●リプレイ本文
●夜の酒場でどんじゃらほい〜調査中〜
──マスカレード・カウンター
「ここに記されていることは全て真実なのですか?」
ウィル・ウィム(ea1924)は、横に座って『宿り木のハーブティー』を静かに飲んでいる女性にそう問い掛けた。
ウィルは、先日ブルーオイスター寺院で出会った『アンダーソン神父』の身辺・動向調査を依頼した。
と、それらについては既にミストルディンの方でも調べていたらしく、すぐさまウィルにそれらの記されている書面を手渡した。
「全て真実ね。あの神父、白でもなければ黒でもないわ。限りなくグレーよ」
出身は神聖ローマ帝国。
シャルトル・ノートルダム大聖堂にて神父となる。
その後、現グレイファントム領・領主に請われてグレイファントム領へ。
一定期間の神父としての務めを終え、現在のブルーオイスター寺院に就く。
一見すれば白。
シルバーホークとの接点もないが、それも見えないだけかもしれない。
そしてグレイファントム領での神父生活。
その時期になにかあったと考えたほうが得策である。
そしてウィルは、静かにミストルディンに礼を述べると其の場を後にした。
●作戦開始〜シリアスでないとやっていけない〜
──近くの村・聞き込み
「ああ、あそこはもう廃村じゃあないよ。結構人が住んでいるみたいだぜ?」
別の場所で聞き込みをしていた青龍華(ea3665)は、とある農夫から色々な事を聞くことが出来た。
「どれぐらいの人でしょうか?」
「まあ、俺は直接村に行ったことはないから、どれぐらいと聞かれてもなぁ。ああ、確か以前、商隊がその村に向うのを見た事があうるから、結構人はいるんじゃねぇの? それにたまに道を聞かれるしなぁ」
農夫の言葉一つ一つを脳裏に焼き付けていく龍華。
「そ、それは最近ですか?」
「ん? ああ。昨日も子供連れの人が村に向かったなぁ」
今でも人は出入りしている。
しかも商隊を雇ってまで運びこむ荷物の量。
かなり大勢の人が、今でもそこに住んでいるのは確実である。
──廃村周辺・斥候
(簡単な狩猟用トラップが彼方此方に・・・・)
斥候として廃村近くを調査しているキサラ・ブレンファード(ea5796)は、森の彼方此方にトラップが仕掛けられているのを確認した。
それは全て『大型動物用』の物であり、しかも巧妙に隠されている。
ここに来る途中、村の猟師から聞いた話では、この辺りには『大型動物』は生息していない。
にも関らず、このような罠が設置されているのは、どう考えても不自然である。
物音を立てないように、静かに周辺を見渡しているキサラ。
村の外れ近くに、柵で覆われた区画があるのを確認。
その中では、6名程の少女が何やら訓練を行なっている。
(あの子達がアサシンガールとして・・・・少女は全部で6、それを見ている奴が4)
静かに気配を消して、その様子をじっと見ているキサラ。
なにはともあれ、周辺調査を終えたキサラは、一旦ベースキャンプへと戻っていった。
──潜入捜査・村長宅床下
(これは参ったなぁ・・・・)
腕を組んで思考しているのはリスター・ストーム(ea6536)。
人目を素早くかい潜り、『女性の気配』を感じつつ廃村中央にある家に侵入。
そのまま床下にある貯蔵庫に潜り込むと、じっと気配を消したまま耳を外に傾けている。
『では、卿が明日視察に?』
『ええ・・・・で、明日出荷する荷物の準備は整ったのかしら?』
『それは大丈夫だ。今晩中に荷物はまとめておくように話はついている。あのスケベ貴族に買われていくのもなんか釈然としないが、大事な商品だしなぁ・・・・』
人身売買。
アサシンガールを商品として売り飛ばしている。
その情報をリスターは、じっくりと聞き取っていた。
そしてなにより気になったのは『卿が明日視察』の部分。
もしリスターの推理が正しければ、明日ここを訪れるのは『シルバーホーク卿本人』。
今までその姿を見た冒険者というのは『冒険者ギルドの報告書』をひっくり返してみても0。
(そうか、明日になったら『生シルバーホーク』に会えるのか)
生って何よ、生って。
なにはともあれ、体内から吹き出す助平心にブレーキを掛けて、リスターは静かに諜報活動に専念。
──廃村・正面から
「えーっ。この先はいっちゃあダメなんですか?」
廃村手前の今は使われていない街道。
そこを堂々と歩いていたチェルシー・カイウェル(ea3590)は、廃村の入り口横にある小さな小屋から姿を現わした男にそう声を掛けた。
「ああ、こっから先は領主から許可を貰っている物以外は入っちゃダメだ。大切なものがあるんだから」
強行偵察だったチェルシーは、ここで玉砕してなるものかと、男ににじりよる。
「ここで引き下がったら吟遊詩人の名折れ。貴方今、大切なものっていいましたよね? それはなんですか? どんなものなのですか? よろしければ教えて下さいませんか?」
そのままにじり寄っていくチェルシー。
最初のうちは男も邪険にしていたのだが、そのしつこさについに観念。
「ああ、判った判った。なら教えてやるよ。この先の村、実はその地下には『古代魔法王国』に繋がる月道が発見されたんだ。今はその解析の最中で、有名な考古学者さんが調査をしているんだ・・・・」
(ああ、嘘ばっかり・・・・)
「有名な考古学者さんって、まさかミハイル教授ですか?」
「あ、あ。そう、そのミハイル教授が調査してるんだ。だから邪魔したら駄目だ」
(はい大当たりー。教授は今頃遺跡の中よっ)
その会話の間にも、チェルシーは見える範囲での村の様子を見ていた。
そしてついに諦め顔をすると、そのまま村から離れていく。
●突撃〜リスターはどうした?〜
──廃村
ガラガラガラ!!
加速を付けた馬車『シャイニング号』が村入り口を突破!!
そのままチェルシーの案内で一気に中央にある村長宅へと向かっていく。
そして馬車は急停車し、中から全員お揃いのデザイン、色違いのスーツを着用した王国歌劇団が姿を表わした。
「王国歌劇団、参上!!」
一斉にポーズを取る。
と同時に、周囲をワラワラと男達、そしてアサシンガール達が囲っていく。
──ビシィッ!!
その中でも首領臭いと思われる男に向かって指差すと、リュリュ・アルビレオ(ea4167)は一気に前口上!!
「‥‥芸風を見失ったピン芸人のようなキモチで流離ったココロの旅・・・・ってちがーーーうっ」
手にした羊皮紙を地面に叩きつけるリュリュ。
「いたいけな少女を攫い、あまつさえ犯罪者として教育するシルバーホーク。私達はあなたの存在を許さないっ!!」
お、咬まずに言い切ったよ龍華。
そのままグッと拳を構えると、さらに止めのきめ台詞!!
「貴方たち悪は全て断たせて貰います」
それが戦闘始まりの合図。
「訓練の成果を見せるのですっ」
調教官の一人がそう叫ぶと同時に、アサシンガール候補生達は各々が愛用の武器を取り出し、素早く身構えた。
──サラサ&チェルシー
まずチェルシーが竪琴を取り出し、静かに旋律を奏でる。
それに合わせて、サラサ・フローライト(ea3026)は静かに印を組み韻を紡ぐ。
メロディと呼ばれる魔法を発動させると、静かに歌を歌い始めた。
♪〜
瞳を閉じて、静かに思い出して。
優しかった日々、あのときの思いで。
まだちいさい貴方は、毎日笑っていたね。
もう忘れちゃったのかしら?
♪〜
そしてチェルシーも、メロディーを発動させると、サラサと共に歌を続けた。
♪〜
もう一度、思い出してご覧。
あの日の出来事、あの時の約束。
楽しかった時間、貴方はいつも
笑っていたね
泣いていたね
元気だったね
瞳を閉じて、静かに思い出して。
優しかった日々、あのときの思いで。
まだちいさい貴方は、毎日笑っていたね。
もう忘れちゃったのかしら?
♪〜
その効果ははっきりと形となって現われた。
子供達は次々と武器を落とすと、其の場に座り込んで静かに歌に耳を傾け続けた。
──シュッ
一人の調教官が素早くナイフで切りかかる。
「余計なことをっ!!」
全く表情一つ変えずにそう告げると、調教官は華麗なる手さばきで、フォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)に斬りかかった。
だが、その攻撃を簡単に楯受けすると、フォルテシモはゆっくりと間合を取る。
(実戦慣れはしておらぬようぢゃな・・・・)
そのまま静かに間合を取ると、相手の一瞬の隙を見て一気に飛込む!!
──ズバァァァァァッ
そのままフォルテシモは調教官に向かって一撃を叩き込むと、そのまま後方のサラサとチェルシー、そして子供達を保護しているリュリュ、ウィルの楯となり遅い来る雑魚の排除を開始した。
──ドガッ
激しい一撃が横っ面を直撃する。
同じく後衛の盾となり、男性調教官と相対峙しているのは龍華。
殴られてもなお、龍華は男の方をキッと睨みつける。
「そんな一撃では、私を倒すことはできないわよ・・・・」
静かに間合を下げていく龍華。
「面白い、お嬢ちゃんがどんな攻撃をしてくるか見させて貰うぜ」
タンタンと軽くステップを踏みつつ、男も半身に構える。
──ハァァァァァァァァァッ
体内の気を静かに練り上げる龍華。
男との間合は遠すぎる。
だが、十二形意拳・龍の型を納めている龍華ならば、この距離はあってなきが如し!!
──トン
一歩。
踏込んだ軸足を中心に全身を回転。
そのまま捻りに任せつつジャンプ、そして男に向かって会心の蹴りを叩き込む!!
「龍拳奥義の壱っ!! 騰空側端腿っ!!」
──ドゴォッ
男の首の付け根に、龍華の改心の飛び蹴りがジャストミート!!
さらにそこから自然落下し、大地に着地した瞬間、両手で大地を押し出すように首もとに爪先を叩き込む!!
「同、奥義の伍っ!! 螺旋龍撃っ!!」
そのまま呼吸が止まり、男は後方に倒れていく。
そして龍華は別の方向から走ってくる手下に向かって腰を落とし、グッと拳を構えた!!
「まだ歯向かうのなら、私は手加減しないわよっ!!」
──ガキィィィン、ガキィィィン
激しく打ち鳴る剣と太刀。
カタリナ・ブルームハルト(ea5817)は男と剣戟の真っ最中である。
「いい腕をしている。だが・・・・綺麗過ぎる」
男はそう呟くと、そのまま剣を引いて直にカタリナに向かって蹴りを叩き込む。
──ゴギッ
深々とカタリナの横っ腹に叩き込まれる蹴り。
「ぐぅっ・・・・女の子に向かってそんな事すると、罰があたるんだぞっ!!」
苦痛に顔を歪めつつも、カタリナはそう呟く。
「ぐっ・・・・ぐぁぁぁぁっ!!」
だが男は、さらなる悲鳴をあげている。
カタリナの腹部には蹴りが届いている。
その蹴りに向かって、カタリナは瞬時に左膝と左肘を叩き込んだ。
交差法と呼ばれる高度な技である。
「ボクは専門の訓練は受けていないし、特殊技術もマスターしていない。けれど、熱いハートがあるんだっ!! いたいけな女の子達を暗殺者にしようとした貴方を、ボクは絶対に許さないっ!!」
素早く足を離すと、そのままカタリナは刀の峰に左手を添え、そのまま一歩前に踏み出す!!
──ドシュッ
切り付けるのではなく、両手で掌打を叩き込むように剣を叩き込む。
自由な発想をもつ流派『ノルド』。
その軟らかな剣捌きは、女性であるカタリナにもこのような応用技を生み出すことを可能とした!!
そのまま後方に倒れる男。
そしてブゥンと剣を振り、カタリナは男に向かって剣を身構えた!!
「子供達は返して貰います!!」
そのカタリナの一言で決着は付いた。
──そして最後の一人
「・・・・これ以上は無駄な戦いだ・・・・」
傷一つ無くそう呟くキサラと、その前方で全身を傷だらけにしている男幹部。
圧倒的な実力で、キサラ・ブレンファード(ea5796)は男を手玉に取っている。
「お、王国歌劇団だと・・・・我々がシルバーホークと知っての事かっ!!」
再び男は切りかかる。
だが、それを静かに躱わすと、そのまま上段から剣を叩き込むキサラ。
「そんな見え見えの剣筋っ!!」
男は素早くバックラーを上段に構える。
──ドシュッ!!
だが、男の『腹部』にキサラの剣は叩き込まれた。
これぞ奥義『フェイントアタック!!』。
上段からに見えた攻撃は鮮やかにギリギリで軌跡を変え、中段にシフトしたようである。
「その傷だと長くは持たない。降参するのなら命は助ける。まだ殺り合うか?」
グッと剣先を男に向けるキサラ。
と、ここで男もギブアップ。
「それでは僭越ながら・・・・勝利のポーズ」
『決めっ!!』
全員が一斉に決めポーズ!!
──そして
「よう。こっちは無事に終ったみたいだな」
村長宅から堂々と姿を表わしたのはリスター。
その側には『いかがわしい縛り方』で縛り上げられた半裸の女幹部の姿があった。
一体何をしていたのかはあえて聞こうとしない一行。
女幹部の表情が恍惚としているのを見た一同はこう思ったらしい。
『調教していたんだ・・・・』
ええ。その通りですよ。
「子供達は無事に確保。今は落ち着いています」
ウィルがホッとした表情でそう告げる。
「同じく。こっちの子供達も無事だよっ!!」
リュリュもまた、子供達の安全を確認。
どうやらまだ洗脳はされていないらしく、子供達の中には泣いている子も存在する。
──シュンッ!!
その時。
一筋のムーンアローがサラサに向かって飛来!!
「月光・刹那菖蒲返し・・・・」
そうサラサが呟いた瞬間、サラサの真横にムーンアローが姿を表わす。
そして飛来してきたムーンアローに直撃すると、敵ムーンアローを相殺した!!
「・・・・もう来ない。私を狙ったのか? それとも忠告か?」
サラサは周囲に注意を傾けるが、特に怪しい人は感じとることは出来なかった。
「ひとまず全員を馬車に。このままノートルダム大聖堂まで向かいます!!」
キサラのつてで、イルダーナフからシャルトル・ノートルダム大聖堂の大司教宛の紹介状を得ている一行。
ウィルの叫びで子供達が全身馬車に詰め込まれる。
そして一行は、エクスキュージョナーズから逃れるように、一目散にプロスト領まで走っていった。
●そして〜無事に帰還〜
──パリ・冒険者酒場マスカレード
無事にシャルトルのノートルダム大聖堂に子供達を預けた王国歌劇団一行。
そのまま冒険者酒場に向かうと、そこで待っていたアンダーソン神父に事の全てを報告した。
まだ、事件は始まりでしかない。
本当の恐怖は、間もなく扉を開ける・・・・。
〜To be continue