新たなる道2〜ドーマ神殿〜

■シリーズシナリオ


担当:呉羽

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:01月31日〜02月10日

リプレイ公開日:2008年02月08日

●オープニング

 人の進む道は、1つとは限らない。
 人の進む道に、正解は存在しない。
 人が進む道は、ひとつではない。
 歩んでいたその道を曲がり、新たなる道を進む事も出来るのだ。
 何度でも。

 ドーマ傭兵団。規模100人を超える傭兵組織だ。
 本拠地はとある森の中。そこに造られた砦は、敵に備えて充分な装備が設置され、備蓄も蓄えられている。だが、この砦に攻めてきた者は過去には存在しない。その上彼らの多くはここには居ない。それぞれ雇われて各地で戦っている。
 では何故わざわざ大掛かりな砦を造ったのか。
「この砦は我々の訓練施設でもある」
 傭兵団の団長マーカスは、新人達にそう告げた。
「あらゆる角度を想定して訓練を行っても、それを上回る事が実戦では起こり得る。その時に慌てず対処する‥‥だがそれは、結局経験を積む事でしか培われないものだ。かと言っていきなり実戦に放り込む事は、無駄に人材を失う結果となる」
 隣を歩く副団長イリスも、黙って頷く。
「だから数多くの模擬戦を行う必要があるのだ。人の力を底上げするのは、自らがそれまでに築いた経験に基づく実績。それを自信に繋げて慢心せず目の前の困難をひとつずつ片付けて行く事だ。10見る事は大切だが、まず目の前の1を片付ける事も重要である」
「団長」
 神妙な顔つきで聞いていた新人達の後ろから、背の高い男が声を飛ばした。
「そろそろ例の『冒険者傭兵』達が来る頃ですが、今回はどうなさるおつもりです?」
「お前にまかせよう」
 こう言われれば、『監督と指導はお前にまかせる』という意味が一般的である。しかし男は軽く頷いた。
「では、神殿の者に伝えておきましょう」
「屋根の事もな」
「心得ました」
 傭兵と言えば荒っぽいイメージがあるが、この男はどちらかと言えば騎士風である。主君に対するような仕草で一礼し、そのまま去って行った。
「念の為、ギルドに依頼を出しておきます」
 それを見送り、イリスも本片手にその場を離れる。
 傭兵団に新たな風を吹き込む為、彼らは冒険者達を招いた。新たな道を目指す者を指導し、今までとは違う技術を身につけ体得させる事。幅を持つ事が、傭兵団の今後にも役立つだろうといわば実験的な取り組みであるのだが。
「‥‥成功するかしら」
 小さく呟き、イリスは遠くを見つめた。

 その神殿は、砦から徒歩1日の所にあった。
 神を祀る場所であり、本来ならば頻繁に人が出入りする場所ではない。砦同様森の中に建てられた神殿だから、そもそも人が来るような場所でもない。
 かつては神の為の場所だった。だから神殿の場所だけ太陽の日差しを受けていればそれで良かった。人が来ようと来まいと、祈りを捧げるだけで良かった。
「‥‥しかし、この季節にこの屋根ではな‥‥」
 神殿を見上げ、騎士風の男は呟く。
 どう見ても明らかに内側から壊したような跡が見えるそれ。粉雪が舞う中、容赦なく冷気が神殿内へと吹き込んでいる。
「さて‥‥どうするか‥‥」
 そして男は軽く首を振り、神殿内へと入って行った。

●今回の参加者

 ea3120 ロックフェラー・シュターゼン(40歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 eb3916 ヒューゴ・メリクリウス(35歳・♂・レンジャー・人間・エジプト)
 eb5413 シャルウィード・ハミルトン(34歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb7208 陰守 森写歩朗(28歳・♂・レンジャー・人間・ジャパン)
 ec4154 元 馬祖(37歳・♀・ウィザード・パラ・華仙教大国)

●サポート参加者

セシル・ディフィール(ea2113)/ 九烏 飛鳥(ec3984

●リプレイ本文


 その神殿は、ひとつの雪山のようにも思えた。
「‥‥真っ白ですね」
 ジャケットの上に防寒服。首には越後屋印の手拭いを巻き、更に青い外套を体に巻きつけたヒューゴ・メリクリウス(eb3916)が、寒そうに震えながら『それ』を見上げる。
「真っ白だな」
 一見まともな格好だが、実は防寒服の下で越後屋印の腹掛けをしているロックフェラー・シュターゼン(ea3120)も、真面目に頷く。
「ま、早く入ろうぜ」
 イギリス産ウールの入った防寒服を着ているシャルウィード・ハミルトン(eb5413)だが、実は更に暖かい防寒服を持ってきている。この季節だ。準備しておいて正解だったなと彼女は思っている。勿論その理由は『この季節だから』ではない。
「‥‥半纏は少し寒いです‥‥」
 毛糸の手袋靴下外套の3点セットでも、肝心の服が綿製ではさすがに堪える。暖かい毛皮のマントを体に巻きつけている陰守森写歩朗(eb7208)の姿は、ヒューゴと並んで見た目には面白かった。
「あの‥‥すみません‥‥」
 そんな中。
「どなたか‥‥どなたか‥‥助けてくださいませんか〜‥‥」
 声に皆が振り返ると、後方では1人、元馬祖(ec4154)が腰まで雪の中に浸かってもがいていた。


 とにかく酷い雪だった。外も、中も。
 神殿に入ってすぐの表玄関でありながら屋根にはぽっかり穴が開き、今尚、雪はそれへと降り注いでいた。
「この時期に嫌がらせの如く開いてる屋根だな‥‥」
「ほんと、立派な穴の開いた神殿ですねえ。‥‥老朽化ですかね?」
 外と変わらぬ冷えに、皆はうんざりする。
「屋根。先に直したほうがいいでしょうね。フライングブルームでロープを屋根に数本掛け、その上に雨避けになるような皮などを掛けるのが良いかと。本格的に修繕する前の、簡易的な物ですが」
「皮の代わりにテントはいかがでしょうか。私もフライングブルームは持っておりますし」
 森写歩朗の意見に馬祖も賛同した。
「工作屋としては、ここは挑戦してみる価値があると思うんだ。とりあえずその方法で仮修繕してもらって、後から大工関係の本を読みつつ『現場で使う実践的勉強法』みたいな感じでやってみるかなと」
「そんな写本持ってるのか?」
 しかしシャルウィードに問われたロックフェラーは胸を張る。
「残念ながら手元には無い」
「‥‥」
 しかしロックフェラーが鍛冶屋としては一流で、木工や石工に関してもそれなりの知識があるのは疑いようが無かったし、今回ここに来たのも各々修行の為である。これが彼の修行の1つである事は間違いなかったので、応急処置の後はまかせようと言う事になった。
「あらあら〜」
 そこへ、神殿の奥から1人のハーフエルフが走ってきた。そしてにこにこ微笑みながら皆へと服の裾を持って礼をする。
「ようこそお越し下さいました〜。私、この神殿の見習い神官、ジュリーと申します。ここは新たな道を進む方の為に、道を示し教えを授け、ついでに修行もしてしまおうという場ですわ」
 皆も1人ずつ簡単に自己紹介をし、ジュリーはにこやかに頷いた。
「ところで、こんな所にグリフォン連れてきたお馬鹿さんはどなたかしら〜?」
「あ‥‥。すみません、自分です‥‥」
「あらあら。ここは冬は雪に閉ざされて、時には食料不足に陥るんですの。どかーんとファイヤーボムで燃やしてご飯にしてもいいかしら〜」
「‥‥だ、だめです‥‥。その、荷物もありますし、旅の相棒でもありますし‥‥」
 怖いまでの微笑みに冷や汗を垂らしながら、森写歩朗は弁解する。
「ドカーン‥‥」
 しかし後方で聞いていたヒューゴがふと思いついて、指を天井に向けた。
「まさかあれ、君がドカーンとやっちゃった跡だったり?」
 半分冗談のつもりで、笑みも見せつつ彼は尋ねてみたのだが。
「はい。モンスターが来た時に、全開で」
 笑顔で返事が返ってきた。
「屋根だけで済んで良かったよなぁ」
 呆れたようにシャルウィードが言ったが、それを聞いて真っ青になったのは馬祖だ。
「あの‥‥。私の先生になって下さる方は、ジュリーさんでしょうか‥‥?」
「あら。貴女はウィザード希望者の馬祖さんですね? お話は聞いていますわ。でも私は残念ですけど見習い中の身ですから、教えるわけには行かないんです。ごめんなさいね〜」
 内心ほっとしたのは他の皆もだろう。室内で、屋根を破壊するほどの威力の魔法を全開で撃つような者が先生役をしたら‥‥。何を教え込まれるか分からない。
 ともあれ、皆は神殿内を案内されたのだった。


「私の祖国では魔法を学ぶ機会がありませんでした。私は、それが普通の事だと思っていました」
 馬祖は華国出身だ。彼の国では魔法を教えてくれる者は限られている。彼女もそういった環境を知らず、冒険者となった。
 依頼の度に異なる種族や職業の仲間と組み、様々な場所、様々な事を知るにつれ、彼女は世界の広さを知るようになる。それは彼女に大きな夢を持たせた。
「より多くの事を学びたい。そんな欲求です」
 勿論彼女とて、純粋に夢へ向かって走り出そうとしたわけではない。確かに悩んだ。種族的特性から言えば、パラにウィザードが向いているとは言い難い。彼女の今の職、格闘家やレンジャーのほうが向いているのではないか。この思いは『無謀』と一笑に付される類のものではないのか。そうでなくても、自分が未熟な身である事は、充分分かっている。
「ですが、この機会を逃せば。私が魔法やそれに連なる学問を学べる機会は、二度と訪れないかもしれません。今まで培ってきたもの。その全てを引き換えにしても、私はこの好機を活かしたいのです」
「そう‥‥自分を変えたい気持ちはよく分かりました」
 自分の思いを語った馬祖に、先生役の老婦人は静かに頷いた。
「確かに貴女は未熟。傭兵団に所属するには多少力不足でしょうね」
「はい‥‥」
「でも、新たな道を選ぶ貴女を。私達は歓迎しますよ。その強い思いこそが。大きな成長の糧となるのです」


 森写歩朗は忍者だ。
 だが、忍者らしい事はあまりしていないかもしれない。隠密行動の訓練をせずに、いつの間にか家事に夢中になっていた。それでも最初は生活そのものを修練と考え、忍者として技術を高めていこうと思っていたのだ。
「もし宜しければ、皆さんの食事の準備をしますよ。あぁ‥‥神殿内の掃除などもおまかせいただければ」
 だが現実はこんな感じだ。様々な事を幅広く習得しつつも、家事を極めるべく日々生活をしている。
「忍者では、家事を極めるのに限界を感じてきたのが理由です。レンジャーは幅広い職ですし、身体的にもですね」
「‥‥なんでレンジャー志望者はそんなのばかりなんだ?」
 思わず呆れたように先生が言い放った。
「家事だって立派な仕事のひとつ。冒険者に要求される可能性も高い仕事だ。どんな仕事も馬鹿にしたら駄目だろ?」
 『よいこのがくもんたいぜん』を片手に石ころを並べていたロックフェラーが、すかさず隣から声を投げかける。
「そうですねぇ‥‥。まぁ実際の話。ターゲットの身辺を探るのに、雇用されて中に入り込むのは常套手段ですよ」
 本業(盗賊)休業を決め込んだヒューゴも、大きく頷いた。
「まぁ本当は‥‥。自分はジャパン人ですし、浪人になってもいいかなとは思っていましたが‥‥。まぁ浪人になりたい、というのも変な話ですしね」
「しかし忍者というのは、本国に帰って何らかの手続きをしてこなくて良い職種なのか?」
 ジャパンの事情までは、さすがに傭兵団でも把握していない。尋ねた先生に、森写歩朗は曖昧に頷いた。
「もうずっと帰ってませんから‥‥」
 遠くを眺めて彼は呟く。その窓の向こうに見える雪。ジャパンも同じ、雪景色だろうか。


 ともあれ、ロックフェラーの最初の修行は、ジュリー作巨大穴の修繕である。
 あらかじめ材料を積んでいた彼は、神殿の中に大事に保管されていた蔵書の中から、『木工のおすすめ』という本を借りて読み、屋根に上っていた。本が濡れては困るので、片手に作業‥‥というわけには行かない。読んで頭に叩き込み、実践して忘れたら屋根から下りてきて本を読んで‥‥を繰り返す。足腰の鍛錬にもなって悪くも無いだろう。
「は〜寒い‥‥」
 屋根の雪を踏みながらヒューゴがやって来た。屋根の上は一層寒いが、屋外でずっと頑張っているロックフェラーに、馬祖が淹れたハーブティを持ってきたのだ。
「どうです? 出来そうですか?」
「うん、まぁまぁかな。でも、ちょっと穴がでかすぎるよなぁ。学問的に何か含めて挑戦‥‥と思ってたけど、のんびりやってたら帰る日になるだろうし」
「これ、新しく建て直したほうが良い気もしません?」
「しないでもない。が、これを直すのこそが俺の試練!」
「あはは。そうですねぇ」
 それにしてもと辺りを見渡し、ヒューゴは身を震わせた。
「雪の中を行動する事も珍しくないわけですが、こういう時の行動に際しての注意点とか‥‥聞いてみたんですよ、先生に」
「うん。何だって?」
「『雪の上を歩くときはつま先から』」
「ん?」
「雪って、隠密する上ではメリットよりデメリットのほうが大きいじゃないですか。足音はざくざく言うし、足跡は残るし。ついでに隠れにくいですしね。僕の特技も効果半減以下ってものですし、だから先生に質問したんですけど」
「答えが、『つま先から』だったのか?」
 作業しながら、ロックフェラーはヒューゴへ振り返る。
「後は‥‥『靴の形と大きさを変える』」
「‥‥ふむ」
「まぁやっぱり、冬は難しいですよね。これが砂漠なら‥‥また違うんですけどねぇ」
 言いながら、ヒューゴは役目を果たしたテントを回収した。
「後は、ブレスセンサーですね。圏内に居たら、どんなに潜んでたってモロバレじゃないですか。どうにか出来ませんかねぇ、アレ」
「魔法は厄介だからなぁ」
「ズルいですよねぇ」
 と言いつつ、自分も魔法を使った隠密行動を行うヒューゴなのだが。
「じゃあ、僕は先生にいろいろ教わってきます。出来る限り手伝いますけど、早くしないと時間無くなっちゃいますよ」
「あぁ、助かるよ。そうだな。急がないと」
 そう言いながらも、夢中になって修繕を続けるロックフェラーだった。


 神殿内に居る人数は、ざっと20人ほど。神官達と修行でやって来た人ばかりである。勿論その中には冒険者一行も含まれていて、この神殿はどうやら『新たな道を行く人の為の初歩修行の場』になっているようだった。
 そんな中、森写歩朗が行ったのは、まず20人分の食事の準備である。近くの町まで行って、材料を大量購入。そうする事で1人頭の費用を抑える。勿論値切る事も忘れないが、この季節は充分な食料確保もなかなか難しい。無理は言えないが、そのぎりぎりのラインを見極める。それがシュフの知恵なのである!
「あらあら〜。すみませんね〜お洗濯までしてもらって」
 掃除もする。洗濯もする。神具や机を磨き、ベッドのシーツを取り替え‥‥。
「働き者ですわね」
 何故か、レンジャー修行よりも家事修行に走っていた。


「では、貴女にもこれを読んでもらいましょう」
 先生にそう言われ、馬祖は羊皮紙を受け取った。そして愕然とする。
「これくらい読めなければ、まず先には進めませんよ」
『学問大全初級』と書かれた題。だがその下に並ぶのはゲルマン語だ。母国の言葉でさえ、文字にすれば満足に読み解く事も出来ない彼女には、非常に難しい言葉。
「はい、心得ました」
 だがどれだけ時間がかかっても。それが苦難の道であっても、承知して来た場所だ。
「全ての学問は、まず音から始まります。そして文字。その両方が合わさって初めて力になる。貴女は『地』属性の魔法を学びたいと言いました。植物関係に造詣があるから、と。貴女が広く学問を学び習得したいなら、忘れてはなりません。学問は、一足飛びに学ぶ事は出来ません。全ての事柄には道理があり、事由がある。そうであるのだという事を、まずは学びなさい」
 知っていても学ぶ事。それは知らない事を学ぶのと同じくらい大切な事だと先生は告げた。勉学を繰り返した時期で、その答えは自らの中でも変化して行く。学問に唯ひとつの答えなどない。答えはひとつではあり得ない。
「今の貴女には分らない事、見えない事、読めない事がたくさんあるでしょう。それをひとつひとつ知っていく事が大事なのですよ」
「はい」


「何も変わらないままってぇのもアレかな〜と思うわけだよ」
 ぶんと剣を一振りし、シャルウィードは先生へと振り返った。
「ノルドは復興直前に仕込まれたんだけど、この流派に不満がないかって言うと、割とある。中でも一番は火力だな」
「火力か」
「柔を意識しすぎて極端なんだよな。日本刀を使う事前提にして、その刀の威力に頼り過ぎっつうか。だから、火力重視のコナンの型でノルドの動きとか‥‥ノルドからコナンの型へ移行するとか‥‥そういう事でもやってみるかって思ってさ」
「いろいろ試してみるのは重要な事だ。ひとつの型は崩れやすい。複数の戦い方を持つのが良いだろうな」
「だろ? まぁ、考えるより体で覚えるしかないよな。よし、今晩は寝かせないぜ、コーチ」
 女の言葉に先生は苦笑して、持っていた弓を彼女へと放る。
「これを引いてみろ」
「射撃ぃ‥‥?」
 少し嫌な顔をしたのは、全く自信が無いからだ。
「まぁ少しくらいは使えるだろうが、ナイトならともかく、ファイターならばあらゆる獲物を使えるといい」
「それは分らないでもないけどな」
「剣が折れたらどうする? その爪で戦う。当然間合いは更に短くなるな。だが投擲用の斧があれば気勢を制する事も出来る。お前達冒険者は高級な武器を愛用しているが、折れた時の事を考えたことはあるか? 重要なのは、武器じゃない。手数だ」
 その考え方は、人それぞれだろう。だが様々な戦法を取るべく流派を超えて編み出そうとしているシャルウィードからすれば、手数の話は納得が出来るもののはずだった。
「模擬戦までに形だけでもと言ったが、まさか正々堂々と真っ向から勝負なんて思ってないだろうな?」
「違うのか?」
 それには笑い、先生は彼女に小さなアクセサリーを手渡した。
「後はそうだな‥‥。ナイトじゃないんだ。女の魅力を発揮して、敵の油断を誘ってみたらどうだ?」
「はぁ?」
 何を言うのかと呆れるシャルウィードに、先生は剣を構えるよう告げる。
 そして。


 何とか屋根は修繕された。
 神殿の者に感謝されたロックフェラーは、奉納品だからと特別な鑿を貰う。ヒューゴも『雪の中で役立つかはともかく、手のひとつだから』と、使わなくなったという靴を貰った。
 そして、彼らは帰途に着く。結局何かを学ぶ最終的な師は、自分自身でしかない。脇目も振らぬ向上心こそが大切なのだ。
 それを為し得た者だけが、新たな道を切り開く事が出来るのだろう。