奪還行 〜探索〜
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■シリーズシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:5〜9lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 40 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月07日〜10月18日
リプレイ公開日:2005年10月18日
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●オープニング
陰陽師の小町宅には物の怪が一人住み着いていた。(というか、住み着かされていた)
西洋の獣人・ワーリンクスの青年で名前は無い。ただ猫と呼ばれる。
その猫が、謎の集団にさらわれておよそ一ヶ月が経過しようとしている。
さらったのは黒尽くめの組織で、俗称・黒子党と命名。以前より京都で妖怪狩りのような事を行っていたが、結局のところ人斬りや窃盗も行う少し変わった賊と大差は無い。
その後の追及により、どうやら武器を作成する為に、妖怪を集めてまわっていたようだ。姫路藩とも関わりがあるらしく、京都での活動が確認されていない事からも、現在探索の目はそちらへと向かっている。
「同じ屋根の下でご飯食べた身だし。保護者としては無事なのか心配なのよね」
「‥‥保護者ね。先方はかなり嫌がってたと記憶してるが」
嘆息ついてる小町に対し、ギルドの係員はじと目で見つめる。そもの出会いが、猫を出会い頭に仏像で殴るという衝撃的な事態だった事を思えば当然だろう。もっとも、小町はそこら辺はっきりきっぱり目を逸らしているが。
「前回の探索で分かったのは、黒子党の人数とか拠点らしき場所。彼らの目的といった所かしら。‥‥猫の居場所が分からないのは痛いけど、アイスコフィンやストーンで封じられている可能性も考えたら仕方ないかもしれないわ」
わりとあっさり告げた小町だが、反面、係員は至極渋い顔で首を傾げた。
「しかし、それは精霊魔法だろ? 日本で早々簡単に行われるものか?」
精霊魔法は神皇家の専売特許。ウィザードなどが闊歩する西洋に比べれば、極端に目にする機会は少ない。
「姫路って、黒子党が裏で動いて妖怪狩り推奨してるらしいわね。それで、どうやら捕らえた妖怪を石化してるらしいって報告があったし、魔法使いが何らかの形で関わってるんじゃないかしら。
それが志士なのか、陰陽師なのか、外国勢なのか。単なる経巻使いなのか。まぁ、珍しいってだけでいてもおかしくは無いでしょう」
小町が軽く肩をすくめると、やや遅れて似たような格好をする係員。推測だけならどうとでもできる。
「姫路郊外の山中に、どうやら拠点があるようね。藩士の警備の目もあったっていうから怪しいものだわ。前回は警備の目を気にして近付けなかったようだから、本当にそこにいるのかなど詳細は不明のままだけど、確立としては高そうではあるわね。
もっとも、てんで別の場所にいる可能性もあるから厄介ではあるんだけど」
「死んでる可能性もな」
釘をさす係員を小町が睨む。睨むが、反論せずに不機嫌なままでただ茶を啜った。
「分かってるわよ。まぁ、無理に付き合えとは言えないわね。でも、無事であるなら助けたいじゃない?」
言う小町に、やれやれと係員は嘆息する。
かくて、猫捜索の依頼が続けられた。
●リプレイ本文
播州姫路藩。馬に草履になるべく急いでと冒険者たちは藩に入る。だが、すぐには活動せずにまず向かった先は‥‥、
「小銀太くん、お留守なんですか‥‥。入れ違っちゃったのでしょうか」
馬を預かってもらえないかと小銀太の家を尋ねたが、生憎本人は留守。残念そうにティーレリア・ユビキダス(ea0213)に馬を見上げる。お家の人が預かるだけはすると言ってくれたので、一安心だが。
そんな飼い主の心を知ってか知らずか、馬のまーさんは、我関せずで心地よさげに鼻を鳴らしている。
「向こうも何か大変そうみたいだし。‥‥というか、手突っ込んで大丈夫なのかな、彼」
ギルドにて出された姫路の別依頼。それに小銀太も一枚噛んでいた。そっちに行ってる冒険者と文などでやり取りをしてみるが、姫路の状況はあまり芳しい様子では無い。
「まぁ、危ないならどうにかするよね。猫の情報入ったら教えてもらうよう言ってるし」
二条院無路渦(ea6844)、のんびりと欠伸をする。緊張感は聊かも無い。
「虎穴に入らずんば猫児を得ず‥‥とでも言いましょうか。猫様を無事にお助けできればいいのですけど。まぁ、君子危うきに近寄らずとも言いますけどね」
軽く皮肉げな笑みを浮かべる須美幸穂(eb2041)に、南雲紫(eb2483)も僅かな笑みを浮かべ、すぐに真顔に戻る。
「諦めるなんて論外よ。何があっても助け出してみせるわ」
力強い言葉は、決意をまた新たにした。
「やっぱり。怪しいのはあの場所ですよね」
拠点と目されている山の入り口。遠くから眺めながら、ティーレリアが低く唸る。
「先に回った寺などへ、文にて問いかけてみましたが‥‥。役所から運び出されている石については詳しくは無いそうですね」
小都葵(ea7055)が小首を捻る。財布が軽くなった割には見入りは少なく。まぁ、世俗とは縁の無い人たちなので仕方も無い。世俗を離れながらも、悪い事にならねばいいがと、それなりに世を憂いてるようではあった。
「あの山についても、やっぱりと言うか、改めて細かい話は聞けなかったわね」
一応、潜入するに当たり多少話を伺ってみたが。市井においては、とにかく近付いてはならない危険な山として認識されている。護衛があるのもそれ故に。そも、あまり治安の良く無い状態でわざわざ警備の目まであるような場所、それこそ君子危うきに〜で、蓋をしている状態だった。
「声云々という話は気になりますね。相手の戦力もこれまで出た全てで良いのかも‥‥」
聞こえた声は定かでは無い。ただ、悲鳴のようだったとか呪詛の呟きだったとか碌な話では無い。実際に聞いたと言う者もなかった訳ではないが、それでも細かい事までは判断付かず、幸穂は軽く首を捻った。
山の入り口では、仏頂面の藩士が警備として立っている。遠巻きにそれらを見つめながら、さらには周囲へと乃木坂雷電(eb2704)は目線を向ける。
警備の目があるとはいえ、それは山の入り口ぐらいで。山の周囲から回り込めば何とか内部にまではたどりつけそうだった。だが、山と一言でいってもそれなりの敷地になる。その奥に何が潜むのか。
「やはり、行ってみるしか無いだろうな」
雷電が告げると、各々が山へと散る。
山は広い分、警備の目も完全とはいえない。回り込んで山に入り、それからは二手に割れて行動する。一つはティーレリア・幸穂・紫で、一つは無路渦・葵・雷電となる。
どちらの組も、隠密行動に長けたとも山に得手とも言えない。その分を行動で何とか補いながら、慎重に山の奥へと進んでいく。
「んー? 何か聞こえない?」
ふと無路渦が周囲を見渡す。つられて二人足を止めて、それに倣った。
風に乗り、確かに何かが聞こえる。宛てのないまま、その何かを頼りに進み、
「声だね。ここから聞こえるみたい」
密かな声で無路渦が示した先。木々に覆われ目立たないが加工された場所があった。どうやら通風孔の類で地下に通じているようだ。幅は無いからそこから潜り込むのは難しい。途中で曲がってるのか、何となく光があるようにも見えるが中の様子は窺えなかった。
「振動がするな‥‥。足元からだ。地下に三名が歩き回っている。‥‥何かの部屋なのか? その中心で大きいが‥‥人じゃないな。蛇みたいな奴がが動いている。縛られてるのを足掻いているようだな」
声を潜めつつ、雷電がバイブレーションセンサーで伝わる様子を口早に告げる。
並行して。穴向こう、深い闇の奥からは中の声が届く。概ね一人の声だけが聞こえ、反響して仔細は聞き取れぬものの、怒りを露わに叫んでいた。
「おのれ‥‥!! ‥‥、人間‥‥!! ‥‥の‥‥!!!」
そして、絶叫。それまでよりもはっきりと聞こえたその声に葵の顔が青ざめる。
「悲鳴、でしたよね? 今の‥‥」
恐る恐る葵が呟く。雷電が苦虫を潰したように顔を歪めて頷く。悲鳴はなおも連続した。どうやら、三人が一体に何かしてるらしい。やがては、絶叫も薄れ消え、三人の動きも止まった。
「蛇もどきの動きが消えた。周囲の三人は‥‥次の作業にかかったらしいな」
何だか細々と作業をしている感じはあったが、振動だけで仔細は分からない。だが、中から漂う風に血の匂いが混じりだす。
その内に、二人が範囲内から消え、残る一人もあちこちを動き回った後――恐らくは片付けでもしていたのだろう――、同じく範囲から消えた。
「妖怪の解体部屋‥‥とでも言うのか? そんな感じの場所のようだな」
実況を終えて、雷電は小さく息を吐く。
「猫、無事かなー」
無路渦が軽く欠伸をしながら、何とはなしに中を覗き込む。何が見えるでなし、もはやそこは静かなだけの場所だったが。
「‥‥どこかに行ったのでしたら、まだ広さがあるという事ですよね? その、解体する場所なら案外元を保管する場所も近いかもしれませんし」
周囲を見渡す。ぱっと見る限りでは建物の類は見当たらない。と云う事は、この足元で彼らは動いているのだろうか?
言いながらも、不安げに葵は隠身の勾玉を握り締めた。
「建物があるわね」
そろそろ山の頂上。木々の隙間から見えた景色を紫が告げる。
「住居みたいですね。でも真ん中のは蔵ですか?」
小屋のような家が並ぶ中、一際目立つやたら立派な建物がある。
見る限りは蔵に見えた。近付くにつれて全貌も判る。分厚そうな壁に明り取りの窓には鉄の格子。大きな扉はどうやら鉄で出来ているらしい。非常に頑丈そうに見えたが、建物全体としてはそう大きいというものでもない。
「! 向こうから誰か来ます」
その蔵に続く道の先。物音を察して、幸穂が警告する。即座に物陰に隠れて息を潜める。
やって来たのは数名の人物。荷車を牛に引かせて蔵へと近付いてきた。
(「あいつ‥‥大男じゃない」)
黒尽くめの大男は、刃を交わした相手に違いなく、思わず紫が顔を顰める。その横にいる小柄な老人は、姫路城下の役所で妖怪集めをしているという紫暮だろう。さらに後ろには二名ほどつき荷車を押しているが、それは風体からして姫路の藩士と見る。
荷には布が掛けられており、相当重そうである。
やがて蔵の前に立つと、藩士が素早く前に出て扉を開くよう告げる。中から重い扉を開かれると、荷車ごと中へと入っていった。
蔵の中には何も無かった。いや、床にさらに扉があるようで、それを重そうに開けているのが見える。その中からさらに出てきた黒子党と組み、荷車の荷をさらに下へと降ろしている。
重い荷は石だった。鬼や化け妖怪、精霊を象った物が運ばれている。それ以外にも大きな袋の様な物を下ろしていたが、はみ出していた腕からして屍骸でも入っているらしい。
全部運び込んだのを満足そうに見届けると、紫暮はまた大男と藩士を従え、来た道を戻る。扉が閉まり、十分静かになった頃、息を潜めていた三人は肩の力を抜いた。
「つまり、生きてる妖怪は石化して、死んだ奴も使える物は運んでるのですね」
見た景色に顔を顰めてティーレリアが告げる。
「集めた子を皆ここに纏めているとしたら‥‥猫さんもいらっしゃるのでしょうか」
「‥‥確かめてみますか」
扉は重く閉ざされ、入れそうに無い。少し思案した後に、十二分に辺りを窺った後に幸穂がムーンアローを放つ。銀の輝きは一直線に下降し、建物の壁も透過する。しばらく待ったが、何の変化も無い。
「これは‥‥」
幸穂が呟きかけた時、
「曲者が!! ここに来るとはいい度胸だな!!」
声が投げかけられた。見ると遠くに黒子二人がいる。内、一人が刀を抜いてこちらに向かって来た。
「ちっ!!」
紫が日本刀・霞刀を抜き、素早く間合いを詰めて刀を交わらせる。数度打ち合わせて一旦互いが間を開けた。途端、相手の姿が凍りついた。
ティーレリアのアイスコフィンだった。
「急げ! すぐに撤退だ!!」
「言い訳できる状況でもなさそうですね」
抜き身の刀を手にしたまま紫が告げると、ティーレリアも頷く。
残るもう一人が呼笛を吹いている。高らかに鳴り響く笛で、辺りは一気に騒然としていた。
吹いていた黒子を、紫が刀で打って気絶させるも、すでに次の追っ手の姿が見えている。
走りやすい道を選び、三人は急ぎ脱出を計る。
だが、逃げ出せる前、頭上の梢が不意に揺らぐや黒子が、三人へと飛び掛る。振るわれて閃く凶刃を、それぞれがとっさに躱す。
次の刃を立てようとした黒子。その腕に素早く蔓が絡みついた。
「何をしている。ぐずぐずするな!!」
現れた雷電が口早に告げる。
「捕まえる時間も無いみたいだし。んとまぁ、じゃ、そういう事で」
無路渦が駄目押しにダークネスを唱えると、蔓を切り払っていた黒子の姿を闇が包む。
それからも雷電がバイブレーションセンサーで人が無い所を選びながら、追っ手をどうにか振り払い。冒険者たちは山を降りて十分に遠くまで逃れ落ちた。
「当分警戒するでしょうし、今は再び赴く事は難しいですね。こちらの正体、ばれてないといいのですが‥‥」
一応、葵は見られていいよう着替えたが、そうでない者も多い。
「今回はここまでだな。だが、大雑把とはいえ、地下の様子は知れた。結構広いぞ、あそこ」
雷電が小さく舌打ちをする。
「それでも‥‥どうやら猫様はここにいるのは間違いないようですね」
幸穂が難しい顔つきで山のある方角に目を向ける。
放ったムーンアローは猫を指定した。範囲内に指定したものが無ければ自分に跳ね返るはずだった矢は、しかし、何事も消え去った。
つまりはそういう事である。