●リプレイ本文
●ということでっっっっっっ
──それぞれの挑戦・石版解析チーム
「‥‥腑に落ちない‥‥」
腕を組んで、石版の写しをじっと眺めているのはラシュディア・バルトン(ea4107)。
「でも、この解析は私達解析チームで行なったものです。チーム全員で頭を捻って出した結果ですから、間違いはないかと‥‥」
そう告げる研究員だが。
「‥‥解釈が違うと、まったく別の結果を生み出す可能性があるのでは?」
シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)もそう告げつつ、写本をじっと眺める。
「教授の解析はどこからどこまでだ?」
そう問い掛けるラシュディアに、一人の研究員が写本を開いて指をさす。
「この最初の部分です。塔の解説と試練についてですね。詳しい部分の解析の前に、教授が寝込んでしまったので、あとは私達が‥‥」
そのまま指差した部分についての解析を始めるラシュディア。
〜
風の試練を受けなさい。
その資格を貴方は持っています。
訪れる場所は6つの塔、試練を受けて加護を得よ。さすれば、石碑が正面に疾風の精霊現われる。汝達の言葉に耳を傾けよう‥‥
〜
詳しい解説はそんなかんじ。
そしてラシュディアがさらに解析を続ける。
〜
・呟きの塔に赴き、勇気を示せ
・囁きの塔に赴き、優しさを示せ
・嘆きの塔に赴き、厳しさを示せ
・呻きの塔に赴き、強さを示せ
・欺きの塔に赴き、愛しさを示せ
・渇きの塔に赴き、命を示せ
〜
「ふぅ。教授の解析はほぼOK。とお前たちの解析は?」
「ここからです‥‥」
そう呟いて、指差した部分に視線を送る。
(あっちゃあ‥‥かなり違うぞ‥‥)
頭を抱えそうになって、ラシュディアがそう心の中で叫ぶ。
「ここは‥‥」
「これが時間を示していると思われます。タイミングはほぼ同時に‥‥でしょうね‥‥」
そう自信ありげに告げる研究員に、ラシュディアが頭を左右に振る。
「それはこの文字単体での話しだろう? ここの文字とこれと掛け合わせないと、ここがまったく異なってくる。いいか、写本には『全ての頭を攻略しなさい。時間は日が昇り日が沈むまで‥‥』だろう?」
そう告げるラシュディアに、研究員達の顔から血の気がサーーッと引いていく。
「大方、お前たちが『解析が終りました教授』とかいって、時間については詳しく説明しなかったんだろう? それを鵜呑みにして、教授は依頼を出した‥‥まったく」
頭をポリポリと掻きつつ、ラシュディアは写本をとりあげると、 一つ一つについてゆっくりと解析を開始した。
そしてその夜。
解析の完全に終った写本をもとに、ラシュディアは全メンバーに詳しい説明を行うと、 翌日からの攻略戦の為に英気を養った。
──場所は変わって、プロスト城
「では、当日の結界補佐、そして外に魔物がでないように自警団の方たちが各塔の周囲を護衛して頂けるのですね?」
そう話しているのはアリアン・アセト(ea4919)。
「ええ。構造型立体封印はちょっと処理が面倒ですから。全ての塔を解放するとなりますと、今晩からでも各塔の封印処理をして置かないといけませんからねぇ。それに合わせての護衛の件も了解しました」
そのままハーブティーを呑むプロストに、アリアンは再び口を開く。
「では。もし宜しければ、『アリオーシュ』のこと、『幸運剣』を発見した遺跡のことを教えて頂きたいのですが‥‥」
そう問い掛けるアリアン・アセト(ea4919)に、プロスト卿の表情が固くこわばる。
「アリオーシュ‥‥そのような悪魔については、私はまったく記憶にありません。ですが、幸運剣の封印されていた遺跡については‥‥あれは、このプロスト城地下迷宮よりもさらに深く、さらに複雑な迷宮でした。名前は『アビス』。今はすでに、その遺跡は厳重に封印され、そこを訪れるものは存在しません‥‥いや、その遺跡が存在していた事自体、誰も知らないのでしょうから‥‥」
そう告げると、プロスト卿は静かにハーブティーを咽に流し込み、渇いた喉を潤す。
「その遺跡ですが、それほどまでに?」
「ええ。腕に自信のあった私達でさえ、その遺跡の全てを攻略できた訳ではありません。そしてなによりも、その最下層に眠っていると言われている忌まわしき遺物『デス・サークル』については、私達も触れてはいけないと思っていたしだいですから‥‥」
「デス・サークル?」
「ええ。破滅の魔法陣とでも申しましょうか。悪魔の造りし古き魔法陣。一説には、その土地の全ての魂を吸収するまで止まる事のない魔法陣だとか。破壊すること敵わず、その魔法陣は遺跡によって厳重に封印されたと聞いています‥‥事実その遺跡には私達もチャレンジしました。そのかなり地下にて、『幸運剣』は発見したのです。そして、其の日からシルバーホークが変わっていきました‥‥‥‥これが真実ですから‥‥」
そう告げると、プロスト卿は再びハーブティーを口に運ぶ。
「遺跡のあった場所を教えては頂けませんか?」
そのアリアンの問い掛けに、プロスト卿はしばし腕を組んで考える。
「教えるのは構いません‥‥ただ、好奇心だけであそこを訪れる者がまた出るというのも‥‥ですが、今後の事を考えると‥‥そうですね。ヒントを上げておきましょう。その遺跡の場所は、私の知人の子供達が彼の意志を受け継ぎ、今でも守っている場所です。彼は今でも、その遺跡を攻略する為に、凄腕の冒険者達を集めているという噂も聞いています」
そしてプロスト卿は、ゆっくりとその人物のいる場所について話を続ける。
「この私の領地に辺境自治区『ラヴィーヌ』 という場所があります。そこにいる、とある人物を訪れるとよいでしょう。古き遺跡『アビス』にたどり着く為の道標『ディープロード』。彼の子供達はその称号を受け継いでいる筈ですから‥‥遺跡の守護者である『ボンバーマスター』を倒す者たちを集める為に‥‥」
そしてアリアンは最後に、この質問を行った。
「シスターグロリアが亡くなられた際、銀鷹卿の傍らには、星砕殿の姿をしたモノがいたのでしょうか?」
その質問に、プロスト卿はグッと拳を握り締めた。
「シルバーホークを追い続け、たどり着いたあの遺跡でですか‥‥確かに存在していましたよ・ それよりも前に、再開したときに目の前で殺された『星砕』とおなじような姿をした武道家を‥‥」
●翌日・朝〜最終ミーティング〜
──プロスト城
「遺跡に突入する前の準備として、プロスト卿自身が地下第六階層の石碑に魔力を注ぐ。今から3時間後、魔力が注がれた時点で、全ての遺跡の扉が開放される。それが試練の始まりの合図だ‥‥」
端的に説明するラシュディア。
「各塔は最上階に到着する事で試練が待っている。扉が一斉に開放された時点でな。最上階には、風の小精霊が待機しており、彼女に対して試練の答えを告げるだけ。実際にどんな試練かは、予め教授が解析したとおりだが、その質問の意図を考えるのも、答えを出すのもたどり着いた奴の考え方しだい‥‥試練を越えたなら、其の場に入る風の精霊の持っているオーブが輝く筈。最後に、今回のチャレンジに失敗した場合、最低2週間は試練に対して挑戦できないらしい‥‥以上、健闘を祈る」
そう告げると、ラシュディアを始めとした一行は、いよいよ各塔に向かって移動開始。
そしてプロスト卿の合図をじっと待っていた。
──キィィィィン‥‥ガチャッ
扉に刻まれた封印文字が耀き、扉の封印が解除される。
それを合図に、全員がいよいよ塔に突入した!!
●呟きの塔〜勇気を示せ
この塔に突入したのは、シルヴァリア一人。
幸いな事に、この塔には以前も来た事のある彼女。
以前マッピングした地図を引っ張りだして、ゆっくりと、かつ慎重に塔を上がっていく。
「‥‥ここが落とし穴と‥‥それでこっちの魔法文字が囮で、こっちの壁のこの石を‥‥」
一つ一つ慎重に進んでいくシルヴァリア。
そしてどうにかなにごともなく最上階にたどり着いたとき、以前はそこにいなかったものがそこに存在していた。
水晶の宝珠(オーブ)を手にした風のエレメンタルフェアリィが、窓辺に座っていたのである。
「ふぅ‥‥ここまでたどり着いたけれど、試練はどうかしら? 確か『勇気を示せ』だったわね」
そう告げるシルヴァリアに、エレメンタルフェアリィは静かに肯く。
「ここまでの私の行動は、そのオーブで見ていたようね‥‥なら」
そう告げると、シルヴァリアは自分の考える勇気を言葉で説明する。
「勇気とは何事にも決して目を逸らさない事。辛い事、悲しい事、どんな事に対してもそれが現実であるのならあるがままを受け入れ、そして乗り越える。それが私の考える勇気であり、生き方ですわ。もっと端的に言ってしまえば現実を見据え理解する判断力とそれを受け入れる包容力、そしてそれを生かす決断力。それを統合したものかしら‥‥これでどう?」
そう告げるシルヴァリアに対して、エレメンタルフェアリィがニコリと微笑む。
そしてオーブが静かに輝き始めた。
「これでクリアね‥‥あとの皆はどうかしら?」
まずは一つめ。
●囁きの塔〜優しさを示せ
「さて、それじゃあ行きましょうかぁ!!」
すぐ後ろにたっているイルダーナフ・ビューコック(ea3579)を無視して、オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)が塔に入っていく。
「おいおい‥‥一人じゃアブネェだろうが‥‥」
そう呟きつつも、イルダーナフは塔の内部に入ってく。
そして先に入ったオイフェミアは、バックの中からいた切れを取り出し、まずは床に置く。
その上に立つと、静かに魔法の詠唱を開始する。
──ブゥァゥゥゥン
発動光がオイフェミアを包む。
「ふぅ‥‥それじゃあまっていてよっ」
さらに詠唱を開始。
すると、ゆっくりとオイフェミアの身体が中に浮き始めた。
「おいおい‥‥何処に行くんだぁ? そこは天井じゃ‥‥」
そう呟くイルダーナフだが、オイフェミアの上半身が天井に吸い込まれていくのを見て、成る程と肯く。
アースダイブを唱えたオイフェミアは、そのまま石造りの天井など存在していなかったように吸い込まれていったのである。
上昇にはレビテーションを使用したらしい。
だが、ここで思わぬアクシデントが。
──ゴツッ‥‥ニャー
背中のバックがてんじょうにひっかかり、 それ以上は進めなくなってしまったのである。
「ちょっと‥‥とっとと吸い込まれなさいよっ‥‥」
天井のむこうでそう呟くオイフェミア。
どうやらむこうでバックを引っ張っているらしいが、そのたびにバックの中からネコの鳴き声が聞こえてくる。
「おーい。バックの中のネコが引っ掛かっているぞ‥‥まったく‥‥」
だが、天井の向うのオイフェミアには、その声は届いていない。
やむを得ず、イルダーナフは塔の探索を開始。
そのまま上の階に昇ると、頭と肩を床から突き出しているオイフェミアに向かってネコの事を説明すると、イルダーナフはそのままさらに上の階へと昇っていった。
「ち、ちょっと待ちなさいよっ。この塔は私が一人で攻略するんだからっ!!」
そんな叫びを気にすることなくイルダーナフが最上階に到着。
そして窓辺に座っているフェアリィに向かって、優しさについて話し始めた。
「かなり昔になるか‥‥惚れた女がいた。彼女は近所の幼馴染、よくあるパターンでお互い悪からず思っていたという奴だな。ただ俺は何の因果か神の徒たらんを志し、そして運よく中央の教会への推薦が得られる立場になる」
静かに話を始めたイルダーナフ。
心の中で、当時のことを思い出しつつ、ゆっくりと独り言を語り始める。
「ここで一つの選択が発生した。本山に赴くか、好きな子と添い遂げるか。信仰を取るか自分の愛を取るかまさに2択だったわけだ」
そして静かに瞳を閉じ、天を見上げる。
「結果俺は信仰を選んだ。彼女は何も言わず送り出してくれたよ。あとは教会で一心不乱に励み『真理』に昇りつめるだけ。それが2年続いた。そして何がし理由をつけて村に戻ってきたのが2年後だ。情けない話だが幼馴染が忘れられなかったんだな。だが彼女は‥‥」
そしてイルダーナフは、瞳を捕捉しつつ、哀しげな声で言葉をつむいだ。
「既に身を投げて死んでいた。彼女の家は裕福とは言い難く、俺が出てった後直ぐ売られていったんだ。そして、その生活に耐えられなかった。彼女はそのことを一言もいってなかった。言えば俺がどちらを選択するか明白だったからだ」
そして口許に笑みを浮かべつつ、瞳を開けて話しを続ける。
「それが彼女の優しさだったのかそれとも別の何かだったのか判らない。ただそれからかな俺が『汝、自愛せよ』というようになったのは。自分という存在を決して疎かにしないでくれとね」
そこで、フェアリィの持つオーブが輝いた。
「え? 幼馴染の名前か、名前は‥‥」
とても大切な何かを告げる暖かさと、過去を懐かしむようにイルダーナフは呟いた。
大切な人の名前を。
●嘆きの塔〜厳しさを示せ
──ガギィィィィィィィィィィィン
目の前のグールを破壊すると、ルイス・マリスカル(ea3063)は背後から迫ってくるズゥンビを一撃で叩き臥せる。
塔に突入してすでに4時間。
その間、ルイスはひたすら沸き上がってくるアンデットの群れと戦いつづけていた。
戦いつつ、それでも塔の最上階を目指す。
「厳しさですか‥‥厳しさを味わっているのは私のほうですね‥‥示すもなにも、これを乗り越えれば十分な気がしますがねぇ‥‥」
そう呟きつつも、ルイスは次々と塔の各界を撃破していく。
そしてどうにか最上階に到着すると、窓辺に座っているフェアリィに近づいていく。
「いかがですか? 依頼遂行を優先する、プロフェッショナルとしての厳しさ‥‥この姿を見て頂ければ、十分試練を越えたかと思いますけれど‥‥」
そう呟くルイス。
と、フェアリィの持つオーブがゆっくりと輝いていった。
これで3つ目。
●呻きの塔〜強さを示せ〜
「ここの壁から隙間を感じる。風が流れているな‥‥」
閉ざされた塔。
それでも窓がある為、風は流れる。
ラシュディア・バルトン(ea4107)とカーツ・ザドペック(ea2597)の飛込んだ塔は、まさに迷宮。
ムービングウォール(動く壁)によって複雑な地形に姿を変える塔の内部、加えて徘徊するアンデット。
ラシュディアが魔法により道を調べだし、カーツが眼の前に現われるアンデットを駆逐する。
絶妙なコンビネーションにより、どうにか最上階にたどり着く二人。
そして最後の試練がそこで待っていた。
──ニヤニヤ
窓辺に座っているフェアリィは、オーブを手に、二人をじっと見つめていた。
「ここまでの戦いを見て、まだ強さを示せというのか?」
そう呟くカーツ。
──ギィィィィィィィィ
と、部屋の奥で、何かが開く音が聞こえてくる。
そして暗闇から現われたのは、全身を包帯に包まれたアンデット。
「これを倒せば、認めるというところか‥‥」
そう呟くと、カーツは静かに手にしたモーニングスターを構えた。
「援護する‥‥」
そう告げるラシュディアをカーツは手で制した。
「ここが見せ所だ‥‥」
そう叫ぶと、カーツは一気に駆け出し、目の前のアンデットに向かって攻撃を開始した!!
「一撃目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」
──ドゴォォォォッ
あ、己の中の魂に比をともスカーツ。
無双モードに突入した一撃を、アンデットは全身で受止める。
だが、受けきれずに後方に吹き飛ぶ!!
「次、2撃目ぇぇぇぇッ」
──ドゴォォォォォッ
さらに追い撃ちを叩き込むカーツ。
「三つ!! 四つ!!」
──ドゴドゴッ
相手が起き上がる隙を与えない。
「次、五つっっっっっっ」
──ドッゴォォォォォォン
それが最後の一撃。
見るも無残な屍を晒し、アンデットはくだけ散った。
そしてフェアリィの持つオーブが静かに輝いた。
●欺きの塔〜愛しさを示せ〜
静かに階段を駆けあがるフィル・フラット(ea1703)。
本来はもう一人、同行する筈だったのだが‥‥。
「一体どこに行ったんだ‥‥」
おっと、相棒とは合流失敗、単独で踏破となった模様。
それでも途中のゴーレム達を蹴散らし、なんとか屋上にたどり着くフィルだが‥‥。
「‥‥愛しさを示せ‥‥って、どうやって?」
その呟きに、窓辺に座っていたフェアリィがスッと消えた‥‥。
おっと、失敗。
●渇きの塔〜命を示せ
こちらはのんびりと階段を駆け昇る二人。
「何故、『美しさを示せ』というのが何故ないんだろう。醜さの塔とかいうのがあってもいいのに‥‥」
そう呟いているのはダージ・フレール(ea4791)。
「まあ、この塔は罠らしき者も見当たりませんし、ガーディアンの姿も確認できません。このままなにも無ければ良いのですが‥‥」
アリアンがそう告げると、ダージも静かに肯く。
そして二人はただひたすら階段を駆けあがっていく。
──そして1時間
すでに1時間以上、二人は階段を昇っている。
一体何処まで続くのか。
「‥‥魔法的トラップですか‥‥」
はい、その通りです。
ダージのその呟きに、アリアンが立ち止まる。
「対処方法はありますか?」
そう問い掛けるアリアンに、ダージが腕を組んで考える。
「無限に広がる階段‥‥。可能性は、一つです‥‥」
そう告げると、ダージはスクロールを取り出すと、素早く目を通す。
「特殊な幻覚。ならば、それを越える魔法力で!!」
その刹那、ダージの全身が輝いた。
正確には、ダズリングアーマーが発動したのである。
その光に視界を奪われるアリアン。
──パチッ
と、そこで意識が戻る。
アリアンの横には、壁に凭れたまま意識を失っているダージの姿があった。
「この香り‥‥塔の中に充満している、幻覚を見せる香り。特定の幻覚しか見せないというのは、やつぱり古代魔法王国に伝わる秘術なのでしょうか‥‥」
そう呟くと、アリアンはダージを起こして、先を急いだ。
そして無事に最上階に到着したが、そこにはなにもいなかった‥‥。
「なにもいなかった場合は、誰かの試練が失敗した時‥‥だったかな?」
「そのようですわ。とりあえず、一旦戻りましょう」
そして二人は、塔の外に出ていった。
●反省会〜いや、彼には罪は無いし誰にもないし〜
──ミハイル研究室
「‥‥」
言葉もなく其の場に座っているフィル。
「まあ、落ち込むことはないっ。あんたは頑張ったんだから」
そう励ますオイフェミア。
その横では、静かにハーブティーを飲んでいるラシュディアがいる。
「まあ、試練はその都度変わるらしいから‥‥次の挑戦の前に、再度、地下の石碑を解析する必要がある。もっとも、今回の経験で大体の方向性は理解できたから、次は大丈夫だろう‥‥」
その言葉に一同は肯く。
失敗は成功のなんとやら、もっとも失敗したとは誰も思っていないであろう。
ただ、運が悪かっただけ。
そんなこんなで、一行の挑戦はまだ続くらしい‥‥。
●そして依頼最終日〜次の石碑の文字はというと〜
──地下第6階層石碑前
一行はパリに戻る前に、次の試練を確認する為にそこを訪れている。
ゆっくりとラシュディアは石碑に浮かび上がった文字を解読すると、ふう、と溜め息をついて一行にそれを告げた。
〜
・呟きの塔:力を示しなさい。そしてそれを失いなさい。
・囁きの塔:永遠を示しなさい。そしてそれを打ち消しなさい。
・嘆きの塔:自然を示しなさい。そしてそれを実行しなさい。
・呻きの塔:死を示しなさい。そしてそれを受け入れなさい。
・欺きの塔:悲しみを示しなさい。そしてそれに打ち勝ちなさい。
・渇きの塔:友達を示しなさい。そしてそれと共に歩みなさい。
〜
一行はパリに戻る最中、ずっとそれらについて考えていた。
数日後には、再び研究員がギルドを訪れる事になっている。
其の日まで、一行はただ考える事を止めなかった。
〜To be continue