【ノルマン一番】海の王様達

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜13lv

難易度:やや難

成功報酬:6 G 46 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:08月15日〜08月27日

リプレイ公開日:2005年08月24日

●オープニング

──事件の冒頭
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
 銀鷹至高厨師連総本部では、いままさに大騒ぎ。
 それは何故かって?
 シルバーホーク卿が消息不明となったからである。
「こ、これから俺達はどうすれば‥‥」
「いっそ、グローリアスロードを諦めるしか‥‥」
 そんな喧騒の中、一人の厨士が立上がる。
「お舘様は、今は力を取り戻す為にとある場所に向かっています。私達銀鷹至高厨師連四天王は、お舘様の行き先を知っています‥‥」
 そう告げたのは、『スープのフェブリエ』。
「それは何処に!!」
 そう問い掛ける厨士達に向かって、さらに一人の男が立上がる。
「あー。なんだ、お舘様はほら、海の向うだな‥‥」
 そう告げたのは、『魚料理のアヴリール』と呼ばれている厨士。
「海の向う? イギリスか?」
「いや、ドレスタット沖だな。ほら、昔使っていたアジト、あそこに戻られただけだ。そこで戦力を立て直し、再出発ということだ‥‥つまり」
 そう告げると、アヴリールは叫ぶ!!
「お舘様は俺たちの料理を待っている!!」
──ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
 絶叫が沸き上がる。
 とまあ、そんな話はおいといて。


●ということでいつものギルド
──受付カウンター
「ドレスタットでおこなわれる『競馬協会記念式典』に参加するのですね?」
「はい。そこを作った6貴族の何方かが、『グローリアスロード』の石碑を持っているものずき貴族ということらしいのです‥‥」
 依頼人であるサンディがそう告げると、新人受付嬢のエムイ・ウィンズがそれらを依頼書に書きしたためる。
「では、今回の依頼は『ドレスタット方面に向かい、石碑を探し出す』でよろしいのですね?」
「はい。それではお願いします」
 そう告げると、サンディはそのまま自宅へと向かい、旅の準備をした。

●今回の参加者

 ea3501 燕 桂花(28歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea5066 フェリーナ・フェタ(24歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ロシア王国)
 ea7191 エグゼ・クエーサー(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea7378 アイリス・ビントゥ(34歳・♀・ファイター・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea7553 操 群雷(58歳・♂・ファイター・ドワーフ・華仙教大国)
 eb0953 竜胆 零(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

サイラス・ビントゥ(ea6044)/ 蒼劉 飛翁(ea7364)/ 柳 麗娟(ea9378)/ ロート・クロニクル(ea9519

●リプレイ本文

●優しいスープ〜やばいっ!!〜
──エグゼ屋厨房
 コトコトコトコト
 沸騰しないように、巨大な鍋でスープが踊る。
 アクは全て取り払われ、いよいよ『グローリアスロード』に記されていたスープがお目見えする。
「‥‥アイヤ、琥珀色に輝く黄金のスープアルネ」
 操群雷(ea7553)が鍋を覗きこみつつ、そう口にする。
「様々なハーブ、牛1頭丸々の旨味が溶けだして、なおかつ澄み渡ったスープ‥‥具材はまったくいらないのかな?」
 横で皿にスープを取り分けているエグゼ・クエーサー(ea7191)に、燕桂花(ea3501)が問い掛ける。
「ああ。これはこのまま‥‥フェリーナ、テーブルに運んでくれ」
「判ったよ、エグゼ兄さん」
 そう返事を返しつつ、みんなもスープだけでは物足らないだろうとフェリーナ・フェタ(ea5066)は近くの窯でパンを焼いているアイリス・ビントゥ(ea7378)から焼きたてのパンを受け取る。
「あの‥‥ナンです‥‥」
 あ、パンでなかったのね。これは失礼。
 そして焼きたてナンをバスケットに入れてテーブルにセット。
「‥‥私一人だけ、なにもしていないのは‥‥」
 そうテーブルで呟いている竜胆零(eb0953)に、依頼人であるサンディがにこりと微笑む。
「この集まりは料理をするだけじゃないよ。前に一緒にいた人は調理道具を作ってくれたし。キミにも出来ることがきっとあるよ」
 フェリーナがスープを運びつつそう零に告げる。
「うん、そうだね‥‥」
 そんなこんなで、いよいよ『優しいスープ』の試食会。
 全員が席に着くと、そのまま静かにそれを口許に運ぶ。
──ズズズズズッ
 一口。
 また一口。
 さらに一口。
 もひとつおまけに一口。
 皆が無言でスープに意識を取られる。
 そして全てを飲み干したとき、全員が恍惚の表情を上げている。

「これが『グロリアスロード』。うーん。とくに変わったことはないかなぁ‥‥」
 桂花がそう呟く。
「えっと‥‥あの‥‥とっても美味しいです。はい‥‥それに‥‥」
 そう呟きつつ、モジモジとエグゼの方を見るアイリス。
(えーっと、えーっと‥‥こうして見ると、エグゼさんって素敵に見えます‥‥)
 おっやぁ?
「こうして食べてみると判るな。グローリアスロードっていうのは、皇帝の為の料理だっていうことがな‥‥」
 零も端的にそう告げる。
 そして彼女もまた、エグゼの方に視線をチラチラと。
(駄目だ駄目だ。里復興まで異性に魅かれるなんて‥‥)
 そう心の中で叫びつつ、零はナンを口に放り込む。
「兄様。とっても美味しいスープだ‥‥ね‥‥」
 兄様?
 フェリーナの瞳がトローンとする。
「ん? ああ。確かに美味かったな‥‥って、どうした? 体調でも悪いのか?」
 真っ赤になっているフェリーナのおでこに自分のおでこを付けて、体温を計るエグゼ。
──ソッ‥‥
 静かに瞳を閉じると、そのままエグゼを受け入れるフェリーナ。
(駄目よフェリーナ。兄様には婚約者がいるのよ‥‥それに種族も‥‥でも‥‥兄様となら‥‥)
 そっと唇をエグゼに近づけるフェリーナ。
──グイッ
「ハイハイ。禁断の恋ニ堕ちるノハ終りアルネ。このスープ、漢方みたいナ効果アルヨ」
 務めて冷静に分析する群雷。
「漢方?」
「そう。私達の国の薬だね。様々な効能があって、調合方法はそれぞれ秘密にしているの。これにも、一種の『惚れ薬』みたいな効能がでたんじゃないかなぁ‥‥」
 桂花が群雷のサポート。
「俺には効果が無かったけれど?」
「男には効果デナイアルネ。それに桂花ニモ出ていない。シフール、効果薄いアルカ?」
「さあ?」 
 そんな群雷と桂花の会話をよそに、エグゼは仲間たちの表情をじっと見る。
──ササッ
 皆、顔を真っ赤にして横を向く。
「うーーーん。こまったぞ」
 腕を組んで考えるエグゼ。
 まあ、考えていても始まらない。
 取り合えず後片付けを終えると、なにはともあれ出〜発☆


●はーるばる〜きたぜドレスタットぉぉぉぉぉぉ〜
──ドレスタット
 パリを出て川をくだり、のんびりとした船旅。
 一行が『優しいスープ』の効果から解放されたのは、ドレスタットに到着する直前。
 ふらりと町の中にはいり、サンディの案内で目的の『競馬協会記念式典会場』へと向かう冒険者一行。
 そのまま受け付けで料理大会の参加申し込みを終えると、自分達に与えられた厨房へと歩いていく。
「おーーーい」
 と、エグゼ達の後から声がする。
「?」
 さて、誰かと後を振り向いた瞬間。
──ブッチュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュュユッ
 突如、熱い口付けがエグゼを襲う。
──チュポーン
 これぞまさしく『残酷なパラのテーゼ』。
「きっ、貴様フェブリエっ!!」
「はーい」
 呑気にそう告げるフェブリエ。
──グイッ
「一体なんの用かしら?」
 その二人の間に割って入ると、フェリーナがそうフェブリエに叫ぶ。
「あらぁ、貴方には用事はないわ、エグゼ・クエーサー。貴方を偉大なる銀鷹至高厨師連の幹部として正式にスカウトにやって参りました。貴方と、そちらの操群雷さんは、その実力を認められたのです。こんなに光栄なことはありませんわ‥‥」
「アイヤ、そんな立場イらないアル」
「‥‥」
 そうキッパリと言い切る群雷。そしてエグゼは、この場をどうにか打開しようと頭を捻っていた。
「返事が無いという事は、考えて頂けるのね? それでは」
 そう告げると、フェブリエは其の場を立ち去る。
「さて‥‥」
 この時のエグゼの心境は?

1.あの唇の感触、最高だったなぁ。
2.銀鷹至高厨師連幹部。とうとう俺にも世界を‥‥
3.彼女にばれたら‥‥いや、黙っていれば

 さて、正解はどれでしょうか。
──スパァァァァン
「あの、記録係さん‥‥真面目に仕事して下さい」
 そう呟きつつ、どこからともなく取り出したフライパンで力一杯記録係の頭を殴りつけるアイリス。
──殴ったね?
 ゴイィィィィン
──二度もぶった。ギルトマスターにも殴られたことがないのに‥‥って、そのフライパン曲っているってばぁ。
「ですから‥‥真面目に‥‥」
──はいはい。

──ゴォォォォォン
 激しく銅鑼の鳴る音が響きわたる。
 それは料理対決の始まりの音。
 集った厨士は実に100人近く。
 そして銅鑼の合図と同時に 一斉に海へと走り出したのである。

「しふしふー。みんな頑張って捕まえてきてねー」
 後方で応援しているのは桂花。
 シフールのサイズだと、漁はちょっと辛い。
──シュンッ
 素早く浅瀬に入る魚に向かってダーツを投げるフェリーナ。
 だが、水の中の魚はやはり水を得た魚の如く(なんじゃそりゃ?)、素早く動きまわりフェリーナの獲物にはならない。
「うーん。やっぱり私じゃ駄目だね‥‥」
 そう告げつつ、沖合に浮かんでいる船を眺めるフェリーナであった。

──一方、沖合では
 大会委員会より船を借りることが出来るが、エグゼは地元の腕利き猟師に頼み込み、なんとか穴場へと案内してもらうことが出来た。
 そこでエグゼは釣り糸を垂れてのんびりと釣りを開始。

──ピクッ
 突然、横で釣り竿を構えていたアイリスの竿がブルッと震える。
「あ‥‥」
 そのまま暫くじっと待つアイリス。
 竿の動きをじっと見て、次に動いた瞬間、アイリスは力一杯竿を引いた!!
──ガギッ
 しっかりと魚がヒット!!
 そのまましばし、魚との戦いが始まった!!
 そして1時間の格闘の末、ついに魚をゲット!!
 おそらく、釣られた魚はこう考えていたであろう。
(こんな釣に俺が‥‥クマ?)
 いや、アイリスは『熊のぬいぐるみ』を着ていないし。

「アイヤ、なかなかいい魚取れたアルネ」
「こっちもいい感じだな」
 そう告げている群雷と零は、『ラーンの投網』を使ってザックザックと魚を取る。
 その中から、群雷が食べられる魚だけを吟味してあとは海に戻していく。
「このへんなのはなんだ?」
 真っ平らな魚をつまみ上げて、零が問い掛ける。
「舌平目アルネ。アイヤ、イイ魚マザッテイルアルヨ‥‥」
 そんなこんなで大量の一行。
 なお、エグゼはその間中、じっと釣り竿を垂らして情況を見守っていたようです。
 釣果?
 それは聞いてはいけない。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーっ。俺だけ釣れないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」
 以上、結果丸坊主のエグゼの絶叫でした。


●アーレ・キュイジーヌ!!
──料理大会会場
 いよいよ料理開始となった。。
 まずは魚の下拵え。
 フェリーナとアイリスが鱗を落とし魚をさばく。
 零はなにも出来ないので、今回は皆のサポート。
 群雷の指示で野菜の下拵えを始めていた。
「大会委員会に聞イテキタケレド、全員で3品作ルらしいアル」
 その群雷の言葉で、メニューの吟味を始める。
 一品は群雷。
 一品は桂花。
 そして最後はエグゼ。
 それぞれが支度を始めると、いよいよ料理開始となった!!

「サポートです‥‥」
 アイリスは群雷の下につく。
 早速下拵えの澄んだ食材を並べていくアイリス。
「華仙ノ料理、下拵えガ大切。ココデ時間カケテコソ、美味しいモノガ出来るアル」
 玉葱、人参、アスパラ。卵。パン。それに大鍋に入れられたたっぷりの良質の油。
 それらが次々と並べられ、アイリスもエプロンを付けて群雷の指示通りに動き始めた。
 それでは、ギルドで報告書読んでいる皆さんに簡単な作り方をご紹介します。

1.乾燥させておいたパンの半分を砕いて粉状にし、牛乳に浸しておく
2.卵黄に良質な油を少しづつ加えながら混ぜていく。
3.皮をむき、背腸を取ったむき海老と骨を粗方除去した小魚を細かく包丁で叩いておく 
4.ジャパン伝来の『すり鉢』に3をいれさらによくする
5.牛乳でふやけた1、微塵切りの玉葱と2を加え、まんべんなく混ぜる
6.手がべたつかない様、油をつけながら5を団子状にする
7.賽の目に切ったパンの耳を麻布の上に並べ、その上に6を乗せ、まんべんなく周りにまぶす
8.7を中温の油で揚げる 揚げ過ぎに注意
9.油で揚げたら4等分にして、素揚げした人参やアスパラをあしらう。

「コレデ一品。『海老と魚のすり身の岩石揚』アルヨ」
 満足そうに告げる群雷。
 
 さて、そのころの桂花は‥‥。
──ガチャガチャ
 ボールの中でドレッシングを作っている桂花。
「お酢とニンニク‥‥サンディさんの店にあった『醤』を加えて‥‥」
 鼻歌混じりで楽しそうにドレッシングを作っている桂花。
 ちなみにアシスタントは零。
「使う魚は、この中で泳いでいる奴か?」
 甕の中で泳いでいる海老を見つめつつ、そう問い掛ける零。
「そうだよ。あとは本番までしばし待ちましょう!!」
 しふしふ料理はなんとシンプル。
 あとは本番をじっと待つばかり。

 そのころのエグゼ。
「さて‥‥一つに絞るのなら‥‥」
 一人三品と思って色々と考えていたエグゼ。
 だが、色々と頭を巡らせる。
 作りたい料理と、手に入る材料。
 そして、船を借りるときに聞いた、この地方の料理。
 それらを巧く考えて、エグゼはなんとか一つに絞った。
──グルン
 前回の依頼で作ってもらった万能包丁。
 それを手に、次々と魚を捌いていくエグゼ。
 ぶつ切りにした魚と次々と用意し、さらに地元の夏野菜をナイフに刺して下拵え完了。
「あとは‥‥本番待ち‥‥」
 
──ドワァァァァァァァン
 料理終了の銅鑼が鳴り響く。
 いよいよ、各チームの料理が提出され、試食開始となる。
「今回の審査員はこちらの方々です!!」
 視界が審査員を紹介する。
「まずは、ノルマン料理会にこの人あり。御存知アジヴォー・ガイヴァー卿」
 静かに手をふるガイヴァー卿。
 そのまま暫くは、一般審査員が紹介される。
 その中には、ドレスタット競馬協会の出資者である『6貴族』も含まれていた。
「そして特別参加、ドレスタット一の美食家、ミスターDっっっっ!!」
 口の部分だけが開いた仮面を付けた男が、ムスッとした表情でそう紹介された。
「お舘様〜っ!! 頑張ってきてくださーい」
 おっやぁ?
 お舘様?

 そんなこんなで試食は始まった。
 次々と始まる試食の数々。
「ふむ。味付けは合格点というところであろう。では汝に問う!! 料理にして料理にあらず。これは?」
 そうガイヴァー卿に問い掛けられている料理人は数多かれど、真面に答えたものは皆無。
 結果、味は合格でも失格となっていく料理人達。
「えっと‥‥大丈夫ですか?」
 そう心配そうに問い掛けるアイリス。
「大丈夫アル。これノ何処が料理に見えるアルカ?」
 ニィッと笑いつつそう告げる群雷。
 そんなこんなで、いよいよ審査は『銀鷹至高厨師連』のテーブルにたどり着く。
「お待たせしました。私が今回担当しました『アヴリール』と申します」
 丁寧にそう告げると、アヴリールはテーブルの上に三つの皿を並べる。
「では、見せて貰おうか」
 そのガイヴァー卿の言葉に、アヴリールは完成した料理を三つさらに並べる。
 一つ目の皿にはこんがりと焼いた肉。
 二つめには、特製パスタ。ソースは鮮やかなグリーン。
 そして三つめはスープ。
「それではどうぞ‥‥」
「うむ」
 そう呟くと。審査員達は次々と料理を食べていく。
 そして何のことはなく普通に食べおえる。
(あーーっ。せめて食べたときのリアクション位は見せろって‥‥口から火を吹いてぐるぐると回りながら大空を飛び回るとか、瞳から冷凍光線を出すとか‥‥)
 エグゼ、それは人間ではない。
「さて。この料理には、いささか問題がある」
 そうキッパリと告げるミスターD。
「どの辺がですか?」
 そう問い返すアヴリールに、ミスターDは指を三つ差し出す。
「課題は三つ。だが、これは『スタミナ』の課題しかクリアしておらぬ!!」
 そう叫ぶミスターDだが。
「これはこれは‥‥ガイヴァー卿も同じ答えですか?」
 そう挑戦的に問い掛けるアヴリール。
「二つだ‥‥最初の肉、次のパスタ、そしてスープ。全て『魚』を材料としてかなり手を加えたな?」
 その言葉に、ニィッと笑うアヴリール。
「そうか!! すり身を作って麺状に加工したの?」
 桂花の叫びに、アヴリールがニコリと肯く。
「そちらのしふしふ嬢のおっしゃるとおりです。全て肉や小麦などではなく魚を使っています‥‥」
「うむ、見事なり。だが、最後の課題『料理に在らず』はどうなっておる?」
 そう問い掛けるガイヴァー。
「私達、銀鷹至高厨師連は世界各地の様々な料理に精通しています。では。これはその中の一つ、ジャパンの古き言葉です。かの国で料理をこう解釈することもありまして‥‥『ものの理(ことわり)を料(はか)る。』つまり、食材そのものの味をしっかりと理解する。それすなわち料理です。私達は料理人。それは当然であり、そこからさらに発展することを目標としています。食材自体の旨味を生かし、さらなる味付けにて昇華させる。つまり、これは料理をこえた食べ物であると‥‥」
 その言葉に、ガイヴァーは肯く。
「銀鷹至高厨師連、合格!!」
 なんとぉ。
 そしていよいよラスト。
 群雷率いる『冒険者厨士連盟(毎度、名前が変わるねぇ‥‥)』の出番となった。
 ではまず。
「これは岩では?」
 さらに並んでいる岩石らしき物体を見つめつつ、審査員達が呟く。
「外見ニ惑ワサレルノハ二流アルヨ。ガイヴァー卿ハもう食べているアル」
 確かに。
 よこで岩石を噛り、ムシャムシャと食べている。
「ふむ‥‥これは海老か? 周りはパンで固めて一件料理に見えない‥‥成る程な」
 その言葉に、群雷は頭を下げる。
「詳シイ解説ハ抜きアルヨ。一見シタトキハ料理トシテミテクレテイナイ。人間、食ベ物ヲ外見デ識別スルアル。ソコカラヒントを得たアルネ‥‥」
 そう告げる群雷。
「うむ‥‥これは旨し!!」

──旨しキターーーーーーーーーーーーーーー

 アジヴォー最高の絶賛、料理人殺しのきめ台詞『旨し!!』。
 まずは群雷の料理、トップで合格。
 
 次に出てきたのは桂花。
「ちょっとまってて下さいねー」
 そう告げつつ、超巨大ボールの中に大量の海老を入れる桂花。
「それが料理ですか?」
 そう告げる審査員に、桂花はチッチッチッと指を振る。
「仕上げは目の前で。そーーれぃっ」 
 海老に向かって大量の特製ドレッシングを流し込む桂花。
──バチャバチャバチャバチャッ
 暴れる暴れる。
 泳ぐ泳ぐ。
 やがて海老はぐったりとして動かなくなった。
「桂花特製『泳ぎ海老』とくと味わってくださいー」
 そう告げるが、審査員達は手を出さない。
 生で海老を食べるということ自体、考えたことはないのである。
 だが。
──ガバッ
 突然ガイヴァー卿とミスターDが海老を掴むと、皮を向いて身を口の中に放り込む。
──カッ!!
 二人の瞳が耀き、七色の光が溢れだす。口からは、これまた七色の霞のようなものが流れ出し‥‥
 いや、錯覚錯覚。
「華仙料理『酔っぱらい海老』の応用と見た!!」
「その通りっ。ドレスタット沖の新鮮な海老にドレッシングで泳いでもらい、その旨味を存分に吸取って貰ったのよ。そもそも料理とは『材料を切り分け加熱調理する』ことを差すのよ。特にこの欧州ではね。つまり、この料理は『この国では料理に在らず』っ!!」
 その言葉に、審査員達もようやく食べ始める。
 そして全員一致で、合格点。

──そしてとどめです
 ジューーーーーッ
 審査員の目の前には、巨大な焚火。
 その横には、テーブルが用意してあり、新鮮な食材が並べられている。
 全てエグゼの用意した最高の食材、旬という言葉がまさに相応しい。
「あー。適当に手に持って、適当に焼いて食べてくれ!!」
 そんな事を告げると、ガイヴァーだけがフォッフォッと笑いつつ駆使に刺さった魚を手に摩ると、それを強火の遠火辺りでじっくりと焼く。
──ジューーーーッ
 そして出来上がったものには、フェリーナを一とした女性達が思いを込めて作ったソースをたっぷりと掛けて、ガイヴァー卿は口にほおばる!!
「旨し!!」

──いきなりキターーーーーーーーーーーーーーー

「そんな野暮な食べ方‥‥」
 そう告げる審査員もいるが、やはり目の前のガイヴァー卿の美味そうな食べ方につられて一人、また一人と‥‥。
「しかし、スタミナはソースで補い、食材に魚を使っているということはクリア。だが、どこをどう見ても料理だが‥‥」
 そう告げている審査員に向かって、エグゼは一言。
「あんた達が勝手に焼いて勝手に喰っているだけだ。料理というものは『工夫』。おれはなんも工夫していないし、火だって通しちゃいない。だけど、最高のシチュエーションだろ?」
 そう告げるエグゼに、全員が満場一致で合格。

 そして最後の審査も終り、いよいよ結果発表。
「それでは‥‥今回の料理対決。結果は‥‥『冒険者厨士連盟』の勝利!!」
 会場から拍手喝采が聞こえてくる。
──スッ
 その中で、アヴリールが群雷に手を差し出す。
「最高の料理だった。こっちも本気でやらせてもらったが‥‥完敗だ」
「イヤイヤ、貴方たちもイイ腕アル‥‥また何処カデ、戦イタイアルヨ」
 がっちりと握手。
 そして料理対決は幕を閉じ、夜には参加した料理人たちが『ルールの枠』を越えた料理対決‥‥。つまり見に来たお客に料理を振るっていた。


●そして後日〜石版ゲットしたけれど〜
──トレトゥール『パンプキン亭』
 ゲットした石版。
 それは今までのものとは様子が違っている。
「‥‥読めないか‥‥」
 零が必死に石版を見つめる。
 だが、文字一つ解読不能。
「あの‥‥いままでとは‥‥まったく異なる言語‥‥かかれている見たいですね‥‥」
 アイリスが横からちらっと見ながらそう告げる。
「うーん。ここの誰もが読めない文字。一体どこの文字だぁ?」

 はてさて。
 折角手に入ったレシピだか。
 解読できずに困り果ててしまった一行。
 果たしてグローリアスロードの手掛りは?
 それはまた次回を刮目刮目〜。

〜To be continue