●リプレイ本文
●リベンジするは我にあり〜てなもんや〜
──プロスト領・ミハイル研究室
「‥‥き、教授‥‥その髭は‥‥」
綺麗に刈り取られ、整えられた髭。
ずっとベットに臥せっていたミハイル教授の顎鬚が、綺麗に整えられているのを見て、訪れた冒険者達は絶句。
「うむ。先日、シャーリィの元に無天殿がやってきてのう。うむを言わさずに整えて立ちさって行ったのじゃよ‥‥」
やるな、ほーちゃん。
「さて、話を戻すとしよう‥‥」
其の日は体調が良いらしく、一階の居間にてのんびりとしている教授。
不思議な事に、其の日は他の研究員達は研究室に籠って猛勉強中。
「教授‥‥一体何があったんだ?」
そう問い掛けるラシュディア・バルトン(ea4107)に、髭を撫でつつミハイルが口を開く。
「わしが臥せっているので、みなたるんでおったらしいからのう‥‥再特訓ぢゃよ」
そう告げると、教授はラシュディアに手作りの石碑を見せた。
「それの解析を終えるまでは発掘作業の手伝いを禁止したのぢゃよ」
その言葉に、ふぅーーーんと呟きつつ、あっさりと解析を終えるラシュディア。
「この石碑に書いてあるここの部分‥‥そう、これ、一体どこにいって買ってくるんだ?」
ちなみに、ラシュディアの解析した石碑は『お買い物メモ』。
これとこれを買って来なさいという奴ですね。
「ノルマン江戸村と、ドレスタットぢゃよ。買って来てくれるのか?」
その言葉に頭を左右に振るラシュディア。
そして前回解析した石碑について、教授からのコメントを聞いていた。
「俺の解析は‥‥と、こんなかんじなんだが?」
「うむうむ。おおむねOKぢゃな。但し、加護を得られる場所は、地下ではなく塔の最上階。加護を得たいものを持っている人物の所に、風の上位精霊が降臨するというところぢゃな‥‥」
その言葉に、ラシュディアは解説を求めている。
「どの辺が、そういう解釈に?」
「この辺。こことここの文字はこっちに繋がると、こうなる‥‥どうじゃ?」
そんなこんなで、解析はほぼ終了。
そして塔に対しての攻略についての打ち合わせが始まった。
守護者達は過去の依頼などでほぼ殲滅、何もない空間から湧き出すことはほぼないというプロスト卿の見解に加えて、前回塔に昇ったメンバー達により順路も羊皮紙に書き記される。
あとは各自が、塔での試練に打ち勝つだけであった。
最終打ち合わせを終えたのち、翌日にはいよいよ塔へと出発することになった‥‥。
●呟きの塔〜力を示しなさい。そしてそれを失いなさい〜
──最上階
最上階では、風の精霊がオーブを手に待っていた。
「さて‥‥それではまいりますわ‥‥」
ゴホンと咳払い一つ、アリアン・アセト(ea4919)はゆっくりと前口上を述べ始める。
「これは、『聖なる母』が人々を救い、人を惑わす魔を祓う為に御与えになられた力の一つ」
そして静かに印を組み韻を紡ぐ。
次々と繰り出される神聖魔法。
だが、やがて魔力が枯渇し、ついには魔法が発動しなくなった。
「魔力が充実しているときとは違い、今の私は魔力を総て失っています。それは即ち、主への私の声が届いていないこと、そして主より授けられた力を失っている事になり増すわ‥‥」
その言葉に、風のオーブがゆっくりと輝き始める。
そしてニコリとアリアンは笑みを浮かべると、そのまま静かにこう呟く。
「でも、神に仕えることで得られる本当の力は、神聖魔法ではないのですよ」
それは何か。
その答えを知っているアリアンは、敢えてそれを口には出さなかった。
まず一つめ‥‥クリア!!
●囁きの塔〜永遠を示しなさい。そしてそれを打ち消しなさい〜
──ジューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
最上階で焚火を起こし、その上に鉄板を並べてなにやらやらかしているのはとれすいくす虎真(ea1322)。
「たしか、この塔の試練は『永遠を示してそれを打ち消す』だよねぇ。哲学ですかい?」
キョトンとした表情でじっと虎真の動きを眺めている風の精霊に、虎真はそう告げていた。
手にした木製のボウルの中で、小麦粉や卵、特製出し汁が綺麗に踊る。
混ぜすぎず、それでいて生地の中に空気を含ませるように。
クルクル、クルクルと。
そしてそこに持ち込んだ様々な具を入れていくと、いよいよここからが本番。
──ジューーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
鉄板の上に広げられたお好み焼き。
その生地が焼ける音と匂いが、塔の内部に広がっていく。
「この設問を例えるなら、お好み焼き。このお好み焼きは食べたら無くなりますが、『お好み焼き』と言う存在は無くなりません。永遠を示して永遠を打ち消すとは、『お好み焼きという存在』を示して目の前の『お好み焼き』を食べて消すこと。これはお好み焼きだけでなく生きるもの全てに言える事です。私、『虎真』という一個人は寿命を終えれば消えますが、種である『人間』は滅びません」
そう告げているうちに、いよいよお好み焼きが完成。
それをヘラで皿に移すと、それを風の精霊に差し出す。
「あつあつのうちに食べてくれ!!」
その言葉に、おずおずとしていたて風の精霊はゆっくりとお好み焼きを手に取ると、一口パクッと食べる。
──ニコッ
そのまま一口、さらに一口とお好み焼きを食べる風の精霊。
そして全てを完食したとき、オーブが静かに輝き始めた。
●嘆きの塔〜自然を示しなさい。そしてそれを実行しなさい〜
最上階で、のどかに食事をしているのはカーツ・ザドペック(ea2597)。
ここに至るまで、カーツとムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241)の二人は特に何かを意識することなく、普通に昇ってきた。
そしてカーツは、最上階で風の精霊が待っていたのを確認すると、そのまま頭をペコッと下げてから食事を始めたのである。
その横では、ムーンリーズが静かに精神を集中し、印を組み韻を紡ぐ。
「雷槌のムーンリーズの名に置いてまずは得意の技から」
──ビシィィィィィィィィィィィィィィィッ
そして壁に向かってライトニングサンダーボルトを放つ。
「精霊の助けを借りましたが、此れも自然の力でしょうか?」
そう問い掛けるムーンリーズ。
やがて、カーツは腹いっぱいになりそこでゴロッと昼寝を開始。
カーツはカーツなりに、自然のままに生きているというのを証明しているようである。
やがて、精霊の持つオーブが輝いたとき、カーツはまどろみの中から目を覚ました。
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。っと。どうやら終ったようだな‥‥」
「ええ。取り合えずは‥‥ね。問題は、私と貴方、どちらの答えが正しかったかという事です‥‥」
そのまま二人は、それについて意見を交わしつつ静かに塔を降りていった。
最上階には、窓から注ぐ光を浴びている花が、風を受けてユラユラと揺れていた。
●呻きの塔〜死を示しなさい。そしてそれを受け入れなさい〜
穴を掘っていた。
何処か遠くの井戸の近く。
逃げ出した悪魔がそれに引っ掛かるのを待つ為に、フィル・フラット(ea1703)は穴を掘っていた。
やがてその穴は横穴になる。
そしていつのまにか、フィルの横をミハイル教授が歩いている。
「フィル。この先は危険じゃぞ?」
そう話し掛けるミハイル教授。
だが、フィルは頭を振りつつ前に進んでいた。
やがて穴の向うからは光が差し込む。
その光を越えたとき、フィルは見知った仲間たちと酒盛りをしていた。
「ぷはーーーーーーーーーーーーーっ。旨し!!」
出来たばかりの新酒。
銘酒『極楽とんぼ』に舌堤を打つフィル。
自分が仕込んだ酒を、静かに飲みつづけていた。
「そろそろ進まないとのう‥‥」
フィルの肩をポン、とたたくと、南部老人がフィルに前に進むように話し掛けていた。
「進むって‥‥何処に?」
そう問い掛けるフィル。
「ここは死人の世界。まだお主はここにきてはいけないのじゃよ‥‥」
そう告げると、南部老人は前のほうに立つ塔を指差す。
「まっておるぞ、大切な仲間が‥‥」
そしてフィルはゆっくりと歩きだす。
ふと振り返り、南部老人を呼ぶ。
「南部老人っ。あんたはいかないのか?」
そう叫ぶフィル。
だが、老人は静かに頭を左右に振った。
「いったじゃろう‥‥ここは死人の世界じゃと‥‥」
その言葉を心に刻みつつ、フィルはゆっくりと塔を昇り始めた。
‥‥ィル‥‥フィル‥‥しっかりしろ‥‥
誰かが呼ぶ声が聞こえる。
「‥‥シュ‥‥ラシュディア‥‥か‥‥」
意識が戻ってくる。
フィルは、ようやく思い出した。
塔の試験は死を示し、そしてそれを受け入れる事。
最上階にたどり着いたフィルとラシュディア。
まずはラシュディアが体験した死について、風の精霊に話をしていた。
そのさ中、フィルは自身の手首を切りさき、死を受け入れたのである。
そして彼の脳裏には、様々な過去の出来事か゛よぎっていった。
──ツツーーーー
頬を涙が伝っていく。
「ゴメンよ‥‥まだ俺には帰れるところがあるんだ‥‥こんなにうれしいことはない‥‥判ってくれるよな‥‥南部老人‥‥」
もしあのままあそこに留まっていたら。
フィルの魂は戻ってこなかったであろう。
「ん? まあ、それよりもとっとと塔を降りるぞ。すでに証明はしたし、クリアした。早く手当を受けたほうがいい‥‥」
そう告げつつ、ラシュディアは静かに塔を降りる。
そしてフィルはふと、窓を振り返った。
そこでは、南部老人が静かに、そして笑みを浮かべて肯いていた‥‥。
●渇きの塔〜友達を示しなさい。そしてそれと共に歩みなさい〜
──ポロロロン〜
静かにリュートを奏でるのはルフィスリーザ・カティア(ea2843)。
「私達バードにとって歌や音楽・楽器達は一生のお友達です。歌は私の生きがい。旋律は私の命の源。生きている限りずっと、音楽と共に歩んでいくと思います」
それがルフィスリーザの答え。
そして静かに曲を奏でる。
側では、シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)が曲に合わせて即興で歌詞を作り、静かに歌いつづけていた。
♪〜
見えるかしら? 彼女の姿。
彼女は私にとって大切な友達。
聞こえるかしら? 彼女の声。
私の大切な、友達の声。
瞳を閉じてこらん?
映るでしょう 楽しかった一時。
思い出してごらん? 大切な母親のぬくもり‥‥。
♪〜
そして一通りの歌が終ると、シルヴァリアは風の精霊に頭を下げ、一言断わってから魔法を発動した。
それはミラーオブトゥルース。
「精霊魔法とはつまる所、精霊の力を借りて起こす現象。精霊の力を借りるということは精霊と心を通わせる事。つまりこの精霊魔法こそ私にとって精霊達が大事な友達であるという証ですわ。そして私は今まで精霊魔法に助けられてきましたし、これからも助けられていくと思いますわ」
そして精霊の持つオーブがゆっくりと輝く。
あとは塔から降りるだけ。
降りるだけ‥‥
降りる‥‥
「不思議ですわ。一体どのようにして作られているのでしょうか?」
そう告げつつ、シルヴァリアは精霊からオーブを借りると、それをじっと観察していた。
まあ、そんなこんなでここもクリアー。
いよいよ最後の塔の結果はというと‥‥。
●欺きの塔〜悲しみを示しなさい。そしてそれに打ち勝ちなさい〜
「あたしの悲しみは、無力な事」
そう告白したのはチルニー・テルフェル(ea3448)。
示すものは悲しみ。
ならば、チルニー・テルフェル(ea3448)の示す事の出来る事は、自身の本音を告げる事。
「遺跡探索に関してはそれなりに役目を果たせると多少自負してもいるんだけど、それ以外はからきし。教授に元気になってもらいたいけど‥‥あ、教授っていうのはね‥‥おじいちゃんなの」
にこやかに教授のことを告げるチルニー。
チルニーにとっては、教授は大切な存在。
「偉い先生なの。でもね。悪魔に魂の一部を取られて病気になっちゃったの。魂のカケラを取り戻さないと元に戻らないって。取り戻すにはその悪魔を倒すか何かしなきゃいけないって。あたしにはとても悪魔を倒すなんて事できない」
そう告げる。
その瞳から、ポトッ‥‥ポトッと 涙が零れる。
「‥‥できないけど、頑張るしかないの。できないから頑張るの。古代魔法王国への道は教授の夢だし、そこへ至る過程で魂のカケラを取り戻す方法とか交渉する機会とかあるかもしれないし。ベッドの脇で泣いて過ごしていても仕方ないし。だったら行けるところまで行ってみる!
だから精霊さん、私達に祝福の風をください」
それがチルニーの言葉の全て。
そして次はいよいよ夜黒妖(ea0351)の出番。
「悲しみ…か。俺は、自分のミスで俺が仕えていた主を失った。それだけじゃない、この前の戦いだって共に闘った人達を沢山失った」
シルバーホーク、オーガの軍勢、魔獣兵団。
それらが黒妖に悲しみを突き刺していた。
その事を、黒妖は語っていたのである。
「目の前で、沢山の死を見た。主の肉の色を見た。仲間達の血の臭いを嗅いだ。殺されるのをただ見るしかできなかった!! 守りたかった、一緒に生き延びたかったのに‥‥守れなかった‥‥俺が弱かったから‥‥!」
グッと拳を握り締める。
自身の力のなさを痛感し、そしてあの時のことを思い出すと、胸が締め付けられる。
だが、それらを全て魂に刻みつつ、黒妖は前を向く。
「初めは、悲しみと自己嫌悪で全部見えなくなったんだ。‥‥後を追って、死のうとさえ思った。でも、できなかった。俺ね、いま‥‥凄い好きな人がいるんだ‥‥大事な人が、いるんだ。
だから――俺はこの悲しみを忘れない。主の事も、仲間の事も、その死も、悲しみも、全部受け止める」
それが、黒妖の誓い。
「その代わり、俺は生き延びるんだ‥‥悲しみを増やさないように、俺ができうる限り、この悲しみの連鎖を止めるんだ」
そして頬を伝う涙を拭うと、弓を掲げて出る限り大声で叫んだ。
「俺の名と、この弓と、そして貴方達に誓って!!」
──キィィィィィィィィィィィィィィィィン
最後のオーブが輝く。
そしてそれが始まりの合図であった。
●加護〜新しい力〜
──呻きの塔正面
塔を降りた一行は、ラシュディアの待つ塔の前に集っていた。
日が暮れ始めたそのとき、一陣の風と共に、一人の女性が姿を表わす。
素肌に紗(うすぎぬ)を身に纏った女性。
「全てのオーブが輝きました。貴方たちは試練を受け、それを証明しました‥‥」
そう告げると、女性は静かにラシュディアから『知識の兜』を受け取る。
それにそっと口付けをする風の精霊『雷神ジニール』。
「‥‥こんな間近に、雷神の姿が見られるとは‥‥」
風の精霊使いであるムーンリーズは感激。
もしこの場に『雷帝』の異名を持つ冒険者がいたならば‥‥。
そして知識の兜が新たなる力を吹込まれた。
その表面に精霊碑を刻みこまれ、風の兜『ウィンドヘルム』へと進化したのである。
「冒険者たちよ。試練を変え、それを示す。その次に進みなさい‥‥精霊の選びし冒険者たち。私は、いつさでも貴方たちを見守っています‥‥」
そう告げると、ジニールはスッと姿を消した。
●後日〜時間があるのならいくしかないでしょう!!〜
──地下迷宮、第7階層
第六階層の石碑はすでに存在しない。
ジニールの加護を得た時点で、どうやら石碑は崩れたようである。
一行の目の前には、更なる地下へと続く階段が姿を表わしていた。
「さて、とりあえず隊列の準備はOKと。全員装備は大丈夫だな?」
カーツが全員の状況を確認する。
そして対に、まだ見ぬ第7階層へと足を踏込む。
長い階段。
まるで永遠へと続くような錯覚さえ覚えたそのとき、階段は開けた空間に道を開いた。
そこは10m四方程度の空間。
その正面には、しっかりと古代魔法語の刻みこまれている石造りの扉が存在した。
「さて‥‥それじゃあいってみようかぁ‥‥」
腕を捲くりつつ、ラシュディアがそう告げる。
そして静かに古代魔法語の解析を開始。
「‥‥この文字は『囚われしもの』を示しているのね‥‥ここは‥‥」
シルヴァリアも横でラシュディアのサポート。
「これは解放‥‥解き放つのほうか。こっちは鎖。封印‥‥強靭な魔力‥‥と」
そして1時間ほどで、ラシュディアとシルヴァリアの二人はどうにか解読成功。
「ここには『解放しなさい、囚われし力を。力は精霊、大地の主。捕らえているのは神々の縛鎖。それを越える力にて、彼の者を永続の苦しみから解き放ちなさい‥‥』となっている」
そう告げつつ、全ての文字をスクロールに書き移すラシュディア。
「この先には、大地の精霊が囚われていて、それを解放すればいいっていうことかな?」
黒妖がそう問い掛ける。
「多分な」
そして静かに扉に手をかけるラシュディア。
「済まないが、精霊魔法が使える奴は手を貸してくれ。扉を解放するのに必要な魔力が半端じゃないらしい‥‥」
扉に刻まれている文字。
そして組み込まれているオーブ。
そのオーブに魔力を注がなくては、扉は解放されない。
「私でも大丈夫ですか?」
「ねー。ジプシーでもOKなのかな?」
ルフィスリーザとチルニーがそう問い掛ける。
「月と陽だな。多分大丈夫だ。俺とムーンリーズ、シルヴァリア、チルニー、そしてルフィスリーザ。多分これで扉が開放される筈だ‥‥」
一斉に魔力を注ぐ5名。
そして扉が輝くと、静かに開かれていった。
●地下墳墓〜カタコンペともいうらしい〜
──第7階層エリア
一行の目の前には、広大な空間が広がっている。
光の届かない空間が広がる。
どうにか松明の灯で視界は確保できるものの、これはかなり厄介なエリアであると誰もが思った。
──ガサッ
と、光の届かない暗闇から、一体の『腐った死体』が姿を表わしたのである。
──ヴァァァァァァァァァァァァァァァァ
腹の底から絶叫をあげつつ、死者は生者に向かって近づいていくが。
──バジッ
アリアンが張り巡らしたホーリーフィールドによって阻まれてしまった。
「さて‥‥このエリアの何処かに、囚われている大地の精霊がいるのですわね?」
そう告げるアリアンに、ラシュディアは静かに肯く。
「とりあえずは、一旦体勢を整えて、そして装備も変更したほうがいいだろうな」
──ドシュッ‥‥ズルッ‥‥
一体。
そしてまた一体。
次々とアンデットがホーリーフィールドに近づいてくる。
その数が半端でないことに気が付いた一行は、一旦扉の中に戻ると、再び扉をロックし、地上に向かって戻り始めた。
●そしてパリ〜次の依頼のスタンバイの為に〜
──パリ・冒険者酒場マスカレード
ラシュディアとシルヴァリア、そして研究室に待機していたミハイル教授との打ちあわせの結果、以下の情報が確認できた。
・地下第7階層にとらわれているのは『大地の精霊フィルボルグス』である。
・神々の縛鎖というもので囚われているらしく、精霊としての力は全て封じられているらしい
・その鎖は破壊しなくてはならないが、その為には強力な魔法武具が必要である
・物品破壊技を使える屈強な戦士、もしくはそれに準ずる者の技術が必要である
・鎖に対して精霊魔法を唱えても、全て無力化される
・地下第7階層は、元々は『偉大なる王の墳墓』であったらしい。その為、墓を護る守護者達、アンデットなどがかなり徘徊している
以上の情報を確認した一行は、次の依頼まで英気を養うことにした。
いずれにしても、第7階層は一筋縄ではいかないようで‥‥。
〜To be continue