【優駿・春】『サツキ賞』

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜13lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:5人

冒険期間:07月02日〜07月11日

リプレイ公開日:2005年07月10日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはとある日の午後。
「税金ですか‥‥」
「ええ、税金です。ここまで派手に賭事を行なっている以上は、課税も止む無しというところですから‥‥」
 プロスト領・特設競馬場事務室にて、ノルマン徴税官がプロスト卿にそう告げていた。
「はあ‥‥まあ、仕方ないというところですか。それで、税金はどれぐらい持っていくお積りです?」
 そう告げるカイゼル卿に、徴税官は一枚の羊皮紙を見せる。
「‥‥ドレスタットより高いですねぇ‥‥」
「ええ。掛け金が高いから止む無しというところです。もう少し掛け金を下げれば、それなりに考えましょう」
 その言葉に、取り敢えず納得してプロスト領は徴税官の差し出した証書にサインを入れる。

──ところ変わって冒険者ギルド
「あ、これはいらっしゃいませ」
 ペコリと挨拶をするのは新人受付嬢エムイ・ウィンズ。
「今月のレースの依頼です。レース名は『サツキ賞』。2000mダートコースです。今回も、乗馬に精通している実力のある冒険者をお願いします」
 そう告げて、プロスト卿は其の場を立ち去った。


●出走場情報(前人気)
1:オロッパス卿所属『風のグルーヴ』
2:プロスト卿   『漆黒のシップ』
3:マイリー卿所属 『全能なるブロイ』
4:アロマ卿所属  『怒りのトップロード』
5:ディービー卿所属『旋風のクリスエス』
6:オークサー卿所属『帝王・トゥーカイ』
7:カイゼル卿所属 『絹のジャスティス』

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2128 ミルク・カルーア(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3073 アルアルア・マイセン(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

サラ・ミスト(ea2504)/ フェリーナ・フェタ(ea5066)/ シャルロッテ・ブルームハルト(ea5180)/ ライラ・メイト(ea6072)/ イオン・アギト(ea7393

●リプレイ本文

●始まりますよッ〜ノルマン・サツキ賞〜
──春G1・第三戦
 ノルマン南方シャルトル地方・プロスト領特設コース。
 すでにおなじみの、パリ貴族達の『娯楽の殿堂』。
 今回は第三戦・ノルマン・サツキ賞。
 コースは楕円形コース、距離2000m。
 今回はコース上がウッドチップを敷き詰められたダート仕様となっている。
 走るのは、前回に引き続き選ばれし7頭。
 今回、レースを制することができるのは一体どの馬か!!

──アロマ厩舎
「脚質は先行タイプですね。そこから逃げきるかどうかはまだ‥‥」
 アロマ厩舎にて、カルナック・イクス(ea0144)は厩務員に『怒りのトップロード』の脚質について問い掛けていた。
「先行タイプですか?」
「ええ、前にさえ出れば。あとは騎手の扱いとスパートのタイミングしだいですよ。もっとも、それがはっきりとしてきたのはここ最近なんですけれどね」
 その厩務員の意見も参考に、カルナックは調教開始。
 併せ馬も行いつつ、笈きりを組み込んだ調教スケジュールでしっかりと調整。
 体力の衰えや疲労がないかなども念入りにチェック。
「あとは本番を待つだけだな‥‥」
 

──カイゼル厩舎
「‥‥すいません」
 厩務員室にて、カイゼル卿に頭を下げているのはウリエル・セグンド(ea1662)。
 初めてオーナーであるカイゼル卿に出会い、まずは簡単に挨拶を行うと、その後でウリエルは深々と頭を下げていた。
「まあ、頭を下げる必要はありませんよ。勝負は時の運ともいいます。決して実力がない訳ではありませんし、なにより『風のグルーヴ』が出走している時点で、そう簡単にトップを取る事は出来ないとは思っていました。いままで通り楽しんでください」
 そう告げると、カイゼル卿は自分の愛馬でコースに出る。
「それでは」
 ウリエルはそのまま厩舎に向かうと、『絹のジャスティス』をコースに連れていく。
 そして念入りに体調を調べ、そしてスタミナを付ける為の特訓を開始。
「素直ないい馬‥‥なんだよな‥‥でも‥‥」
 競走馬である以上は、トップを取らせてあげたいと、ウリエルは思った。
 そしてその事を厩務員達に告げたとき、厩務員はただ『無理はさせないように』とだけ告げていた。
「‥‥トップを‥‥とれれば‥‥」
「次に、『絹のジャスティス』は貴方をさらなる高みへと連れていきたがります‥‥『静かなるスズカ』と同じタイプの馬ですから‥‥」
 そして行き着く先。
 それをウリエルは、初めて耳にした。
 
 ドレスタット冬・G1の『静かなるスズカの悲劇』

 奇蹟を見せた『静かなるスズカ』の最後を。
 そして『絹のジャスティス』が、あの『静かなるスズカ』に近いタイプの馬であることも。
「ですから、無理はさせないで欲しいのです。生きて走ってこその馬ですから‥‥」
 

──オロッパス厩舎
「多少、脚が腫れていますか‥‥」
 厩舎入りしたカイ・ミスト(ea1911)。
 そのまま厩務員達に挨拶を行なった後、カイは『風のグルーヴ』の元に向かうとまず体調を見てみた。
「ええ。あのレースのち、暫くはなにも無かったのですけれどね‥‥ここ数週間で、脚の筋肉が張り詰めてしまいまして、今は調教も休んでいます」
 厩務員の深刻な意見。
「そうですか。無理は出来ないというところですか‥‥」
 そう告げると、取り敢えずカイは『風のグルーヴ』の手綱を引いて外にでると、そのままマイリー厩舎へと散歩がてらに歩いていった。


──ディービー厩舎
「魔法使用ですか‥‥」
 腕を組んで考え込んでいるのはディービー卿。
 ミルク・カルーア(ea2128)はディービー卿に挨拶を行なった後、レースでの魔法使用について質問をしていた。
「はい。例えばオーラテレパスなどで馬との意思疎通を計るとか行なってよいものなのでしょうか?」
「ああ、レース直前使用でなく、且つ、レース中も効果を発揮しているような魔法で無ければ大丈夫ですよ。ドレスタット競馬の時も、確かそういう使い方で馬との意思疎通を計っていた方もいらっしゃいましたから」
 つまり、出走前とか調教中ならOKということでした。
「では、その方向でやらせていただきますわ」
 そう告げると、ミルクは早速調教開始。
 まずはレースで使われるダートコースを再現してもらい、ダート感覚を身につけさせる。
 並行して今までと同じくスタートダッシュの訓練、スタミナ強化の訓練と、やらなくてはならない訓練は山のようにあった。
 そしてなにより、様々な距離を色々と走ってきたおかげで、本来の適正距離の感覚を失いつつあった。
 それを取り戻す為の、適正距離を走る訓練と、一通りのことはやっていった。
 そして残るはレース本戦‥‥。


──マイリー厩舎
 とっとことー。
 クレア・エルスハイマー(ea2884)はのんびりと『全能なるプロイ』の背中で訓練中。
 一番大切なのはスタートダッシュ!!
 特設ゲートの中に入ると、外でタイミングを計ってくれている厩務員の合図と同時にダッシュ!!
「はいっ!!」
──ガシャーーン
 クレアの掛け声と同時に、『全能なるプロイ』は走る。
 いいタイミングが徐々に取れてきた頃、カイが『風のグルーヴ』を連れてやってきた。
「調子はどうですか?」
「まあまあですね。今日はどうなさいました?」
「馬の状態を知るのも勉強ですから」
 そう告げて、カイはグルーヴと『全能なるプロイ』を並べると、お互いの身体を撫でつつ、何処に疲れが溜まるかなどを一つ一つ説明。
 そしてカイは、クレアの調教の手伝いを行う。
 その結果は、吉と出るか凶とでるか。


──オークサー厩舎
「ハッ!!」
 手綱を思いっきり引きつつ、アルアルア・マイセン(ea3073)が特設ダートコースを駆抜ける。
 実戦さながらの特訓、そして厩務員達から得た、様々な情報。
 過去の自分のレースを振り返り、外から見ていた厩務員達から、他の騎手の走りを教えてもらう。
 そしてそれらを自分の頭の中で纏め上げ、完全なるシミュレートを行いつつ、仮想敵を設定して実戦走法で走っていた。
「随分とがんばっていますねぇ‥‥」
 ゴールラインを駆抜けていくアルアルアを見つめつつ、オークサー卿がそう呟く。
 一切の妥協を許さない走り。
 それを身につけるまで、アルアルアはひたすら走りつづけていた。


──プロスト厩舎
「視覚がブッ壊れる‥‥それぐらい危険だ」
 そう告げているのはグリード。
 カタリナ・ブルームハルト(ea5817)は、今回もグリード氏を見付けては、例の『領域』について問い掛けていた。
「グリードさんにも見えていたのでしょう? ガツンってきました? フワッと来ました?」
「突然視界が止まるからな。フワッという感覚に近いか。自分でコントロールできたとしても、絶対にその領域は飛込んじゃあいけないぜ‥‥それじゃあな」
 それだけを告げると、グリードは其の場を立ちさって行った。
「さて、前回はありがとね、今度も一緒に頑張ろうね♪」
 そしてカタリナも調教を開始。
 スタート訓練と距離間隔の調整、特に今回のダートコースを想定しての実戦に近い距離を走り、前回のレースの時の距離感を捨て去り、今回の距離感を掴むようにする。
 時折クレアの訓練に付き合ったり、あとは、全身マッサージ。
 とにかく馬体を労るような訓練であった。


●今回もいきます〜エモン・プジョーの俺に乗れっ!!〜
──スタート地点
 レース当日。
「お待たせしました。パリ開催第3戦。今の所一番人気は『漆黒のシップ』だぁ。ダートコースもなんのその、如何なる悪環境をも敵としないあの走りに、もうファンは釘付けだぁ!! そして二番手は『怒りのトップロード』。賭けの受付はそちらの帽子の男性の所へ。オッズは右の掲示板をご覧くださいだっ!! それではっ」 
 おや? 今回も冒険者騎手が何か勝馬投票札を買っているが。
 頼まれたのね?

──パパラパーララーー
 各馬一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である7貴族から、まずはカイゼル卿が代表として前に出て挨拶。
 それが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。
 先頭を走るのは『全能なるプロイ』。続く二番手は『怒りのトップロード』。さらに1馬身差で『旋風のクリスエス』『帝王・トゥーカイ』『風のグルーヴ』『絹のジャスティス』『漆黒のシップ』と続きます。

「また失敗したぁぁぁぁぁぁぁ」
 おっと、スタートで失敗したカタリナ。いきなり最後方からのスタートとなった模様。
「あら? 巧くいきましたわ‥‥」
 それとは対照的に、手本ともいえるきれいなスタートを切ったのはクレア。
 華麗に走り出した『全能なるプロイ』に、観客は釘付け。

 残り1600m
 順位に変動あり

──ドドドドドドドドドドトドドドッ
 一気に大外から逃げの体勢を取り戻した『漆黒のシップ』。いきなり2番手に付けた。
 そして『怒りのトップロード』も一気にペースを取り戻し、まさにトップに踊り出た!!
「よしっ。このまま逃げきりでっ!!」
 カルナックの檄が飛ぶ!!

 残り1400m
 順位に変動あり

「前にでないとっ!!」
 おっと、ここで『旋風のクリスエス』の切り札炸裂!! ドレスタット競馬で見せた『超逃げ』走法が炸裂!! 
 ぐんぐんと加速を開始する『旋風のクリスエス』。
 だが、その『旋風のクリスエス』をしっかりとマークし、アルアルアが『帝王・トゥーカイ』の加速を開始。
 2頭ともいっきに『全能なるプロイ』を抜き去った!!
「いくよ『絹のジャスティス』」
 ウリエルもゆっくりと体勢を低くすると、『絹のジャスティス』に負担の掛からない範囲で加速開始。
 とにかく優雅に『全能なるプロイ』をあっさりと抜き去った!!


 残り1200m
 順位変動なし

 残り1000m
 順位変動なし

 残り800m
 順位変動なし
 
 残り600m
 順位変動あり

 
「『レースで大切なのは、技術云々よりも勝利への意欲ですよ』か。私自身にも、それは言えますね‥‥」
 カイ、ここで『風のグルーヴ』を大外にいれると、伝説の『走り』を開始。
 ぐんぐんと他の馬を抜き去り、一気にトップに踊り出た!!
 その後方、『旋風のクリスエス』も前に出るが、その横を一陣の『疾風』が駆抜けた!!
「このままっ。頭の中のシミュレートでは完全勝利でしたわっ!!」
 アルアルアがここで前に出るっ!!

 残り400m
 順位変動あり

 各馬ラストスパート。
 ここで残った力を一気に爆発させた!!

──そして
「ゴォォォォォォォォォォォォォルッ。トップは『帝王・トゥーカイ』。ついに念願のトップ、念願の優勝!! 帝王の名を君臨させたぁぁぁ。続いて2着はやはり『風のグルーヴ』。この走りは本物だァァァ」

1着:『帝王・トゥーカイ』
2着:『風のグルーヴ』
3着:『漆黒のシップ』
4着:『怒りのトップロード』
5着:『旋風のクリスエス』
6着:『絹のジャスティス』
7着:『全能なるブロイ』

「やりましたわっ!!」
 そしてウィニングラン。
 馬上で手を振るアルアルアと、その後方でゆっくりと走るカイ。
 脚にハンデを背負っての2着。それがどういう結果であったかは、カイ自身が判っていた。

──そして
「賞金‥‥ね」
 大量の銀貨の詰まった袋を受け取って、満足そうな表情のアルアルア。
 ちなみに勝馬投票では、『帝王・トゥーカイ』に賭けたものにはなんと2Gが支払われたらしい。

●神聖歴1000年春G1・全成績(1着−2着−3着)
『風のグルーヴ』    1−2−0
『漆黒のシップ』    1−0−2
『帝王・トゥーカイ』  1−0−0
『怒りのトップロード』 0−1−1
『旋風のクリスエス』  0−0−0
『絹のジャスティス』  0−0−0
『全能なるプロイ』   0−0−0


〜To be continue