そして右
──神殿
「‥‥そうでしたか。それは大変でしたね‥‥」
戻ってきた一行の話を静かに聞くと、アリアンはとりあえず全員にリカバーを施す。
「おお、それはまさしく『月光鎧』ぢゃ」
ミハイルが震える手で鎧に触れる。
──ガキィィィィィン
と、鎧、兜、剣が瞬時に分解し、一つの彫像の姿に変化する。
「こ、これは趣味の世界だなじーさん」
「ミハイル教授、これはどういうことでしょうか?」
無天の言葉にイコンが繋げる。
「この世界での、精霊武具の本来の姿なのかも知れないのう‥‥さて、戻るか? 先を調べるか?」
と告げるミハイルだが、網一つの扉の先を調べる気満々の笑みを浮かべている。
「では、次は俺達の番だな」
と告げると、オルステッド、シン、アシュレー、ファングが突入の準備を開始。
「さて、それでは先程と同じく。今度はアシュレーが取っ手を引いてください。手順は先程とは逆に‥‥」
というシルバーの言葉に、アシュレーは静かに肯くと取っ手を引いた。
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
中央の彫像の首が回転し、ゆっくりと右を向く。そしてそれと同じくして、右の壁がスライドし、隠し部屋へと繋がる、下りの回廊の姿を現わした。
「さて、それじゃあ行くとするか‥‥」
「そうぢゃな。では先頭はこのわ‥‥」
と言いかけたミハイルを、オルステッドが横に立ってがっちりとガード。
「ということで、教授は俺の横で。では進むとしよう‥‥」
ということで、ゆっくりと回廊を下っていく5名。
先頭はファングとトラップ担当アシュレー、続いて教授とオルステッド、最後尾にシンというシフトで突入。
しばらくの間、下りまくっている回廊。
やがて、その正面に波打つ何かを確認。
「水か‥‥この先は水没しているようだな‥‥」
とファングが確認。
「あと数10m先ですね。そこに扉がありますが‥‥」
と告げるアシュレー。
「なら、潜って確認してみるしかないか‥‥」
と告げると、ファングが静かに荷物を降ろし、武器と防具のみで水中に潜っていく。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
と、突然慌ててファングが水中から昇ってくる。
良く見ると、鎧や衣服のあちこちが溶解していた。
「内部に見えない何かがいる‥‥。迂闊に入っていくと襲撃を受ける事になるが‥‥どうする?」
「時間も押している。ここは断念して、王都に戻るとしよう‥‥」
というミハイルの言葉で、一行は無事に神殿から外に移動。
かくして、三つ目の精霊武具を手に入れる事が出来た。
そして残りの精霊武具三つと、鍵となるペンダントはいずこに。
・『守りの楯』
・『陽炎の衣』
・『清水の靴』
・『一対のペンダント』