●リプレイ本文
●と、言うことで〜まずはミーティング〜
──ミハイル研究室
「みたらし団子がないのはいいことだっ・・・・」
テーブルで腹いっぱいになって潰れたまま、そう呟いているロックハート・トキワ(ea2389)。
「うむ。あれはジャャパン伝来の貴重なタレを塗っているらしい。そうそういつもあるものではないわっ!!」
キッパリといいきるのはミハイル・ジョーンズ。
「俺の団子・・・・団子・・・・もう一杯だぁ・・・・」
どんどんと暗黒面に引き込まれていくロックハートは置いといて、一行は今回の依頼に付いての打ち合わせを行なっていた。
「とりあえず、珍しいアイテムって言われたから一通り持ってきてみたが・・・・。結構な量になったな」
側に巨大に膨れあがったバックパックを置き、ガツガツとべんとうを食べているのはフィル・フラット(ea1703)。
「あら、彼女の手作りなのね。仲の良いことで・・・・」
団子をほおばりつつ、ニコニコとフィルに話し掛けるのはシルヴァリア・シュトラウス(ea5512)。
──ドヨーーン
「彼女かぁ・・・・これ、妹の手作り・・・・」
そのまま何やら落ち込んでいくフィル。
ああ、ここにも暗黒面に落ちたものが一人。
「しかし、ヴァレス、気のせいか随分とスクロールが増えていませんか?」
そう横で教授から見せてもらった不思議なスクロールを眺めているヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)に話し掛けているのは、ルイス・マリスカル(ea3063)。
「まあ、気のせいですよ・・・・と」
真剣な瞳でスクロールを読み漁るヴァレス。
「そうですか。なら教授、ちょっと質問よろしいですか?」
そうルイスがミハイルに問い掛ける。
「うむ、なんじゃ?」
「相手の水の魔人は‥‥人間基準で言うところの結構な美女、なんでしょうか」
「お・・・・出たな伝説のラブ評論家・・・・」
そう横でボソッと呟いているのはオイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)。
まあ、その話はまた今度・・・・。
「碑文にはそう記されているからのう。どんな姿かなんて見当もつかんわい」
「多分美人さんだよー」
チルニー・テルフェル(ea3448)がテーブルの上のハーブティ─を飲みつつ、そう呟く。
「知っているのか?」
「うーんと、予測。あたしの知っている知識をフル動員したら、そういう結論に達したの」
全メンバー中、精霊に最も詳しいチルニー。
「ふぅん。専門家がいるっていうことは、いいことだな・・・・」
そのチルニーの話に耳を傾けつつ、ラシュディア・バルトン(ea4107)もミハイルから借りた写本に目を通している最中。
「精霊というのは、美しさを保つことができるのですか?」
そうチルニーに問い掛けているのはダージ・フレール(ea4791)。
「うーん。そこまでは良く判らないんだよねー」
そう頭を捻るチルニ。
「ラシュディアさん。その写本は遺跡のものですか? もしよろしければ、アンデットの徘徊する有無を確認して頂けると助かるのですが・・・・」
そうラシュディアに頼み込むのはアリアン・アセト(ea4919)。
「今までは第三階層までは徘徊していたと・・・・で、第四階層のイフリートの所は居なかったと・・・・いないというよりは、燃え尽きたっていう可能性もあって・・・・第五階層が・・・・と、アンデットはないですよシスター。それと教授、たどり着くまで迷宮だぜ!!」
お、そこまで写本を理解したラシュディアは流石です。
「ということは、ヘタレンジャーの出番だな」
ポン、とロックハートの肩を叩くヴァレス。
「失礼なっ!! もう今までの俺とは違う。器用から俺のことは『サイレント・キル』と呼んで欲しい・・・・」
あー。
なにかあったようですね。
まあ、そんな瑣末な事は放っておいてと。
「そういえば教授」
そうぬいぐるみの改造を行ないながら話し掛けているのはオイフェミア。
「ん、なんじゃ?」
ラシュディアと写本の解析を開始したミハイル教授が、そうオイフェミアに返事を返す。
「あたしこの前、シルバーホーク卿に会ったよ!!」
ここでその発言は『NGワード』だろ。
「なにい!! 一体何処でじゃ? どうだった?」
興奮しつつそう叫ぶミハイル教授。
「何処でって・・・・マクシミリアン自治区の地下闘技場で。それで、こんな人よね・・・・」
サラサラサッと似顔絵を書くオイフェミア。
それを手にしたミハイルは、クシャッと握り潰した。
「あやつ・・・・悪魔に魂でも売り飛ばしたのか‥‥この若々しい顔は一体なんぢゃ・・・・」
そのまま暫くなにかを考えているミハイル。
「あー、じじい、済まないがいつもの質問だ。準備はいいか?」
気を取りなおさせる為に、ロックハートがミハイルにそう話し掛ける。
「う、うむ・・・・」
「一度従わせた精霊はずっとあの階層に留まるのか?」
「従わせた訳ではないからのう。結界を越えることができるのであれば、何処かにいってしまうやも知れぬ」
「『灼熱の楯』にはもう加護を受けたようだが、どんな効果があるのか?」
その問いには、ミハイル教授がロックハートにポン、と楯を手渡す。
「精霊碑・・・・読めない」
「じゃろう? では実践して進ぜようと行きたいが、まだ解析途中じゃて」
そう告げると、ミハイルは楯を眺めてから、元の棚に納めた。
ちなみに、そこに記されている文字は、ヴァレスでも判らない。
「それなら3版目の質問は飛ばして。何故差し入れに持って来る団子はみたらしだけなのか?」
「お前が食べる頃にはそれしか残っておらんだけじゃ!! みたらし団子はレア過ぎて入手困難なのぢゃよ。偉い人にはそれがわからんのぢゃ」
途中から何を判らんことを。
まあ、そんなこんなで打ち合わせも完了。
一行は早速準備をすると、プロスト城へと向かった。
●第五階層〜迷宮っと・・・・〜
──すでに迷っています
地下迷宮エリアに到着してすでに3時間。
通路は広く、隊列の必要もあまり感じられない。
灯は各々で準備し、レンジャーであるヴァレスとロックハートの二人が、前衛でトラップなどを調べている最中である。
──ゴゴゴゴゴゴゴコゴゴッ
「・・・・また後ろの通路が動きましたねぇ。地図はどうなっていますか?」
ルイスがマッパーであるダージとシルヴァリアに問い掛ける。
「・・・・もう、ぐちゃぐちゃ・・・・」
「こっちもダメですわ。ここまで入り組んでしまうと、もうお手上げとしか・・・・」
彼方此方に修整点が加わり、さらにトラップの場所まで記されているマップ。
「ちょっとー、一体どうなっているのよ」
オイフェミアもそう呟くと、周囲を静かに見渡す。
だが、その矢先にまたしても壁が動くからたまったものではない。
──そして、行き止まり
ついに迷宮の突き当たりに到達。
そこには一枚の壁と左右に二つの扉。
壁には奇妙な形の竜の紋章と、古代魔法語による碑文が記されている。
「どれ、そろそろワシの出番ぢゃな」
ゴキゴキッと拳を鳴らしつつ、ミハイル教授が前に・・・・。
──ガシッ
出ない。
その両腕をルイスとフィルがしっかりと捕まえる。
「お・・・・教授、いつものポジションだな」
「放っておいてくれい!!」
そう呟くミハイル教授。
「ロックハート、このスイッチはなにか判るか?」
と、ヴァレスが壁に隠されているスイッチを発見。
「うーん。ちょっとまてよ。二つあるか・・・・」
ロックハートももう一つのスイッチを発見。
それは、壁に記された竜の壁画、ちょうど左右の手に握られている宝玉の部分に隠されていた。
──カチャカチャ・・・・
「・・・・悪い、ダメだ」
ヴァレス、挫折。
「・・・・どういう仕掛けだ?」
ロックハート、挫折。
「・・・・ここが戦場でしたら・・・・」
応用技を駆使してみるものの、ルイスも断念。
つまり全滅。
「うーむ。トラップの専門家がやはり必要じゃのう・・・・さて、どうしたものか・・・・」
そうミハイルが呟いているさ中、ラシュディアは壁に触れずに碑文の解析開始。
そしてなんとなく成功。
「剣持つ手には秘められし祈りの場。楯持つ手には静かに眠りし水の乙女・・・・でいいのか?」
そうミハイルに問い掛けるラシュディア。
「ふむ。どれ・・・・『汝、礼儀をつくしなさい。剣を持つ腕に秘められし宝玉は、古の祈りの場。楯を持つ腕に秘められし宝玉は、気難しき水の乙女の眠りし部屋・・・・じゃな。大体OKぢゃ」
お、凄い。
「つまり、水の精霊の場所に向かうには、左のスイッチを押せばいいんだろ?」
そう告げると、ヴァレスはそのままスイッチを押す。
──ギィィッ
静かに扉が開いていく。
と、その向うから勢いよく水が流れ始めてきた!!
「逆ですわ逆・・・・私達から見てではなく、壁画にあわせるという事でしょう!!」
アリアンがそう叫ぶ。
そして全員で一気に扉を押しこむと、スイッチがカチャッと鳴る。
どうやら扉が固定されたらしい。
そしてロックハートはそのまま反対側のスイッチを押す。
──ゴゴゴゴゴゴゴッ
けたたましく扉が開く。
「さて、いよいよ御対面といきますか!!」
●水の乙女〜好事家で我が儘で高ピーな奴〜
──封印の間
広い室内。
様々な調度品が並べられたそこの中央には、小さな噴水のようなものが作られている。
そこにたたずむように存在しているのは、一人の美少女。
「あ、フィディエルだ」
チルニー、今日もグットです!!
「そなたが水の乙女じゃな。この『清水の靴』に加護を与えてほしいのぢゃ!!」
ミハイル教授が静かにそう告げる。
だが、水の乙女は、なにも語ることなくじっと噴水を見つめている。
「退屈なの・・・・なにか変わったものが見たいわ。変わったお話を聞かせてほしいの・・・・」
(あ、嫌な奴だ・・・・)
オイフェミアの嫌な奴センサーに反応あり!!
とりあえず、順番に話を持っていくことにした一行。
──ヴァレス
まずはトップ!!
バックパックから様々なアイテムを取り出すと、ヴァレスはそれをゆっくりと見せる。
聖骸布、毛皮の敷物、まるごとメリーさん、エクセレントマスカレード、そしてエチゴヤ特製カップ・・・・。
一体何に使うのか判らないような代物も含めてそれを見せて説明するが、どうも気が乗っていない。
「うーーん。ならば!!」
静かにフィディエルに話を始めるヴァレス。
「・・・・その時俺はっ!! 前方からやってきた奴に向かって正義の鉄拳を叩き込んだッ。熱い血潮のたぎる拳、それを真面に受けて敵はっ!!」
最近受けてきた依頼である『ミトン・オン・ファィト』の思い出を熱く語るが、フィディエルは冷めまくり。
しまいにはスクロールを発動させて、魔法を見せるが、フィディエルはそれを嘲笑。
「精霊にスクロール見せて・・・・バッカじゃないの・・・・」
あ、嫌な奴だ。
がっくりと落ち込んで、ヴァレスは負け。
──ダージ
「いやはや・・・・福袋ってのは怖いねぇ・・・・うちの知り合いに大金叩いて福袋を買った人がいてねぇ・・・・、使えないスクロールの山の前で髪の毛を白くしながらヘラヘラ笑うようになった奴がいたよ」
まずは砕けた話で間を穏やかにしようと考えたダージ。
その言葉にフィディエルも耳を傾けているようである。
そのまま暫くは、他愛のない話を続けていたが、突然ダージは真顔になった。
「それよりも・・・・あなたの美しさの理由が知りたいな」
──カコーーン
これには一同顎が外れそうになるぐらい驚いた!!
あ、誰か外れてる。
そしてフィディエルも瞳をキョトンとしている。
「いや、ほんとに知りたいんだよぉ! どんな『成分』でその美を維持しているのか・・・・精霊だから魔術的なものだなんてロマンのない話は無しにしてくれよな!」
そのまま詰寄るダージ。
だが、すぐさまフィルとルイスがダージの元に歩いていくと、そのまま両脇をガシッと掴んで、はい退場。
「なぜ、まだ話しは終っていないんだぁ〜『美』の追求がそんなに悪いのか〜!」
まあ、悪くはないんだけれどねぇ。
──フィル
「これか? これはマリア・ヴェールといって、福袋で当てた景品なんだ。こっちは戦乙女の兜、やはり福袋の逸品さ」
おっと、フィルの見せたアイテムの中で、フィディエルが気に入ったのは戦乙女の兜とマリア・ヴェール。
それを手に取りと、ゆっくりと装備する。
そして水に写った自分の姿を見て、何やら楽しそうであった。
一瞬だけ。
10分もすると、それをフィルに戻す。
「大切なものでしょう? ありがとう。他にはないのかしら?」
「うーん。これといってないなぁ・・・・」
なにはともあれ、少しは機嫌が戻ったらしいフィディエル。
──アリアン
さらにフィディエルの気持ちを和らげる為に、ここで切り札を導入する一行!!
天使の羽根飾りを手に、優しい慈悲の笑みを浮かべてフィディエルに近寄っていくアリアン。
「綺麗な羽根・・・・」
うっとりとした表情でそう呟くフィディエル。
「これは、以前少女に取り憑いた夢魔と戦った際に、ご助力を頂いた天使『シムル』殿の羽で作られた物なのですわ・・・・」
ミサ聖祭野時に信者に語りかけるような穏やかな口調でそう話を始めるアリアン。
「そのシムル殿は、愛らしい翼ある仔猫として現れました。そして雄々しい獅子として戦ったのです。その相手は夢魔。夢魔は理想の異性の姿をとって、冒険者達の心を惑わせたが、悪しき夢魔達は冒険者達によって倒され、少女は救われたのです・・・・」
当時のことを思い出し、懐かしむアリアン。
(はっ。危うく誘惑に負けるところでした・・・・セーラ様、この未熟なる私をお許しください)
慌てて十字を切り、天を扇ぐアリアン。
「もういいわ。大切な思い出をありがとう・・・・」
そうにっこりと微笑むフィディエル。
掴みはOK。
──シルヴァリア
「これは全て貴方のコレクションなのね・・・・」
シルヴァリアは、室内に綺麗に安置されている。
もっとも、安置といってもただ並べられているだけであるが、それでも大切なものなのであろう。
一つ一つを静かに説明していくフィディエル。
「わたくしも、こんなものを持っているのですわ・・・・」
そう告げながら、シルヴァリアも一つ一つアイテムを取り出すと、それらについての逸話を説明。
そして最後に、『禁断の壷』を取り出し、フィディエルに見せた。
「不思議な壷・・・・」
「ええ。これがあれば精霊でも裸に出来る神秘の壷ですわ」
そのまま壷に付いての逸話も加え、さらに『ミハイル教授』の今までの冒険譚を次々と並べていく。
話にはあまり胸を踊らせているような雰囲気は無かったものの、アイテムには心踊らされているしらいフィディエル。
そのまま宝物を交換しようと話を持ち掛けてみたが、残念ながらそれは出来なかった。
それでも、フィディエルの心はかなり躍っているようである。
──ルイス
彼の正面では、フィディエルが楽しそうに水鏡を見つめている。
「うわぁ・・・・綺麗・・・・」
ルイスの切り札は『ローズ・ブローチ』と『レインボーリボン』の二つ。
「お気に入りでしたら、友情の証しとしてさし上げますよ・・・・」
流石はラブ評論家、乙女心をがっちりキャッチ!!
「でも、貴方には私よりもお似合いの方がきっといらっしゃいますわ。これは私には不釣り合い。どうぞ納めてください・・・・」
そのまま暫くは、ルイスとフィディエルは話を盛り上げていた。
そして1時間ほどしたのち、フィディエルとルイスの話は終了。
まだそれでも満足しないフィディエルは、次の人の話を愉しみに待っていた。
──チルニー
コレといって良いアイテムを持っていないチルニーは、自分の話を聞かせることにしたらしい。
最近では、福袋でドンキーを当てたことをまず話してみた。
「福袋には一杯いろんなアイテムが入っているんだよ。チルニーの買った袋には二つ。一つはそんなに嬉しくなかったんだけれど、もう一つがすごかったの」
そう告げると、チルニーは両手でちっちゃく四角を作る。
「えっとね、これぐらいの小さい木の札が入っていたの。それにはね、数字が焼き印で押してあって、その下に引換所の場所が書いてあったの。それを持って引換所にいったら、ドンキー君が一匹、楽しそうに待っていたんだよー」
あ、成る程。
あれは福袋には入らないからなぁ・・・・。
交換札で引き換えでしたか。
「ふぅん・・・・」
そう口では呟いているものの、フィディエルはチルニーの話にしっかりと耳を傾けていた。
「あとは、私の事。本当に昔の事は余り覚えていないんだ〜。幼なじみと野原でワイワイやっていた記憶はあるんだけどね」
両手を胸の前で組み、なにかを思いだしながらそう告げるチルニー。
「レンゲの花輪を作って飾ったり、名前を呼びながら追いかけっこしたり、蜜を吸ったり・・・・あ、花の蜜って甘いんだよ。そうだ!」
そう叫ぶと、チルニーは皆の待っている場所へと飛んでいく。
そしてミハイル教授のバックに預かって貰っていた花輪を両手で抱え、フィディエルの元にもどって行く。
──フワサッ
、そしてフィディエルの頭にそれを乗せると。にっこりとチルニーは微笑んだ。
「精霊さん、はい! 春の贈り物〜!!」
ニパッと笑いながらそう告げるチルニー。
その言葉に、フィディエルの表情はやわらいだ。
──そして止めのオイフェミア
「グーテー! グーテー!」
そう奇声を発しつつ、奥から姿を表わしたのは『怪獣・重力ルドルフ』の着ぐるみを着込んだオイフェミア。
その姿と声に、フィディエルも超引き状態!!
かなりやわらいでいた表情は瞬時にこわばり、警戒色を強めた!!
──キィィィィィン・・・・ゴゥッ!!
そして素早く詠唱を開始すると、オイフェミアはフィディエルの横に向かってグラビティキャノンを発動!!
衝撃波がフィディエルの横を通りすぎ、奥の壁に向かって直撃した!!
「面白いわ。全ては私を油断させて、ここのコレクションを盗みだそうっていう事かしら?」
いきなり戦闘態勢に突入するフィディエル。
「どう? 驚いた? これは怪獣・・・・ってあら?」
其の場の雰囲気が最悪な状況となっているのに、オイフェミアはようやく気が付いた。
──キィィィィィィィィィン
いきなりフィディエルが高速詠唱を開始。
瞬時にフィディエルの全身が輝くと、いきなり差し出した掌より吹雪が舞い上がった!!
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
それはメンバー全員をつつみこむように吹き荒れる。
「ダメです、もう交渉の余地はありませんわ・・・・ここは一旦引いて、次の機会にもう一度なんとかするしありませんか・・・・」
そうアリアンが叫ぶと、全員が入ってきた扉に向かって走り出した!!
「オイフェミア、貴方なんていう事してくれたのよっ!! 折角話がまとまりかけていたのに・・・・」
シルヴァリアがそう叫ぶ。
「うーーん。もう少し奇抜な怪獣だった方がよかったかぁ・・・・でも、こうなったら戦って無理矢理にでも加護を得たほうが良いと思わない?」
そう皆に向かって呟くオイフェミアだが、その場の雰囲気に負けて思わず頭を下げる。
●ということで〜リベンジには時間が必要〜
──ミハイル研究室
「正直、すまなかったぁ!!」
力一杯頭を下げているオイフェミア。
「でも、最後のフィディエルの魔法、本気じゃないよねー。本気だったら、今頃あたしたちはあそこでアイスコフィンだよー」
務めて冷静にそう告げるチルニー。
「まあ、確かにそうかもしれませんわ。ですがオイフェミアさんは猛反省してください。あとでノートルダム大聖堂にご一緒してください。そこで懺悔をして頂きましょう」
流石はシスター・アリアン。
セーラの使徒として、オイフェミアを正しき道に導くのですね。
「これも、セーラのお導きですわ・・・・と、教授、その灼熱の楯ですけれど、本当に加護を得ているのですか?」
シルヴァリアは『ミラー・オブ・トゥルース』を発動させると、前回イフリートより加護を受けたはずの『灼熱の楯』を観察してみた。
だが、魔法物品を識別する為の水鏡には、普通に灼熱の楯が移っているだけ。
魔法反応はしていないのである。
「ふむ。精霊の加護=魔法物品ということではないということか。現実に、イフリートの手によって精霊碑が記されたというのも、この文字にこそ、加護の真相が刻まれているようぢゃな・・・・」
そう告げると、ミハイル教授は取り敢えずハーブティーで咽を潤す。
「・・・・俺の話で締める予定だったのに・・・・」
そう呟くロックハート。
「まあ、今回は時間もないしのう。もう少し時間を空けてから、もう一度チャレンジしようぞ」
そのミハイルの言葉で、今回の依頼は終了した。
●パリ〜緊急事態発生〜
──冒険者酒場・マスカレード
静かに祝杯・・・・らしきものをあげている一行。
「つまり、少女の好みそうなものを持って行くといいのか?」
そうフィルがチルニーに問い掛ける。
「多分ね。みんなの話とフィディエルの表情を観察していんだけれど。やっぱりそれらしいのよー」
となると、次に持っていく物品や話のネタはOK。
あとは教授の方で更なる調査準備が来るのを待っていたのだが。
──ドタタタタタッ
いきなり入り口に走ってきた研究員が、息を切らせつつ皆の許に駆けてきた。
「教授が、いくなってしまいました!! こんな書き置きがテーブルにっ!!」
それには、ただ一言書き記されていた。
「あのバカを説得してくる。直に戻るので心配しないでくれ」
事態は、古代魔法王国どころではなくなってしまった。
「教授・・・・早まりましたかっ!!」
ギュッと書き置きを握り締めて、ルイスはそう呟いた。
〜To be continue