ミハイルリポート〜ザ・オークション〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月20日〜09月25日

リプレイ公開日:2004年09月25日

●オープニング

──事件の冒頭
 いつものミハイル研究所。
 これまたいつもの如く、大勢の研究員達が出入りしては、様々な石版の解析を行なっていた。
 その日、ミハイル教授は次の調査の為の準備を行うため、商人ギルドに出向いていた。 
 その脚で南ノルマン方面に出かけるらしく、出発当日までは帰らないとの事。
 その為、助手であるシャーリィ・テンプルはある事を企てていた。
「そうよ、いつまでも助手というのは‥‥ここは私も、遺跡調査に出かけて成果を上げれば!!」
 まあ、考古学者なら誰しも見る夢。
 でもねぇ。
「‥‥ここにあるものは全て教授のものだし‥‥自分で石版をてっとり早く手に入れる方法は‥‥」
 そこでシャーリィ考えた。
 蛇の道は蛇ということで、先日逮捕されたロイ・バルディッシュ研究室から押収されたものを安く買い取ってこようと。
 ところがどっこい。
 その応酬品の一部は『裏オークション』と呼ばれる盗品関係のオークションに流されてしまったことが確認。
 それでもシャーリィは諦めない。

●冒険者酒場
「‥‥ということなのです。正式にギルドに依頼をだすのがちょっと難しい依頼なのでして‥‥」
 酒場の一角で、シャーリィが君達にそう話し掛ける。
 二日後にとある村で行われる『裏オークション』に参加し、目当ての石碑を競り落とす。
 何でも参加者の中には、素性や身分を明かすことの出来ない人たちも多く、皆仮面などを被って参加しているらしい。
 シャーリィもある人物のつてで、その参加権利を得たようである。
「今回は『剣の都』と呼ばれる場所について記述されている石碑を競り落としたいのです。ですが、かなり人気が高いらしく、万が一競り落としても、帰りに襲われる可能性もあるので‥‥」
 そう話し掛けると、シャーリィは引き受けていただけるのでしたら研究室まで来てくださいとだけ伝えて、その場を立ち去った。

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1861 フォルテシモ・テスタロッサ(33歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea5512 シルヴァリア・シュトラウス(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

●街の中で
──パリ市内
 今回の依頼を受けた一行は、まずは簡単な打ち合わせを行なった後、出発当日にシャーリィ・テンプルの元を訪れていた。
「独自に遺跡を調査し、その成果を世間に認められる‥‥考古学者の夢ですよねぇ‥‥。一緒に頑張りましょう、シャーリィさん」
 それはゼルス・ウィンディ(ea1661)。
 知識を探求する者として、ゼルスもシャーリィの考えには同感であった。
「一つ質問しても良いかしら?」
 それはオイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)。
「ええ、どうぞ」
 にっこりと微笑みながら、シャーリィはオイフェミアにそう告げる。
 ただ、その笑顔は無理をしているように感じる。
 どう見ても、疲れが貯まっている顔であった。
 年頃の女性にしては、目の下に隈が出来ていたり、肌の艶か少ないようにもオイフェミアは感じ取った。
「テムプルちゃんは、何故50Gもの大金を個人でヒョイとだせるのかしら?」
 その言葉に、シャーリィは笑顔で答える。
「実は、教授には内緒で石版の解析や遺跡探求者達に対してのアドバイスを行なっているんです。昨日も、深夜にトレジャーマップの解析依頼がきまして。朝まで掛かってしまい、流石に疲れましたわ」
 ちなみに、この話は別の依頼のことである。
「そうなんだ。あ、それともう一つ。万が一、襲撃者が出たときの為に、偽物の石版を用意して欲しいのよ」
 そのオイフェミアの意見には、全員が同意していた。
 しばらく考えた後、シャーリィはちょっと待っていて下さいと告げると、小さな石版を数枚持ってきた。
「多分、この辺りので大きさはあっていると思います。3枚ありますから、手分けして運びましょう」
 そして一行は、停車場に向かい、路線馬車がやってくるのを待つことにした。

 路線馬車がやってくるまでまだ時間がある為、シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)は近くの冒険者酒場まで向かうと、あちこちで噂を流し始めた。
「ふぅ。このあたりはこれで良いわね。あとは村の酒場で適当に流さないと」
 良い仕事していますね、シルヴァリアさん。


●村にて〜これは意外です〜
──宿
 一行は馬車を降りてから手分けして村に入っていった。
 全員が一緒に入っていくと後々怪しまれてしまうのではないかという提案を受けて、適当な人数に別れ、間隔を置いて入っていく。
 宿でも部屋の手配に細心の注意を払う。
 シャーリィは護衛であるゼルスと一緒の部屋。
 年頃の女性がうら若き男性と一緒の部屋というのにもかかわらず、シャーリィはそんなことを気にも止めていなかった。
「夕方からは出品物の展示もあるそうですので、皆さんにうまく伝えてくださいね」
 シャーリィのその言葉に、ゼルスはこっそりと他の連中にも連絡を入れる。
 
──教会
「ご苦労さまです。わざわざこのような辺鄙な村の教会までおこし戴きまして」
 まだ若い牧師がフランシア・ド・フルール(ea3047)を迎え入れる。
 村にある小さな教会に単独でやってきたフランシアは、他のメンバーとは別行動を行なっていた。
 あらかじめ細かい打ち合わせは行なっていた為、襲撃などに対しての対処も万全。あとはオークションが無事に終る事を願っていた。
「御気遣い感謝しますわ。これもタロン様の御導きです。司祭様はいらっしゃいますか?」
 丁寧に挨拶を行なってから、フランシアは司祭とも話がしたいと思い、そう問い掛けた。
 綺麗に作られているタロンの教会。
 色とりどりのステンドグラスから差し込む光が、教会にさらなる神秘性を漂わせている。
「実は。司祭様は急用で出かけておりまして‥‥領主様の元に出向いています。お帰りが何時になるか判りませんので、私が代行を務めさせていただいています」
 何か起こったのかとフランシアは予感した。
 だが、今は目の前の事を片付けるのが先決。
「そうでしたか。では、司祭様には後日改めてご挨拶に伺わせていただきますわ」
 そう告げると、フランシアは今宵泊めていただく為の部屋に案内してもらった。


●展示会〜お宝の山ざっくざっく〜
──ちょっと大きめの小屋
 村外れにある小屋。
 そこにシャーリィ達冒険者一行、そして宿に止まっていた他の参加者達は案内された。
 そこは壁伝いに今回の展示品が綺麗に並べられている。
「シャーリィさん、どれが御目当ての石版ぢゃ?」
 どう見ても貴婦人といういでたちに変装しているのはフォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)。ちなみに今回は『マダム・ルージュ』と名乗っている模様。
「この石版ですわ。でも、角の部分が欠けてしまっていますわ‥‥」
 静かにそう告げるシャーリィ。
 よく見ると、他の参加者の中にはこの石版しか見ていない者もいるようである。
「これはこれは皆さん良くいらっしゃいました。今宵は、我が主である『シルバーホーク様』の集めたコレクションを存分に堪能してください。事情により、これらは手放してしまうのですが、もし手に入れた皆さんは、これを大切に扱ってください」
 今回の主催である『シルバーホーク』の秘書官がそう皆に聞こえるように告げる。
(マジかよ‥‥)
 風烈(ea1587)は、会場の端でその秘書官の胸許に輝いているアクセサリーを見て心の中で舌打ちする。
 その胸許には、『銀で作られた鷹のレリーフ』がしっかりと付けられていたのである。
(ゼルス‥‥フランシア‥‥ここは危険だ!!)
 烈は本能的にそう感じ取った。
 もし、先日の『剣使いの盗賊』が姿を表わしたら、最悪な事態が発生する。
 仮面を付けているものの、これで何処まで隠しとおせるか心配である。
 そんな心配を感じ取ったのか判らないが、ゼルスはさっそく打ち合わせにあった作戦を開始する。
 ゆっくりと石版の近くに立ち、そこに秘書官がやってくるのをしばし待つ。
 そしてゼルスの近くにやってきたとき、ゼルスは静かに礼をすると、周囲にも聞こえる声で秘書官に話し掛けた。
「この石版ですが‥‥先日逮捕されたロイ教授の物だったという噂は本当ですか? 実は偽物だなんて事はないですよね? 専門家の鑑定書は? 出所は信用できるのですか?」
 そう問い掛けるゼルスであるが、秘書官は動揺する事もなく口を開いた。
「お客様。ここが普通のオークションで無いことは判っていますね? 偽物か本物か? それを保障する鑑定書など皆無。信じられるのは皆さんの目と知識。どうぞ、疑うのでしたら魔法でもなんでも行なってください!!」
 オーバーアクションの秘書官の声に反応して、数名の客がゼルスの元にやってくる。
「これは本物でしょう。私も以前、見せていただいた事がありますから」
「ええ。でも、あの時はこのように石版が欠けてはいませんでしたから。この傷は何処で?」
 一人の客が秘書官に問い掛ける。
「この傷は、とある剣によるものでして。ちょっと手違いがありまして、傷ついてしまいました」
「そうですか。まあ、文字とかが傷ついているのでは無いので、良しというところですか」
 秘書官がそんな会話をしているさなか、ゼルスはその傷口をマジマジと見た。
(剣の傷? どうやったら石版をこのように綺麗に切断‥‥まさか?)
 ゼルスの脳裏に、ある剣が浮かび上がる。
 慌てて烈の方を見ると、彼も今の会話を聞いていたらしい。
 静かに肯いて合図を送る。
「その話ですが、もう少し詳しく教えていただけませんか?」
 ゼルスがそう秘書官に頭を下げる。
「真に申し訳ありません。出品物の状態、入手経路などは全て口外出来ない規則になっておりますので」
 そう告げると、秘書官は別の客の元へと向かっていった。

(‥‥ようやく見つけましたわ)
 フランシアはある出品物の前で拳を握り締めながら、心の中でそう呟いた。
 眼の前に置かれている物は『赤い縞模様の入った鉱石』である。
 全く同じ形のものを、フランシアは以前見た事がある。
 とある島で鍛冶師が持っていたもの。
 大切な宝であり、そしていつかは魔法の武具を作ってみたいと思っていた鍛冶師のお守りでもあった鉱石。
 それが目の前で静かにたたずんでいる。
(烈さん。ありましたわ。あとは、剣の回収を行なわないと‥‥)
 そのままフランシアは、周囲を見渡してから他の展示品にも視線を投げかけた。


●そして翌日〜オークションは派手に〜
──オークション会場
 先日は宿でゆっくりと‥‥寝る事ができなかった。
 というのも、何故か蟲の大量発生。
 寝具に大量の蟲がついていたのである。
 それとの戦いにより、一行はあまり良く眠られなかった。
 それでもオークションが始まる頃には、一行は目がキラキラと輝いていた。
「それではっ、ロットNo1番。聖者ジーザスの脇腹を突き刺したと言われている聖遺物『ロンギヌスの槍』。最低入札は100Gから御願いします」
 いきなりこれかよ。
 とまあ、様々なオークションが続いていった。
 自費で参加もしようと思っていたオイフェミアとゼルス、シルヴァリアの3名だが、今回のオークションでは人形の入札も銀のダガーの入札も行なってはいなかった。
 銀ではない『魔法のダガー』は有りましたが、ちょっと高い。モンスターの人形は『珍獣剥製セット』なるものが出ていたが、実に可愛くない。しかもかなり高い。
 唯一『勲章』はオークションに出ていたものの、最終落札価格がゼルスの所持金を上まわってしまった。
 実は、皆さん非常に惜しい所でした。
 次回のオークションで頑張りましょう。
 そしていよいよ目当ての石版のときが来た。
「それではっ。ロッドNo21。ロイ・バルディッシュ先生の探し出した『古代王国への道標』。最低落札価格は10Gからどうぞ!!」
 その掛け声と同時に、一一人の参加者が手を上げた。
「15G」
「18G」
 次々と声がかかる。
「30Gぢゃ!!」
 手を開けだのはマダム・ルージュ。
 しかも‥‥。
「30G出ました!! もういませんか‥‥それではっ!!」
──コーーーン
 テーブルにあるハンマーが鳴らされる。
 石版を30Gでゲット!!
(ううむ。もう少し設定金額を下げればよかったかもしれないのう)
 競り落としたので、取り敢えずは依頼終了。
 あとは無事に帰還するだけである。
「最後にロッドNo22。摩訶不思議な鉱石。これの正体がなんであるかは、目利きのよい皆さんにはご理解頂けるでしょう。それでは最低落札価格30Gから!!」
 フランシアはこれを待っていた。
(石版の残高が20G。俺の所持金が18G。合わせて38Gと。フランシアのと合わせると‥‥54Gか)
 烈も計算開始。
 そして計算が終ると、烈が手を上げる。
「32Gだ!!」
 その声に反応してか、一人の参加者が手を上げる。
「なら、34Gでどうだ」
 そこからは1Gの競り合い。
 その均衡を破ったのはフランシア。
「40Gです」
 会場がざわつく。
「なら‥‥42Gで」
「43Gですわ」
 小刻みに上げていくフランシア。
 だが。
「ええい面倒くさい。50Gだっ」
 一気に離される。
「51Gですわ」
 フランシアも負けてなるものかと必死。
「55Gっ!!」
 勝敗は決しました。
 もしこれ以上仕掛けても、まだ相手は上を行く可能性があった。
 それを察したフランシアは、やむなく手を降ろす。
「それでは不可思議な鉱石は55Gでっ」
──コーーーン
 ハンマーが鳴り響く。
「あーーっはっはっは。これはいい買い物をしたよ!!」
 あ、その声にはゼルスが聞き覚えがあった。
 そのため、ゼルスはフランシアに耳打ち。
「おそらく彼は、私の知っている人物です。事情を話せば聞き入れてくれるかもしれませんよ」
 その声にフランシアは取り敢えず肯く。
 そして盛況のまま、オークションは終了した。


●後日〜襲撃はどうした?〜
──パリ・ミハイル研究室
 無事にパリに戻ってきた一行。
 どうやら襲撃も何もなく、石版はシャーリィに抱かれる事になった。
「その石版には何が記されているのかしら?」
 シルヴァリアが出されたハーブティーのカップをテーブルにおきながら、静かにそう問い掛ける。
「まだ解析が終っていないので詳しくは‥‥。ただ、教授とは別路線で攻めさせていただきますわ」
 にっこりと微笑むシャーリィ。
「それでゼルスさん。鉱石は今どこにあるのでしょうか?」
 フランシアが心配そうにゼルスに問い掛けた。
「恐らくは、好事家貴族のプロスト卿の息子のアルフレッドさんが所有しています」
 その名前には聞き覚えがある。
 よく冒険者酒場で『あーーっはっはっは』と叫んでいる貴族のボンボン。
「あ、あの領主の息子か。なら俺でもなんとかなるかもな」
 烈とゼルスは以前、そこの領主の屋敷での依頼を受けた事がある。
 烈は領主からの依頼、そしてゼルスは話に出てきたボンボンの修行と、二人とも『彼』には多少の縁がある。
「そうですか。まあ、場所がはっきりとしているだけましというところですわ」
 フランシアもようやく落ち着いたらしく、ハーブティーをゆっくりと飲み干す。
「しかしのう。もう少し安く競り落とせれは良かったのじゃが。済まなかったのう」
 フォルテシモがシャーリィに申し訳なさそうに謝る。
「いいえ。予算内でしたので問題はありませんわ。御気遣い感謝します」
 そして静かに時は過ぎていく。
 シャーリィの解析が終ったら、おそらくは遺跡探索に出かける時が来るであろう。
 その刻まで、一行は少しでも経験を重ねておこうと心に誓った。
 まあ、ミハイル爺のお守りよりは、しっかりもののシャーリィの方が‥‥という話もありますが、今回はこれにて閉幕とあいなります。

〜Fin〜