王国歌劇団〜潜入調査、人身売買組織〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜13lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 70 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月13日〜05月23日

リプレイ公開日:2005年05月19日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはいつもの昼下がり。
 いつもの酒場・マスカレードでは、一人の女性がカウンターで仮面のマスターと話をしていた。
「では、これをお渡ししておきますので‥‥」
 そう告げつつ、その女性『ニライ・カナイ』はマスターに一枚の羊皮紙を手渡した。
 それをゆっくりと広げつつ、マスカレードは静かにそこに記されている文章をじっと読む。
「確かに、もしここに記されていることが事実でしたら、これから先のシルバーホークの資金源を次々と叩き潰すことが出来ます。しかし、どうして貴方が私にこれを?」
 そのスクロールには、シルバーホークの子飼いの組織による人身売買に関するデータが記されている。
 つい最近、ニライがとある冒険者達を雇って手に入れた貴重なデータの一部である。
「理由は簡単です。私達『国』が動いた場合、リスクが高く付く事も予想されます。ですが貴方たちのような組織や、冒険者が個人で動く分には、国にとってのリスクは少なく、益は大きい。ただそれだけの事なのですよ‥‥では‥‥」
 そう告げると、ニライ査察官は静かに席を立って帽子を被ると、静かにマスカレードに頭を下げた。


●上層部会議
 マスカレードの二階にある個室で、マスカレードのマスターとリチャード、情報屋のミストルディンの3名が打ち合わせを行なっている。
「ああ、この組織か。俺が『お笑い』に所属していたとき、シルバーホーク卿と一緒にいたのを見た事があったな‥‥」
「私達情報屋の中では、これといって大きな『人身売買組織』は引っ掛からなかったのよ。でも、これは盲点すぎるわよ‥‥村一つなんてねぇ」
 リチャードとミストルディン。
 二人の持っている情報で裏は取れた。
「ふむ。一見したら小さい村ですが、その村全てが『人身売買組織』ですか‥‥」
「アサシンガールではない、普通の子供達を商品としてねぇ‥‥考えうる戦力は、おそらくアサシンガールかその他護衛という所でしょう」
「まあ、いずれにしてもここだけではないのですし、地道に一つ一つ潰していくしかないですねぇ‥‥」
 3人の意見は一つになった。
 あとは決断を出すだけ。
‥‥‥
‥‥

「王国歌劇団、出撃!!」

●今回の参加者

 ea1861 フォルテシモ・テスタロッサ(33歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1924 ウィル・ウィム(29歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3665 青 龍華(30歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4167 リュリュ・アルビレオ(16歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5796 キサラ・ブレンファード(32歳・♀・ナイト・人間・エジプト)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6536 リスター・ストーム(40歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●さて、いってみようか‥‥
──とりあえずマスカレード
「じゃあ、村の全てがシルバーホークの息のかかった者たちということじゃな?」
 そう問い掛けているのはフォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)。
 今回の依頼で、尤も重要な事。
 それは『村人の存在』。
 もし村人が全員シルバーホークの関係者でなかった場合、彼等の罪について色々と考えておく必要があったのである。
 だが、情報屋ミストルディンの話では、村を構成しているのが全てシルバーホークの構成員であり、その村自体がそれ専用の施設であるという。
「そうですね。唯一違うのは、その村に商品として納められている子供達のみ。かなり危険でリスクも大きいと思いますが、どうか頑張ってください」

──一方、2階のとある部屋
「今回の作戦で子供達は助け出すつもりだから、輸送用の馬車で殲滅作戦に間に合うように迎えに来てくれないかな?」
 ベットの中で腕枕をし、側で自身に抱きついているシスター・オニワバンこと『大丹羽・蛮』にそう話し掛けているのはリスター・ストーム(ea6536)。
「貴方の為なら‥‥」
 うっとりとした表情でそう告げる蛮ちゃん。
 ツツーとリスターのたくましい胸許で指を滑らせると、そっとそこに優しくキス‥‥しようとして硬直。
──?
  首からかけてあったペンダント。
 それを手に取り繁々と眺める。
「ねぇ‥‥リスター。このペンダントどうしたの?」
 それは以前マクシミリアン自治区にて、大勢の貴族夫人との『大人の関係』によりゲットした代物。
 これがある限り、リスターは地下闘技場のVIP席はおろか、サロンにすら突入可能らしいが。
「ん? ああ、ちょっとね‥‥」
 余韻を楽しんでいるリスター。
 だが、横の蛮ちゃんの様子がおかしい。
「‥‥浮気したわね?」
──ゴゴゴゴゴゴ
「ん? 俺には君しかい‥‥な‥‥い?」
 そのペンダントの裏に刻まれている名前。
 そこにはとある男性から、大切な女性へ愛を込めてといった言葉が記されていた。
 つまり、元の所有者は女性。
 バンちゃんにとっては、他の女の匂いのするものをつけているという事実だけでアウト。
「リスターの‥‥バカーーーーーーーーーーっ」
 そう叫びつつ印を組み韻を紡ぐバンちゃん。
 そして『神の一撃』を叩き込むと、そのままローブを羽織って外に飛び出した。
「は‥‥はは‥‥シスターっていう名前は伊達じゃないのね‥‥」
 まあ、それでもすぐにバンちゃんはリスター達の為に二台の馬車で出発したから結果オーライ。
 

●作戦開始〜とある村にて〜
──潜入する村
 ギーコ、ギーーコ
 川下りを静かに愉しみ、一行はそこから歩いて目的の村へと到着。
 もっとも、その手前で潜入部隊以外のメンバーは隠れてベースキャンプを設置し、そこで連絡をじっと待つ。
 潜入部隊はまず、適当な変装を行なった後、所持アイテムの確認、内部に潜入した場合の打ち合わせなどを念入りに行った。
 そして早速行動開始、うまく作戦が進むよう、残ったメンバーは神に祈っていた。

──潜入
 小さな村。
 街道沿いに遠くから見ている限りでは、人の姿はあまり感じられない。
 そこに向かってトボトボと歩いている4人。
 母親であるサラサ・フローライト(ea3026)は娘担当のチェルシー・カイウェル(ea3590)を。
 そして夫であるリスターはもう一人の娘、リュリュ・アルビレオ(ea4167)の肩を抱きつつフラフラと村に入っていった。
「すいません‥‥宿は‥‥無ければ村長さんの家はどちらでしょうか‥‥」
 そう近くで立ち話をしている村民に話し掛けるサラサ。
「この村には宿はないねぇ‥‥村長の家なら、ここを真っ直ぐいったあれがそうだけれど?」
 そう説明をしてくれる村民に頭を下げると、一行はフラフラとした足取りで村長宅へと向かった。

──村長宅
 静かにノックするリスター。
 少ししてから扉が開き、初老の男性が顔をだす。
「どなたかな?」
 顎鬚を撫でつつそう呟く村長に、サラサは静かに口を開いた。
「すいません‥‥旅の者ですが、この村で一晩過ごせる場所はないでしょうか‥‥」
 そう告げるサラサ。
 と、村長はふと一行を見て、しばし考えた後にこう告げた。
「村の外れに使われていない納屋があります。そこならば構いませんが‥‥まあ、色々と理由はあるのでしょう。そちらでしたらどうぞ‥‥」
 そう告げると、村長は静かに扉を締める。
 そして扉の外で一行はお礼を述べると、そのまま指示された場所へと向かった。

──納屋
 とりあえず荷物を奥と、一行はそのまま干し草の上にごろりと横になる。
(値踏みされていたねぇ‥‥)
(そうですねぇ‥‥って言うか、商品価値?)
 チェルシーとリュリュがそうボソボソと話をする。
(さてと、もう少ししたら作戦開始だな‥‥)
 真面目な顔をしてそう呟くリスター。
(ああ‥‥)
 そう返事を返しつつ、自身の頬をそっと撫でるサラサ。
(私の表情‥‥堅くないか‥‥)
 そうリスターに問い掛けるサラサ。
(ちょっとな。まあ、その堅い表情がサラサのチャーミングな部分でもあるんだよなぁ‥‥気になるんなら、和らげてやるか?)
(な‥‥なにを馬鹿な事を‥‥)
 そっぽを向いてそう返事を返すサラサ。
──プニュッ
 その背後から手を差し伸ばすと、そのままサラサの胸をやんわりと‥‥。
──ドスツ
 あ、リスターへの股間にムーンアロー直撃。
 それは‥‥死ぬほど痛いだろ!!
(‥‥そこまで演技する必要はない。今が作戦中だと言うことを自覚しろ!!)
 そんなやり取りの二人。
「お母さん達中が良いですねぇ‥‥」
「私達は、今度は弟が欲しいなぁ‥‥」
 これこれ、そこの子供達。

──外にて
 なにはともあれ、子供達を中に残して二人は外に出て行く。
 そしてとりあえず村の中の散策を行なった後、人の集りやすく、それでいてちょっと物陰に二人で向かうと、そこで静かに話を始めた。
「もうここまでた。サーラ、判って居るだろう‥‥俺たちでは、もうあの子達を幸せにすることは出来ないんだ‥‥」
「判っているわリック。でも、あの子達だって、私達と別れるのは辛いでしょう?」
 涙を流しつつそう叫ぶサーラ。
「それを言うな‥‥別れるのが辛くなるだろう‥‥」
 そうグッと拳を握り締めて呟くリック。
 その横では、サーラが口許に手を当てて嗚咽を零していた。
 そしてリスターは、そんな中でも周囲の気配を静かにチェック。
(‥‥こっちを見ているのが2人‥‥物陰に3人か‥‥そろそろだな)
 そう確認した後、リックはサーラの肩をそっと抱く。
「あの子達は、ここで育ててもらおう‥‥」
 そのまま二人はトボトボと納屋へと戻っていく。
 そしてその後で、リスターは物陰にかくれていた者たちが村の中央へと走っていくのを確認した。


●作戦はまだ続く〜翌日〜
──ベースキャンプにて
 近くの川原で水浴びをし、急いで食事を取るリスター。
 その間に一行は、サラサから村の内部についての説明を受けている。
「子供達がいそうな場所は、この大きな家ですか。近くのこれはなんでしょうか?」
 地面に書込まれた村全体の見取り図。
 ウィル・ウィム(ea1924)は一つ一つの家の場所と大きさを確認している。
「そこは村長宅だな。兎に角、強そうな奴の姿は今のところ見当たらない。ただ、リスターが確認したが、『気配を消すのが得意な奴』は存在する」
 そう説明した時、リスターが上半身ハダカで何かを口に放り込みつつ一行の元にやってくる。
──バッ
 咄嗟に身構えるカタリナ・ブルームハルト(ea5817)。
 だが、リスターはどっかりと座り込むと、そのまま地図を眺める。
「あれ? 今日は襲ってこないのかな?」
 そう呟くカタリナだが。
「ああ。そんな事している状況じゃないだろ? 今は作戦を考えるのに集中。内部に残した二人が気になる‥‥」
 そう呟きつつ、またパンを千切って口の中に放り込むと、静かに地図についての説明を開始。
「内容はおおむねサラサの説明があったとおもう。重要なのは、3名の農夫。気配を巧く消そうとしている。その手口、多分手練れのレンジャーだろう。あと、女性が一人、かなりの手練れのファイターがいるな‥‥」
 淡々と説明を続けるリスター。
「何故判るのぢゃ?」
 そう問い掛けるフォルテシモ。
「手だよ、手。農民なら、日焼けしている筈だろ? その女性の手、綺麗だったな。関節が程よく鍛えこまれ、上腕はそれなりにしっかりとした筋肉が付いている。足腰の骨格も良い感じだったあれは野良仕事している身体ではないな、。どっちかっていうと‥‥龍華、ちょっと立ってみてくれ?」
 真剣な表情のリスターに、青龍華(ea3665)もつられて立上がる。
──ペタッ
 そのまま龍華の腰に手を当てて、その感触を確かめるリスター。
「ちょっと、いきなり何するのよっ!!」
 素早く拳を構えるが、リスターが一言
「いいからじっとしていろ!!」
 と真面目に叫ぶので、龍華は静かになる。
「ああ、こんな感じだな。服を着ていた上からの確認だと‥‥そして龍華と比較して判ったな。かなりの筋肉がついている‥‥」
 そのままドカッと座り込むと、リスターは一つ一つ説明。
「手練れと思しきは合わせて5名。レンジャー3にファィター1、子供の姿は確認できていないから、アサシンガールはいないと思っていいだろうさ‥‥」
 そう告げると、リスターは静かに立上がると、其の場を後にする。
「もう君の話は終りなのか?」
 そう話し掛けるキサラ・ブレンファード(ea5796)に、リスターは振り向きつつこう呟いた。
「俺はレンジャー、夜こそ俺の戦場だ‥‥仲間の事は信用している。あとは任せる‥‥」
 そのまま仮眠に入るリスター。
「か、かっこいい‥‥」
 ぽかーんと口を開いてそう呟くカタリナ。
「サラサ、何かあったのか? いつものリスターではないようじゃが‥‥」
 そうサラサに問い掛けるフォルテシモだが。
「いや、潜入時は、いつものエロレンジャー‥‥エロインジャーだったが‥‥」
 なんだそりゃ。

──村では
「おかぁさーーーん。グズッグズッ‥‥」
「ふぅむ‥‥困ったのう‥‥」
 村長宅に保護されたリュリュとチェルシーの兄弟。
 リュリュは小さい声で泣いており、その横ではチェルシーが妹を宥めているようである。
「ここで待っていて良いですか? きっとお母さんは戻ってきます‥‥私達を捨てていくなんて‥‥」 
 そうチェルシーが呟いたと同時に、リュリュは大声で泣きながら村長の家を飛び出した!!
「ふうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「ちょっと、ルル、待ちなさいよっ!!」
 そのままチェルシーも飛び出すと、二人は村のあちこちを走りまわり、色々と情報を得ていった。
 そして昼過ぎ。
 ようやく二人は落ち着いて、とある木陰で一休み。
「ふぅ。どうだい? 落ち着いたかな?」
 村長が優しそうな表情でそう呟く。
「ルルもようやく落ち着きまして‥‥すいませんでした」
「ティエルおねーちゃん。これからどうするの‥‥」
 心配そうにそう呟くルル。
「そうだね‥‥どうしようか?」
 そう相づちを打つティエルとルルに、村長が静かに話し掛ける。

──キラーン☆

「もし、君達さえよければ、ずっとここに居てもいいんだよ。実は、君達以外にも、捨てられたりしていきた子供達が一杯住んでいるんだよ‥‥」
「本当ですか!!」
 とまあ、嬉しそうな振りをして喜ぶティエルと、ずっとティエルの服の裾を掴んで下を向いているルル。
 かくして二人は、そのまま村の真ん中にある大きな家へと案内されまして。


●品評会〜売られていく子供達〜
──大きな屋敷
 一階にある大広間。
 そこに案内された二人は、改めて、その建物の中と外とのギャップに驚いていた。
 外側はどうみてもちょっと大きいだけの家。
 だが、中は何処かの貴族の住まう屋敷となっている。 
 綺麗な調度品。
 何処からか良い香りもして来ると、二人はその中に案内された。
「さあみんな、今日からこの二人も『仲間』になるんだ。色々と教えてあげてくださいね!!」
 そう告げると、子供達は二人の手を取って奥へと連れていく。
「あの‥‥ここでの食事とかはどうするのですか‥‥」
 ティエルが村長に問い掛ける。
「まあ、このように小さい村です。食糧の数なども限られてきます。もう少ししたら執事がきます。彼がここでの生活を逐一説明してくれますので‥‥」
 そう告げると、──村長は静かに部屋の外へと出ていった。
 そして入れ代わりに、奇妙なほど恰幅のよい男が、額から流れる汗を拭きつつやってきた。
「フーフー。歩くのも疲れるよぅ。さてとぉ。君達が今日からここで過ごす新人さんだね。名前は?」
 ニィッと笑いつつそう問い掛ける執事。
「ティエルです」
「ル‥‥ルル‥‥」
 静かに告げるティエルと、おどおどしつつそう言葉を紡ぐルル。
「二階には空き部屋が二つあるから、そこで寝泊まりするといい。部屋は別々だよ。食事は決まった時間に食堂にいったら食べられるよ。但し、働かないと食べさせてあげない」
「働くって、どうやってですか?」
 ティエルがそう告げたとき、入り口の扉を叩く音が聞こえてきた。
「ああ、今日は来る日だったねぇ‥‥じゃあ、今日の分は特別に出してあげる。だから、これから皆のすることを じっと見ているんだよ」
 そのまま執事はそそくさと入り口に向かう。
 そして戻ってきたとき、執事の後ろには4人の貴族が付いてきていた。
 そして貴族達は各々が適当な椅子に座ると、そのまま暫く大広間に居る子供達をじっと見渡す。
「ファッティ、私はあの少女にしよう」
「ほほう。良いところに目を付けましたねぇ。では、私は今宵、あの少年を‥‥」
 次々と品定めをしていく貴族達。
 そして二人はそのまま二階へと向かい、二人は其の場でじっとしている。
 やがて、他の子供達も一人、また一人と其の場を離れていく。
「おや? ファッティ、その子たちは?」
「はい、今日からきた新人です」
「ふぅん‥‥なかなか可愛いねぇ」
──ゾクゾクッ
 舐めまわすように二人をじっと見つめる貴族。
「ふむ、そっちのちっちゃい娘は気に入ったな。ファッティ、伽は大丈夫なのか?」
(と‥‥ととと伽ぃぃぃぃ。っていうか、破廉恥極まりないっ!!)
 そう心の中で叫ぶリュリュ。
「いえ、まだこれから、色々と教えてあげてください。まあ、今宵は見学ということで‥‥」
 そう呟く執事。
「さあ、もう少し前に出て‥‥これから始まることは、今後君達にもして貰うからね‥‥」
 そう告げているさ中、貴族は少女を座っている膝の上に座らせると、服の裾から手をいれていく。
──ピクッ
 少女は身体をくねらせ、何か感じ始めているらしい。
(うわーーー。うわーーー。かぶりつきで見学だぁ!!)
って、おいティエル。
 まあ、そこから先は‥‥ねぇ。
 ゆっくりと少女の衣服を脱がすと、そのまま淫媚な空間に突入。
 室内には少年と少女の悶える声が響いている。
 そんな中、ティェルとルルは両手で顔を隠して、恥ずかしがっている様子。
(‥‥なんだ。リスターのよりちっちゃいや!!)
(指技はいいかんじですけれど‥‥詰めがあまいなぁ!!)
 あー。
 仲間に『一人風俗最前線。ウェイトレスは見た、真昼の恥辱で爛れた性活』って言う人がいるからねぇ。
 今回はおとなしいけれど。

 そんなこんなで2時間後。
 一通り姦ることをやった貴族達は身だしなみを整える。
 そしてそれと同時に、今までいなくなっていた子供達がワインや軽い食事を運んで来ると、貴族達に給仕を始めた。
「ファッティ‥‥こちらの準備も整った事だし、この娘は買って帰る事にしよう‥‥」
 先程まで少女と戯れていた貴族がそう告げると、部屋の外で待機していたらしい従士を呼びつける。
 と、従士は手にしていた革鞄からずっしりとお金の詰まった袋を取りだすと、それをファッティに手渡す。
「お買い上げありがとうございます。これから幸せになるんだよ‥‥」
 そう告げながら少女の頭を撫でるファッティ。
 そして少女もまた、幸せそうな顔をしてにっこりと微笑んでいた。


●性の舘〜娼館兼奴隷販売所〜
──翌日
 ティエルとルルの二人は、屋敷で知り合った子供数人と村の中を散策していた。
 話によると、村の中では自由にしてよいという事であったが、あの屋敷にお世話になる事が決まった以上、勝手に村の外には出ることは出来ないらしい。
 村の入り口には常に監視が立っており、人の出入りを逐一チェックしているとの事。
「じゃあ、貴方はグレイファントム領って言う所から来たの?」
「うん。元々は自警団に所属していて、冒険者さん達と一緒に砦って言うところで見張りとかもやった事があるんだよ。でも‥‥」
 そう告げると、少年は静かに下を向いたまま黙ってしまう。
「でも?」
「ここに売り飛ばされて‥‥領主様は、家族の為には、君が頑張らないとって言われて。僕ともう一人の男の子は、ここに連れられて来て、女の子達は皆、セーヌなんとかっていう女の子だけの施設に連れられていっちゃったんだ‥‥でも、ここに来た友達は、あの屋敷で『貴族様』の相手をするのが嫌だって、逃げちゃったんだけれど‥‥ファッティさんが、近くの川で溺れているのを見付けたって‥‥」
「貴方もそうなの?」
 そう別の少女に問い掛けるルル。
「私は‥‥村が夜盗に襲われて、その時に夜盗に攫われて。ここの村に売られてきたの。昨日の夜『身請け』されたのは私の友達。私も早くいい貴族様に買い上げて貰わないと‥‥」

 この村に来たならば、出る方法は二つに一つ。
 物言わぬ死体となって川に捨てられるか
 貴族に気に入られ、売られていくか
 そういう話をティエルとルルは、この少年少女から教えて貰った。
「まあ、ここでちゃんと頑張れば、食事は食べさせてもらえるし、お金にもなるんだし‥‥」
「でも、普通じゃないよ‥‥僕は、家に帰りたい‥‥」
 そんな話を聞きつつ、一行は屋敷へと戻っていった。
 そして屋敷にたどり着いたティエルとルルは、ファッティから運命的な一言を告げられた。
「昨日来た貴族様が、二人のことを大層気に入ったらしくてな。明後日の夜、二人同時にお相手したいという事だ。今宵も別の貴族様が訪れるから、他の娘達のしている事をしっかりと見て、色々と勉強するんだよ‥‥」


──深夜
(‥‥必要以上の監視体勢、例のレンジャーが村の3ヶ所で見張り、村の中にも巡回している男が二人。予測より厳しい巡回状態だな‥‥)
 そう、屋敷の二階、屋根裏に潜入したリスターが心の中で呟いている。
 そのまま人身売買の証拠を掴む為、そっと屋敷の内部に潜入。
 様々な部屋を渡っては、それらしいモノを捜していた。
 そしてとある部屋で、大量の羊皮紙に書き記された人身売買の証拠、そして大量の小さな甕に入れられた謎の薬を発見すると、その一つを懐に放り込んで、とりあえずチェルシーとリュリュの二人の居る部屋へとそっと近づいていく。
──トントン
 静かにチェルシーの肩を叩くリスター。
(明日の昼には助けに来なさいよっ。でないと私達、エロ貴族の慰み者になるんだからねっ!!)
(他の人たちはどうしているの‥‥っていうか、スタンバイOK?)
 其の日は一緒の部屋に居たリュリュが、リスターにそう問い掛けている。
(ああ。もういつでも暴れる体勢OKだな‥‥それじゃあ、救出は明後日の夜ということでOK?)
((OKな訳ないでしょ!!))
 二人同時の突っ込み。
(おいおい、二人同時に突っ込むなよ。それに突っ込むのは男の仕事だぜ?)
 でたな下ネタ魔人。
 そんなこんなでリスターは、再び監視の目を掻い潜るとそのまま仲間たちの元に合流。
 詳細について説明した後、作戦を行う時間を決定した。


●作戦決行〜そりゃ結構〜
──村
 リスターの帰還、詳細打ち合わせ、そして突撃。
 ここまでなんと15分。
 深夜の襲撃、監視の目があるのは判っているものの、実際にすぐに戦うことの出来る相手は少数。
 ならば、今がチャンスである!!
 急いで準備を行なうと、一行はこっそりと村の入り口近くまで移動。
 そして見張りを発見すると、まずはリスターがそっと近づいて後ろから襲撃!!
──ガバッ
「んーーーっーんーーんっんっんんっんっん‥‥」
 素早く後ろから猿轡をかますと、そのまま後ろに引き倒し、そのまま縄でふん縛る。
(桃色体術・捕縛の5‥‥逆さタートス。そのまま快楽に飲まれて失神していてくれ‥‥)
 どういう縛り方をしたかはさておいて。
 とりあえず一人を身動き取れなくした一行は、そのまま見張りを近くの茂みに投げ棄てて、村に侵入。
 目的地は屋敷!!
 そして一気に走りぬけると、屋敷の入り口をフォルテシモが蹴りあけた!!
──ドゴォォォッ
 そして屋敷に飛込むと、全員でキメポーズ!!
「王国歌劇団、参上!!」
 まあ、誰も居ないわな。
 そしてウィルはリスターに連れられた子供達の安全の確保を。
 その声に反応したお子様チームも合流し、ウィルと共に子供達の保護優先。
 そして入り口では、騒ぎを聞きつけた敵に対して徹底抗戦の構えを見せていた。
──ギリギリギリギリッ
 力一杯弓を引くと、カタリナはそれを敵の集団目掛けて次々と叩き込む。
「か・た・り・な・ボンバー、その2っ。ソニックアローーっ」
 高角度からの一斉射撃。
 次々と矢を番えては、敵に向かって叩き込んでいく。
 その間に、他の仲間たちは屋敷の調査、証拠となる書類と薬品を改修しようとしていたが。
 薬品はその部屋を管理している男が次々と窓の外に放り出し、叩き割ってしまった。
「貴様たち‥‥一体何者だぁ!!」
 ファッティが下着一枚で部屋から飛び出してくる。
 その正面では、キサラが裏口から飛込んできた敵を窓の外に叩き出している。
「王国歌劇団‥‥貴様達シルバーホークを討つ組織だ‥‥」
 そう告げて、キサラは手にしていた楯を放り投げ、日本刀を鞘に納めた。
 そして男の方向を見た瞬間、全身の血が沸騰する!!
 視界に出てきたのは、あられもない姿でベットに転がっている少女達。
 どんよりとした瞳で転じようを見上げ、言葉に鳴らない何かをぶつぶつと呟いている。
 そしてその床には、空になっている怪しげな甕‥‥。
「貴様‥‥いたいけな少女達に‥‥」
「ここは俺の仕事場だ。商品管理に必要な事をして、なにが悪い、ここの子供は全て、俺の商品だ‥‥」
──シュンツ
 言葉は続かない。
 男は自分に何が起こっていたか判らないだろう。

 見えない剣捌き
 掠めるような太刀筋。

 男の首筋から大量後が吹き出し、其の場に崩れた。
「ここは危険だ。すぐに出るぞ」
 そう叫びつつ室内に飛込んでいくキサラ。

──一方、外では
 激しい剣戟。
──ギンギンギンッ
 フォルテシモと敵女ファイターの一騎打ちモードが炸裂している。
「いい太刀筋じゃな‥‥」
 ピッ‥‥ピッとフォルテシモの皮膚が掠めきられる。
 それがシュライクであると判ったとき、フォルテシモは後方へと一旦バックステップ。
「ふぅふぅ‥‥いい腕をしておるのう」
「ええ。貴方はそうでもないみたいねぇ‥‥。そこでじっとしていなさい。すぐに切り刻んであげるわよ‥‥」
──キィィィン
 その瞬間、フォルテシモの傷が見る見るうちに回復していった。
「なに、オーラリカバーかっ!!」
 そう叫ぶ女ファイター。
 だが、その言葉の後、女ファイターは状況を瞬時に理解した。
 子供達の保護を終えたウィルがフォルテシモの後方で魔法詠唱の準備。
 そしてバックステップしてきたフォルテシモの背中に手を当てると、そのまま詠唱開始。
 そして言葉巧みに時間を稼ぐフォルテシモ。
 タイミングを見誤れば、失敗するであろう。
 だが、ウィルの発動は成功。
 そしてフォルテシモの怪我は瞬時に癒されたのである。
「こしゃくな手をっ!!」
 走り出してウィルに向かって剣を振るう女ファイター。
──ガギィィィン
 だが、ウィルの前に飛込んできた龍華が、龍叱爪の爪でそれをいなす。
「チームワークはノルマンでも屈指に入る王国歌劇団を舐めないでほしいわねっ」
 さらにフォルテシモが手にしたソードを離した瞬間、女ファイターの腕に一撃を叩き込む。
──ビシィッ
「グウッ!!」
 手が痺れ、武器が手から離れていく。
 あわてて後方に下がった女ファイターに向かって、龍華は一気に間合を詰めると、そのまま体勢を低くして、そこから一気に龍叱爪をかち上げた。
「龍拳奥義の弐っ!! 龍爪穿指っ!!」
 その一撃を真面に受け、後方へと吹き飛ぶ女ファイター。
 それでそのエリアの勝敗は決していた。
 周囲を囲んでいた子分たちも、次々と武器を捨てていく。
「それでよい。降伏さえすれば、我々は戦うことはない。余計な命を散らせる事はないのぢゃよ‥‥」
 そのフォルテシモの言葉の後、龍華は女ファイターを縛り上げていた。


──一方、こちらもコンビネーション
「動きが素早過ぎるっ!!」
 一人のレンジャーと戦闘に突入したカタリナ。
 構えていた弓を放り投げると、そのまま肉弾戦に切替えた模様。
「戦士っていうのは、どうも余計な所に筋肉がついていて動きが遅いんだよねぇ‥‥」
 そうあざけ笑うように呟くレンジャー。
「なんだとぉっ。僕の何処が遅いっていうんだよっ!!」
──ブゥン
 だが、カタリナの拳は虚しく中空を掠めるだけ。
「ほらほら。そんな程度じゃ駄目だよヘタレファイターさんっ!!」
──ドスッ
 と、突然レンジャーの身体にムーンアローが直撃。
「痛いっ‥‥ど、何処からっ!!」
 周囲を見渡すレンジャー。
 と、その視界の中に、クスリと笑みを浮かべている妖艶な美女が一人。
「カタリナさん、とっととやってしまいましょう‥‥」 
 サラサ参上。
「この‥‥ふざけるなぁっ。魔法使いなんて奴は、間合に入られたらお終いだって話は聞いているんだよっ!!」
 そのまま一気に走り出すレンジャーだが。
──スッ
 サラサは静かに男にむかって指を差し出す。
──ドシュッ
 突然詠唱も泣く魔法が発動すると、一筋の光の矢が男に向かって突き刺さった。
「な、なんだとっ!! 詠唱もしないで魔法を使えるだと!!」
 動揺して立ち止まるレンジャー。
──ガシッ!!
 と、そのまま後方からレンジャーを掴むと、そのままカタリナは力任せにウェイトリフティング、そして!!
「所詮は君もヘタレンジャーっ。か・た・り・なボンバーっ‥‥ブルーオイスターおろしっ!!」
 勢いよくレンジャーを投げ飛ばすカタリナ。
 そのままレンジャーはトルネードしつつ天井に叩きつけられ、そして床に激しく落下した!!
 ああ、ちなみに今回もリュリュの魔法によるサポートの結果だからねっ。
「ふぅ‥‥まにあったぁ!!」
 額から流れる汗を拭いつつ、リュリュがそう呟く。
「貴様よくも相棒をっ!!」
 素早くナイフを引き抜いて切りかかる別のレンジャー。
 だが。
──ドスッ
「それ以上は抵抗しないことだ‥‥さも無くば、私の矢が貴様を貫く!!」
──タジッ‥‥
 一歩下がるレンジャー。
 だが、それでもカタリナさんは容赦しない。
──ガシッ
 再びレンジャーを担ぎ上げると、今度はぐるぐると勢いよく回ってから投げ飛ばした!!
「か・た・り・な・ボンバーっ。カタリナ・トリプルサイクロン!!」 
 いつもの三倍回転の勢いの付いたまま、カタリナはそのレンジャーをも天井に向かって叩きつけた。
 当然リュリュの魔法によるサポートによるものであったがね。
 そんなこんなで、王国歌劇団一行は無事に子供達を救出し、敵人身売買組織を一網打尽とした。
「それではっ!! 勝利のポーズ!!」
 そう叫ぶカタリナ。
 そして全員一斉にレッツ・ポージング!!
『うっし、お疲れ様っ』
 なんだかなぁ。


●そして結末〜つまりはこういう事〜
──マスカレード
 皆より1日遅れて村に到着したのはバンちゃんとリチャード、そしてニライ査察官率いる『対シルーホーク精鋭騎士団・ブラックウィング隊』であった。
 そのまま関係者と証拠は全てニライ査察官が引き取り、子供達は王国歌劇団が責任をもって保護、とりあえずは当分の間マスカレードで引き取ることとなった。
 その後、人身売買組織から様々な情報を引出すことに成功したニライ査察官。
 後日、それらについてマスカレードに報告があったらしいが、それはまた後日ということで。


〜To be continue