優駿〜サツキ賞〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:01月17日〜01月24日

リプレイ公開日:2005年01月23日

●オープニング

──事件の冒頭
 さて。
 無事に新年を迎え、ドレスタットも色々と慌ただしくなってくる。
 そんな忙しい日々がちょっと落ち着いたある日の事。

「クスクスクスクス。次も私が戴きますね」
 のどかなティータイム。
 楽しそうに笑うディービー卿と、悔しそうな表情の貴族が5名。
 いつものような御茶会の席。
 顔馴染みの5人の貴族達に向かって、御茶会の主催者であるディービー卿がそう呟いた。
「さて。勝負は時の運。今回は私達も貴方に負けないよう頑張らせて頂きますよ」
 サツキ卿がディービー卿にそう告げると、静かにハーブティーを咽の奥に流し込んだ。

 ──ということで冒険者ギルド
「あー、まったく飽きないねぇ、あんたたちも。今度は何?」
 新米受付の兄さんが、あっけらかーんとした表情でそう問い掛けた。
「私、サツキが主催者ですね。コースは『草原に作られた楕円形コース』、距離は2000m。今回も冒険者さん達にお任せします。まあ馬に乗れる人たちを6名と、お手伝いが出来る方たち数名で御願いします」
 そして依頼書を作りあげると、サツキ卿は受付にサッと手渡しす。
「あれ、こっちの一枚は何?」
「今後のレース予定です。添付しておいてください」
 サツキ卿が受け付けにレース予定表を提出すると、静かにギルドを後にした。

──レース予定表
・サツキ賞      :距離2000m、草原、楕円形コース
・ノルマン・ディービー:距離2500m、草原、U字型コース
・オロッパス記念   :距離2000m、街道、S字型コース
・カイゼルカップ   :距離2000m、草原、楕円形コース

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3266 氷室 明(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5894 マピロマハ・マディロマト(26歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea7179 鑪 純直(25歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea8106 龍宮殿 真那(41歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

シン・バルナック(ea1450)/ サラサ・フローライト(ea3026

●リプレイ本文

●はじまりましたよ!!
──ドレスタット郊外
 サツキ賞。
 今回のレース、コースは全長2000mと短いものの、楕円形コースという曲線の二つあるちょっと難しいコース。
 直線は600mが二つ、それに続く曲線コース部分が二つ。
 今回の依頼に参加した冒険者一行は、コースの下見をおこなったのち、それぞれか゛自分達の厩舎へと移動、対策を練り始めていた。


──アロマ厩舎
「そうですねぇ・・・・流石にまだ疲れが残っていますね・・・・」
 いつものようにアロマ卿に挨拶を済ませたのち、カルナック・イクス(ea0144)は厩舎員に『怒りのブライアン』の体調について質問をしていた。
「レースには支障がでるのでしょうか?」
「難しいですねぇ。レース当日まで、無理をしなければ大丈夫でしょうけれど、それでも仕上がりは良くて8割、最悪5割というところですか」
 馬の事は厩舎員に聞けとはこれいかに。
 止むを得ず、カルナックは自分の愛馬で新しい乗馬フォームの練習を行うこととした。
 最悪、レース全日には1度新しいフォームでの併せを行ない、当日に望むこととなったのだが。
「今回はあまり無理をしないほうが良いみたいですね・・・・」


──オロッパス厩舎
「今回もよろしくお願いします。あ、こちらは私の友人でシン・バルナック。今回の調教の手伝いをしてもらいます」
 そうオロッパス卿に告げるのはカイ・ミスト(ea1911)。その横ではシン・バルナックが丁寧に頭を下げている。
 最近ずっと付けていた仮面は、今回の依頼では外している。
 というのも、仮面等付けていたら、『風のグルーヴ』が脅えてしまうだろというカイのアドバイスの為である。
 そのままシンは厩舎員とともに『風のグルーヴ』の調教を開始。
 餌の配合から始まり、足回りの強化と、忙しい日々が続いていた。
 途中からはカイも参加、厩舎にいる他の馬との併せ(併走)を行ない、『風のグルーヴ』の闘志を燃え上がらせる。
「仕上がりは上々。このままいけば間違い無いな・・・・」
 シンの自信ありげな言葉に、カイも満足であった。


──オークサー厩舎
「随分と今日は元気ですねぇ・・・・」
 久しぶりの『レディエルシエーロ』との再会。
 厩舎では『レディエルシエーロ』が氷室明(ea3266)の姿を見て喜んでいるようである。
「ええ。何か、今日貴方が来るのを判って居るみたいなんですよ」
 ニコニコとしながらそう告げる厩舎員に、氷室もなにか恥ずかしい感じがする。
「調子はどうですか?」
「先日までは下がっていましたけれど、今は上り坂ですねぇ。このまま巧くいけば、最高のコンディションでレースに挑めますよ」
 その言葉に満足し、氷室は外のコースに『レディエルシエーロ』を連れていく。
「追込みの強さを身につければ無敵ですよ・・・・」
 そして二人の訓練は始まった。


──マイリー厩舎
「偉い偉い、君はエラいねェ〜」
 久しぶりの『最強のキングズ』の背に飛び乗ると、マピロマハ・マディロマト(ea5894)はその背中から首を丁寧に撫で上げる。
「そうですよねぇ。この前のレース、よく曲りましたよ」
 ウンウンと肯く厩舎員に、マピロマハも静かに肯く。
「はっはっはっ。今回のレースに使われるコースとほぼ同じ形のを作らせておきましたよ。これで訓練をすれば間違いは無いでしょう!!」
 マイリー卿が楽しそうにそう告げてやってくる。
「これはマイリー卿、御無沙汰しています。コースを作って頂いたのですか?」
「ええ。まあ見てきてください!!」
 そのまま厩舎員と『最強のキングズ』と共に、マピロマハは仮設コースを見に向かった。
 広い草原に作られた仮設コース。
 杭を打ち込み、それをロープで繋ぐ事で、仮設のコースを作ったらしい。
「うわー。無駄にお金つかってますねぇ・・・・」
 まあ、道楽貴族というのは、こんな事にお金を掛けるのが好きなようで。
「はっはっはっ。次回も作りますよ。それで『最強のキングズ』の雄姿が見られるのであれば。まあ期待していますから!!」
 ズン!! とのしかかる重い期待。
「さて、行くよ『最強のキングズ』!!」
 そんな言葉にめげるものかと、マピロマハは、仮設コースで特訓開始。


──ディービー厩舎
「元気ですねえ」
 柵の向うで楽しそうに走っている『旋風のクリスエス』を見つつ、鑪純直(ea7179)がそう呟く。
 前回のレースでの失敗を元に、純直はまず『旋風のクリスエス』の体調管理を徹底することにした。
 季節柄、関節部などの節々が痛みやすいと判断した純直は、まず『旋風のクリスエス』の調教では無理をしすぎず、さして毎日ハーブをいれた薬湯を用意してそれで筋肉の疲れや節々に貯まっているであろう痛みを癒していた。
「今回も、決して気負うことなく、楽しいレースを・・・・」
 それが、純直の気持ちであった。


──カイゼル卿
「・・・・また大きくなりました?」
 勝負服の直しのさ中、女性服飾師にそう問われてドキッとしているのは龍宮殿真那(ea8106)。
「い、いや・・・・その様なことはないぞよ・・・・おそらく・・・・多分・・・・」
 最後のほうはゴニョゴニョ口調。
──さて。
「ふむ。『静かなるスズカ』が小さい頃にも特に事件などなかったようですが。あの優しさは生まれつきのものでしょうし、こればかりは慣れていくしかないでしょうねぇ・・・・」
 カイゼル卿が、馬の上で訓練の準備をしている真那にそう告げる。
「そうであったか。何か理由があるのではと思ったのじゃが。本当に、生来のものならば仕方の無いことじゃのう・・・・」
 そう呟きつつ、『静かなるスズカ』の首を撫でる真那。
 そして訓練が始まった。
 お手伝いのサラサ・フローライトが静かにオカリナを奏でる。
 その曲の中で、『静かなるスズカ』は兄弟馬である『沈黙のクリスティーヌ』との合わせ訓練を行った。
 翌日には併せの馬の数を増やし、少しずつ『静かなるスズカ』を慣れさせていく。
 決して無理はせず、調教ではなく休息の為に身体を動かす。
 何もしなければ筋力はやせ衰えてしまう。それを押さえる為だけの走り。
「頑張って・・・・」
 サラサの見守る中、真那は静かに『静かなるスズカ』を走らせていた。


●レース当日〜エモン・クジョーの『俺に乗れ!!』〜
──スタート地点
 レース当日。
 今回はさらに大盛況。
 スタート地点には大勢の人が集っていた。
「待たせたな皆の衆!! 今の所一番人気は前予想を覆して『最強のキングズ』だぁ!! 走り出したら止まらないあの走りに魅了された野郎共、今回はこいつに賭けろ!! そして二番手も覆ったぞ『怒りのブライアン』。賭けの受付はそちらの帽子の男だぁ。オッズは右の掲示板を見やがれ畜生!!」
 もう後半部分はやけくそ気味になっている旅の吟遊詩人エモン・クジョー。
 まあ、好きにしてくださいな。

 各馬一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である6貴族から、レースタイトルである『サツキ賞』主催のサツキ卿が代表として前に出て挨拶。
 そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。

 先頭を走るのは『静かなるスズカ』。今回もいきなり『逃げの戦法』。続く二番手は『最強のキングズ』。その差鼻一つ。さらに半馬身差で『怒りのブライアン』と『風のグルーヴ』が続きます。
 遅れて1馬身差で『レディエルシエーロ』と『旋風のクリスエス』。
 各馬ペースを早めてのレースとなっています・・・・。

「・・・・逃がしませんよ・・・・!」
 ぴったりと先頭馬に追走する形で馬を走らせるカイ。
「出遅れた!! こんなにハイペースで持つのか?」
 そして、いきなりのハイペースの争いに出遅れた氷室は、やや焦り気味の様子だが。
「このまま。勝負所はコーナー。『最強のキングズ』はそこでペースがかならず落ちる筈だ」
 純直もハイペースの戦いに翻弄されそうになるが、我を取り戻すとそう『旋風のクリスエス』に言い聞かせる。


 残り1400m。
 以前先頭は『静かなるスズカ』。
 コーナーに差し掛かりペースの遅れた『最強のキングズ』を『風のグルーヴ』が追い抜く。
 さらに『怒りのブライアン』も『最強のキングズ』を追い抜き3番手に。
 後方遅れて1馬身変わらず、『最強のキングズ』と『レディエルシエーロ』、『旋風のクリスエス』が同体で並ぶ。

 最初のコーナーに差し掛かる。
「ここで抜かれるのは仕方が無いけれど・・・・まだまだぁ」
 『最強のキングズ』がコーナーアウトしない為のぎりぎりの速度まで落とすマピロマハ。
(思ったとおり。『最強のキングズ』はペースダウンだ)
(いけるか?) 
 綺麗な手綱さばきで徐々にペースを上げる『旋風のクリスエス』と『レディエルシエーロ』。
 少しずつではあるが、ペースを上げつつある。

 残り1000m。
 以前先頭は『静かなるスズカ』。
 安定した速度をキープするが、さらに『風のグルーヴ』が間合を詰めつつある。
 後続は変わらず、『最強のキングズ』は直線での加速を行なったが、すぐにまたコーナーに差し掛かってしまう為、加速しきれない模様。

「このままじゃ。このまま逃げきるのぢゃぞ!!」
 必死にそう言い聞かせる真那。
 だが、そのすぐ真横でも、カイが『風のグルーヴ』に話し掛けている。
「・・・・あと少し・・・・頑張ってください!!」
 そして後方。ついに順位が変動。
 『最強のキングズ』が最後尾に落ちる。
 ギリギリのところで四番手には『旋風のクリスエス』、五番手に『レディエルシエーロ』が付いた。

 
 残り400m。
 最終コーナーにてペースを下げていた『最強のキングズ』が最後の直線で加速!!
 そして前方、ついに『風のグルーヴ』が『静かなるスズカ』を引き離す。
 安定した体勢でペースを守っていた『怒りのブライアン』もここにきて加速。
 一着はこの3頭での争いになりそうです。

「ラストスパート!! このまま全てを抜きさるんです!!」
 スタミナにモノを言わせた戦法。
 カルナックも最後の勝負に出る。
 そして後方から、一気に『レディエルシエーロ』を抜き去った『最強のキングズ』も前に出る。
「直線での速度なら、『最強のキングズ』の右に出る馬はいないよっ!!」
 だが、その『最強のキングズ』に引けを取らない加速を見せる『旋風のクリスエス』。
 決して無理をさせない馬なりの走りに切替えて、『レディエルシエーロ』自身が闘争本能で加速を始めた。


──そして
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉるっ」
 トップは『風のグルーヴ』。
 そして二着はまさに鼻差で『静かなるスズカ』が勝利をもぎ取った。

1着:『風のグルーヴ』
2着:『静かなるスズカ』
3着:『怒りのブライアン』
4着:『旋風のクリスエス』
5着:『最強のキングズ』
6着:『レディエルシエーロ』

 残り3戦。
 ここで一旦馬達は休息期間に入る。
 放牧と呼ばれる期間、殆どの馬達は後半戦に望む為、ゆっくりと身体を休める。
 ただ一頭、『静かなるスズカ』はこのまま船でイギリスに臨み、他国での二週間の実戦トレーニングが始まるらしい。
 はたして、どんな結果が待っているのか。

 歓声の中、ついに優勝をもぎ取った『風のグルーヴ』と『静かなるスズカ』がウィニングラン。
 その光景を横目に、他の騎手達はレース会場を後にした。


〜To be continue