【ジョーンズリポート】断ち切れ、運命の鎖

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜13lv

難易度:難しい

成功報酬:5 G 92 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月06日〜10月14日

リプレイ公開日:2005年10月14日

●オープニング

──事件の冒頭
「ふぉふぉふぉ」
 庭にある池を眺めつつ、楽しそうに笑っているのはミハイル・ジョーンズ。
「教授、何か良い事があったのですか?」
 そう後ろから問い掛けているシャーリィ・テンプルに対して、ミハイルは綺麗に切りそろえられた髭を丁寧に撫でている。
「お前がまた、冒険に出るのがうれしいのぢゃよ。ワシの面倒は他の研究員でも大丈夫ぢゃ。マスター・オズの力になってあげなさい‥‥」
 そのままゆっくりと腰を上げると、ミハイルはそのまま自室に籠った。
「教授‥‥ありがとうございます‥‥」
 そしてシャーリィは、次の依頼の為の準備を開始すると、果てしなき迷宮『アビス』の下調べを開始する為にプロスト城へと向かっていった。

──一方そのころ
「フンフンフンフン!!」
「教授‥‥本当に病人なんですよね?」
 研究員の一人が、ベットに腰掛けてそう問い掛ける。
 目の前では上半身裸のミハイル教授が、腕立て臥せ100腹筋100背筋100の筋力トレーニングを行なっていた。
 ちなみにそれを1セットと数えて、すでに3セット。
「もう大丈夫ぢゃ。ほれ‥‥ジャパンでも良いことわざがあるじゃろう? 『山芋、樹から生える』ってな。ようは気の持ちようなのぢゃよ。気合を入れれば不可能も可能となるのぢゃ」
 おっさーーーーーーーーーーーん、それ違う。

 そんなこんなで、なんとビックリ。


●パリ
──冒険者ギルド
「み‥‥ミハイル教授!!」
 瞳をパチクリしながら、受付嬢がそう叫ぶ。
「うむ。待ちに待った時が来たのぢゃ。ワシのこの休息が無駄で無かったことの証の為にのう‥‥再び古代魔法王国アトランティス発見の為に!! 異世界への扉を開放するために!! 諸君、私は帰ってきた!! 」
 いきなり飛ばしていますな、教授。
 そんなこんなで無事に依頼書を書きおえると、ミハイル教授は一旦パリ研究室へと向かっていった。

●今回の参加者

 ea1703 フィル・フラット(30歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea2597 カーツ・ザドペック(37歳・♂・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea2843 ルフィスリーザ・カティア(20歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3448 チルニー・テルフェル(29歳・♀・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea4107 ラシュディア・バルトン(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea4919 アリアン・アセト(64歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea5512 シルヴァリア・シュトラウス(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)

●サポート参加者

安来 葉月(ea1672)/ 氷室 明(ea3266

●リプレイ本文

●ということで〜最後の勝負? 年寄りの冷や水?〜
──ロイ研究室
 深刻な雰囲気。
 今回の依頼の前に、フィル・フラット(ea1703)とアハメス・パミ(ea3641)の二人は、まずロイ教授の元を訪れていた。
「悪魔に魂を奪われていた者が突然回復する可能性はあるのか?」
 まず話を切り出したのはフィル。
 ミハイル教授が元気になった理由。
 それをどうしても知りたかった。
「ふむ、はっきりいおう。そんなことはあり得ない。奪われた魂を取り戻すまでは、肉体は衰弱したままじゃよ。外傷はまったくみえず、それでいて肉体は衰える。正確には、失った魂の分だけ生命力が奪われているというところだからな‥‥魔法でも回復は不可能ぢゃて」
 きっぱりと言い切るのは『悪魔研究家』のロイ教授。
「では、やはり教授は無理をしていると‥‥」
 心配そうに告げるのはアリアン・アセト(ea4919)。
「うむ」
「じゃあ、今回の回復は楽観的に捉えたらまずいんだな?」
 さらにフィルが問い掛けるが、ロイ教授は静かに肯く。
「気力で失った魂をカバーできるとは思えぬわい。もっとも、魂さえ取り戻せれば、あとはあいつの事じゃから、すぐに元に戻るじゃろうなぁ‥‥」
「取り戻すといっても、相手は悪魔なんだから‥‥何処かに定住しているということはないだろうし‥‥」
 確かにフィルの言うとおりである。
 定住していたり住処がはっきりとしているのであれば対処は聞く筈。
「質問を変えさせて頂きますわ。『偉大なる王の墳墓』について、何か御存知でしょうか?」
 そう問い掛けているのはアリアン。
「というと?」
「今回ミハイル教授と依頼をご一緒させて頂くに当たり、向かう先がそのような場所なのです。それで、色々と教えて頂きたいと思いまして‥‥」
「例えばの話だが、エジプトには古来より数々の王が存在していた。それら王は権力を象徴するかのように巨大な墓を建造していた。だが、中にはそれらを作る事の許されていない王もまた存在する。もし、今回向かう先で、墓碑が記されていたら、このような文字を確認してみなさい」
 そう告げると、ロイ教授は羊皮紙に何やら文字を記していく。
「これは王を示す。これが刻まれていればそこに眠るのはエジプトの古代の王。ならば、そこに至る道程には様々な試練が待っている筈じゃて‥‥」
「トラップとかは考えられるのか?」
「うむ。墳墓中央、王の棺に至る道までは、いくつもの罠が仕掛けられている筈じゃて‥‥」
 そしてトラップについても、ロイ教授はさらさらと書き記していく。
「さて、そろそろ俺の話に付き合って欲しい」
 そう告げると、ラシュディア・バルトン(ea4107)はロイ教授に静かに話を振る。
「以前、シルバーホーク邱地下でこんな文字の羅列を見たんだが‥‥」
 そう告げると、ラシュディアは次々と自分の脳裏に記憶していた文字を目の前の羊皮紙に書きなぐる。
 そしてそれをロイ教授に見せると、ゆっくりと教授の反応を待った。
「贄の条件‥‥か。清らかなる魂、無垢なる魂。それらを魔法陣に捧げよ‥‥されば、古の魔法陣、その力を解放せん‥‥というところか。何処かの魔法陣のキーワードじゃな。それ以上の文字配列はないのか? 停止する為の条件が記されているようなのじゃが‥‥」
 かなり確信じみた言葉を綴るロイ教授。
「残念だが、それ以上の文字がない‥‥記憶に‥‥すまない」
 口惜しそうに告げるラシュディア。
「まあよい。いずれにしても、文字配列から察するにかなり古いものであることは事実。何処の遺跡かは知らぬが、たいしたものぢゃて‥‥」
 そして一通りの話を終えると、一行はいそぎ合流する為にロイ教授の元を離れた。


──近くの村
「ああ、確かじっちゃんのそのまたじっちゃんは、大地の精霊と出会った事があるっていう話だぜ」
 プロスト領外れの小さな村。
 調査期間を活用し、情報収集として現地近隣の村の古老を巡っていたルイス・マリスカル(ea3063)は、『フィルボルクス』と『偉大なる王』について聞き込みを行っていた。
 可能な限りの村を回ってみたが、残念な事に『偉大なる王』についての情報はまったく得られず。
 ただし、フィルボルクスについては、あちこちの村でも聞く事が出来た。
 もっとも、最後に確認できたのは、先程の話のようにかなり昔、今は見たものはいないという。
「そうですか‥‥色々とありがとうございました」
 丁寧に頭を下げると、ルイスは村を後にし、仲間たちのもとへと走っていった。


──酒場・マスカレード
「‥‥ここにそれらしい人が住んでいるっていう情報は確認しているわ‥‥」
 入り口から一番離れた奥の席で、情報屋のミストルディンが話をしていた。
「ここにヘルメスがいるのか‥‥他には?」
 真剣な表情で、ロックハート・トキワ(ea2389)がそう問い返す。
「サン・ドニ修道院の周りがちょっとね‥‥何か、きな臭そうな人たちがうろうろしているのよ‥‥。あと、剣士フールについては、巨大な大剣を振回す元傭兵っていうことしか‥‥」
「巨大な大剣?」
「ええ。なんでも、ヴォルフ領で打ち出された剣で、もう剣というよりは鉄塊っていうかんじらしいわ。それを振回す剛腕の傭兵だとか‥‥」
 それらの情報をメモしつつ、ロックハートは次の行動の為の準備を行った。

 
●プロスト領にて〜とりあえず合流してから〜
──プロスト領・ミハイル研究室
「‥‥偉大なる王‥‥いったい何かしら?」
 そう資料となる石碑を眺めつつ、シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)は頭を捻っていた。
「ここからはイメージの問題じゃな‥‥手元の石版、石碑、写本から、残りの時間を考慮して頭を捻る‥‥どうじゃ、ラシュディア、何か閃かぬか?」
 そう問い掛けるミハイル教授に、ラシュディア・バルトン(ea4107)はボソッと告げる。
「教授、封印されたのは偉大なる王。んでここが多分封印‥‥いや、封印した者を示しているとおもうが‥‥」
 そう告げつつ、ラシュディアが石版をなぞる。
「ふぅむ。光の王により封じられし‥‥ともとれるか‥‥」
「だろ?」
「光の王‥‥含んでいそうなのは、『神』ですわね?」
 さらに横からボソッと告げるルフィスリーザ・カティア(ea2843)。
 そしてシルヴァリア、ラシュディア、そしてミハイルはオオ!! と声を上げた後、同時に『いやーな顔』をしてみせた。
「えーっと、私、何か不味い事いいました?」
「ああ、とってもな‥‥」
「勘弁して欲しいわ‥‥それが事実ならね」
「成る程のう。封じられし王、封印したのが神、そして縛られているのが『神々の縛鎖』。地下に眠るは」
「『闇の王』‥‥悪魔の王でしょうか?」
 そう告げるミハイルに、もう一度ルフィスリーザが相打ち。
 そして一行はさらにいやーな顔をする。
「本当に、神々の縛鎖に縛られているのは『精霊』なのかぁ? 実は光の対極、悪魔の王の断片とか‥‥」
 そんな会話をしていて、ルフィスリーザを除く3人は同時に寒気を覚える。
「さ、さて‥‥ワシはそろそろこっちの石版のほうを‥‥」
「あ、私はハーブティーを入れてきますわ」
「ちょっと外の空気を吸ってくるかぁ‥‥」
 ということで、気分転換に向かうご一行でした。
「私、何か不味いこと言ったのでしょうか?」
 きょとんとしているルフィスリーザであったとさ。


●迷宮〜トラップなんてとんでもない〜
──第7階層
 ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
 階段上から、真っ直ぐ正面に向けてグラビティーキャノンを叩き込んでいるのはオイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)。
「突破口開きまし‥‥まだぁぁぁぁぁぁぁっ」
 入り口を開けて敵をおびき寄せると、オイフェミアはさらに集ってくるグールやズゥンビ、スカルウォリアー達の群れに向かってグラビティキャノンを叩き込む。
 その衝撃波で、群れの中に一直線の道が完成すると、ルイス・マリスカル(ea3063)とカーツ・ザドペック(ea2597)の二人か゛武器を手に切り込みを賭けた!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
──ズバァァァッズバァァァッ
 両手に構えたクレイモアを、勢いよく振りかざすカーツ。
 一撃を叩き込むと、そのまま遠心力を利用してさらにもう一撃。
 そのたった2撃で、目の前のズゥンビは粉砕。
「対オーグラで培った戦闘技術、お前たち雑魚相手にはもったいないっ!!」
 さらに目前に迫るグールを見据えると、そのまま真っ直ぐクレイモアを下段から振り上げた!!
──ドゴォォォォォッ
 顎下からざっくりと破壊されたグール。
 さらにクレイモアをもう一回転させて、股下から力一杯切り裂く!!
──ドシュュュュッ
 オイフェミアのグラビティキャノンで弱っているところにこの斬撃。
 グールといえどもひとたまりも無かった。

──シュパッシュパッ
 素早くルーンソードを構えると、ルイスもまた敵アンデットの群れを叩き臥せていく。
「しかし‥‥やむを得ませんか。バックアップをお願いします!!」
 そう叫ぶと、ルイスはそのまま敵アンデットの群れを引き付けていく。
 そして周囲がアンデットに囲まれたとき、ルイスは素早く首から下げていた『品物比礼』を手に取ると、それを念じつつ振回す。
──ビシィィィッ
 ルイスを中心に対アンデットの結界エリアが発生。
 その周囲で、必死にルイスへと近づいていこうとするアンデット群。
──キィィィィィィィィィィィィン
「行きますわっ!! アイスブリザード」
 そしてシルヴァリアのアイスブリードが発動。
 ルイスの周囲のアンデット達を一掃。
 弱っていたところララシュディアのウィンドスラッシュとルフィスリーザのムーンアロー、そしてオイフェミアの必殺魔法が発動した。
「とっとと死んでくれよっ!!」
──ヒュウンッ
 ラシュディアの真空の刃により、止めを刺されるアンデット。
「これ以上は駄目ですっ!! 月の矢よ、彼の者に戒めをっ」
──シュパッ
 ルフィスリーザの元より放たれるムーンアローを受けて、アンデットは破壊される。
 そして。

──ブツブツブツブツ
 必死に詠唱を続けるオイフェミア。
 その彼女に向かって、グールの一撃が叩き込まれた。
──ドシュッ
 肩口に突き刺さる剣。
 だがも、それでもオイフェミアは魔法を止めない。
「あたしのねこたんは、もっといたかったっ!!」
──キィィィィン
 魔法発動。
 そして素早くグールの腕を掴むと、そのままグールを力任せらに大地に押し込んでいく。

 アースダイブの接触発動。

 そのままグールは大地の中に沈んでいった。
「ふぅ。高速詠唱があれば、もっと効果的だったのにね‥‥」
 そう呟くオイフェミアであった。

──その頃の後方
 回りこんだ敵を空いてに、必死にナイフ一本で戦いつづけているのはロックハート。
「チルニー、そろそろ時間だ‥‥」
「判ったー。教授、こっちこっちー」
 ライトで輝いているチルニー・テルフェル(ea3448)が、教授を安全なところに誘導。
「おお、もうそんな時間か‥‥」
 そしてロックハートが目前の敵に対して蹴りを入れると、すぐさま階段を駆けあがっていく。
「悪いがね、お前たちの相手をしている時間はない‥‥お前たちの相手は、この方だっ!!」
 
──バーーン

 ロックハートの後に姿を現わした女性。
 私達はその女性を知っている。
 指に輝くエンゲージリング‥‥ちがうか。
「‥‥ふん‥‥こんな程度のアンデット相手に、随分と手間が掛かっているわね‥‥使えない男‥‥」
 超絶高飛車エレメンタル・水のフィディエル様キターーーーーーーーーー。
 ちなみに頼み込んだのはロックハート。
 そのままやれやれという表情でアンデットに対して一撃を叩き込むと、そのまま横にずれる。

──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 さらに後方より、灼熱の業火を身に纏った巨人がゅっくりと歩いてくる。
 其の手には燃え盛る炎の剣。
「おお‥‥頼むぞ‥‥」
「ウガ‥‥ウガァァァァァァァァァァァァァァ」
 古(いにしえと書くが、つい最近)の契約に基づき、守護を与える為にやってきたイフリート見参!!
 そのまま次々とニ大精霊達によりアンデットは撃破されていく。

 これぞ、契約を行ったものの強み。
 ミハイル・ジョーンズの切り札である。

──そして敵殲滅後
 なんとフロアー完全制圧まで6時間。
 戦いました、もう戦いまくりました。
 アリアンの適切な魔法により、怪我人は0。
 正確には、なおらない怪我人は0。
「‥‥しかし、教授。本当に元気なのか?」
 さらりと教授の近くで問い掛けるカーツ。
「うむ。空元気じゃて。正直きつい‥‥が、立ち止まってはいかん」
 そう告げると、いよいよ大詰め。


●神々の縛鎖〜切れないって!!〜
──巨大な石碑前
 両腕両脚をがっちりと鎖で繋がれ、台の時に石碑に張付けられているフィルボルグス。
 その前迄やってくると、チルニーはその耳元で静かに語りかけた。
「優しい大地の精霊さん。今助けてあげるからね‥‥」
 その言葉の直後、いよいよフィルが武器を手に前に出る。
「斬鉄剣‥‥。今の俺に斬れない物は、少ししかない!」
 力一杯振りかざすと、そのまま一気に鎖に向かって『グレートブレーメンソード』を叩き込む!!
──バッギィィィィィン
 そして砕けたっ!!
 グレートブレーメンードが‥‥。
「うっ‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 あ、それは叫ぶわ。
「お、れ、た、ねぇ‥‥」
 しみじみとそう呟くオイフェミア。
 そしてロックハートが鎖を調べるが、まったくといって良いほど傷もない。
「フィル、同じ剣はプロフェッサーのコレクションにゴロゴロしておる。あとで貰ってやるから安心せい!!」
 そう告げると、ミハイルはじっと鎖の後の石碑を眺める。
──ガシッ
 そして男性陣全員(ショックで魂の抜けかかったフィル除く)が、ミハイルをガシッと止める。
「ふっ‥‥久しぶりだな、この感触。ミハイル教授、だからむやみに近付くなと俺が小一時間‥‥」
 そうくどくどと説教を始めるロックハート。
 むぅーとむくれつつも、教授は後に下がっていく。
 そして改めて、ロックハートがトラップ、その他のチェック開始。
「‥‥まあ、特に怪しい部分は‥‥と‥‥」
 暫く調べてみたが、特に問題はなし。
「あああ‥‥ざんてつけんが‥‥」
 いまだ動揺しているフィル。
「さて、それで問題はこの鎖じゃな‥‥と、オイフェミア、何をしとる?」
 鎖の隙間に油を流し込んでいるオイフェミア。
 そして勢いよく引き抜こうとするが、やはり失敗。
「攻撃魔法は中和、ブレーメンの武具でも駄目。教授、これって破壊不可能なんじゃない?」
 シルヴァリアがそう告げる。
 そしてアリアンは、衰弱しているエレメンタルにリカバーを施してみるが、それすら中和されてしまっていた。
「神聖魔法でも駄目ですわ‥‥」
 そう告げると、アリアンもミハイルの元に戻ってくる。
「困りましたわ‥‥何か方法はないものなのでしょうか?」
 そう呟くルフィスリーザ。
「やっぱり‥‥あれしかないのでしょうか?」
 ボソッとアリアンが呟く。
「ブレーメンの武具よりも強力で、この鎖を破壊する事の出来る武具があるのか?」
 お、フィル復活。
「ええ‥‥皆さんもパリの冒険者なら、その名前だけは聞いた事があるのでは?」
 そのアリアンの言葉に、ほぼ全員が思い当たる。

 ディンセルフの魔剣‥‥アイテムスレイヤー

「いや、でもあれは‥‥」
「ええ、とある所に保管されていますわ。その場所を知っているのは私とあと数名。今からそこに向かうのも‥‥」
 そう呟いた時、囚われていたフィルボルグスが何かを呟く。
「ウ‥‥アア‥‥ウウアア‥‥」
「大丈夫だよ‥‥すぐに助けてあげるからね」
 そう話しかけるチルニー。
 だが、フィルボルグスは、右手の指だけをミハイルの荷物に向けた。
「ねー、教授〜。その荷物、何が入っているの?」 
「おー、チルニー。この荷物はな‥‥」
 相変わらずシフールに弱いおっさんだなおい。
 ゴソゴソとバックの中から『道標の魔剣』を取り出す。
 以前、仲間たちと共に『魔の地下迷宮』でゲットした一品。
 今回はこの剣に加護を与えて貰う予定であった。
「それだぁぁぁ。フィル、その剣で鎖を断ち切るんだ!!」
 ロックートが何かに気がつく。
「これって‥‥普通の剣だろ?」
 そう呟きつつ、フィルが剣を手に取る。
「鍵なんだ‥‥そう、その剣が鍵なんだ。頑丈な錠前があったとしよう。どうしても開けたいけれど、どんな攻撃をしても壊れない錠前。でも、鍵穴に逢う鍵を差し込めば、簡単に空く‥‥それだっ!!」
──ビシィッ
 道標の魔剣を指差し、そう告げるロックハート。
 冴えているぅぅ。
「なら‥‥」
 ガバッと身構えると、フィルは力一杯鎖に向かって剣を叩きつけた!!
──バギィィィィィィッ
 一撃で粉々にくだけ散る縛鎖。
「ほう」
 その光景を見て、カーツの口から感嘆の声があがる。
 そして倒れてくるフィルボルグスにアリアンが素早くリカバー。
「これで大丈夫ですわ。あとは、体力の回復を待つだけです」
 失われた生命力は取り戻せるが、体力は回復しない。
 そのまま一行は、フィルボルグスの回復をじっと待った。

 そしてしばらくしてから、一行は無事にフィルボルグスより加護を得る事に成功。
 『道標の剣』は『大地の魔剣』へと進化した。


●それでは、いよいよ第8階層〜ちょっとまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜
──第8階層
 フィルボルグスの加護を得た後、一行はその真下にあった『閉ざされた扉』を解放。
 階段をゆっくりと降りていくと、いよいよ第8階層へとたどり着いた。

──シーーーン
 石造りの壁。
 床も天井も全てが石造り。
 そして四方に広がる回廊。
 その回廊の手前全てに、石碑が納められていた。
「さて‥‥そろそろ仕事か」
「ああ」
「そうじゃな」
 そう告げると、ラシュディアとロックハートが石碑に、他の一行は腕まくりしたミハイル教授を押さえつける。
「この空間‥‥なんだかあったかい♪〜 えへへ。しふしふしてるー」
 ほわわーーーんとしているチルニー。
「ふぅん‥‥トラップ一切なし」
「そしてここが試練の場所か‥‥」
 そう呟くと、ラシュディアは一行に試練についての説明を行った。

 ここは陽精霊の試練場であること
 知恵と体力、その全てを行使して、試練を越えなくてはならないこと。

「成る程。知力体力時の運という奴ですか‥‥」
 ルイス、おおむねその通り。
「それじゃあ、俺が体力といくか」
 ごきごきと拳を鳴らすカーツ。
「ちょっと待ってください。知識が先のようですから‥‥と」
 なにやら詠唱を開始するラシュディア。
 と、石碑の影から小精霊が姿を現わした。
 そして、ラシュディアに石碑を手渡すと、そのまま姿を消してしまう。

 その石碑の古代魔法語を解析すると、おおむねこんな感じ。

──────────────────────
 謎を解きなさい。
 謎は全部で4つ。
 その全てを答えよ。
 されば、次の試練への道が開けるであろう。

 朝は4本脚、昼は2本脚、夜は3本脚の動物がいる。次の朝は何本脚?

 朝から夜まで人を付け回す奴は?

 夜、何処までも人のあとを追いかけてくる嫌な奴は何者?

 ここであってここでなく、そこであってそこでない。それは何処?

 
──────────────────────
 そして一行は石碑を手に、一旦地上へと戻る事となった。


●そしてパリ
 無事にフィルも新たなる剣(といっても同じ奴)を手に入れる。
 そして一行は、石碑を片手に酒場・シャンゼリゼにたどり着いた。
「さて‥‥ここからは教授の腕の見せ所ですね?」
 そう告げるルフィスリーザ。
「う、うむ‥‥わし、こういう謎解き苦手なのじゃよ‥‥ラシュディア、あとは任せる。ワシは残りの文献を調べてくるわい」
 そう告げると、ミハイルはそこから退場。
「あーっ、教授〜わたしも手伝うよー」
「おーー、チルニーも一緒か、よしよし、あとで団子を買ってあげよう」
 そのまま二人、愛の逃避行?
 そして一行は、難解な謎に頭を捻ることとなった。

〜To be continue