●リプレイ本文
●4月20日〜記録者・クリシュナ・パラハ
今回は、いつものようにパリを出る前にちょっと寄り道をしてみました。
というのも、ここ最近のグレイファントムの動向について、ギルドの意見も聞いて今後の活動の参考にしようと思ったもので‥‥。
──冒険者ギルド受付
「えーっと‥‥かいつまんで説明お願いします」
額を押さえてそう呟いているのはクリシュナ・パラハ(ea1850)。
今回の依頼の出発前にちょっとギルドに立ち寄り、色々とグレイファントム卿の動向について伺ってみようとゼルス・ウィンディ(ea1661)と共にやってきたのであるが。
「つまり、シャルトル地方グレイファントム領領主・グレイファントム卿は今回の依頼を最後に、ギルドスポンサーから外されました。そういう事情ですから、以後、彼からの依頼をギルドが受け入れるかとなると難しい話です。実質、今回の仕事が最後の仕事となるでしょうね」
その受付主任の言葉に、ゼルスが間に入った。
「一体何があったのですか? もし宜しければ教えて頂きたいのですが」
そう問い掛けるゼルスだが、受付主任はただ一言。
「上層部の決定。それに守秘義務が生じています。ただ一つ言えることは、彼の依頼があまりにも目的不明瞭であり、それらについて快く思っていないスポンサー達も多数存在するという事です」
そこで話は終了した。
●4月23日〜記録者・ゼルス・ウィンディ
無事にグレイファントム領に到着した私達は、今回の依頼の一つである子供達と合流。そのまま砦に向かいました。
今回は男の子ばかり、年齢は下は10歳から上は16歳までと、少しばらつきがあります。
実際、私自身はもう一つやりたいことがあったのですが、残念なことに砦からの距離が遠いことと、今回の依頼の内容から大きくずれてしまうこと、仲間たちとの連携が取れなくなってしまうので今回は途中でそれを行うことにしました。
──街道分岐点
グレイファントム領から砦に向かう途中。
ゼルスの頼みで一行は、分岐点で少し休息を取っていた。
そこは砦方面へと向かう街道、バルタザール自治区とヴォルフ自治区、そして砦方面へと続く街道に分岐している。
「なぁーんにもやってきませんねぇ‥‥」
イルダーナフ・ビューコック(ea3579)が遠くを覗きこむようにそう告げる。
「しかし、ゼルスの考えが事実としたなら、グレイファントムが犯罪者として捕われるのは時間の問題じゃないのか?」
カーツ・ザドペック(ea2597)もそう呟いている。
実際、グレイファントム領自体に犯罪者達が多く集っているであろう事は判っている。
グラン・バク(ea5229)は特に、マクシミリアン自治区に単独潜入し、そこの地下闘技場で行われている殺戮ゲームに参加していたのである。
内部情報はそれなりに持っていた。
──ガラガラガラガラ
やがて2台の馬車が通りかかる。
ゼルスは懐から一枚のスクロールを取り出し、静かにそれを眺める。
──キィィィン
精霊の力が瞳に宿る。
そして幌の向うを見つめる。
「バルタザール自治区から、領中央へですか」
インフラヴィジョンによって、馬車の中になにか熱源があるのは判った。
数は6。
大きさから察するにおそらくは子供。
「事実の一つが判っただけでもよしという所でしょう‥‥では行きましょうか」
そして一行は砦へと向かった。
●4月24日 記録者:アリス・コルレオーネ
砦に到着した私達は、まずは砦に残って子供達をサポートするチームと、周辺調査を行うチームに別れました。
そして調査班は前回ここにやってきたときに発見した小さな礼拝堂へ向けて出発、残った人たちは早速子供達に様々な事をレクチャーしていきました。
──砦
子供達に色々とレクチャーするために残ったのはグラン、クリシュナ、アリス・コルレオーネ(ea4792)の3名。
ゼルスは砦の警護に専念、子供達は他の仲間に任せることにしたようである。
「さて、ここまでの行程で身体の調子がおかしい者はいないか?」
グランがそう子供達に問い掛ける。
「いえ、大丈夫です。基礎訓練は行なってきましたから」
リーダーらしき子供が、そうグランに元気よく返答を返す。
「随分と気合はいっているねぇ‥‥さてと、それじゃあ私の方も準備するか!!」
アリスはグランの講習が終るのをじっと待っていた。
そしてそれが終り、グランとクリシュナによる訓練のチーム分けが終ると、自分の担当の子供達にまずは魔法を発動。
「自分の中にある恐怖心。それに打ち勝つ為の訓練と思ってください‥‥」
そう告げて、アリスはスクロールを取り出し子供達に『イリュージョン』を発動させる。
自分や自分の大切なものがモンスターに襲われる‥‥
その映像が幻覚となり子供達を襲う。
ある者は脅え、またある者は涙を流す。
やがて魔法の効果が切れると、アリスは子供達を抱しめる。
「強くなるんだよ‥‥」
──グランとクリシュナ。
「大切なのは基礎。一つ一つの動作。流派を覚えようとしない。まずは基本をしっかりと身につけることだ」
剣の降り、楯の使い方、一つ一つをしっかりとレクチャーしていく実戦指導。
グランのそれは、冒険者である彼等はいつここからいなくなるか判らない。ならば、自分で身を護れるだけの技術を身につけることだと考えていた。
のだが‥‥。
(‥‥基礎はしっかりとしているが、妙だな‥‥)
頭を捻るグラン。
子供達の動きが、皆同じ様にしっかりとしている。
まるで、『何処かで全員が同じ指導を受けていた』かのように。
最初の自己紹介のとき、子供達はこのグレイファントム領の中の様々な村や自治区からやってきたと伝えられている。
この砦で街を護るんだということも。
だが、全てが均整の取れたスマートな動き。
(クリシュナ‥‥皆に伝えてくれ。夜は気を付けろと‥‥)
杞憂ならはよい。
だが、違った場合、最悪自分達は『この子供達』を相手に戦うはめになる‥‥。
そうグランの本能が感じ取っていた。
「戦いの中で最も重要な事の一つが『集中』することだ。今回はそのための『コツ』を教えよう」
と、アリスは次のレクチャーにはいる。
「魔法使いなら力を借りる精霊の姿を。僧侶ならそれぞれの神を、戦士系の者は己の内にある力を。‥‥思うままの姿でいいから、想像するんだ。‥‥自分の『好きなもの』の事を思い浮かべても良い」
それはイメージトレーニング。
「そして、いつももそれが自分の傍にあることをイメージする。どんな時も、自分のここには力を貸してくれる者がいるということを考えるんだ。‥‥どうだ? 力が満ちてこないか?」
トンと胸を叩きつつ、そう子供達にレクチャーしているアリス。
と、クリシュナがそこに近づいていくと、そっとアリスの耳元でグランからの伝言を伝えた。
「業務連絡確認‥‥」
そうボソッと呟いてから、アリスは再びレクチャーを続けていった。
●4月28日〜記録者・氷雨絃也
件の礼拝堂へ向けて出発してすでに4日。
上空からはララ・ガルボ(ea3770)が偵察を、そして地上では隊長であるカーツ・ザドペック(ea2597)が先行偵察をおこないつつ、前回踏破したルートを使って礼拝堂へと向かっていった。
あそこに何が隠されているのか、その真意はとある人物からの忠告で明らかとなった‥‥。
──礼拝堂
「やっぱりか‥‥あのじいさん、伊達に大司教なんて職位についちゃあいねえってことか‥‥」
礼拝堂に記された魔法陣をじっと見て、イルダーナフはそう呟いていた。
「なにか判ったのかしら?」
魔法陣の上空からそれをじっと見つつ、ララは細かいところまで見渡していた。
と、イルダーナフが外側から中を見つめてそう呟いていた為、ララは一旦イルダーナフの方へと飛んでいてそう問い掛けていた。
「以前、シャルトルのノートルダム大聖堂にいる旧知のじじいに色々と見せてもらったんだが‥‥この魔法陣は上位悪魔の召喚用サークルだな。大量の生贄を必要とする為、これは現在は失われた技法らしい‥‥」
そう呟くイルダーナフに、氷雨絃也(ea4481)はゆっくりと近づいて行く。
「上位悪魔か。個体がなにかは判るか?」
その氷雨の言葉に、イルダーナフは頭を左右に振る。
「中に記されている文字は判別不能。一見しても解析できないが、さらにこういった魔法陣には見られない『テムラの秘法』が使われているからなぁ‥‥」
その秘法は高位魔術などでも殆ど使われていない。大司教からそんな話を聞いて、そのパターンと酷似しているからそう告げられたものの、何を意味しているかはイルダーナフでも判らない。
高位の魔術師ならばあるいはという所であるらしいが、残念なことにそのような者は存在しない。
──ガチャッ
周囲の調査をしていたカーツが礼拝堂に戻ってくる。
「なにかあったか?」
そう問い掛ける氷雨に対して、カーツは一言『来客だ』と伝える。
それだけで緊張の糸が張り詰め、全員が戦闘態勢を取る。
そして静かに扉の外を見る。
そこには、礼拝堂に向かってゆっくりと歩いてくる二人の少女の姿があった。
「‥‥ターゲット捕捉。お姉ちゃんどうするの?」
「仕事だから、我慢しようね‥‥」
そんな事を告げつつ、二人の少女は礼拝堂に向かって歩いてくる。
と、イルダーナフは静かに扉を開けると、そのまま少女達に向かって話し掛ける。
「こんな辺境にお嬢さん達二人でピクニックかい? ここは危険な場所なんだ。お家に戻ったほうがいいぜっ」
そう告げると、二人は静かに立ち止まる。
「貴方は誰? 悪魔さん?」
「貴方は誰? 天使さん?」
そう同時に問い掛ける二人。
「そうだなぁ‥‥悪魔ではないな。セーラの使徒だ。天使かな?」
そう告げると、少女達はにっこりと微笑ってイルダーナフに駆け寄ってくる。
「私達、ここの礼拝堂に用事があったの」
「使徒さんはこんな所で何をしているの?」
頭を捻りつつそう問い掛ける二人。
そしてイルダーナフは後ろで待機しているメンツに声を掛ける。
「大丈夫だ。ただの女の子だ」
その言葉に、一行は警戒しつつも姿を表わす。
「うーむ。どうも調子が狂うな‥‥」
頭を書きつつそう告げるカーツ。
そして氷雨とララも姿を表わすと、少女達をじつと見る。
濡れるような黒髪をポニーテールで縛っている。
普通のネイルアーマーに、腰の後ろには大きなナイフが二本。
背中にはバックパックを背負い、どう見ても『冒険者』のその風体とあんまり変わらない。
「‥‥お嬢さん達、ひっょとしてアサシンガール?」
その言葉に、二人はコクリと肯いた。
「どうして知っているの? お姉さんは敵なの?」
じっとララを見つめる少女達。
「シルバーホークの暗殺部隊でしょ‥‥」
そう呟いた時、氷雨がララと少女達の間に割ってはいる。
「ここにきた理由は? まあ、余計な詮索をしている俺たちの抹殺っていう所だろうが‥‥」
グッと腰を下げる氷雨だが。
「違うよ。そんな依頼は受けていないもん」
「グレイのおじさんが、ここで勝手に悪魔を召喚しているらしいって。シルバーホーク様から、もしそれが事実なら、悪魔を始末してこいって」
「そして、グレイのおじさんも始末してこいって」
ニコッと微笑みつつも、そう告げる二人。
「まあアレだな‥‥アサシンガールは、命令を最優先して行動するが、それ以外の事については、各自判断で動いているという所か‥‥」
カーツもそう告げると、ようやく武器を収めて表情を和らげる。
「で、お嬢さん達は、グレイのおじさんを始末するって言っていたよな?」
イルダーナフがそう告げる。
「ここで悪魔を召喚して、勝手に契約していたらね」
「首輪から抜けた犬には用事はないんだって‥‥」
そう告げて、アサシンガールズはてくてくと礼拝堂に入って行く。
「中になにもないわよ。私達も既に調査したあとなんだから‥‥」
そうララが告げると、二人は懐から一枚のスクロールを取り出して、魔法陣と比較し始める。
ララはそれを横目で覗くが、二人は気にしていない。
「この魔法陣、失敗だね」
「悪魔、呼べなかったんだね」
そう告げると、ララの方をじっと見る。
「おねーちゃん、この魔法陣とこの絵と、ぜんぜん違うよね?」
そのままララはスクロールを受け取り、中に記されている魔法陣と床の魔法陣を比較する。
所々違いが生じており、どうやらそれが魔法陣として機能させていないようである。
ララは取り敢えず、その絵を全て頭の中に叩き込むと、スクロールを二人に返した。
「そうね。これじゃあ駄目だね‥‥」
うんうんと二人は肯いて、てくてくと礼拝堂の外にでる。
「もうお帰りかい?」
ドカッと腰掛けているイルダーナフが二人にそう告げる。
「任務終了だから」
「『ハウス』に戻らないと、じゃあねー」
そう告げて、二人は来た道を戻っていった。
「捕まえなくていいのか?」
そう問い掛ける氷雨に、イルダーナフは静かに告げる。
「上級悪魔を倒す為に、ナイフだけでやってきた女の子相手に勝てる見込みは?」
その言葉が意味するところ。
しばらくして一行は、再び調査開始、だがそれらしい成果を得ることはできずに砦へと帰還することとなった。
●5月04日〜記録者・氷雨絃也
全ての任務完了。
グランの旦那が子供地について懸念していたが、特にそれらしい動きはなかったらしい。
俺たちも礼拝堂の調査を終え、子供達の待つ砦へと帰還したが、そこで待っていたグレイファントム卿から、今回の依頼で解雇と告げられた。
──パリ・冒険者酒場にて
無事に到着した一行。
だが、今ひとつ釈然としない。
謎が謎のまま、全て終ってしまったのであるから。
「あーーっ、フ・ラ・ス・ト・レ・イ・ショーーン」
バックパックの中に納められていた褌をばらまきつつ、鬱憤を晴らすクリシュナ。
と、テーブルに一人のシフールが近づいてくると、カーツに対して静かに言葉をかけた。
「グレイファントム卿の依頼ご苦労様でした。私はニライ・カナイ。ノルマン特務査察官の一人です。今回で解雇となったようですが、私から一つ提案があります‥‥」
そう告げとる、ニライ査察官はある提案をした。
今後、チーム・ワイルドギースを指名して『グレイファントム卿についての調査をお願いしたいのだがどうでしょうか』と言うことである。
「まあ、時が来たらまたギルドに依頼として掲示しておきますので。依頼を受けてくれるかどうかは、皆さんの意志にお任せします‥‥」
〜To be continue