【晴明失踪】 探し物継続

■シリーズシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 74 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:03月11日〜03月16日

リプレイ公開日:2006年03月19日

●オープニング

 冒険者ギルドに呼ばれて、冒険者一同が足を運んだものの、呼びつけた係員は応対の真っ最中だった。
 やたら横柄な態度の陰陽師に、調査中なのでまだ告げられないと断りながらも、閉口している係員を横目に冒険者達は奥へと通される。
『蘆屋道満ですね。先日まで江戸に行ってたのに、戻ってきてたようで。私の行方を捜す者がいると聞いて、現状どうなったかを伺いに来ているのだとか』
 奥の部屋へと通されて係員の事情を説明したのは、陰陽寮陰陽頭・安倍晴明‥‥の幽霊だった。
 先日安倍晴明が突然失踪。その実、当人は何者かに殺され、幽霊と化していたのだ。あいにく、殺された時の記憶が無く、生き返る為にどこぞにある死体を捜せという、なんとも奇妙な依頼だった。
 加えて、幽霊となった直後に自宅に戻ってみれば、大切な品が紛失していた。京都の霊的治安向上の為に密かに運び込まれていた神皇家縁の神剣・草薙が無くなっていたのだ。
 晴明の死と関連あるか無いかは今だ不明だが、そちらの捜索も平行して行われている。が、手がかりは依然無い。
 陰陽頭が消えても世は万事滞りなく。黒虎部隊が鬼を斬れば、新撰組が人斬りと刀を交え、見廻組が街中を歩き、検非違使は雑務に追われる。そんなのは当に日常の範疇である。
 陰陽寮の方でも、元々、貴族たちの生活なんて物忌みで数ヶ月仕事休む事もままある。そこら辺の心得は誰しも出来ているし、消えた所で「まぁ、あの人だから」と変な納得を得られているので、不在も大した差し障りでは無い。
 ただ、道満は前々から晴明をやたら目の仇にしている。江戸から戻るとその相手が突然と理由も無く消えていたので、逆に何故消えたかが気になってるという所だろうか。
 もっとも、詮索された所で公言できる事柄は特に無く。まさか幽霊になって奥にいますとは言えまい。そんな事知ったらあの手この手で宿敵抹殺にかかるだろうし、幽霊になってから無力化したらしい晴明だって、それでもおとなしく成敗されると思えない。
 相手が相手だけに、下手に追い返すのも面倒。ギルドの平和を守る為、係員も対応に四苦八苦している。
 ようやっと道満がギルドから帰った後、疲れ切った表情で係員は姿を見せた。
「来て貰った理由は察しがついていると思う。先日の続きで旦那の遺体捜索と神剣の行方探しだ。まぁ、とにかく早い所探してくれ。何かもう肩が重くて仕方がねぇ」
『それは大変ですねー。知ってますか? 右肩が重いと悪霊が憑いてるんですよー』
「そんな豆知識いらんわっ!!」
 にこやかに告げる晴明に、係員が涙目で告げる。――道満相手より晴明相手の方が、別の意味で大変そうだ。
『とはいえ、今のままではいろいろ面倒ですからね。早い所何とかしてもらわないと困るのも確かです。蘇生も時間がかかりますからね』
 係員の悲鳴を気にもかけずに、はっはっは〜、と和やかに笑う晴明。
「旦那の遺体もだが、神剣も問題だな。今の所、神剣がどうしたという噂は聞かないから、大事には至って無いんだろうが‥‥。
 旦那の記憶が戻ったら、少なくとも遺体は一発と思うのですがねぃ。‥‥何も思い出せないんですかぁ?」
 半ば侮蔑に似た表情で、係員は晴明を見つめる。それを心外だと言わんばかりに晴明は睨み返す。
『何も思い出せないとは心外ですね。多少は思い出した事だってありますよ。呪殺の心得とか』
「つくづく、怨返しがやりてぇだけだろ? えぇ!」
 思わず涙ながらに突っ込んじゃった係員に、意味ありげに晴明は笑う。

 ともあれ、神剣探索に晴明の遺体捜索は引き続き冒険者達に委ねられた。

●今回の参加者

 ea4138 グリューネ・リーネスフィール(30歳・♀・神聖騎士・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea4870 時羅 亮(29歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6154 王 零幻(39歳・♂・僧侶・人間・華仙教大国)
 ea8904 藍 月花(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb1528 山本 佳澄(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb2041 須美 幸穂(28歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●サポート参加者

エリーヌ・フレイア(ea7950

●リプレイ本文

「話が妙な状況によじれている様な‥‥。少なくとも私たちの仕事は浮気調査ではなかった筈」
「申し訳ありません。妙な話を仕入れてしまって‥‥」
 思わず遠い目を作るグリューネ・リーネスフィール(ea4138)に、山本佳澄(eb1528)はすまなそうに頭を下げる。
 ともあれ、やらねばならない事は表向き失踪とされている晴明の遺体捜索。そして、神剣捜索。
 神剣の所在は今だ不明なれど、晴明については概ねの見当をつけていた。
 すなわち。
「改めて知り合いが探索してくれましたが、駄目ですわね。魔法で探索してくれたようですけど、やっぱり何の情報も無いようですわ。周辺を調べても何の状況も無い以上‥‥遺体も亡くなられた現場も、むしろ屋敷の中であるように思えるのですが?」
 外で幾ら情報を仕入れても一向に有益な話は聞けず、どころか、関係あるのかどうかわからない話ぐらいしか耳に聞こえてこない。
 なので、至った推論ではあるが、藍月花(ea8904)の考えは皆が抱くものだった。
「木を隠すなら森の中、晴明の遺体を隠すなら晴明屋敷の中、という訳かな」
「どうやらそのようですね」
 感慨深く告げた王零幻(ea6154)に、声をかけたのは須美幸穂(eb2041)。その後方には透けた晴明の姿が見えた。
「レシーブメモリーで探ってみましたが、やはりお屋敷の中ですね。ただ、後ろから刺されたという事で犯人の印象は残ってないようでした」
 妙に疲れた顔をしているのは魔力を使い果たしたせいだろう。
『全く、嫌な展開になってきたものです』
 そう言って嘆息ついた晴明も似たような顔をしている。もっとも、こちらは気持ちの問題なのだろう。家で殺されたとなると、どうしても嫌な想像しか出来なくなる。
「そういえば‥‥晴明殿と奥様との馴れ初めはどのようなものだったのでしょう?」
『拾ったんです』
「は?」 
 さらりと言われて、グリューネは思わず間抜けな声を上げる。
『賊に襲われてる所にたまたま通りかかりまして。元は高官の娘だったようですが、没落した挙句に親兄弟も失い、帰る所も行く所も無くしたというので家に招いたのです。後は済崩しでしょうか』
 いい加減といえばいい加減な話。晴明の口ぶりだとそこに何か恋愛めいた事があったのかも疑わしく思える。
「他に‥‥お二人だけで通じる話とかはありませんか?」
『夜の生活とか?』
「怒りますよ」
 月花が拳に力を込める。
『冗談です。そうですね、あまり劇的な事はありませんけど‥‥』
 いくつかの小話を、月花は神妙に聞く。
「ありがとうございます。晴明さまの選んだ方なら信の置ける方なのでしょうし、何とか信頼を得たいですわ」
 月花がほっとして告げるも、逆に幸穂は気難しい態度を見せる。
「私はまだお会いせず、見聞するだけでの意見となりますが‥‥。しかし、話を聞く限りでは、もう少し、晴明さまは奥様と話し合われてもよいのではないでしょうか」
 梨花の奇妙な態度は、どうにも旦那を待つ態度とも言いがたい。それが今回に関わるのかはまだよく分からないが、放っておくのも薄情のようだ。
 真摯な眼差しを向ける幸穂に、晴明は少し笑む。
『そうしましょうか。ともあれ、無事に生き返れたらの話ですが』
「そうだな。そろそろ見つけないと、遺体が大変な事になっているかも知れないからね」
 三寒四温の振りはあれど、周囲は徐々に暖かくなってきている。そうすると当然、物の腐敗も進みやすくなり‥‥。
 その想像をしただけで、時羅亮(ea4870)の顔がげんなりとうなだれた。

 見当付いたのはいいけれど、問題は晴明の家にどうやって潜り込むか。奥方の許可が出そうにないのは前で分かったので、結局は多少強引な手をつかうしかないだろう。
 幸穂の魔力回復を待ってから、改めて晴明の家に赴く。夕暮れの空の下、丁重な態度で訪れども、結果は芳しくなし。
「聞きましたわよ。あの人の幻影を作って何やら騒ぎを起こしたそうですね。一体、何を考えていらっしゃるの?」
 見つめてくるのは晴明の妻である梨花。その眼差しは険悪そのもの。不機嫌を全く隠そうともしない。
 原因となったのは、幸穂が置いたファンタズム。晴明の目撃情報を作って奥方の反応を見ようという意図ではあったのだが。
 表向きは失踪であり、一応陰陽寮でも探してはいる相手。すぐに役人が飛んできたのだ。で、動きはしない相手だし、触れればすぐに虚像と分かる。
 都なれば探索魔法を使う者もそう不自由せず。結果、幸穂の仕業とはわりと簡単に割れ。そんな事をした理由を話すのも憚られてほんの茶目っ気で許してもらえたが、こういう時に悪趣味だぞとちょろっと怒られたりしたり。
「いえ、私たちはただ先日のお話をもう少し詳しくお聞きしたいと‥‥」
「夫は行方知れずなのよ! それを面白半分に帰ってきたように見せかけるなんて‥‥。非常識にも程があると思いません? ほんの安易な気持ちで訳の分からない事を簡単に引き起こすんですもの。それが周囲にどれだけ影響を与えるかなんて考えもして無い!」
 吐き捨てるような言い方は、嫌悪を露にしている。
 何となく、月花は旦那の方が気になって周囲に目を向ける。先の言葉を聞かせるべき相手である気もしたし、聞かせたくは無い気もした。
「その行方知れずの件について、どうしてもお伺いしたい事があるのだ」
「こちらには話す事などございません」
 そっけなく言い放つとそのまま冒険者たちを締め出そうとする。
「いや、晴明殿の行方を捜すのにどうしても必要なのだ。おぬしも行方は気になろう?」
 渾身の力で閉められようとしている門扉を、佳澄と零幻が押し留める。
「別に家に入れて欲しい訳ではない。込み入った話であるし、立ち話で済ませられる話でも無いのだが‥‥そう、先に言った料亭とやらでお話をお聞かせ願えないか」
 零幻が懇願すると、門扉の力が唐突に消えた。おかげで二人すっ転びそうになる。
 体制を整えて奥方と向き合えば、相手は不審の眼差しを向けてきている。
「何を考えていますの?」
 殺気すら含んで見えるその態度は頑なでこれ以上の交渉は無理と思われた。
「実は‥‥、晴明が行方不明なる前に、相談を受けてな。おぬしが街中を男と連れ立って歩くのを見かけたという」
 仕方なく、零幻は用意してきた話を口にする。
 梨花が小さく震えた。睨みつけていた目が一瞬怯えたような色に震える。
「あの気丈夫がいたく気に病んでおったよ。何故かような場所にあの者と‥‥、と呟いておったな」
「本当かしら」
 梨花は鼻で笑い飛ばす。 
「誰かと見間違えたのでしょう。私に心当たりはありませんわ」
 が、相手もさるもの。きっぱりとそう言ってのける。
「‥‥もしや、奥方様は晴明様の行方をご存知ないでしょうか」
 何気なく出した月花の一言に、梨花が身を強張らせる。
「ご存知なのでしょうか? でしたら、是非にお教え願いたい。晴明殿は京に必要な方、そして神剣が行方不明なのはジャパンの一大事です。私たちが何と怒鳴られようと、晴明殿の行方を捜す方が大事。お願いですから心当りがあれば教えて下さい」
 真剣な態度で頭を下げる月花。それを梨花は睨むように見つめ返していたが、
「家の前で何やら騒々しいですな」
 唐突に第三者の声が割って入る。
「‥‥蘆屋、道満‥‥様?」
 ギルドでも見かけたその人物。思わず佳澄は呼び捨てしそうになり、慌てて敬称を付け加えた。
「長く京を開けていた間に、陰陽頭殿が行方不明と聞いて心配になりましてな。このような時間で悪いとは思ったが、少々お話を聞かせてもらえねばと思ったのだがどうやら先客がおったようで。‥‥なにやら神剣がどうとかいう話も聞こえたが?」
 思わず月花が口元を押さえる。その彼女の前に、梨花は立つとにこりと笑みを浮かべる。
「なんでもございませんわ。‥‥このような場所では何ですから、どうぞ中に」
「うん? しかし、彼らはいいのか?」
「ええ。今、お帰りになる所でしたの」
 ちらりと冒険者達を見つめる道満に、満面の笑みを持って梨花は答える。それを訳すると「とっとと帰れ、冒険者」になる。
 どの道、道満が出てきた以上、迂闊な話も聞かせられない。ここは引き下がるしかなかろう。
「潜入組が、何か掴んでくれればいいのだが‥‥」
 頼んでも入れてはくれぬ家の中に、易々と招いてもらえてる道満を見ながら零幻はふっと溜息を漏らした。

「あら猫。こら、あっち行きなさい!」
 にゃーと鳴いて愛猫・湊が追い払われるのを、幸穂は申し訳なく思いながらもただ見ている。まぁ、いても血の匂いを振りまく捌きたて新鮮な厨房の魚をくすねて来るのが関の山で。
 インビジブルの経巻を使って姿を隠しているとはいえ、気付く者は気付く。陰陽寮から晴明の屋敷より研究用の物品を借りる許可を願い出たが、そもここは個人宅で寮の関与には無い。そもそも人様の家で姿を消してうろついてる時点で不審な事この上なく。
 見付かるとまずい事になるのは必須で、しかし、
(「それでも、やる必要はあるのでしょうね」)
 そう決すると幸穂はムーンアローを唱える。まずは晴明の肉体を指名して呪を唱えると、月の矢は家の中へまっすぐに飛んだ。
 やはり、と思う間もなく、悲鳴がそちらから聞こえる。そして、間髪いれずに飛んできた月の矢が幸穂に次々と刺さる。
『道満でしょうね。腕を上げたかな?』
「何を暢気な」
 宙に浮かんで状況を見ている晴明に、幸穂は怒鳴り返す。
「誰か! 怪しい者がこの近くにいるわ!!」
 怒鳴る声は奥方の物。たちまち辺りは騒然となる。
 これ以上の長居は無用と、急いでその場から逃げ出していた。

 すぐに検非違使が呼ばれて配置され、周囲が慌しくなる。
「ああ、恐ろしい。一体誰が」
「晴明様がいらっしゃればこのような事もないでしょうに。一体どこに‥‥」
 口々に不安を訴えている使用人達を屋根裏から、グリューネはこそりと見遣る。
 蛇になってうにょろにょろ。物々しい雰囲気の中を見付からぬよう注意しながら、グリューネは体をくねらせ屋敷の中を探索する。
 が、剣らしきものは勿論、遺体らしきものもまた見付からない。
『あら?』
 そして、とある部屋に差し掛かる。やけにその部屋は床が綺麗に磨かれていた。
 近くの戸から外に出て確認する。前に犬の姿で歩いた時に、気になった辺りの景色が見えた。
『あらあら?』
 そして、庭先に。月明かりの下に道満と何やら大荷物を持った梨花の姿を見る。風呂敷一杯に包まれた何かと、それからはみ出た長い棒状の物。
「それでは。またいずれ」
 梨花が道満に頭を下げる。
「ああ。‥‥その荷はわしの家に放り込んでおけ」
 くつくつと愉快そうに笑う道満。梨花の表情は後ろ向きで分からない。が、不意に動くと道満に抱きつく。
 しばしの抱擁。そして、道満が印を組むと、梨花の姿が手にした荷物ごと月影に消えた。
 その消えた影を見遣り、道満は、その場から立ち去る。
『うーーーーーーーーーーーんと。これは‥‥‥‥‥‥』
 どこで何がどうしたのだろう。遺体捜索と神剣捜索だけのはずが、全く別のものが絡んでいるようで。
 がっくりと肩を落とし――今は無いので気分だけだが――、器用に尻尾で頭を掻くグリューネ。
「きゃああ! 蛇〜〜〜〜!!」
 そこへ、突然の悲鳴。はっとして振り返ると、使用人が一人、青い顔して立っていた。所詮ミミクリーでは大きさは変えられない。細くなった分だけ長くなる訳で、そんな大きな蛇では警戒されても仕方が無い。そも蛇という物自体あまり好まれない生き物だ。
 だが、その使用人はちょっと違った。青い顔をして悲鳴をあげながらも、手近にあった箒を手にしてグリューネに振り落とす。
『嘘でしょーーー!!』
「いやああ、誰か、誰か来てよ〜〜」
 泣き言を告げながらも襲ってくる使用人から、やはり泣きたい気持ちでグリューネはその場から逃げ去っていた。 
 
(「逃げそびれてしまった‥‥」)
 床下に潜り込んだまま、亮は密かに嘆息づいた。
 元々こういった事に慣れていない。なので、苦労して入ったはいいが、騒ぎの際にとっさに隠れて今度は出にくくなってしまった。
 暗いし狭いし、動きづらいし。どうしたものかと悩みはしたが、まぁ出られないなら仕方が無い。そもの目的の通りに動く事にする。
 幸穂のムーンアローの軌跡は目にしていた。その消えた方角に向かい、移動を始める。
 慣れない床下移動で苦労はしたが、やがて、目が闇に慣れた頃、土の様子が妙な事に気付く。
(「掘った後だ‥‥」) 
 手に触れると、その他と違って柔らかい。思い返せば、月の矢も床下に向けて動いた気がする。
 激烈に嫌な予感を覚えながら、亮は試しに地面を掘り返してみる。道具も無くて苦労したが、やがて何かがその指先に触れる。
(「布か?」)
 そんな感触だった。さらに布の奥に手を突っ込むと、ざらりとした硬質の糸のような物に触れる。
「うわっ!!」
 それが何かの毛であり、その向こうに冷たい肉の感触もある。その意味を悟った時、嫌悪感から思わず飛び退いてしまった。
 だが、そこは狭い床下。満足に動かぬ内に、柱にしこたま頭をぶつけてしまい‥‥。
「何だ! 今の物音は!!」
 すぐに外は騒がしくなる。が、亮はそれどころではない。それに逃げる必要ももう無いだろう。
 不法侵入は駄目だが、言い訳は立つ。探し物は一つ、見付かったのだ。

 そして、日は昇り。やはり不法侵入の件はしこたま怒られはしたが、事情を話して床下を示すと、もうそれ所ではなかった。
 蘇生を求めて晴明の遺体が運び出されるのを見るのもそこそこ。改めて、剣の行方を捜したが家のどこからも見付からなかった。ただし、遺体の埋めてあった横に何やらその大きさの棒のようなもの置かれていた型が残っていたので、恐らくそこにあったのだろう。
 そして、その日から梨花の姿も屋敷から消えた。これまでの態度や、遺体が見付かったのが彼らの寝室の真下であった事から、彼女が犯人だとして役人たちもその行方を追い出していた。