銀花亭 〜意地っ張りラプソディ・我道流転
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■シリーズシナリオ
担当:姜飛葉
対応レベル:2〜6lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月09日〜07月14日
リプレイ公開日:2005年07月17日
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●オープニング
●意地っ張り・その後
「わかっているなら尚更、意地を通し抜くまで帰って来ないわね、きっと」
『意固地になっている理由』の経緯を冒険者らに聞いたミランダは、ため息を零した。
「貴方達と話してから、彼‥‥ギルドに通い詰めみたい。我を通して無茶な依頼を受けていなければいいんだけど」
キアンは銀花亭の宿に泊り込んでいる。
そのため、動向くらいであれば、容易にミランダの耳にも入るのだろう。
「何も考えていないワケじゃない事は分かったわ。でもね、話が分かったら、なおさら決めた事をどうにかするまでだめだって事もわかったわね。ディースは、ディースで諦めみたいな事を口にしているようだし」
ミランダの顔には、苦笑すら浮かばない。どこか困ったような、心配そうな表情だけだ。
暫く考え込む様子を見せていたミランダだったが、やがて‥‥。
「『意固地になっている理由』は分かったけど、『取り成して欲しい』私の依頼は叶ってないもの、まだ終わってないわよね?」
言質取りに近いやり取り。
それは、ミランダ本人も分かっているのだろう。ようやく見せた笑みは困り顔である。
意地を通さない限り、キアンは彼女に会わないだろう。
けれど裏を返せば、通す事が出来たなら、彼女に会いに行くかもしれない。
ディースがどれ程、キアンの側にいられる事を嬉しそうに語っていたか、ミランダは知っている。
知っているからこそ、人を介してまで願った二人の道行き。
ミランダが、ディースと交わした約束を叶えるためにも‥‥。
「手紙が届いて半月以上‥‥多分、今でなければ機会を逃してしまうわ。貴方達のお陰で彼は動いてくれたけれど、それが間に合うかはまた別だもの」
ギルドでキアンが何を考え行動しているのか。
出来れば、それを見届け手を貸してやって欲しい‥‥そう冒険者に頼み、ミランダは言葉をしめたのだった。
●困った君の動向
この所、キアンはギルドに通い続けていた。
端から依頼書に目を通す。けれど‥‥。
「ゴブリンか‥‥、そんな雑魚じゃなくてもうちょっとなぁ」
出来れば、家に帰り報告を誇れるようなモンスターを討てれば。
そう思ったキアンは、次の依頼書に手を伸ばす。
騎士たるもの、弱きを助けるに相手の強弱・物の大小に拘る事そのものが本末転倒と、ディースなら指摘した事だろう。
けれど今、キアンの側に彼女はいない。
そして、キアンは急く余り名誉欲に執り憑かれているといっても過言ではなかった。
●欠けゆく紫紺の恵み
「村の裏山にある葡萄畑に、モンスターが居付いてしまった‥‥。豚頭のオークだ。このままでは村の収入もなくなってしまうし、奴らが山を下りてきて村を襲わないとも限らない」
村人は項垂れ、疲れた様子で実情を訴えた。
土地が貧しい山間の村。
貧しいなりに苦心し続けた結果、山から湧き出る水を引きいれ、痩せた土地を開墾し葡萄畑に育てていったのだ。
育てられた葡萄は、葡萄酒となり、村を潤す貴重な収入源になる。
けれど、このまま葡萄の収穫量に問題があれば、葡萄酒も満足に作る事が出来なくなる。
オーク達が何時まで山に留まっているのかがわからない。
葡萄を狩り尽くす迄留まるのか、飽いてどこかに移るのか‥‥それとも、麓の村に下りて荒らすか。
近隣に目ぼしい物は、葡萄畑以外にないためか、動く気配もなく。また、未だオーク達は山から下りてはこないものの、葡萄畑を取り戻そうと畑に近づいた幾人かの村人が、怪我を負っているという。
「そのオークは、1匹だけなのか?」
一人の冒険者が訊ねる。村人は、ゆっくりと首を横に振った。
「いいや、モンスターは1匹じゃない。目立つ体躯の大きな奴が、他の奴を引き連れ歩いているように見えた」
「なるほどな‥‥オーク戦士か何かか」
頷き呟く男に、村人は懇願するように訴えた。
「葡萄畑を取り戻してくれ。出来れば、これ以上畑の‥‥葡萄への被害を広げ増やさないように。村へ、奴らが下りて来る前に‥‥頼む」
「‥‥いいぜ、俺は受けてやる」
瞳をしばたかせ、言葉の意味をようやく理解した村人は、男にぺこぺこと頭を下げた。
貧しい村人達が頼んだのは、少数の冒険者。
少ない人数で、徒党を組む相手を如何にいなすか‥‥簡単な事ではない事を、男――キアンは、真実理解できているのだろうか‥‥。
●リプレイ本文
●流転
時間が無い‥‥言外に『急いで欲しい』と、ミランダは彼らに頼んでいた。
最初の手紙が、ディースの元に届けられてもう一月以上。
紙に綴られた言葉の数々は、飛び出した息子の帰りを‥‥その姿を一目みたいと願うほどにかの父が弱った証‥‥。
●舞台‥‥寒村
パリより離れた山間の寒村―そこは、寂れた村に見えた。
村を囲むように広がる山々を切り開き作られた葡萄畑に、今なおオーク達はたむろっていた。
「まんま裏山に突入したら畑の被害が増えるのは明らかだよな」
ヒサメ・アルナイル(ea9855)は、山の中腹から裾野に掛けて広がる葡萄畑を見上げる。
彼の言葉にサトリィン・オーナス(ea7814)も頷き。
「そうね。今回は、オークを討伐する事も目的の1つだけれど、村の貴重な収入源である葡萄畑に、これ以上被害が出ないよう配慮しなければならないから」
「‥‥戦いにかまけて、畑に被害がでるのもダメってことか」
頭をかきつつ嘆息をついたハルワタート・マルファス(ea7489)。
オーク達は、葡萄畑にこもったまま‥‥そこから、手を打たねばならない。
「葡萄畑の入り口付近で肉などを焼き、その匂いでオーク達を引き付けては如何でしょうか?」
歴戦の戦士と思われるオークのリーダーが葡萄だけ‥‥果物や野菜だけで満足出来ているとは思い難いというクリミナ・ロッソ(ea1999)の推測を元にした提案にあわせ、フローティア・クラウディオス(eb2221)も囮役を申し出る。
香りだけで全てを引き寄せられると思うほどに楽観も軽視もしていなかった。
「囮で誘導し畑から離してから倒すのが良案だと――リーダーも思ってたよな?」
にこやかにヒサメに促され、『リーダー』という呼称に僅かに眉を顰めるも、キアンは頷く。
パーティ内で唯一のナイトであり、体力的に1番余裕のあるキアンをリーダーに‥‥とは、今回の仲間内で相談し、決められた結果だった。
「‥‥ああ。餌と囮と2段構えなら全部とはいわずとも、大分惹きつけられるんじゃないのか? ‥‥なあ」
「どうかしましたか〜?」
「いや、何でもない」
キアンが振り仰いだ先には、村人達から集めた情報を元に、おびき寄せるに適した場所をサトリィンと検討していたエーディット・ブラウン(eb1460)がいたのだが。
そこに認めたエーディットの姿に瞳を瞬かせ、キアンは口を閉ざしてしまった。
ヒサメの神聖魔法は拙い‥‥本人も承知の上で、限られた時間の中、オーク達の様子を確認するため、その身を鳥に変じ空に立つ。
その間に火を熾し、おびき寄せる餌を用意するクリミナ達。
餌は、村人達の日々の備えから買い取る形で用意した肉‥‥冒険者の持ち寄る保存食では『美味しそう』にはならないだろうとの判断からである。
買い取る形になったのは、貧しい寒村に、冒険者達に支払う以上の支出が厳しかったための配慮だった。
リーダーと持ち上げられたキアンは、それは理由に押し切られる形で受けたもの、形だけのものだと思っていた。
用意を整える仲間を横目に、彼はそう思っていた。
オークが居る山を見上げ、思う‥‥こうして、依頼を受ける冒険者など、大勢いる。もしや、自分が引き受けずとも事は足りたのではないか。
そう迷いを抱えながらも、結局キアンは、呼称を受け入れた事も含め、仲間に戦闘を得手とする者が少なかった事から、村まで共に同行したのだった。
見知った仲間で共に依頼を受けることなど珍しい事でなく。たまたま、先日居合わせたものが、時期良く依頼を受けたのだろう‥‥とも。
そして知ったのだ。常に共に在った者の不在を、まざまざと‥‥。
●紫紺の恵みを護って
肉の焼ける腹を刺激する香りが、畑近くに漂う。
餌を用意した頃と同じく、武器を持たず、軽装で畑に入っていたフローティアが戻ってきた――その背、向こうにオークを導いて。
香りに引き寄せられたオークと、懲りもせず自分達のなわばりとした葡萄畑に入り込んできた人間を追い払うため出てきたオーク、どちらが多かったのだろう。
戦槌を手に畑より現れたオークを前に、ハルワタートの身が青い光に包まれ、そして氷の棺に囚われるオークが一匹。
魔法を目の前に、初めて村人を追い落とすいつもの人間追いではなかった事にオークは気付いた。
氷柱と化した仲間の姿に、長い牙を振るわせ唸るオーク達。
「‥‥頭がいねぇな」
オーク達が戦槌を振り上げる光景を前に舌打一つ。おびき寄せられなかったか、手下に様子見をさせているのか‥‥オーク戦士の姿が見えないことに、キアンは苛立たしげに呟いた。
果たしてキアンは、彼らの予想通りにオーク戦士へ向かう事を告げる。
戦力的にも、仲間うちで1番体力に優れたキアンが向かうのは適所と思われた。
けれど、キアン以外の冒険者――すなわち、オーク討伐とあわせ、ミランダからの依頼を受けていた彼らの戦力分担に、偏りは無かっただろうか。
「あほ〜! 豚もどき〜!!」
言葉は通じずとも、罵詈雑言の類というのは、感情的に通じるものがあるのだろう。
エーディットの罵る言葉に、大きな戦槌を振り回し追いかけてくるオーク。
彼女が、付かず離れず引き寄せたオークを、ヒサメが剣で切り伏せ。
その間に詠唱を結び、新たなオークをウォーターボムでエーディットが押し留める。
周囲にいる雑魚を、オーク戦士と戦うキアンらから引き離す様、できる限り数を減らせるよう戦っていたのは、ヒサメとエーディット二人だけ。
ハルの用いるアイスコフィンは、常に使えるものではなかった。
確実に、討ち仕留めるには彼の魔法は向かない。なぜなら、氷の中に閉じ込める事は、命を奪う事ではなく‥‥討伐を成すには足りない。
だが、数の有利を挫くため、時を稼ぐ事はできる。
しかし、援護に必要な魔法の手は多くは無かった。
キアンが、剣を手に刃を返し切りかかる。キアンの攻撃を嫌い、オーク戦士が戦槌を振るえば、フローティアの日本刀が閃く。
クリミナより与えられた祝福が功を奏しているのだろうか‥‥二人の攻撃はかみ合っているように思えたのだが。
氷の棺に納めたオークと、ヒサメ達が抑えられたオークに余る配下が、オーク戦士にはいたのだ。
必然、目の前のオーク戦士に集中しているキアンとフローティアに配下のオークを抑える余力など無く。
回復の要の一人と目されたクリミナに、戦槌が振り下ろされる。
神に魔法の御業を乞い願うクリミナに、重い一撃を避ける事は難しい。
「‥‥!」
けれど、くぐもったうめきを上げ、吹き飛ばされたのはハルだった。
「ハルワタートさんっ?」
「ちっ‥‥!」
剣を振るう手は止められず、視界の端に後衛の負傷を捕らえようと前を離れる事の出来無いフローティア達。
助け合う事は必要、けれど、上手くかみ合わぬ攻守‥‥。
頭を叩けば、残りは烏合‥‥それは、間違いとはいえない。
「ただ頭を潰す前に、仲間がやられちまったら戦略以前だろっ!」
ヒサメの叫びは、オークの振るう戦槌の唸りにかき消され。
オーク戦士に向かうキアンには届かないのだろうか。
「キアンっ! ‥‥このっ」
戦槌の一撃に吹っ飛ばされ、内臓をやられたか‥‥口の端より血を垂らし、呻くハルの姿に、ヒサメは剣を持ち直し、背後を顧みないキアンに呼びかけた。
数が多い。多勢に無勢。届かない声、届かない剣。
握る手に返る柄の感触は固く、ヒサメは共にオークを退けるエーディットを助け戦っていたのだが。
なぜキアンには判らないのだろう‥‥常に背を支える存在がいたはずなのに。胸に過ぎる葛藤に、身内が騒いだ。
髪が、血が‥‥そして、何より瞳が熱く疼く気がする。
斬り込むナイトは、後衛を顧みる事よりも、己が目的を優先し。
「なるな‥‥落ち着くんだ」
我が身に言い聞かせるようにヒサメは呟いた。
ここで彼が正気を逸すれば、依頼の成否よりも何よりも、仲間の身すら危うくなる事は火を見るより明らかだった。
片頬を抑える手で、落ち着きを取り戻そうと息を吐く間も、クルスソードを横薙ぎに払い、オークを退ける。
「ヒサメさんっ」
ヒサメの異変に気付き、背を守るよう魔法を放っていたエーディットが、声を掛ける。
けれど、オークとてその隙は逃がすはずが無かった。攻撃が止んだ二人に襲い掛かる。
エーディットを咄嗟に庇ったヒサメの目の前で、オークは凍りついた‥‥ハルのアイスコフィン。
「後衛は後衛の役目があるんだよ‥‥」
痛みが意識を繋ぎとめ。戦槌を振り上げる形で、氷中へととじこめられたオーク。
クリミナにキアンらのフォローを願い、ハルへ癒しを施し始めたサトリィン。
華奢な体躯に重い一撃を受け、吹き飛んだハルの怪我は酷い。
「‥‥無理をするわね。これ以上酷い怪我だと私の手に負えなくなってたわよ」
「仲間なら、助け合うのは当然だろ。怪我なんて直ぐ治るから気にすんな」
サトリィンの癒しに、やせ我慢にも似た笑みを浮かべ、ハルは手の甲で口の端をぬぐった。
前者は返答、後者は前にて切り結ぶ仲間に継げる言葉。
ハル自身は、キアンに同じ依頼を受けた仲間を大切にするものだという概念をもって欲しいと思っての事だったが、キアンが顧みず、またそのキアン一人に攻撃の矛先が向かぬ様フローティアがフォローに回っていた現状、彼が咄嗟に対応を図らねば、戦線にて貴重な癒し手を損じていた事だろう。
けれど、彼らは間違いなく火力不足だった。
決定打の不足に唇を噛むフローティア。
「キアンさん、このままでは押し負けてしまいます、名誉を求めるより先に事を成しませんと!!」
フローティアの呼びかけに僅かに瞳を細め、戦槌の一撃をかわし退くキアン。
「キアンさんっ!」
「‥‥一時稼いでくれ」
再びの呼びかけ‥‥日本刀の斬撃を煩わしそうに振り払うオーク戦士を前に、キアンはサトリィンに助力を願った。
頷き祈り願われ、結ばれた魔法――コアギュレイトは、魔法への抵抗おぼつかぬオーク戦士を僅かに縛る。
その隙を狙い逃がさず、キアンは、力任せながらも強力な一撃を秘めた剣――スマッシュを乗せた一撃をオーク戦士に叩き込んだ。
クリミナのホーリーが正面からオーク戦士を捕らえる。
戦槌を手に、よろめき苦悶のうめき声をあげるオーク戦士を逃がさず、追い撃つように件を振り下ろすキアンにあわせ、フローティアは切先鋭い日本刀で敵を切り裂いた。
そして、フローティアは思い出す。
ディースが言っていたのだ――『キアンは、出来るはずなのにやろうとしない』と‥‥。
●気付く事、気付かされる事
「ありがとうございました‥‥」
オーク達に荒らされた葡萄畑は、決して狭くはなかった。
けれど、戻った平穏と守られた果樹のためか、寂れたと感じられた訪れた時の印象とは打って変わって、冒険者らに礼を述べまわる村人達の顔は明るい。
報酬とは異なる、依頼の成果の1つを前に、クリミナは笑みを浮かべた。
これも大切な成功の証であるのだから。
オークの首と、村人達、そして彼らに混じり成果を喜ぶ仲間達を、キアンは僅か苦笑混じりに見つめていた。
喜びを分かちあうヒサメやハルの姿が、妙に目に入る。
そんなキアンの表情を、如何受け取ったのか‥‥フローティアが、村人達を見つめながらキアンに訊ねた。
「名誉は、そんなに欲しいものでしょうか‥‥。困り事が解決されて、喜んでいる人たちを見る事の方が、大切なのではないでしょうか? 目立たないけれど、無銘の名剣と呼べるような冒険者達がたくさんいます。そういう人たちが、世の中を支えているって‥‥」
父の受け売りなのだけれど‥‥と、フローティアは苦笑を浮かべ語った。
「それは、同じ『騎士』とはいえ、神に仕える騎士だからこその問いだろうな」
意外な事に、キアンはフローティアの言葉を否定するような事は、口にしなかった。けれど、それは、全てに当てはまるわけではないだろう、と。
純然たる騎士の家系に生まれ育ったキアンにとって、騎士としての誇りや名誉は、神に祈りを捧げるのと同じくらい身近で当たり前の事として、半ば刷り込まれるように育った。
その家を飛び出し、けれど、認められたいと望めば望むほど、刷り込まれたそれらが身に染み付いているのを知ったと、キアンは言った。
●パリへの帰還
「オーク戦士の首級は上げた、葡萄畑も大きな損害なし」
「無事、成功ですね」
指折り成果を数え上げるハルの衣服の下には包帯が巻かれている。
じき癒える傷ではあるが、ハルが治癒魔法を受け入れなかったのは、単騎で行過ぎた前衛への遠まわしな忠告なのかもしれない。
依頼の成功に、ほっとしたように頷くフローティア。
けれど、その笑みにヒサメが首を横に振る。
「これで終わりじゃねえだろ?」
「キアンさんは、ディースさんと仲直りをしに行かなければ‥‥ですね〜、お花とかを買っていくと良いのですよ〜♪」
「‥‥何で」
僅かに紅気した頬を両手で抑え、にこやかに助言を贈るエーディットに、眉尻がつりあがるキアン。
けれど、キアンが何か言うより早く、ヒサメがその肩を叩いた。
「仕事の大小じゃねぇんだよな。依頼主にとっちゃ全部が大事な訳だし‥‥感謝されると嬉しかっただろ? その気持ちこそ誇って良いんじゃねぇの?」
「そうです。仕事は仕事ですけれど、受け取った気持ちは、キアン様がどう思われるかですよ」
ヒサメの気負わない軽い口調。それが、言葉と同じ比重とは限らない事を動受け取ったのか。
クリミナの言葉は、年を重ねている分の重みもある。
「ほれリーダー、その誇り抱えて彼女のトコへGOじゃん♪」
何かを言いかけ口を開くも‥‥、結局は何も言い返せず、キアンは剣を手に立ち上がった。
素直でない態度は変わらなかったが、キアンにとって思い知らされる事が多々あった数日だったことだろう。
ヒサメとエーディットに顰め面を残し、キアンはふらりギルドを後にしていった。
依頼は、共にする仲間と力を合わせ、補い合い、一致協力した上で達成するもの‥‥サトリィンは、そう思っている。
「小さな事でも少しずつ成し遂げる事が大事なのを気付いて欲しいわね」
「‥‥だな」
その背を見送りながら、ぽつり呟かれたサトリィンの言葉に、ハルも頷いて。
意固地は、中々解けぬもの。けれど、失ってから気付いたのでは遅く。
名と実と、何を大事とするかは、当人次第。
ただ決して、人は一人では並び立たぬ事だけは忘れぬ様‥‥この冒険で、キアンが何を感じえたかは、かの胸内に確かに在るモノである。