【ラブポーションパニック】薬師の憂鬱
|
■シリーズシナリオ
担当:菊池五郎
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:02月09日〜02月14日
リプレイ公開日:2005年02月19日
|
●オープニング
「フレデリカさんの問題はボクが頼んだ事だし、構わないけど‥‥本当にいいの?」
「でも、あなたはいいのです?」
“新緑の踊り子”フレデリカに断られても好意を寄せ続ける2人の男性、ジャイアントのファイター“静かの”ミルコと、“親殺し”の異名を持つ騎士カシアスを諦めさせる為に提案された偽装結婚。
しかし、彼女を雇っているエールハウスの看板娘ディジィー・デンプシーも、フレデリカ本人も偽装結婚には乗り気ではなかった。
ジーザス教において結婚は神聖な儀式であり、離婚は許されないからだ。例え、新郎が偽名を使った架空の人物でも、フレデリカはその架空の人物と生涯添い遂げなければならない。
「その男でいいのか、と思いましてね」
偽装結婚式の日に、カシアスはディジィーのエールハウスに乗り込んでくると、その事に気付いたかのような冷笑を浮かべた。
今までフレデリカは全て求愛を断ってきた。確かに将来を誓った相手がいれば、断るのは至極当然だろう。
しかし、自分の踊りを見てくれる人全てを愛する。だから1人の人に特別な想いは持たない‥‥それがフレデリカの持論だ。
強引に手を使ってまでもフレデリカを手に入れようとしたカシアスだからこそ、その事に気付き、偽装結婚と見抜けたのだろう。
教会にこの事が知れれば、フレデリカは元より、偽装結婚を知りつつ賛同したクレリックや神聖騎士も厳罰の対象となるだろう。
「‥‥いや、俺は間違っていたよ‥‥」
フレデリカ達の窮地を救ったのはミルコだった。
ディジィーのエールハウスの店員に諭された彼は悟ったのだ。
『たとえ他の種族の人でも、人を好きになるのって、自然な事だと思う』
――自分がフレデリカを美しいと思う事と、恋愛感情は、一緒くたなのだろうか?
『本当にその人の事が好きなら、先ずはその人の幸せを考えてあげるべきじゃないかしら?』
――自分の事ばかり考えて、彼女を手に入れようとした。
――まるで物みたいに‥‥。
踊り子であるフレデリカは、誰が見ても魅力的であり、惹き付けて止まない。
――しかし、自分はその感情を恋愛と履き違えていたのではないだろうか?
ミルコは自分なりの結論を出した。
確かにフレデリカを好いている。しかし、この想いは生まれてこの方、人(ジャイアント)を好きになった事がないから、『初恋』だと思っているのではないか、と。
これにはさしものカシアスも出鼻を挫かれた。冷笑は苦笑に変わり、人に見られている事を意識したようなキザな仕草で肩を竦めると、ミルコを避け、フレデリカを避け、ディジィーの近くのテーブルに置いてあるエールの小樽を手に取った。
「俺の負けのようですね。お詫びに一杯、奢らせてもらえませんか?」
彼は小樽の中の泡立つ琥珀色の液体をジョッキに注ぎ、ミルコに渡すと、それはフレデリカへ渡された。
微笑んで受け取ると、飲み干すフレデリカ。
「く‥‥苦しい‥‥あぁ‥‥」
すると、フレデリカの顔が苦痛に歪み、身体を小刻みに痙攣させた。見れば彼女の細くこまかい手足の先から灰色く色を濁し始めていた。
フレデリカは何故か石化し始めたのだ。もちろん、誰かが『ストーン』を唱えたのではない事は明白だ。
「‥‥ああ‥‥あああ‥‥あう!」
為す術もなく、誰もが1分間、呻き声をあげ、色彩を奪われてゆくフレデリカが冷たく固い石像と化す様を見続けるしかなかった。
「あなたが何かしたのですか?」
「い、いや、俺じゃない‥‥確かに惚れ薬(ラブポーション)は入れたけど‥‥」
「ラブポーション? それ聞き捨てなりませんね」
ミルコを問い詰めるカシアス。
ミルコが渡したエールを飲んで石化したのだし、ラブポーションを盛ったというのだから、彼を疑うべきだろう。
居たたまれなくなったミルコはディジィーのエールハウスから飛び出していってしまった。
エールハウス内の中央に置かれていたフレデリカの石像は、ひとまず厨房へ移され、今はひっそりと佇んでいた。
「ダメだよ、『コカトリスの瞳』でも元に戻らないよ」
ディジィーが悲鳴にも似た声を上げる。彼女は卵大の壷に入った魔法の液体――コカトリスの瞳――を、石像の頭から掛けたが、フレデリカの瞳に若草色の命の輝きは戻らず、相も変わらず竈の火に照らされて鈍い光を湛える石の塊のままだった。
ディジィーがたまたま持っていたコカトリスの瞳はしかし、効かなかった。
「『ストーン』なら、『ニュートラルマジック』で元に戻せるらしいけど、誰も唱えてないんだよね?」
フレデリカが石化した原因は『エールを飲んだ』からだ。
カシアスが持っていたエールの小樽は、彼がフレデリカの石化に驚いて落としてしまい、中のエールは残っていない。
ミルコが盛ったというラブポーションは彼自身が皆の目の前で処分してしまった為、こちらも残っていない。
「今はミルコさんを捜すしか手はないかな? カシアスさんは当てにならなそうだし‥‥」
常連客という手前、ディジィーはカシアスの事を悪くは言わないが、その溜息混じりの口調からどう思っているか察しは付くだろう。
『宜しければ、フレデリカは私が引き取りますよ?』
カシアスは温もりも息吹もそのままに封じ込める石の衣で美しい四肢を包まれて喘ぐフレデリカを見ながら、平然とそう言ってのけたのだ。
ディジィーが彼女を教会へ運べない理由はそこだった。カシアスは彼女が未遂とはいえ偽装結婚を企てていたという切り札を握っていた。もしその事が教会に知れれば、フレデリカは元に戻してもらう事はできなくなる可能性があるからだ。
かといって、彼にフレデリカを託すのは、今までの言動からして危険だと思えた。
ディジィーは彼の厚意を丁重にお断りして、フレデリカを厨房に置く事にした。フレデリカが逗留している宿屋に運ぶ手もあったが、部屋に鍵が掛かるとはいえ、無人の部屋に1人で居させるのは安全とはいえないだろう。
「ラブポーションを持っていたという事は、ミルコさんが何かを盛ったかも知れないんだよね。あの態度からすると違うように思えるけど、今のところ手掛かりはミルコさんだけだと思うんだ」
ディジィーはそう締め括ると、「お店は任せて」と告げたのだった。
●リプレイ本文
●焦燥
「お姉ちゃんって呼べるようになったのに‥‥あたしの横笛、誉めてくれたのに‥‥」
「ティオさん‥‥」
ティアイエル・エルトファーム(ea0324)はこぢんまりとしたエールハウスの中央に佇む、先程まで“新緑の舞姫”フレデリカと呼ばれていた女性の石像の頬を撫でた。フレデリカの身長は164cmと然程高くなく、ティアイエルと並んで歩くとよく本当の姉妹に間違えられたものだ。
彼女の飾りっ気のない誉め言葉は真っ直ぐな分、心に響いて嬉しかった。しかし、その唇は何も語らず、その手はティアイエルの蜂蜜色の髪を撫でる事はなかった。
手に伝わる、石の冷たい感覚がそれを現実のものと物語り、ティアイエルの目に涙が滲んだ。
逢莉笛鈴那(ea6065)が彼女を後ろからそっと抱き締めた。彼女の温もりに励まされたティアイエルがフレデリカの頬から手を放すと、体力に自信のあるレオンロート・バルツァー(ea0043)と鳴滝静慈(ea2998)、閃我絶狼(ea3991)が石像を店の奥の厨房へ運んだ。
しかし、石像とはいえ女性、しかもフレデリカは脚線美が売りの踊り子なので下半身の露出が多く、コルセスカ・ジェニアスレイ(ea3264)は「そこは触ってはダメです」などと逐一、指示を出した。
「‥‥偽装結婚はカシアスには完全にバレてましたし、フレデリカさんは何故か石になってしまいましたし‥‥私は何をしたらいいかさっぱり分かりません‥‥本当に、もう、逃げ出したいですよ‥‥」
店内に戻ってきたコルセスカはイスに腰を下ろしながら、溜め息混じりに呟いた。後半は途切れ途切れで、嗚咽が混じっているかもしれない。
「逃げ出したければ逃げればいい」
「静慈さん!? 確かに何とも厄介な事になってきて、今更どうこういったところで始まりませんけど‥‥人が、ストーンを掛けられた訳でも、モンスターに襲われた訳でもなく、石化してしまったんですよ!?」
コルセスカを励ますどころか冷たく言い放つ静慈に、クリフ・バーンスレイ(ea0418)が彼女の不安になる気持ちを代弁した。
「‥‥偽装結婚の件は悪かったと思っている。キミやクレリックは、破門の危険を賭してまで賛同してくれたんだからな。だが、依頼を成功させるのが目的なら、こなせないと感じた依頼を続ける必要はない。時には諦めて、成功させる可能性のある他の冒険者に任せるのも一つの手だ。それは恥ずべき事じゃない」
静慈の声音は冷静で、彼女を諭していた。
「しかし、俺はフレデリカをこんな姿にした奴を許すつもりはない。キミは何をしていいか分からないというが、俺は偽装結婚をカシアスに逆手に取られたという事実の中に、真実が隠されていると踏んでいる」
「フレデリカさんを石化させたのはカシアスって線が濃厚、という事でしょう」
ルーティ・フィルファニア(ea0340)が静慈の言葉を受け継いだ。彼は頷いた。
「むう、恋とは人を狂わせるものだな」
「うん‥‥ミルコさんも一時期、周りが見えなくなって“ラブポーション”に手を出しちゃったみたいだけど‥‥私はミルコさんを信じる。フレデリカさんを石化させたのはミルコさんじゃない。カシアスがミルコさんに罪を被せたんだと思うわ」
事のあらましを聞いた絶狼がしみじみいうと、鈴那は力強く告げた。確信はないが、“静かの”ミルコというジャイアントと今まで触れ合ってきて、彼の人となりは理解しているつもりだ。ミルコはそういうことをするような人柄ではない、と――。
「ラブポーションとやらを入れていた小樽は、ミルコ自身が割ったし、フレデリカにジョッキを渡した時も不審な動きはなかったからな」
「ええ、ミルコさんはカシアスから渡されたジョッキをフレデリカさんに渡しただけです」
鈴那の言葉を静慈が後押しすると、人一倍どころか数倍目のいいルーティが断言した。
「だとすれば、方法は分からないがカシアスの仕業だろう。狡猾で用意周到な奴の事だ、自分が彼女の石像を引き取ろうと言い出したのにも、何か裏があってのはずだ」
「カシアス本人から話が聞ければいいんだがな‥‥力付くでもそうはいかないようだ」
今までの事柄から鑑みて、静慈はミルコではなく、“親殺し”カシアスが犯人だという仮説を立てた。
レオンロートはカシアス自身から聞き出す方法も考えていたが、彼の気配や体運びを見た限り、少なくとも実力は自分より上だと推し量っていた。
「しかし、いくら他人の心理に付け入る手段に長けているとはいえ、予測だけでここまで行動ができるのは少々不自然だ」
「何となくですが、ミルコさんがラブポーションを使った事に対しても、あまり驚いていない感じでした」
静慈の提示した疑問点を聞き、コルセスカはカシアスの様子を思い出した。
「ほら、キミにもできる事はあるじゃないか。あくまで俺の推測に過ぎないが、カシアスもミルコと同じ理由でラブポーションを入手していたたのかもしれない。それならミルコが使うと予測できた事も合点がいくんだ」
「ミルコさんがラブポーションを手に入れたのは、ゲテモノ食いの薬師だよね? なら薬師から話を聞ければ、カシアスさんがラブポーションを買ったかどうかも分かるよね!」
「それにミルコさんは歴戦の冒険者よ。さっきは取り乱したかもしれないけど、後で冷静になって考えて、カシアスに陥れられた可能性に気付くかもしれないわ」
静慈はコルセスカをフォローしつつ仮説をまとめると、ティアイエルと鈴那は自分のできる事を考え始めた。
「俺はミルコとやらを探すとしよう。鈴那の話を聞く限り、フレデリカを見捨ててキャメロットから出ていくような真似はしないと思う‥‥これは冒険者としての勘だがな」
「では、私は冒険者街とギルドを中心に調べてみます」
「このままフレデリカさんをディジィーさん1人に任せてしておく、というのもあまりにも危険ですね、カシアスさんの事を考えると。ボクはここでフレデリカさんが攫われないように監視していましょう」
「私もお店のお手伝いをしながら護衛します。もう護衛を主張しても仕方ないかも知れませんが、カシアスは何をしてくるか分からない人ですから‥‥それに家事や料理は得意なんです」
「俺はカシアスと取り巻きの監視を続ける事にしよう。怪しい行動をしていないか気になるし、な」
絶狼とルーティが、クリフとコルセスカが、レオンロートが、フレデリカを元に戻を方法を探し、ミルコを探し、カシアスと取り巻きを警戒する、それぞれのできる事を始めた。
●搦手
「先ず抑えるのは、ミルコが取っている宿屋だな。帰ってるとは思わんが、荷物を取りに一旦戻った可能性はある」
絶狼はディジィーから聞いた、ミルコがキャメロットの仮住まいにしている冒険者の宿屋を訪れた。予想通り、ミルコは一度戻ってきており、所持金と愛剣を持ってどこかへ行ったという。
「まぁ、状況が状況だけに、出るに出れない心境も分からんでもないが‥‥」
絶狼は『我々はフレデリカさんを助ける為に行動している。その気があるなら協力し合った方がいいはずだ』と伝言を頼んだ。
ルーティは冒険者ギルドへ向かうと、薬師が関わっている依頼の報告書を片っ端から読み漁った。
「ゲテモノ食いの薬師‥‥彼女の事でしょうか?」
日が傾く頃、フリーデ・ヴェスタという名前を見付けた。冒険者街に住んでいる事は間違いないが、どこに住んでいるかまでは分からなかった。
また、ミルコ本人が来た時、鈴那の名前で『信じています、連絡お願いします』という伝言を頼んでおいた。
カシアスの姿を探すレオンロートは、相変わらずフレデリカが逗留している宿屋を見張る取り巻きを見付けた。
「‥‥フレデリカはいないはずだが? それともエールハウスから宿屋へ戻る時をまだ狙っているのか? ‥‥よし!」
黒いマントを着て夜陰に紛れた彼は、取り巻きが交代して1人になったところを見計らい、後ろからナイフを首筋に当てた。
「後ろを向くな。もし、後ろを向いて俺の素顔を見ようとすれば、見るより先に貴様はこの世に存在しなくなる」
彼の少し不敵な笑みを含んだ鋭利な言葉に、取り巻きは激しく首を縦に振った。
レオンロートはカシアスの事や、何故宿屋を見張っているかなどを聞いたが、カシアスは奔走しているようで取り巻き達にも行方は分からず、とにかくここを見張っているように命令されたという。
「今、俺と接触した事は誰にもいうなよ。いえば貴様を‥‥いや、貴様と血の繋がりのある者全てを‥‥この意味、分かるだろう〜」
取り巻きは涙目で激しく頷くと、レオンロートは満足したかのようにその場から立ち去った。
「何故、カシアスさんがフレデリカさんを引き取らなくてはならないのか? やはり治せる根拠があるから、と見るべきでしょうね。わざわざ引き取って行うという事は、余程恩を着せたいのかも知れませんが‥‥」
レオンロートからカシアスの行動を聞いたクリフは考えを巡らせた。
「今日は私の奢りだから、どんどん飲んでね! コルセスカさん、エール樽の追加をお願い」
鈴那が大盤振舞をしてミルコの目撃情報を集める中、コルセスカは店の裏手にあるエール樽を貯蔵する倉庫へ向かった。
コルセスカが倉庫の鍵を外していると、猫が自分を凝視していた。見られているとなんとなくやりにくい。
その時不意に閃いた。カシアスは宿屋を取り巻きに見張らせたり、派手なパフォーマンスで登場するが、そればかりに気を取られていたのではないか、と。
倉庫には盗難防止の鍵は掛かっているが、その手のプロなら開けられる。もっとも、そこまでしてエールを盗むのは割に合わないが、割に合う事があるとしたら‥‥。
「‥‥そういえば私達は今まで、カシアスが襲ってきたから護衛していましたけど‥‥それが表向きだけだとしたら‥‥」
●薬師
絶狼は港やコロッセオを、ルーティは冒険者街やキャメロット城の宮廷図書館で地道に聞き込みをし、徐々にミルコの足取りを掴んで狭めていった。
また、ツウィクセル・ランドクリフから情報を得たティアイエルは、市民街で聞き込みを続け、ラブポーションを作れる薬師がフリーデであり、その棲家を突き止めたのだった。
絶狼がミルコを見付けたのは港だった。彼は港で薬の原材料を探していたのだ。
「フレデリカさんを元に戻したい。彼女の為にも、あなたの為にも。1人でやろうとしないで。一緒に彼女を元に戻す方法を考えましょう」
ルーティから報せを受けた鈴那がエールハウスから飛んで来ると、彼を真摯に説得した。ミルコはそこまで自分の事を心配してくれる彼女に心を打たれ、協力を約束した。
ティアイエル達はその足でフリーデの棲家へ向かった。
「あれを使わなかったのか‥‥その方が良かったかもしれないな」
フリーデがミルコにラブポーションを売った張本人だった。
「ミルコさんが『ある人をものにする薬が欲しい』と言ったので、『物にする』薬を渡したのでは‥‥ないでしょうか?」
「そんな聞き間違いはしない。そのジャイアントに売ったのは確かに惚れ薬だし、石化薬は別に、騎士に売った」
「騎士に!? お姉ちゃんが石になっちゃったの! どうしたらいいの!?」
ルーティは彼女の聞き間違いであって欲しいと思ったが、フリーデはミルコにもカシアスにもラブポーションを売ったという。そればかりかカシアスには石化薬まで売ったというのだ。
ティアイエルが碧色の瞳をうるうるさせながら上目づかいに見ると、フリーデはばつが悪そうに金糸の髪を掻いた。
石化薬はコカトリスの嘴を特殊な錬成陣で液体化したもので、1匹のコカトリスから1つしか精製できない代物だった。フリーデは2つ持っていたが、石化薬、解毒剤共に、カシアスに言い値で売ってしまったという。
しかも、彼女が以前作った『コカトリスの瞳』は効かず、元に戻す方法は解毒剤のみだった。
これからコカトリスを捕まえるとしても、先ずどこに生息しているかから調べなければならず、捕まえられたとしても、精製には最低2カ月は掛かるそうだ。
「‥‥なら、カシアスの持っている解毒剤を戴くしかないな」
絶狼の結論に静慈達は頷いた。
(「お姉ちゃん、もう少しで元に戻せるよ。そうしたら一番にぎゅっと抱きつきたいな」)
抱きつくと日向の匂いがするフレデリカに想いを馳せるティアイエルだった。