●リプレイ本文
●さて、懐かしのあの地へ〜パリ北方・とある港町〜
──とある酒場
「モグモグモグモグ‥‥すいませーん。こっちのメニューのこの料理を追加してくださーい」
景気良くそう叫ぶと、オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)はついにメニューの半分、16品目の注文を行った。
「はぁ‥‥おねえちゃん、随分と食べるねぇ。毎日ここに通って‥‥まあ、ひょっとして全メニュー制覇とか狙っている?」
カウンターから一人のウェイターがオイフェミアにそう話し掛ける。
「昔、ここにきたこともあってね。料理の勉強をしな、久しぶりに食べ歩きの武者修行ってところだね」
そう告げると、オイフェミアはテーブルに運ばれてきた次の料理を、楽しそうに食べ始めた。
●インドゥーラのパンは、世界一?〜巨人のパン屋さん〜
──冒険者街
グツグツグツグツ
大鍋でカリーを仕込んでいるのはアイリス・ビントゥ(ea7378)。
自宅にあった香辛料も底がつき果て、サンディに頼み込んでインドゥーラの貴重な香辛料をゲット。
もっとも、アイリス曰、『あの‥‥香辛料なんて、普通に売っている普通の調味料なんですけれど‥‥』だそうで。
そのまま仕込みを続け、次にはインドゥーラのパンである『ナン』を焼く。
釜戸に火をいれ、練りこんだ生地を釜戸の内壁に張付ける。
ペタン、ぺタンと小気味よい音が厨房に響き、そのままアイリスは開店準備に大忙し。
やがて正午近くになると、ポツリ、ポツリと客の姿が現われた。
「い、いらっしゃい‥‥」
相変わらず人見知りする性格は治っていないようで、
なんとか接客をこなし、ナンやカリーを始めてみたお客には、一つ一つの説明をしっかりと行う。
「スープとかシチューにもナンが合うんです‥‥」
そう説明するが、客の反応はいまいち。
「でも‥‥ねぇ。本当にスープにもあうのかねぇ‥‥」
「あ、あれ? そういえば元々シチューとかパンですくって食べるじゃないですか‥‥」
必死に説明をし、どうにか一つ、また一つと売り上げていくアイリス。
午後からは新作ナンのお披露目となった。
──バチバヂバヂッ
厨房の油鍋の中で炸裂する生地。
弾けるカリー。
吹き出す油。
「ひゃ‥‥ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
オロオロとしつつ、アイリスは厨房内を右往左往。
温度が下がりどうにか厨房を片付けると、さらに上げていた料理を別の形にしてトライ。
──ヂューーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
小さな泡が湧き出し、それがやがて大きな泡に変化する。
そしてカラッと狐色に上がった三角錐の形をしたナンを口の中にヒョイと放り込む。
「ハフハフ‥‥熱くておいしくて‥‥中から熱々のカリーがヂューーッと染みだして‥‥」
つまりは、旨し!! ですね。
そんなこんなで、アイリスの奮闘はまたまだ続くようで。
●レシピ解析〜それと手伝いと托鉢〜
──パンプキン亭
「うむ。こ‥‥この文字は‥‥」
全快の依頼で入手した『グローリアスロード』の石碑。
それを解析する為に、アイリスの兄であるサイラス・ビントゥがパンプキンテイで解析作業をしていた。
「フンッ!!」
いきなり上半身裸になると、力一杯ポージング。
「うーむ。私の知っている文字ではない‥‥しかし‥‥」
さらにポーズを変え、全身に力をみなぎらせる。
「私の知識の奥深く‥‥伝承の知識の中には、このような文字は実在する‥‥うーむ」
そして緊張を特と、静かに衣服を着用し、その乱れを整える。
──ガチャッ
静かに扉が開き、サンディがハーブティーとランチを持って入ってくる。
「文字の解析はどうですか?」
「おお、頑張っているなぁ‥‥」
エグゼ・クエーサー(ea7191)もそう呟きつつ、ちょっと一服の為に部屋に入る。
「うむ。少なくとも私の知る文字ではない。が、伝承に出てくる文字であることは判別できた。すなわち、『古代魔法語』。しかも、解析には高位の知識を必要とするものである」
そう告げてから、ハーブティーを呑むサイラス。
「ふぅん。ということは、いよいよ考古学者の出番か‥‥あ、そうそう、サイラス、ちょっとこれを食べてみてくれ」
そう告げると、エグゼはサラダボールをサイラスに差し出す。
彩り鮮やかな料理。
それを右手のみで丁寧に食するサイラス。
「うむ。これは美味である‥‥」
そう告げつつ、味を楽しむサイラス。
「そうか。とりあえずはOKだな‥‥」
ちなみにエグゼの作った料理。
グローリアスロードの料理を自分なりにアレンジしてみたいという思いが、エグゼに包丁を握らせていた。。
『究極』とか『至高』みたく大仰で偉そうな感じじゃなくて、もっと親しみやすくて、素直に『美味しい』と言える様な料理。
そして、レシピを元にアレンジした一品が、今サイラスの食べているものであった。
「問題は食材か‥‥このままだと、かなり高価な品になるからなぁ‥‥」
「ちなみに一つ問わせて頂く。このサラダ、今のままの売り値だといくらになるのかな?」
サイラスの問いに、エグゼは指を3本立ててみせる。
「うーむ。30cなら確かに高い」
「3Gだっ!!」
うはー。
そのまま沈黙するサイラス。
「あーあー。とりあえずディナータイムの仕込みでも始めるかぁ‥‥」
そしてエグゼはボリボリと頭を掻きつつ。厨房へと戻っていった。
●北の港町〜また、いらない情報を〜
──岬の先っぽ・ガイヴァー邱別荘
「うーまーいーぞー」
と叫びつつ、目の前の海上を手作りの水蜘蛛で走り出そうと身構えているのは竜胆零(eb0953)。
もっとも、実際に海に足を踏込んだ瞬間、ザブッと沈んだのでやはり無理でした。
「それはちがーーーーーーーーーーうっ!!」
浜辺にテーブルを持ち出し、のどかなティータイムをしているアジヴォー・ガイヴァー卿が、ツカツカと海から上がってくる零に向かって叫ぶ。
「適材適所、リアクションはその都度、適当と思われるものを使うのだっ!!」
そう叫ぶと、ガイヴァー卿は海をじっと見つめる。
そして手に持っていたパンを一口かじる。
──カッ!!
瞳がカッと開き、全身を振るわせつつガイヴァー卿が口を開いた!!
「うーーーまーいーーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
──ザッバァァァァァァァァァァァァン
刹那、目の前の海が真っ二つに割れる。
いやいや、零にはそう見えたのであろう。
実際に割れたわけではないが、そう見えるように相手の感情に訴えかけたらしい。
おっさん、恐るべし。
「こ‥‥これほどまでに‥‥」
ガクッと膝から崩れ、浜辺に拳を打ち付ける零。
「うむ。これが『リアクション道』というものじゃ。まだまだ学ぶべき事は多い。ついてくるか?」
そう優しく話し掛けつつ、ガイヴァー卿はそっと零に手を差し出す。
「し‥‥師匠っ!!」
ガシッとガイヴァ卿の手を握り、涙を流しつつ叫ぶ零。
「うむ。見よ、あの星を‥‥あれこそがリアクションの星じゃ!!」
天空を指差しそう告げるガイヴァー。
そして零にも、その星が見えた!!
って、まだ昼ですよーーーっ。
──ウルウルウルウル
あ、後の木陰で二人を見つめつつ泣いている人がいるし。
って、零にもできているやん!!
──そして別荘にて
ガチャガチャ
静かに食事をしている零とガイヴァー卿。
二人以外には、其の日来客予定であった一人の青年が座って、のどかに食事をしていたのである。
「お舘様から、今回の資金援助の件についてお礼を伝えるようにと言われまして」
純白のウィザードローブを身に纏った青年が、そうガイヴァー卿に告げる。
「うむ。奴との中は昔の縁(えにし)。今はパリを追われ、困っているのでしょう。必要な援助は惜しまないと、そうお伝えください。ジェラール殿」
そののち会食は静かに終り、ジェラールと呼ばれた青年は舘を去っていった。
そして零は、パリに戻るギリギリまでガイヴァー卿の元でリアクション道を学んでいたそうな‥‥。
●パリ〜そして〜
──パンプキン亭
「うーーーん。ずばり、味付けがくどいっ!!」
エグゼの作った試食品を食べつつ、オイフェミアがそう呟く。
「ほほーう。どの辺がくどいか説明してもらおうか?」
頬をヒクヒクさせつつ、そう呟くエグゼ。
「この辺がくどい‥‥」
指で指し示したてのはソース。
料理に合ったソースを作ったエグゼ。
当然ながらソースにも自信はあったのに。
「それは、お嬢さんの口に合わなかっただけじゃないのか?」
そう呟きつつ、横を指差すエグゼ。
その指し示した方向では。
「ぱく‥‥ぱく‥‥ぱく‥‥」
無言で食べているアイリス。
「こっ‥‥この味はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
──バリバリバリバリッ
いきなり立ち上がり叫ぶと、天井をじっと睨みつける零。
その瞳から怪光線が吹き出し、天井を突き破ったように見えるのは、やはりリアクション道の成せる技であろう。
『この味は?』
全員が一斉に問い掛ける。
「うん、美味しい‥‥ぱくばく」
そのまま座って食べつ告げる零。
どうやらリアクション道の道程は長いようで。
〜Fin