竜の住まう地〜古き民の伝承〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:21 G 72 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月20日〜11月04日

リプレイ公開日:2007年10月28日

●オープニング

──事件の冒頭
 静かな森。
 その森の中にある湖畔。
 そこには、かつて村が在った。
 竜の民と呼ばれる、古くからこの血に住まう者たちの村。
 だが、今はそこには誰も居ない。
 ある日を境に、村人は皆、消えてしまっていた。
 
 当時、この村を訪れていた冒険者はこう語る。
「アーオラホントニオドロイタダヨー(訳:ええ、ほんの一瞬でした。私がちょっと湖の中にある小島を観察していた。そうですね。本当に少しの時間ですよ‥‥)」
 ちょっとの間を明けて、当時を思い出すように話を続けるジャンポール・フォン・グーデンブルグ。
「ドコイッタダカ、サーッパリワカンネ(訳:慌てて村の真ん中に戻ってみたら、誰も居なかったんです。ええ、さっきまで食事を作っていた人も、愉しそうに話をしていた人達も‥‥)」
 
 一体何が起こったのか。
 それは誰にも判らない。
 ただ、湖の中央にある洞窟。
 そこから見ていたであろうドラゴンは、何かを知っているのかもしれない‥‥。



●ニライより事前情報
 現在、ニライ市政官から提示された情報はこれが全てである。

・目的地は『未探検地域』の更に奥、実際に存在するか判らない。

・その宝珠の言伝えは、南方の古い民から聞き出したらしいが、その民も、昨年の動乱で村が滅ぼされてしまった為、詳しい場所その他は全て不明
 加えて、最近、この村の人たちが消えたという情報がある‥‥。

・発見者のジャンポールなんとかは後日、パリ市街で死体で発見された。

・伝承では竜の他に様々な魔物が住まうらしい。

・セフィロト騎士団が宝珠回収に動いている模様。

・旧街道付近は『冒険者を狙う盗賊団』がでるので注意。

 以上、健闘を祈る!!

●今回の参加者

 ea1671 ガブリエル・プリメーラ(27歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4107 ラシュディア・バルトン(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3529 フィーネ・オレアリス(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb4667 アンリ・フィルス(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

ミカエル・テルセーロ(ea1674)/ ラファエル・クアルト(ea8898

●リプレイ本文

●果てしなき日々に
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「‥‥ウインドスラッシュ?」
 そうミカエルに問い返しているのはガブリエル・プリメーラ(ea1671)。
「うん。それもかなり腕のいい魔法使いだって、死体を見ていた人が言っていたよ」
 そう告げるミカエル。
「それで、盗賊団の事なんだけれど‥‥」
 自慢の髪を撫で上げて、ラファエル・クアルトがそう話を切り出す。
「何か判ったのかしら?」
「あいつらが強いって言う事と、後ろに大きな組織がついているって言う事。組織の名前はえーっと『沈黙の旅団』」
 その名前は初耳である。
「‥‥その名前はわからないな。どこの秘密結社だ?」
 そう告げるアンリ・フィルス(eb4667)。
「情報屋のミストルディンさん、何かしりませんか?」
 ハーブティーを差し出しつつ、そう問い掛ける薊鬼十郎(ea4004)。
「沈黙の旅団か‥‥私も詳しくはないが、古くからこの地にいる者たちによって作られたという話は聞いている。何処かの貴族がバックアップして、何か企んでいるとかもな‥‥」
 そう告げつつ、ハーブティーを静かに呑むミストルディン。
「まあ、向うに向かうのも危険だからな‥‥」
 そう告げ、ラシュディア・バルトン(ea4107)はガブリエルに『蹄鉄の護符』を手渡す。
「ここまでの話を纏めると‥‥『真紅の悪魔』という盗賊団の背後には『沈黙の旅団』という組織が付いている。そして、その組織に援助している貴族がいて、このノルマンで何かを企んでいるという事だな‥‥」
 デュランダル・アウローラ(ea8820)が話を纏めると、そのまま椅子に置いてあった荷物を馬に積みに向かう。
 そして戻ってきてから一言。
「まず、状況が大きく変わったため、今後の行動の為の状況作りを行う方が良いだろう」
 そう告げると、ミストルディンの用意した地図を広げる。
「今回、その盗賊団を潰しておかないと、今後の調査に影響がでるということだな」
 その通りデュランダル!!
「で、拙者は途中で江戸村に立ち寄り、フィーン殿も連れていきたいのだが‥‥」
「フィーン?」
 アンリの言葉に、そう問い返すフィーネ・オレアリス(eb3529)。
「うむ」
「まあ、とりあえず全員の準備が終わったら、出発するとしよう‥‥」
 そのデュランダルの言葉で、一行は出発準備を開始した。


●冒険者狩りのプロフェッショナル
──シャルトル南方・プロスト領
 ここに来る途中。
 一行はフィーンを迎えにノルマン江戸村に立ち寄った。
 だが、フィーンはどうやら不在だったため、そのままプロスト領までやってきた。
 ここまでは新街道でもやってこれる為、ゆっくりとした気分でいた。
「これはご無沙汰しています」
 ミハイル研究室で、一人の研究員がそうラシュディアに挨拶を返す。
「ご無沙汰だな。シャーリィはいるか?」
 そう告げると、研究員が暗い表情をする。
「‥‥シャーリィ教授は、今はいません」
 そう告げて、一行を居間に案内する。
 そこには、綺麗に作られたシャーリィの姿をした彫像がある。
「ふむ。どうしてシャーリィが石化している?」
 そう冷静に問い掛けるラシュディア。
「綺麗に‥‥ギュンター君みたいですねー」
 鬼十郎もそう告げる。
「精霊信仰の調査で、南方遺跡に向かったのです。そこで変なトラップに引っ掛かったみたいで‥‥ストーンを解除できればいいのですけれど、そんな高位の魔法使いがこの辺りにはいないので‥‥」
 そう告げる研究員。
「えーっと、プロスト辺境伯は? あの方は賢者でしょう?」
 ガブリエルがそう話し掛けるが、研究員は一言。
「パリでの執務から、ここ最近は戻っていないのですよ」
「私は月ですし、ラシュディアさんは風と水‥‥地の精霊使いはいないのでしょうか?」
 ガブリエルがそう告げて仲間たちを見渡すが。
 見事に地の精霊使いがいない。
「まあ、仕方ないか。で、精霊信仰で何か聞いていないか?」
 そう研究員に問い掛けるラシュディア。
「全てのものに精霊は宿ります。それらを慈しみ、感謝する日々を送るのが『精霊信仰』だそうです」
 研究員の一人が、そうラシュディアに説明する。
「ラシュディア、これ何か判るか?」 
 そうアンリが問い掛けつつ、シャーリィが抱きしめている石版にきがつく。
「ああ、石版だねぇ‥‥」
 そう告げつつ、シャーリィの像に近付くラシュディア。
 抱しめている内側に文字が刻まれているらしく、また角度が悪すぎる為文字は殆ど見えない。
 それでも、ラシュディアは何か文字を読み取る事に成功。
「‥‥生命の‥‥いや、命の‥‥再生と破壊‥‥再構成する為の‥‥うーーーむ。前後が判らないな」
 頭を捻るラシュディア。
「やっぱり、ラシュディアさんでも駄目でしたか‥‥」

──プッツーン

 あ、研究員の一言がラシュディアの中で何かを切った。
「‥‥次に来たときは完全解読してやる。それまでに、シャーリィの石化解除を頼む」
 そう告げてラシュディアはその場を後にした。

──そして
 ラシュディア達は、プロスト城地下に立っている。
 暗黒面に囚われ、プロスト卿に氷漬けにされた竜の民の少年。彼が眠っているアイスコフィンの状態を確認する為である。
「大丈夫よ‥‥少年は眠ったまま‥‥」
 地下に住んでいる水の精霊。
 その彼女が、アイスコフィンの監視をしているらしい。
「それにしても‥‥この地下迷宮には、よくもまあこんなに‥‥」
 デュランダルがそこまで告げて、言葉を止める。
「うーむ。実に奇妙な空間でござるな‥‥」
 アンリは入り口でそう呟く。
 なにはともあれ、少年が無事である事を確認した一行は、いよいよ竜の民の村へと向かう‥‥。



●旧街道攻防戦
──シャルトル→エルハンスト領
 シャルトルを脚にして、いよいよ一行は旧街道に突入した。
 最初はそれなりに人が通っていた。
 商隊の馬車ともなんどかすれ違っていた。
 そしてその日の夜。
 停車場に馬車を止めていた一行を、深夜、盗賊団が襲撃してきた!!
「隊列を!! ウィザードは後方でバックアップ、戦士は前衛でっ!!」
 そう叫び、抜刀するデュランダル。
 そしてアンリも愛用の『石の棍棒』を、鬼十郎はシルバーダガーを引き抜く。
「貴様達は冒険者だなっ!! 身ぐるみ置いていけば良し、男達の命は助けてやる。女達は奴隷として売りとばーーーーーアブシッ!!」
──ドッゴォツ
 リーダーらしき人物の頭部を、アンリが一撃で粉砕した!!
「ふん。ごちゃごちゃと五月蝿いでござる」
 アンリがそう告げると同時に、敵の副リーダーが部下達に命令を出した。
 そして一斉に、襲いかかってきた!!
「影よっ!! 彼の者を‥‥」
 と叫んでいるのはガブリエル。
 もっとも、高速詠唱なので、既に発動。
──ビシッ
 一人の盗賊の影がバインドされ、身動きが取れなくなっている。
「そのまま、貴方にはあとで色々と‥‥」
 そう呟くガブリエルの背後に、盗賊が二人、ナイフを引きぬいて駆けこんできた!!
 そして素早くガブリエルを切り刻む。
──ガギッ
 だが、その刃はガブリエルには届かない。
「いたいけな女性を切り刻むなんて‥‥許せない‥‥」
 素早くナイフを持っている腕を掴むと、そのままがっちりと関節を固め、そして大地に向かって投げ付ける!!
──ダァアン!!
「薊無想流徒手投技『山茶花落とし』。そのまましばらくそこでじっとしていなさいっ!!」
 フン、と襟を正し、素早くもう一人のほうを向く鬼十郎。
「貴方も同じ目にあいたいの? 悪鬼仕込みの体術、痛いわよ‥‥」
 あ、それは納得。
「‥‥セーラよ。彼の傷を癒したまえ‥‥」
 フィーネがデュランダルの傷を癒す。
 3人がかりの連携プレーで、デュランダルの全身が瞬時に切り刻まれたのである。
 フィーネは素早く間合を詰めると、そのまま後方に下がってきたデュランダルにリカバーを発動。
 入れ違いに飛込んだアンリが、3人を必死に相手しているが、そのアンリでも多勢に無勢。
 一撃一撃の精度と強さはアンリが上であるが、手数で攻められると非常に気まずい。
 実力では遥かに上でも、少しずつアンリの肉体も刻まれはじめた。
「後方にっ!!」
──チュドーーン
 後方からラシュディアの放ったライトニングがアンリと盗賊達を分け隔てた!!
「そのまま後方に!! ここは突っ切る!!」
 デュランダルがそう叫ぶと、残った一行は一斉に後方に撤退する。
 幸いな事に、盗賊達もそれ以上は追いかけてこなかった。

──そして
 逃げ延びた一行は、翌日、停車場に戻り馬車を確認する。
 荷物は奪われた形跡がなく、どうやら敵もあの後で逃走したようである。
「ふぅ‥‥参ったわ」
 ガブリエルが荷物の確認をして、そう呟く。
「折角一人バインドしたのに」
「でも、あそこは‥‥逃げ延びて正解‥‥ですよ‥‥」
 おっと、貧血ぎみで顔色の悪い鬼十郎がそう呟く。
 朝が早いから‥‥という訳ではなく、どうやらそういう体質のようである。
「‥‥傷はもう大丈夫と‥‥で、これからどちらに向かうのかしら?」
 フィーネが一行にそう問い掛ける。
「このまま調査に向かっても、落ち着いて調べられないような気がするのだが‥‥」
 デュランダルの言葉に、一行は肯くが。
「敵の動きは組織だっていたでござるよ。統率も取れていて、リーダーらしき男が死んでも、すぐに別の男がリーダーとなり、敵がまるで一つの生き物のように連携して襲いかかってくる。相手するには、ちょっと数が足りないでござる」
 冷静に告げるアンリ。
「このまま先に進んだほうがいいと思います。どうやら、この辺りにはいなさそうですから‥‥」
 上空を飛んでいるラファガを見上げ、そう告げるガブリエル。
 ということで、一行はこのまま先に進む事になった。


●そして
──竜の民の村
 報告にあったとおり、竜の民の村には誰も居ない。
「‥‥前に村長と話した時‥‥巫女が拐われてる、竜の力が使えない間を狙われたらって話がでたけど‥‥」
 まさにガブリエルの告げたとおり。
「とりあえず、全員で調べてみて、何か判ったらここに集ったときに検証するということで‥‥」
 ラシュティアの意見で、一行は早速調査開始。
「‥‥ここが、恐らくは集会場ですね‥‥」
 村長らしき人の家を調べて、おそらくは彫像が在ったであろう場所をじっと調べている鬼十郎。
 だが、特に何も感じなかった。
「ここには確かに竜の彫像があった筈なのです。台座の形がそれを表わしていますけれど‥‥」
 頭を捻る鬼十郎。
 だが、それ以上は何も判らない。
 その為、1度建物の外に出て、別の場所を調べることにした。

──その頃のラシュディア
 湖畔で、じっと島を見つめているラシュディア。
 その傍らに立っている『フロストウルフのニム』が、湖の中の小島を見つめていた。
「ニム、あの島か‥‥」
 そう告げて、ラシュディアが島を見つめる。
──ガサッ
 と、何かが島の中で動いた。
「‥‥なんだ‥‥人影?」
 瞳を細め、。島をよく見るが距離が離れすぎている為によく判らない。
「どうしたのですか?」
 そう問い掛けるのはガブリエル。
「何かがいた‥‥ただ、それがよく判らない‥‥」
 そう告げるラシュディアに、ガブリエルは空を見上げて静かに肯く。
「夜まで待ってくけれれば、調べられますから‥‥」

──そして夜
 月は夜空に輝き、優しい光で村を包む。
 湖畔に集った冒険者達は、ただじっとガブリエルの方を見つめる。
 そのガブリエルは詠唱を始める。
「月の精霊よ‥‥私をかの地に誘いたまえ‥‥」
 そしてガブリエルの全身が輝き、そしてスッと消える。

──その頃のガブリエル
 現在位置は小島の湖畔、樹の影。
 ムーンシャドゥによってガブリエルは小島に転移してきた。
 そしてまず、足元に広がる光景に驚いた。
「人がいる。それも大勢の‥‥」
 明らかにそこには、人のいた気配が残っている。
 焚火とテントの設置跡、それもかなりの人数によるものであろう。
──グルルルルルルルルルルルルルル
「村には確か船は無かったから‥‥どうにかしてここに来て調べる方法を‥‥」
 そう告げたとき、ガブリエルの背中に激痛が走る。
──ザシュッ!!
「‥‥いった‥‥い‥‥何‥‥が‥‥」
 突然のことで、何が判ったかよくわからない。
 ただ、大地に倒れたのであろう自分と、生暖かい感触、そして足元から冷たくなっていく自分が確認できた‥‥。

──翌日
 一行は、夜通しガブリエルを待っていた。
 だが、朝方になっても、ガブリエルは戻ってこない。
 止むを得ず、どうにか小島に向かおうと算段した一行は、村の中でなにか役に立つものを捜していた。
「ガ、ガブリエル!! 誰か傷の手当を頼む!!」
 それは村の真ん中を調べていたデュランダル。
 その近くの木陰に、ガブリエルは横たえられていた。
 デュランダルが調べた所、まだ意識はある。が、出血が酷く、薬も受け付けない‥‥。
 そのため、一行は1度村をあとにして、ガブリエルの傷の手当を出来る場所に向かうことにした。



●消えた存在
──精霊の民の村
 アンリとフィーネの二人は、一行とは別れてさらに森の置く、精霊の民の住まう村にやってきた‥‥。
「‥‥こいつは‥‥まいったのう」
 アンリが困り果てて周囲を見渡す。
 燃え落ちた村、腐った死体の山。
 何者かによって村は襲われ、強奪されたかのように見える。
「駄目ね。生き残りはいないわ‥‥」
 フィーンもまた、村の中を調べて回ってみた。が、どうやら生き残った人はいないようである。
「取り敢えず、死体を調べるしかないでござるな‥‥攫われたシィ殿が死んだかどうか、それだけでも確認せんと」
 アンリの意見にフィーネも同意。
 かくして二人は調査を開始した‥‥。
 そしてアンリとフィーネの二人は村に誰も居ないこと、そして何者かが、囚われていた誰かを馬車で連れ去ったことを確認した。
 森の外に在る街道に、大勢の人の足跡が発見できたのである。
 そして村の片隅に作られた、まだ新しい墓標。
 突き刺さっているのは、刀身が砕け、柄とその一部のみが残された『ビックリ鈍器製カリバーン改』。
「なんてこった‥‥」
 そこに眠っているのは、アンリの知っている『フィーン』であった。


●そしてプロスト領
──プロスト城広間
 一旦街に戻ってきた一行。
 ガブリエルの怪我も、ノートルダム大聖堂の司教によって完治。あと少し遅かったら、甦生という状況であったらしい。
 アンリの報告から、どうやらシィは連れ去られたという事も判った。
 また、フィーネが残っていた足跡を検証した所、恐らくは戦士、もしくは装備の整った男達であろうという事も確認。
 この辺りで外れらしい者たちが射る所は絞れてくる。
 そしてガブリエルの見たもの。
 竜の為の村に在った筈の『竜の彫像』、それが砕けて転がっていた。

 何か、かなり裏がありそうで、これから先どうしたものかと‥‥。

──Fin