●リプレイ本文
●手掛りはどこに?
──パリ・酒場マスカレード
まずは全員が同じ情報を知っておく必要がある。
オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)は、今回の教授行方不明事件が自分の責任であると思い、落ち込んでいた。
だが、いつまでも落ち込んでいては教授は助からない。
そう考え、自分の知っている情報を全て吐き出すつもりでいた。
「で、この男性がシルバーホーク卿なんだな?」
ロックハート・トキワ(ea2389)はオイフェミアの描いた似顔絵をじっと見つつ、そう問い掛けている。
「その通りっ!! 細部まで表現。それでこっちが『ダース卿』っていって、シルバーホークの幹部の一人。多分『ワルプルギスの剣士』と。それでこっちの女性が『ヘルメス』。そしてこっちの『髑髏の仮面』を付けている男が『ジェラール』。これで幹部全員とシルバーホーク卿の似顔絵が総べてだよっ!!」
いや、その情報だけはたいしたものだよ。
兎にも角にも、一行はその情報を全員が頭の中に叩き込むと、それぞれのチームに分かれて行動を開始した。
●情報戦〜さて、どうしたものか〜
──引き続きマスカレード
「教授が既に捕まっていると考えた、銀鷹が自ら出入りする場所を教えてくれ」
眼の前に置かれている『宿り木のハーブティー』を飲みつつ、そう話し掛けているのはロックハート。
同じ席に付いているラシュディア・バルトン(ea4107)とダージ・フレール(ea4791)も、ミストルディンの情報を元に行動する予定らしい。
「教授ねぇ‥‥」
ふぅ、と溜め息を付くミストルディン。
「なにか判っているんだな?」
そう問い掛けるラシュディアに、ミストルディンはゆっくりと口を開く。
「その情報を教えてほしいっていう依頼が、貴方たちですでに4件目っていう事だけよ。さて、話をしましょうか?」
そう告げると、ミストルディンは静かにハーブティーを一口呑むと、ゆっくりと続きを話し始めた。
「ミハイル教授の捕まっていると思われる場所についての予測は私にも簡単なのよ。ただ、それが何処にあるのかっていうと、『判らない』って答えるしかないのよ‥‥。捕まっていると思われる場所は『シルバーホークのアジト』、もしくはそれに関与する施設。でしょ?」
ああ、今回は確定情報としては得られない。
「なら、足取りから予測される範囲での、ミハイル教授の現在位置なら?」
その問い掛けに、ミストルディンが逆に問い掛ける。
「その前に、どうして教授が居なくなってしまったのか、その経緯から説明してちょうだい」
「そうですね。実は‥‥」
そう言われて、ダージが教授失踪の経緯について説明を行う。
「‥‥ごめんなさいね。今から言うことは心の中にだけ留めていてね‥‥」
そう告げると、ミストルディンはゆっくりと話を続けた。
「ここから片道3日、グレイファントム領の何処かという事は確定していいわよ。そして今の話から察するに、マクシミリアン自治区、それもシルバーホークの資金源の一つである『地下闘技場』でしょうね。そこから先に何処かに連れていかれたという可能性は考えられなくも無いけれど‥‥あのエリアの情報は信憑性が低くて売れないのよねぇ‥‥」
ロックハートはその言葉の直後、目眩を覚える。
酒場シャンゼリゼなどで聞いた話。
もしその話が事実であり、そしてその場所が本当に存在していた場合。
そこに潜入する手段も無く、且、一介の冒険者程度が戦って勝てる相手がいる筈もない。
「少ない時間で教授を見つけなければならないならば、危険を冒す必要もあるんじゃないかな‥‥」
そうダージが呟く。
「ここ20日間ほどのマクシミリアン自治区周辺でのシルバーホークの動きは?」
そう問い掛けるラシュディア。
「特に‥‥それが判って居るなら、こんなに苦労はしないわよ‥‥最近は、シルバーホーク関連の情報に手を出すと命が危ないって、みんなシルバーホークから手を引いちゃったしねぇ‥‥」
あとは、自分達で調べるしかない。
3人は一路、マクシミリアン自治区へと向かうことにした。
●追跡、ミハイル教授〜足取りは‥‥〜
──プロスト領・ミハイル研究室
「‥‥つまり、教授は普段使っているバックバックを持って居なくなったのか?」
そう問い掛けているのはフィル・フラット(ea1703)。
まずは研究室でシャーリィ女史に頼みこみ、教授の私物と研究室の備品を確認してもらったフィル。
だが、シャーリィは体調を崩して寝込んでしまっていた為、急遽別の研究員に頼み込んでの調査。
その結果、教授が普段持って歩いている筈のバックバックがなくなっていたと、研究員からの報告があった。
バックの中には食糧と羊皮紙などの筆記用具、そして着替えなどが入って居る。
写本などは机に置かれていたことから、調査関係でないことは明白。
「はい‥‥」
下を向いてそう告げる研究員。
「教授の書置き後、馬や馬車、驢馬等は減っていないですか? それと倉庫には保存食等が常備されていた筈ですね? 保存食は何日分ぐらい用意していったと思われますか」
そのフランシア・ド・フルール(ea3047)の問い掛けに、研究員は色々と思い出しつつ話を続ける。
「普段使っている馬車や荷物半入用の驢馬は全く使われた形跡がありません。倉庫の保存食は減っていませんから、バックの中の一週間分ぐらいしか無い筈です‥‥お金をもっていたかどうかについはちょっと‥‥」
つまり、全く別ルートでの移動方法を行ったと思われる。
「そうですか‥‥無事であることを祈りつつ、調査を続けましょう‥‥」
そっと手を組み、天を仰ぐフランシア。
「一旦パリに向かったという事はないから、ここから真っ直ぐに目的地に向かったんだよねぇ‥‥」
チルニー・テルフェル(ea3448)がそう皆に告げる。
出発前、チルニーはパリの停車場に向かい寄り合い馬車などを一通り聞きまわっていた。
だが、教授らしい人物を乗せた馬車は存在せず、さらにグレイファントム領までの定期馬車というのは存在していなかった。
時折臨時便として乗り合い馬車は出ていたが、それにも教授が乗っていたという噂も無かったのである。
「あとは、情報屋さんに聞けば‥‥」
そう告げて、チルニーはハッとした。
猪突猛進の教授が、果たして事前に情報屋を巡って情報を集めるという行動に出るかどうか。
結果‥‥No。
「あー。まっすぐいっちゃったよねぇ‥‥どうかんがえても‥‥」
頭を抱えてフラフラと飛び回るチルニー。
──ガチャッ
「判りましたわ!!」
シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)が外の聞き込みから戻ってきた。
保存食の買い付けなどを行なっている店や貸し馬車などを走りまわった結果、一軒の馬車屋が20日程前に教授を乗せて『グレイファントム領・マクシミリアン自治区』へと向かったらしいという情報をキャッチ、
その馬車屋は真っ直ぐに戻ってきて、今は暇を玩んでいるらしいという情報を入手!!
それを一行に告げると、さらにこう捕捉を加えた。
「片道1G5S。これでどうにか馬車を出してくれるって話しはつけてきましたわ。もし準備が出来ているのでしたら、いつでも走れるそうですわ」
あとは、決まっていた。
一行はそのまま貸し馬車に乗ると、そのまま一路教授の降りた場所まで一気に移動開始。
●情報収集〜危険は向うから〜
──マクシミリアン自治区
「ふぅ。やっとつきましたわ」
ゆっくりと乗り合い馬車から降りつつ、アリアン・アセト(ea4919)はそう告げた。
マクシミリアン自治区に向かったアリアンとルイス・マリスカル(ea3063)、そしてオイフェミアの3人は、なんとか自治区へと向かう臨時便を探し出し、どうにか無事に到着した。
「‥‥噂に高いマクシミリアン自治区。思ったよりも物騒な場所なのでしょうね‥‥」
そう告げつつ、ルイスは周囲に対しての警戒を強めた。
馬車から降りた一行、それもルイスに対して、あちこちから嫌な視線が集っている。
「それでは行きましょうか。酒場街はあっちに、そこに安いお宿もありますからねっ!!」
そう告げつつ、オイフェミアはアリアンの手を引きつつ酒場街へと向かう。
ちなみに、その胸許には『紋章付きペンダント』が輝いている。
(これがある限り、誰も私達には手を出してこないでしょうからねっ)
──宿屋
「大部屋なら一泊5S、個室なら1G。食事は酒場で別に注文だが?」
宿屋の親父はそう告げると、静かに3人の方を見る。
「大部屋の貸し切りは?」
「5Gだね。普段なら3Gだが、今の時期は泊まり客が多いから、それぐらいは貰わないと」
ルイスはそのまま交渉開始したが、やはり値切ること敵わず。全員が個室、但しオイフェミアとアリアンは同室でということで話しはついた。
そして荷物を部屋に預けると、さっそく一行は情報収集の為に近くの酒場へと向かったのただが。
──酒場『大ぐらい猪』亭
「あらぁ。ご無沙汰していましたわ、オイフェミア卿。本日はトーナメントは無い筈ですけれど?」
酒場のテーブルでそう話し掛けてきたのは、先日地下闘技場で出会った事のある女性。
シルバーホーク側近の一人、『ヘルメス』である。
「ホホホ‥‥今日はちょっと別件でして‥‥」
そう告げるオイフェミア。
(いきなり幹部ですか‥‥)
(さて、ここは巧く話を流しておかないと、この人たちに気付かれるとかえって危険でしょうから‥‥)
ルイスとアリアンは、そのままオイフェミアに目配せをする。
流石にそれに気付いたのか、オイフェミアはそのままたあいのない会話で茶を濁す。
ヘルメスも別の貴族を発見したらしく、そのままそっちへと向かっていった。
そして3人も、それ以上そこでの調査は危険と判断、別の酒場にむかうと、教授の似顔絵を手に、色々なところで聞き込みを開始したのであった。
●第二陣到着〜お出迎えあり〜
──マクシミリアン自治区
「ふぅーーー。疲れた」
「でも、ここまで無料だからいいんじゃないか?」
「そうだな‥‥」
そう呟いているのはロックハートとダージ、ラシュディアの『教授付き面白三羽鴉』。
まあ、突っ込みは無しで。
マスカレード発の臨時馬車。
それに乗り込んでここまでやってきた一行。
今頃ミストルディンは全員分の料金を踏み倒されたのを根に持っているんだろうというロックハートの含み笑いは置いといて。
まあ、そんなこんなで適当に変装をしてきたご一行。
ラシュディアはすぐさま周囲に気を配り、周囲に怪しげな気配がないかどうか感覚を研ぎ澄ました。
だが、特になにも感じられない。
「アサシンガールが出てこなかったらいいだけだ‥‥あとは巧く情報収集するだけだ‥‥」
そう小声で呟くラシュディア。
「‥‥隣のアヒルさんもガァガァガァ♪〜」
と、一行の前をよこぎった『壊れた縫ぬいぐるみを抱えた少女』が、歌を歌いつつ歩いている。
「アンリ、まだ病気は治って居ないんだから出歩いちゃだめでしょ!!」
「全く。ヘルメスさんに怒られるわよっ!!」
「それでなくても新人が増えているのに、余計な手間を取らせないでねっ!!」
そう叫びつつ、アンリと呼ばれた少女の前に走ってくる3人の少女。
そしてそのままなにも無かったかのように、少女達は何処かにいってしまった。
なお、少女達が走ってきた瞬間、3人は同時に後ろを向いてしまった。
(流石に‥‥いくら普通にしようと考えていても、咄嗟に身体が反応してしまうとは‥‥)
そう心の中で苦笑するラシュディア。
アサシンガールであろうとなかろうと、兎に角普通に接するつもりだった。
だが、実際に目の当たりにすると、身体が反応してしまう。
それはダージとロックハートも一緒である。
(な、生アサシンガールコワイ‥‥)
ダージ、生ってなんだよ生って。
そしてもっとも複雑な表情をしているのはロックハート。
何故なら、今の少女達に、ロックハートの知っている少女が二人いたのである。
一人はウィザードでアサシンのアンリエット。
そしてもう一人はフロレンス。
以前の依頼で、1度だけロックハートは少女達と相対峙したことがあった。
それにアンリエットについては、保護して欲しいという依頼を受けたこともある。
(教授の件が無かったら、今すぐ連れてかえるのに‥‥)
グッと拳を握り締め、ロックハートはじっと耐えていた。
「さて‥‥そろそろ調べに向かうかぁ‥‥」
そのラシュディアの言葉で、一行は情報収集へと向かったのである。
●さらに後日〜最終便も到着です〜
──マクシミリアン自治区
プロスト領発の貸し馬車にて移動してきたご一行。
やはり適当に変装をしてからやってくると、同じくそのまま近くの宿を借りて荷物を預けて、まずは情報収集へと向かった。
もっとも、先発隊がおおよその聞き込みを終らせてくれていた為、一行は馬車の御者から聞いた限りでの教授の足取りを追ってみたのである。
そしてそこそこの情報を入手すると、どうにか他のメンバーを探しだし合流。
酒場の一角に集ると、静かに情報を交換した。
という事で、全員で今回得た情報は以下の通り。
・幹部の一人、ヘルメスの姿を確認。長期滞在している模様(先発)
・幹部の一人、ダース卿はこの仕事でこの地を離れているらしい(先発)
・シルバーホーク卿が、今、この街に滞在しているしらい(先発)
・幹部の一人、ジェラールは今この地を離れているらしい(先発)
・地下闘技場入り口にて、シルバーホーク卿とミハイル卿が入っていったのを確認(先発)
・アサシンガールを4名確認、内訳はアンリエット、フロレンス、その他2名(中堅)
・『サロン』という所で、教授とシルバーホーク卿が言い争っていたらしい(中堅)
・教授の泊まっていた宿を確認。だが、一泊だけ(後発)
・その宿の酒場で、教授がシルバーホーク卿と密会していたらしい。会話の内容は一部のみ確認(後発)
・バルタザールという貴族に『地下闘技場で戦わないか?』とスカウトされた(フィル)
・メルリンスという女性貴族に『地下闘技場で戦わない?』とスカウトされた(ルイス)
・ヴォルフという貴族に『地下闘技場で戦わないか?』と誘われた(ロックハート)
・ミハイル教授らしき人物が、もう一人の男性と共に郊外の丘に向かって歩いていくのを見た(チルニー)
・教会に、ミハイル教授が懺悔にやってきていた(アリアン)
・宿には荷物が置きっぱなしなので、今は宿で預かっています(シルヴァリア)
注)先発=オイフェミア、アリアン、ルイス
中堅=ロックハート、ダージ、ラシュディア
後発=フィル、シルヴァリア、チルニー、フランシア
其の日までの調査で、ここまでの情報が集るとは予測外。
あとは、一つ一つの情報を繋げていくことだが。
「この自治区には、シルバーホーク卿と幹部のヘルメスが滞在しているということは確実ですわ‥‥」
アリアンがそう告げる。
「それとアサシンガールもな。ある意味厄介なのがアンリエット、それとフロレンスの二人、残りの二人は見た事もない‥‥」
ロックハートのその言葉に、一行はなにかを考えている。
少なくとも、アサシンガールとは過去に因縁のある一行。
今回も関ってきたかと思うと、兎に角対策を練る必要がある。
「酒場に荷物を置いた教授の元にシルバーホーク卿が自ら姿を表わして、そこで言い争いをしていた後、二人は地下闘技場へと向かった‥‥」
ラシュディアがまず纏めていく。
「そこでサロンという所に向かうと、二人でまた言い争いをしていたっていうところかなぁ? 地下闘技場にサロンなんてあるの?」
チルニーの問い掛けに、オイフェミアは静かに肯く。
「そして荷物は宿屋に置いたまま。全ての情報から察するに、教授は『地下闘技場』とやらに入ったきり戻ってきていませんわ。入る方法はなんでしょうか?」
フランシアも頭を捻りつつそう問い掛ける。
「一般観客席なら招待状で、VIPルームにはこの『紋章付きペンダント』が必要、あとは参加者なら、一般席にも出入りが聞く。VIP席は流石に無理だけれど」
オイフェミアがそう告げると、フィルとルイス、ロックハートはお互いの顔を見合わせた。
「つまり、私達は選手として入ることは可能であるということですね?」
「い、嫌だ‥‥絶対殺されるに決まっている‥‥けれど‥‥」
ロックハートは頭を左右に振る。
判っている。
すぐに答えが出るような事ではない。
「闘技場でのゲームはどんな感じなんだ?」
ダージがオイフェミアに問い掛けた。
「まあ、対戦相手の決定の後、色々とダーツみたいなもので決定するんだ。運が良かったら只の殴り合いでノックアウトルール、運が悪かったら武器無制限のスーパデスマッチ‥‥」
さて。
この中でオーグラと互角にタイマンを張る事が出来る人ならば、潜入のち闘技場での戦いなどは容易であろう。
だが、そこまでの実力を伴ったメンバーが、一体どれぐらい存在するだろうか‥‥。
「地下からの別の抜け道はないのですか?」
シルヴァリアが問い掛けるが、やはりオイフェミアは頭を左右に振る。
「私が知っている限りでは皆無ね‥‥あとは、裏技を使って潜入するしかないわよ」
そう告げつつ、オイフェミアは地面を静かに指差した。
オイフェミアの18番、アースダイブ。
だが、それも潜入は出来るであろうが、戻ってくるとなるとかなりきつい。
特にミハイル教授を伴っての脱出となると、難易度はかなり高いであろう。
「いずれにしても、色々と対策を練る必要があるのは確実だな‥‥」
そう考えていたとき、ふとアリアンは静かに立上がると、そのまま別の席で静かに飲んでいる女性に話し掛ける。
「初めまして、シスター・グロリア。私はアリアンと申します。慈愛神セーラに仕えているシスターです」
そう、テーブルで飲んでいる『ヘルメス』に話し掛けるアリアン。
その光景を見て、一行は血の気がサーーッと引いた。
(最悪の事態を想定して置く必要がありますか‥‥)
「実は、行方知れずの仲間を探している方を探しているのです。仲間ですからね。よろしければお力をお貸し頂けませんか?」
そうにっこりと告げるアリアン。
「シスター・グロリアねぇ‥‥随分と懐かしい呼び名です事。ですが、人を間違えていらっしゃいませんか? 私は『ヘルメス』ですわ」
「そうよ。おばさん人違いじゃ‥‥ないのですか?」
ヘルメスの前で食事をしているチビっこ達の一人がそう告げる。
最初は威勢が良かったものの、最後のほうはオズオズと丁寧な口調になった。
「あら、そうでしたか、いえ、後ろ姿が懐かしい方でしたので‥‥」
にっこりと『慈愛の笑み』を浮かべるアリアン。
「まあ、構いませんわ。それで何方をお探しですか?」
そう問い掛けるヘルメスに、アリアンは静かに告げた。
「諸般の事情がありまして。本当にご協力して頂ける方でなくては、その名前を告げられないのですよ。それに、どうやら人違いのようでしたので‥‥」
そう告げて其の場を立ち去ろうとしたとき、ヘルメスがアリアンに一つのペンダントを放り投げた。
「そのペンダントでいける場所‥‥にいますわ。詳しくは‥‥そこのお嬢さんが知っているかと思いますけれどね‥‥」
そう小さくなって隠れているオイフェミアに告げるヘルメス。
「それはご忠告ありがとうございますわ‥‥それでは失礼します」
「貴方運が良かったわ。もしジェラールがいたら、今ここで殺されていたでしょうねぇ‥‥」
ニィッと瞳を細くしつつ、ヘルメスはそう告げた。
「では私達もそろそろね‥‥フロレンス、いつまでも食べていないで。新しい任務がくるわよ‥‥」
その言葉に、フロレンスと呼ばれた少女とその仲間たちは、静かに席を立つとヘルメスの後ろをついて行った。
「それではみなさんさようなら‥‥ガァガァ♪〜」
ヘルメス達が居なくなってから、一行はようやく生気を取り戻した。
「ア、アリアンさん、無謀ですわっ!!」
シルヴァリアがそう告げつつ、ようやく手にしていたワインを咽に流し込む。
アリアンとヘルメスの二人の会話の間、咽が渇きっぱなしだったのである。
「ホホホホホ。でも、これで確定しましたわよ‥‥元よりこれしか道が無い以上、あとは前に進むだけですわよね?」
そのままペンダントをじっと見る一行。
オイフェミアのそれよりも細かい彫刻、綺麗な装飾が施されている。
「なら、これはもう必要ないね‥‥」
ダージはプロスト卿に書いてもらった『グレイファントム卿への紹介状』をポンポンと叩く。
万が一、教授がグレイファントム領に居るのであれば、直接グレイファントム卿と話をしようと思い、簡単な紹介状を書いてもらってきた。
内容は『彼等は優秀な冒険者である。なにか困ったことがあったら力を貸してあげて欲しい』という簡単なメッセージ。
もっとも、もうそれを使うことはないと思ったダージは、それをバックの中にしまい込んだ。
●そしてパリ〜ここからが本番〜
──シャンゼリゼ
そろそろタイムリミット。
時間が無い為、一行はとりあえずギルドに報告を行うと、そのまま酒場にてこれからの事を打ち合わせていく。
地下闘技場の施設、その全てをオイフェミアは知っているわけではない。
ここからは完全な情報戦。
今は一つでも『対シルバーホーク』としての情報を集める必要があった。
さあ、気合一閃、ガンバレ冒険者。
〜To be continue