宝物を求めて〜混沌の宝石 Whose thing?

■シリーズシナリオ


担当:姜飛葉

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月16日〜08月23日

リプレイ公開日:2005年08月24日

●オープニング

●暗室で交される言葉
「子供の使いすらできなんだか‥‥」
 室内に響いたのは、年老いた男の声。
 諦めに似たため息をつき、男は手にある杖を眺めた。
 それは男の手に馴染む、使い込まれ飴色に磨かれた杖だった。
「心に驕りがあったか、それともあやつらが‥‥」
「どちらにせよ、奴らはここへ来るだろう。ならば、その時に取り上げれば良いだけの話だ」
 うわてだったのだろう――そう言葉が続く前に、割って入った別の声。
「‥‥いや、ここに来る前に取り上げねばなかろう?」
 客として遇するわけにもいかないのだから‥‥そう、男は剣呑に告げる声に答えた。
 揺れる燭台の灯りを眺める男の瞳に何を読み取ったのか、返る声。
「真に相応しきはあの御方。それを解する事が出来なかったあいつが愚かだったのだ」
 男はそれには、答えず瞳を伏せた。
「訪ねるに道は限られておる。私が訪れを待とう」
「‥‥貴方が出るなら失敗はないだろう」
 揶揄か信頼か、その何れでもないのかもしれない。
 その後も二、三の言葉を交わし、声の主は男を残し立ち去った。
 男は蝋が尽きるまで、燭台を通しずっと何かを見つめていた‥‥。


●ある物語
 あるところに女の子がいました。
 その女の子は、ある日突然、正体不明の病に倒れてしまったのです。
 女の子と仲が良かった魔法使いは、女の子のために、病が一体何なのか、どうすれば治るのか一生懸命調べました。
 そして、とうとう魔法使いは、病の原因をつきとめたのです。
 それは、白い宝石のような玉があれば、治るという話でした。
 女の子は、大切なそれを悪い奴らにとられてしまったから、病気になってしまったというのです。
 魔法使いは女の子のために、その白い玉を悪い奴らから取り返すため旅立ちました。
 ただ旅立つ前に、魔法使いは、ずっと一緒にいた友達に言い残していった事がありました。
「女の子を助けるために、白い玉を取り戻そう。だけど、届けられるかわからないんだ」
 友達は、取り戻せても、届けられるかわからない‥‥という魔法使いの言葉がわかりませんでした。
 そして、魔法使いは自分が旅立って7日の後に戻ってこなかったら、代わりに届けてほしいと友達に頼み、訪ね先を伝え、そして友達の下から旅立っていったのです。

 魔法使いは帰ってきませんでした。


●白い玉
 弦をかき鳴らし、拙い物語をシェラは語り終えた。
 彼女の精一杯の語る方法――それは、歌。
 それがシェラにとって生きていくための手段だったから、彼女は、言葉で語るよりも歌で語る事を選んだ。
「届けるのは、魔法使いの家。ルベウスちゃんのお家は、皆魔法使いなの。シェラも何回か行った事があるけど、ずっとそういうお家だって言ってた」
 シェラが腰掛ける木箱の中に、彼女が求めた白い石が入っていた。
 けれど、それは石と呼ぶには変わった代物だった。
 柔ら固い‥‥石とは異質な感触を返す、不思議な白いしろい玉だった。
 淡い真白いその玉は、少女にとって何なのだろう?
「‥‥聞いた事がある声だったよ、岩洞を出た時に聞いた声。シェラにもようやく、ルベウスちゃんとギースちゃんが言ってた意味がわかった気がしたの」
 ルベウスの『家』で聞いた声。
 多分、顔が見られれば知った顔だったのかもしれない。
 そして彼らの語った話。全てがシェラにとって許容を超えるもので、何に対し涙が浮かぶのかも彼女には分からなかった。
 誰が味方かわからない‥‥最初に、ギースはそう言っていた。
 彼はどこまで、何を知っているのだろうか。
 そも、内包する問題だからこそなのか‥‥冒険者らが、抱えていた疑問をシェラの投げる。
「裏切り者ってどういう事なのかな?」
「『裏切り者』って‥‥よく分からない。ルベウスちゃんは、返さなきゃいけないものって言ってた。だから。泥棒は取ろうとしてる、取っていってしまった人達だよね?」
「‥‥それは」
 シェラの語る言葉は、全てルベウスを通じての話。
 そも、ルベウスが道を違えていない証拠は‥‥無い。
「届けるところは、女の子。だから、持ってるシェラが行かなきゃいけない」
「まて。ギース伯の判断は待たないのか?」
「早く行かなきゃいけないの」
 『まてない』という事なのだろう。
 問いかけに、シェラはふるふると頭を横に振る。木箱を抱え独断に走らなかったのは、先の忠告が効いているのか。
「でも、シェラ1人じゃ届けられない。ルベウスちゃんが届けられなかったのに、シェラだけじゃ無理だよう」
 家に住まうものならば、家族とはいかずとも‥‥少なくとも共通する何かを抱えるものなのだろう。
 その絆ゆえの戦い方は‥‥それらを前に敗れたというルベウスの力量を冒険者らは知らない。
「お願い、力を貸して‥‥」
 そう皆を見上げるシェラは、今迄に無い真摯な表情を浮かべていた。
 けれど1人であっても行くのだろう‥‥残された約束を果たすために。

●今回の参加者

 ea4335 マリオーネ・カォ(29歳・♂・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea5601 城戸 烽火(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7780 ガイアス・タンベル(36歳・♂・ナイト・パラ・イスパニア王国)
 eb0010 飛 天龍(26歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 eb1566 神剣 咲舞(40歳・♀・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 eb2221 フローティア・クラウディオス(27歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●いと遠きを見る目
 羽広げ、滑べるように空を翔ける鳥が1羽。
 そう、それは鳥‥‥。
「あれは獣だ、違うだろう‥‥」
 低い声音が響き。
 空舞う存在に、鳥でなければ何を求めているのだろうか。


●眼前か、遠盲か
 それより少し時は遡り‥‥。

「要するに、此の石を女の子に届ければ良いのですね?」
 不思議な感触を返す『白い石』を前に、神剣 咲舞(eb1566)はシェラに訊ねた。
 シェラは、彼らを見上げ小さく頷く。
「それがルベウスちゃんのお願いだから。‥‥でも」
「シェラさんのお話を、僕らは信じていますから」
 シェラの不安を察するように、ガイアス・タンベル(ea7780)は微笑み頷いてみせてやる。
「兎に角、出来る限りルベウスの家まで急いで、その少女に返せばいいんだな」
 飛 天龍(eb0010)の言葉は、シェラの望みの再確認。
 今度は、しっかりと頷いた彼女を見て、彼らの目的は固まった。
 そうして、ルベウスの家の在る街の確認とそこまでの道のりを相談し始めたガイアスらに、シェラは小さく首を傾げた。
「えと‥‥違うよ? 街にあるんじゃないの。おっきな家なの」
 地図から顔を上げる彼らにシェラは言う。
 ルベウスの『家』は、多くのウィザードを輩出する、ウィザードの一族が形作る一門の屋敷なのだという。
 血族を中心に増えていった一族は『家族』で、皆『家』を中心に集まり暮らしているという。
 少女は、やはりルベウスの『家族』で、そして先日『白い石』を奪いにきた声もきっとそうなのではないのかと‥‥。
 そこまでシェラの話を纏められたのも、話した相手が彼女の言葉を理解しようと耳を傾ける天龍ら仲間達だったからだろう。
「だから『裏切り者』か。でも、彼女が死ぬ事によって利益を得る者がいて、その人を『裏切った』ルベウスさんは‥‥。俺、ルベウスさんは悪い人じゃないと思う」
 マリオーネ・カォ(ea4335)の言葉に喜色を浮かべ、こくこくとシェラは頷いた。
「在る意味、領地‥‥彼らの土地を所有し、そこに居るという事でしょうか」
 シェラが示した目指す先を見て、フローティア・クラウディオス(eb2221)は首を捻った。
「白い石が何かは全く分かりませんけれど‥‥」
「宝石とはまた違う気は、いたしますわね」
 咲舞も、石に触れ首を捻る。
「これに似た話の報告書を見た気がするんですが‥‥」
「この石、俺は話に出てきた彼女の『命』そのものなんじゃないのかなと思う」
 ガイアスの言葉にマリオーネも頷いて。けれど、天龍の言葉が全てを語る。
「例え困難でも遣り遂げねばな‥‥時間が惜しい。先を急ごう」
 そうですね、と彼らは頷き合う。
「道が限られているという事は、待ち伏せが考えられますね」
「ええ。ですが、私達がどの道を通り、どれくらいの速さで進んでいるかわからない以上、彼らは、きっと目的地での石の奪取を選ぶでしょう」
 再び道行きの相談を始めた彼らに、シェラはやはり小首を傾げた。
「‥‥どうかなぁ。多分、顔を知られたくないんだと思うよ? だから‥‥」
 『家』に着く前が、やっぱり怖いんじゃないのかな、とシェラは呟いた。


●見据えし‥‥
 シェラが案内する先‥‥、彼らは『家』を目指し急いだ。
 人の多く行き交う街道から、やがて目指す道は深い森の中へと進む。
 時折、天龍とマリオーネが、空からあるいは魔法で辺りを確認しながら‥‥。

「あのね、シェラの『みうちびいき』じゃなくって。ルベウスちゃんは本当に強かったの」
 特徴ある羽根を隠すため、袋の中に納まったシェラはそう語る。
 敵の強さが侮れない事は、冒険者らも知っている。
 けれど、シェラが強いというルベウスは姿を現さず。
 彼女に石を託したとなれば、彼より更に優れた妨害者がいるというのだろうか。
「そうであれば、尚更一人で走らないで下さいね」
 独善、道行を先に行きたがってうずうずするシェラも、そうガイアスに念を押されれば頷くしかなく。
 己の力量の拙さ位は、分っているのだろう。
 ルベウスから託された本物の白い石はマリオーネが手にしていた。
 万が一の時には、二手に分かれ、一方が妨害者を引きつける間に少女へ届けるためだ。
 それを敵が許してくれるかはわからないが。
 独歩のタイミングが、彼らの中で足並み揃っていなかった事に気付かなかったのは、急ぐ余り足元を見失っていたのだろうか。
「返さなきゃいけない女の子はね‥‥」
 自身は袋の中で、ガイアスが用意した偽物を手にシェラは話し出す。
 『届け先』は、長い黒髪に濃い茶色の瞳の少女だという。
「名前は、『フレイア』。ルベウスちゃんのお家には、大人はたくさんいたけど、子供はほとんど見なかったから‥‥会えればわかるとは思うの」
 もしかすると自分が知っている呼び名は愛称かもしれないけれど‥‥。
 
 そんな道行きの中、やがて木々の合間から、自然物とは異なる色合いが垣間見えた。
 空舞う天龍から入る報せ。
「先に見えた建物が、シェラのいう『家』ならばもう少しだな」
「この近くに街は無いから、建物が見えればそこだよ」
 先が見えれば急ぎたいと、より気の急く様子を見せるシェラに、フローティアはそっと日本刀の柄に手を這わせた。
 白の騎士として、白い命とシェラとの約束を守るために戦うと決めた彼女。
 目標が近づけば、襲撃の可能性も高くなる。
 油断なく、彼らは先を目指し歩み始めた。


●視界、死界
 咲舞の視界に入った森の緑とは異なる灰色。
 咄嗟に、皆に注意を促す矢先に降り注ぐ鋭い木の葉。
 庇う腕に、足に、頬にはしる痛みに顔を顰め。
 けれど、外さぬ視線の先にいたのは、灰色ローブを纏う相手が‥‥3人。
「‥‥分が悪いな」
 天龍の呟きに、マリオーネは、仲間を見つめ。
 フローティアが彼を促すように頷く。
「石を先に少女に返せば何かが変わるかもしれません。賭けですけど‥‥」
 今度頷いたのは、マリオーネの番。そして‥‥
 木の葉の先手を許したものの、追随を許さぬ勢いでフローティアが日本刀の切先閃かせ灰色ローブ達目掛け駆ける。
 詠唱を遮るように、フローティアを援護するガイアスの矢が灰色ローブ達の方へ刺さる。
 男達の一人が長剣を抜いた。
 ふわり羽ばたくマリオーネを阻害しようとした一人は、多少の怪我は覚悟の上で魔法を唱えさせない事を優先させた、刀を振るう咲舞に阻まれ魔法を唱えるどころではなく。
「あ、シェラも‥‥っ」
 マリオーネらを追いかけようとしたシェラは、けれどバランスを崩し袋に包まれたまま、馬の上から転げ落ち。
 落ちた衝撃で紐が緩み、袋の中から這い出る事に成功したものの、シェラに彼らを追いかける事は叶わなかった。
 顔を強かに打ちつけた痛みに、涙目になる。
 シェラと同様、マリオーネらを見送る形で彼らを見上げていた男が呟いた。
 男の持つ飴色に磨かれた杖に残された三筋の爪痕。
 天龍が援護する間にマリオーネはその場を離れ。天龍自身も、駆け抜ける勢いのままマリオーネと共に離れたのだ。
「地に縫い付けられた我らと違い、空を翔けることが出来るシフールとの差だな」
 それは、年を重ねた男の声だった。灰色ローブ達の一人が杖を掲げ詠唱を結ぼうとするが、咲舞の剣戟に押され叶わぬ事に舌打を零す。
「アレをどちらが持っていても面倒だ。お前達は奴らを始末しろ。あちらは私が取り戻す」
「‥‥行かせません!」
 老爺と思しき男の意図を察し、遮るように立ったフローティアの前には長剣を持つ男が真向かう。
 止める咲舞には真空の刃が落ちる。そして咲舞の視界を奪った次の間には、男は宙へ。
 ふわり空に浮かび、木々茂る枝葉に紛れるようにゆっくり去りゆく男を狙い、弓を構えるガイアスの前に、もう一人の男から炎の塊が放たれた。
 一瞬の判断。横に飛びのきざま、今までガイアスが立っていた場所で炎が爆ぜた。
 それは、近くにいた者達全てを巻き込む魔法の爆発。
 辺りの木々がなぎ倒され。生木の焼ける匂いが立ち込める。
 一瞬で開けた周辺の様子。
 小さな壷の封を切り、ポーションを飲み込み立ち上がったガイアスの目に映ったのは、痛みにうめきながらも萌えるローブを脱ぎ捨てた男の姿。
 炎の爆発は、それを放った男自身も例外なく巻き込んだのだ。
 咄嗟に視線巡らせた先、シェラは‥‥戦場に少し離れた位置に、馬と共にいたため炎に巻き込まれなかったようだ。
 怯え暴れる馬の傍ら、晒された男の顔を、瞳を見開きシェラは呆然と見つめていた。


●狭眼
 彼らは、その背にある羽根で空を翔けた。
 疾く疾く‥‥望みを叶えるために、約束を果たすために。
 けれど、先を識る者も、その先へ導く者も無く。

 其処は、彼らが思う以上に、広く大きな器だった。
 どれ程の人が住み、物が収められているのか‥‥大きく古びて、けれど頑強そうな――質実剛健、そんな言葉が浮かぶ建造物。
 そんな中から、目指す先を、知らぬ者を、識らない彼らに探す事は困難だった。

 やがて彼らを見上げる存在。
 小さく、次第に大きく聞こえる声。
 ヒトの動き、流れ。


●盲信
 最初の炎の洗礼から立ちあがって後、妨害者らは剣士を前に、ウィザードを後に基本的な立ち位置に切り替え、数で勝る冒険者らを相手取った。
 癒しの手が無いのは、敵も冒険者達も同じだった。
 ポーションで怪我を癒し、ソルフの実で魔力を補おうとも‥‥物資が尽きれば、敗北は必死。
 互いに決め手が無いまま長引く戦闘。
 焦りの色は、どちらとも無く。
 否、焦るのは敵であって然るべきだったのだ。白い石が少女の下に届けられれば、彼らが妨害をする所以は無くなるはずである。
 日本刀は、刃の打ち合いには長剣に比べれば向かない。
 刃が毀れるのを感じながらも、小太刀との2刀使いで上手く刀の消耗を抑えながら戦う咲舞に浮かぶ疑問。
「(おかしいですわね‥‥、どうして彼らはこんなに落ち着いていられるのかしら)」
 既にガイアスも、弓ではなくダガーでの近接戦闘に切り替えていた。
 長剣の男の力は侮れず、仲間の中で剣に優れた咲舞が相手取ることで、魔法使いはフローティアが抑える。
 力の均衡が偏れば、ガイアスがフォローに動く。
 けれど、男らも初手のオーラによる躓きを警戒してか、決してガイアスを自由にはさせない。
「(まさか‥‥)」
 力か、体格差ゆえか‥‥性別か。
 体力的に、仲間に比べ元より余裕の無かったフローティアの日本刀が、過ぎる不安に、思案に囚われた隙を逃がさず追い振るわれる魔炎を帯びた剣に弾かれる。
「っ!!」
 呼びかける間も惜しみ、己の距離へ男へ踏み込むガイアスだったが‥‥そこで、確かに崩れる均衡。
 フードの合間から除く男の口元が、笑んだように見えた‥‥一瞬。

 重い音を立て、長剣が地に落ちた。
 男の胸に生えていたのは、龍叱爪だった。
 深くささった爪を、男の背を蹴る勢いを利用し、くるり飛び跳ね抜きさる天龍。
「シェラちゃん、大丈夫?」
 馬の傍らで茫洋としていたシェラの側に膝ついたは、マリオーネ。
 戦場を1度は離れた彼らによる不意打ちで、状況は一転。冒険者らに有利に傾いたように見えた。

 残された男は一人‥‥。
 男は、咲舞の日本刀の間合いから大きく後ろに跳び退り、距離を詰める間も許さず淡く一瞬の光が男を包んだ。
 薄暗い煙が僅かな間に辺りに満ちる。
「いけない、炎が!」
 先の爆発を怖れ叫んだ咲舞の声が一瞬早かったか‥‥。
 溢れる灰色に、冒険者が退いた間に、先の物より大きな爆発が辺りを襲ったのだった。


●望めば開かれる、けれど
 再び合流果した冒険者ら。
 天龍の持っていたポーションで、負っていた怪我を癒したものの、癒えた身体よりなお彼らの心中は重かった。
 早々にこの場を離れなければ、再び別の妨害者が石を狙い追ってくるかもしれない。
 心のままに重い足。
 ルベウスの『家』――ウィザード達が、一族を中心に組織成す彼らに対し、どのように対処すべきか考え直さねばならないかもしれない。
 シェラの言葉から、彼らが想定していたものとは、規模も様相も異なっていたからだ。
 そして、石を手にした場で戦った『妨害者』からも知れた彼らの覚悟。
 それは、今回自身すら厭わない魔法の用い方をする者の存在からも知れる。
 彼らを其処まで、狂信たらしめる目的は‥‥白い不思議な存在だけなのか。