【播磨・姫路】 呪詛

■シリーズシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:10 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月04日〜07月15日

リプレイ公開日:2008年07月12日

●オープニング

 京の西に存在する播磨の国。
 その南・播磨灘と山陽道を有して存在するのが姫路藩。
 数年前の藩主交代劇による混乱からようやく立ち直り、平穏な治世を送っている‥‥とも言えない事態。
 天台宗・圓教寺の炎上。
 その火事の直前に、藩主のいる白鷺城から五つの尾を持つ光が寺へと飛び、それから火の手があがったという。
 証拠とまではいかないが、どうやらその話に間違いはないらしく。
 加えて、寺の内部では火事の折、鬼とか獣が暴れていたという話もある。これも確証無いが、あながち嘘と斬り捨てるまでには行かないときた。
 
 折りしも、白鷺城からは長壁姫の姿が消えていた。
 長壁姫は天守閣に住む妖怪で、姫路藩主のみがその存在を知る。
 一般に伏せられているのは、姫が人との深い関わりを嫌っての事だが、当主が妖怪と手を組んでいるというのは外聞が悪いという事もある。
 よく美姫の姿で現れるが、鬼や老婆の姿でも現れる。果たして、その正体は不明。
 姫路一帯の妖怪を取り仕切っているという点から、それなりの実力を持っているらしい。以前に月魔法を行使する姿が目撃されている。



 長壁姫と火事の関係は今一つ掴めないが、無関係とは言い難い。
 しかし、その姫がいないのでは話にならない。
 とにかく今は寺との諍いを回避する方が先。圓教寺内部でも、京の乱への関与から城を疑う者が少なくない。
 そう考えた姫路藩主・池田輝政は圓教寺に見舞いを送り、敵意が無い事を示す。
 そして、ほぼその直後。
 藩主とその奥方が突然倒れた。

「無様だな」
 夜半、寝室で伏せる輝政の枕元から声が響いた。
 目を開けると、そこには長壁姫の姿が。
「長壁! 貴様は一体何を!!」
「声が大きい。誰ぞに聞かれたらどうする」
 跳ね起きて詰め寄ろうとしたが、果たせず、それでも輝政は姫を掴もうと手を伸ばす。
 その姿を見下したまま、姫は低い声で注意を促す。
 安静の為、人を遠ざけ静かにさせているが、それでも皆無ではない。いつ容態が変わっても対処できるよう、医師や女中たちが今もこちらを窺がっている筈。
「‥‥圓教寺を襲ったのはあなたか」
「そうだ」
 声を落としたのは、長壁の意を慮ったのではなく、単に誰か来ればこの姫は逃げるだろうという打算。聞きたい事は山とある。
 しかし、しれっとした顔であっさり告げられると、やはり黙っておれずに身を起こそうとし‥‥やはり体位が崩れる。
「身が起きぬか。そうであろうよ」
「何か御存知か?」
「呪詛だ」
 やはりあっさりと告げられたが、今度は動かなかった。
 医師を呼んでも、原因が今一つつかめない。なので、あるいは、という考えはあったが、こうして面と向かって言われると身が縮む。
「一体、誰が‥‥」
「そんな事。呪詛の十八番は誰だ」
 震える唇で声を絞り出すと、彼女はさも可笑しそうに笑う。
 だが、その笑みを消すと、冷ややかな面で告げる。
「聞け。私も闇雲に暴れた訳でない。
 あの寺の坊主たちは京でのお前たちの振る舞いに仏罰を下すとして、呪詛を仕掛けようとした。あの夜、私はそれに気付き出向いたまで。呪詛を阻み、首謀者を封じたと思ったが、今こうして呪詛がかけられた以上、どうやら恨みは深く術を為したと見える」
 口惜しそうに顔を歪め、唇を噛む。どこか鬼気迫る表情なのは、心中何を思っているのか。
「寺を燃やしたのはやはり貴女か」
「やらねば、そなた達の命が危うかった‥‥が、どうやら無駄だったようだ」
 時間の差はあれど、輝政も奥方も伏せてしまった。
「表は仏の顔で説法を解いても、裏に回れば修羅の如く。坊主も堕ちたものだ‥‥が、その力は侮れぬ。私も戦いで深手を負わされた。治すには相当な時間がかかろう。お前たちの様子が気になり忠告に出ては来たが、とても動ける身ではない」
 言うや、苦しそうに胸を押さえる。
 深い息を一つ吐くと、気息を整え、藩主を見る。
「良いか。私は最早動けぬ。これより先、箍の外れた妖怪たちが姫路を跋扈する事になるだろう。私も裏で尽力はするが、恐らくは力及ばぬ。お前たちが動かねばならぬのだ。
 だが、その身では采配は辛かろう。その呪詛は圓教寺の坊主たちがかけたもの。奴らを滅ぼさねば、その呪詛は解けぬと知れ」
「そ、それは!!」
 輝政が目を見開く。その目を覗き込むと、長壁姫は鼻で笑う。
「仏を信じて死に、藩をまた混乱に導くか。民の安寧の為に悪を討つか。‥‥やる事など決まっておろう」
 言うが早いか。長壁姫の姿が消える。
 風がかすかに動いた後は、そこには何かがいた痕跡すら残っていない。
「‥‥武蔵! 武蔵はおるか!!」
「はっ、ここに!!」
 渾身の力を込めて輝政が部下を呼ぶ。近くにまで来るよう手招くと、その腕を強く掴む。
「急ぎ、冒険者を呼べ。圓教寺をもう一度、調べてもらう!!」
「ははっ」

 そして、冒険者ギルドに姫路藩からの使者が訪れる。
 依頼は今ひとたび圓教寺について調べる事。
「もう一つ、藩内の妖怪たちの動向にも気を配って欲しい。いや、治安を押さえるが我らの仕事。暴れる妖怪は勿論速やかに藩で対処いたすが」
 慌てて言い訳すると、使者は声を潜める。
「殿曰く。長壁姫の動きもどこか解せぬ所がある。かの姫は姿をまた晦ましてしまったが、果たして本当に信用に足るのか懐疑を抱いているのだ」
 ただ相手は妖怪。容易に姿を消した当たり、どこからどう覗っているか分からない。
 僧侶たちも確かに表向きは大人しいが、火災の原因を城からの攻撃として断固追究しようとする者たちもいる。
 慎重に動いて欲しいとの事だ。

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea3891 山本 建一(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3988 木賊 真崎(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 eb1630 神木 祥風(32歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb4803 シェリル・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb5009 マキリ(23歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)

●サポート参加者

ステラ・デュナミス(eb2099)/ ツバメ・クレメント(ec2526)/ ヒナ・ティアコネート(ec4296)/ 木野崎 滋(ec4348

●リプレイ本文


 今一度の播磨行き。
 寄った白鷺城内は、前回以上に不穏な空気が流れているのは城主夫妻が共に倒れているからだろう。
「此度の一件。三年前の亡霊が密かに存在する可能性はあるだろうか」
 見舞いには向かったが、倒れた藩主と長々話す訳にもいかない。
 木賊真崎(ea3988)は忠臣に代理を頼んで、話を伺う。
「真に呪詛ならば、呪を紡ぐに媒体が必要だとも聞く。なれば御二人に近しい位置にある者の関与も疑わねばなるまい‥‥。
 以前事件があったと聞き及ぶが、断罪された家老の縁者に家臣など城への出入りが可能な者、圓教寺の一件に前後し行方をくらませた者。加え、三年前の関係者やその縁者で仏門に帰依した者が居ないかどうかを密かに調べて貰えぬか」
 真崎が尋ねるも、武蔵というその武士は心配御無用と笑みを見せる。
「それならば、大事無いですな。先代に大逆のあった者を野放しにする筈も無く。死罪を免れた者はその所在を把握しております。呪詛と聞き、念の為調べさせましたが怪しい処はありませぬ。逃がした手勢も確かにいますが‥‥元々私利私欲で家老に従っていた奴ら。この期に及んで今更殿たちを呪うとはいささか考えにくい」
「なる程、動機が薄いか」
 真崎が頷く。
 呪詛をかける執念を持つ相手ならば、思い当たってもいい筈。逆恨みで何するか分からぬ輩は確かにいるが、小物がやる事にしては事態が大きいようにも思えた。


 呪詛の原因と言われる圓教寺。確かめるべく、赴いた冒険者も多い。
「先日はお邪魔をしました。住職が伏せていると聞き、改めて見舞いに来ました。こちらはどうぞそちら様にお納め下さい」
「これはかたじけない。仏の加護が皆様にあらん事を」
 丁寧に礼をして金箔仏像を差し出すマキリ(eb5009)。シェリル・オレアリス(eb4803)も写経『法華経』を渡すと、出迎えた僧侶は手を合わせ、深々と礼を取る。
「大変な御災難があったと聞いたわ。住職さまが倒れられるのも無理はない事。お話がしたいのだけど、会えるのかしら?」
「申し訳ありません。何分御高齢もあってか、かなり体に堪えているようでして寝間から離れられぬ状態なのです。私どもも祈りを捧げているのですが‥‥どうにも‥‥」
 それとなくシェリルが申し出てみるも、僧侶が項垂れる。
 表情から察するにかなり容態は悪いのか。これが演技なら大したものだと思いつつ、マキリはちらりと他の冒険者に目配せをする。
 意図を知って、気付かれぬよう他の者も頷く。が、今はその時ではない。素知らぬふりで質問を続ける。
「御住職が伏せたままですと、今後圓教寺はどのように動かれるのでしょう? お城の方ともなにやら揉めているとか聞いたのですが」
 素知らぬままに今後の活動を尋ねる神木祥風(eb1630)。僧侶の顔に憂いが広がる。
「今は何とも。争いは住職も好まぬ事ですが、もし本当に城が我が寺を攻撃してくるのであれば考えぬ訳にもいきませんし‥‥。延暦寺の二の舞は避けたいのですが‥‥」
「天台座主の慈円さまも望んで争った訳ではないと思うわ。白の僧侶として有名だったしね。‥‥そういえばこちらの延照さんはどういう方なのかしら」
 ふと首を傾げるシェリル。
「勿論、争いなど起こすはずもない方ですよ。恐れ多くも圓教寺をお開きになった性空さまの直弟子であり、名を馳せぬのも世俗との関わりを断った性空さまの心を重んじればこそです」
 やや語調が強いのは、他意はない事を伝えたいが故か。どちらにせよ、含む所ありと見られるのは寺にとってはいい事ではない。
「火事の折、怪異が現れたと聞きましたが、詳しい事は分かったのでしょうか」
「いいえ、何も。火事の混乱で若い衆が見間違えたのでしょう。‥‥さて、その後始末がまだ残っておりますのでそろそろ」
 何か自分の知識で分からないか。新たな情報を探りに祥風が聞くも、僧侶は首を振り、帰宅を促す。
 引っかかる事は多々あるものの、長居が出来る雰囲気でもなく。
 ひとまず、書写山を後にする事にした。

 ‥‥上で、祥風は妖怪の噂を探しに市井を調査。
 マキリとシェリルはゼルス・ウィンディ(ea1661)を加え、もう一度圓教寺を探りに行動を開始した。


「あれ? お一人ですか」
「何だ、お前は?」
 圓教寺を探るにしても、部外者では動きは制限される。
 なので、ここは内部に通じる協力者を作っておくべき。その白羽の矢を鬼若という若い僧侶に当てて、月詠葵(ea0020)は彼を探していた。
 幸いな事にか寺の用とかで、外に出ている機会を見つけた。
 ただ、彼の他に二人。同じく若い僧侶が出ていたと聞いていたのだが。
「ああ、あいつらなら寺が城に遠慮するのは当然だなどとぬかして来たから、まとめて川に放り込んできた。少しは頭を冷やせばいい」
「そ、そうですか」
 鼻息荒く、恥じる事無く告げる鬼若に、葵は内心身を退く。
 見るからにジャイアント種族の彼。体格もいいが、頭の中も大雑把っぽい。
 だが、全く話にならぬ相手でも無さそうだ。
 改めて、自己紹介を交わすと、葵はこれまでの経緯を語る。
「‥‥という訳で、藩主様にしても今回の大火は何者かの謀の可能性もあると考えているのです。ただ誰の仕業かは皆目見当つかず、つきましては寺内部で変わった事が無いか協力していただけないでしょうか」
 口止めされている長壁姫の事や、あまり表沙汰になると世間を不安にさせそうな藩主の体調についてなどは黙っているものの、概ね包み隠さず葵は鬼若に告げる。
 黙って聞いていた彼。話終わった後も、顰め面のまま口を硬く結んでいたが、
「よもや、そのような企みがあろうとは!! 神様仏様の目を欺き悪事を働こうと、必ずこの俺が暴いてくれよう!」
「しぃーっ! 声が大きいです!」
 大地を踏みしめ拳も硬く。鬼若が野太く吼える。
 周囲に見えるは田んぼばかり。声が遠くで木霊し葵は焦る。
「案じるな。俺とて圓教寺には恩のある身。であるが故に、呪詛などふざけた話は許さん! そんな地味な事はせず、胸を張ってどんと押し入ればよいのだ!!」
「それも困るんですけどー」
 熱意溢れる態度はありがたいのだが、同時に湧き上がる不安は何だろう。
 とにかく。あまり派手には動かずに、寺の中の変わった事があったなら教えてくれと、何度も念を押して鬼若と別れる。
「人選、間違えてないよね?」
 何だか、行きよりもやたら元気な後姿を見送りつつ、葵はぽつりと呟いてみた。


 市井の様子は一件穏やかだが。耳を澄ませば妖怪が出たと言う噂がそこかしこで聞かれた。
 藩主の病――と世間には思われているらしい――も、口にされているようで、先への不安が囁かれている。
 が、どうもその数が増えている傾向にある。
「妖怪事件。まだ恐ろしいものではないようですね。多くは狐狸の類が畑を荒らすようになったと」
 山本建一(ea3891)は聞いた噂を元に現場に赴いてるが、どこも概ね片付いている。後に残るような被害も少ない。
 もっとも、例外もある訳で。
「畜生。離せ、何するのよ!!」
 群れ飛ぶ毒蝶。健康を害する燐粉に苦しめられた集落の話を聞き、冒険者たちが赴く。
 毒は厄介だが強力ではない。蝶自体も強くなく、群れを蹴散らした後に大元である蝶化身を祥風がコアギュレイトで縛り上げた。
「久しぶりだな。来るかと思ったが、見当たらないので探した。聞きたい事がある。噂は本当とはどういう意味だ」
「見た事あると思ったら、前にあったお兄さんね。どういう意味も何も、長壁姫がいないっていうそういう噂よ」
 真崎の顔を見て、蝶化身がふんとそっぽを向く。
「あの、‥‥お会いできそうな場所とか‥‥御存知ないですか? 今の容姿とか‥‥」
「さあね。池田の殿様に聞けばぁ? 出来ればあたしは会いたくない口だしっ。便利がいいからってほいほい呼び出してパシリにして、何さまだってのよ。あたしはね、自由に飛び回りたいの!」
 水葉さくら(ea5480)が尋ねるも、蝶化身は機嫌が悪そうで。
「何というか‥‥。姫路の妖怪さんたちは‥‥ずいぶん自由勝手‥‥みたいですね。‥‥長壁姫も含めて」
 以前、悪家老が藩主を乗っ取っていた際、邪魔な長壁姫を石化封印し、故に姫が数年間不在となる出来事があった。
 結果、市井は妖怪たちが叛乱し治安は悪化したという。ただ、家老はその妖怪たちを使って何か有用な道具を作れないかと言う実験をしていたせいもあって、妖怪たちの動きはわざと放り、あるいは煽っていた節がある。
 輝政は野放しにしないだろうし、今同じ事態になっても状況は少し異なろう。
 ともあれ、妖怪たちは特に纏まりもせず個々バラバラに自由を謳歌していたらしい。
 長壁姫自体も、自分が妖怪を抑える代わりに人間はお前たちが抑えろと藩主に力を貸している。その理由が騒がしいのは嫌いだというのだから、勝手も大概である。
「じゃあ、他に妖怪を束ねる者はいないんですね?」
 祥風が念押しで尋ねると、ぴたりと蝶化身の動きが止まる。
「だと思うけど」
「何か、心当たりが‥‥あるので、ですか?」
 注目の中、首を傾げる蝶化身。
「何か妙な動きをしている奴らもいるのよね。姫がいないなら騒ぎそうな奴らも黙ったままだし。詳しくは良く知らないけどね。興味もないし」 
「で、でも。長壁姫の、指示で動いているとしたら、姫さまにも、会える可能性ありますよね‥‥。お手伝いできるかも、しれませんし」
 顔をほころばせたさくらと対照的に、極めて苦りきった表情を見せる蝶化身。 
「あんた、物好きね。あの姫さんに使われようだなんて、襤褸になるまでこき使われた挙句、足で踏まれて適当に蹴り出されるのがオチだわ」
 妖怪からの姫の評価はあまり良くないらしい。
 もう悪さをしない事を条件に、蝶化身は野に放つ。が、あの性格からしてどこまで守ってくれるかどうか。
 

 寺の調査に出ていた者も戻り、情報を交わす。
「少なくとも、私の調べた範疇で呪詛が行われていた形跡は見つけられませんでした」
「こっちも。クレアボアシンスで見る限りでは全然ね」
 ゼルスの傍ら、床に寝そべる狐のセイディと黒猫の夜流。シェリルもひょいと肩を竦める。
 カースを行うなら、大抵は生贄を用意する。彼らにそれを探させたのだが、それらしい痕跡は見当たらなかったらしい。
「何というか、妙な感じなんですよね。空飛ぶ五つ尾として長壁姫が妖狐だと考え、セイディに他の狐たちの様子も調べてもらいましたが。書写山周辺にて、それらしい輩がいたという話です。もっとも、追い返されてしまったそうですが」
 狐の頭を撫でると、何だと顔を覗き込まれる。
「まぁ、様子がおかしかったから実際どうなのか忍び込んでみたけど‥‥。住職のお加減が悪いってのは本当みたいなんだよ。ただ、確信もてないけど‥‥ちらほら聞いた話をつなげると何か藩主たちと症状が似てるって気がするんだ」
 マキリが言い難そうにしながらも、思い切って告げる。住職の部屋は人の出入りも多くて近付けなかったので、確証は持てないとは繰り返す。
 ただ、嫌な感じはするなと、その表情は物語っていた。