ノワールの囁き7〜レガッタ!!
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア3
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:15人
サポート参加人数:3人
冒険期間:04月13日〜04月18日
リプレイ公開日:2006年04月19日
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●オープニング
波音が響いていた。
冒険者達はそれぞれの想いを胸に、夕闇が迫るのを待たねばならない。
「おい、待てよ!」
「何かな?」
シュラウド老は、家人に肩を貸され、振り返る。
長く伸ばした白髪が、恋人達の岬に吹く風に流され、風をはらむ衣服と共にざわざわと騒ぐ。
「キャプスタンの野郎、あいつは昔あのマリンに似た娘と恋愛でもしたか?」
「何じゃ、わざわざ呼び止めるから何事かと思ったぞ。そんな事か?」
苦笑するシュラウド老。
「先生、そんな事は本人に!」
そう言い放つと、よたよたと歩き出す。
既に人影も疎ら。
沖の帆船も、今は姿が無い。
「おい、私に聞きたい事があるみたいだな」
唐突に声をかけられた。
岩陰から現れたのは、このゴロイの岬を所領とするキャプスタン・ゴロイ・キールソン男爵の細面。
目線も厳しく、見返して来る。
「お前達は何か勘違いしている様だな」
「何の事だよ」
キャプスタンは、暫くの間、話さなかった。
「船はあるのか?」
「何とかならあ」
「全く、冒険者といものは行き当たりばったりだな」
吐き捨てるキャプスタンに、なにお〜と言い返そうと近付くと、意外な事を告げて来た。
「うちの船を使え」
「はぁ!?」
「耳が悪いとは知らなかった。すまなかったな、先生。もう一度言う。うちの船を使わせてやる」
ぴっと指を一本立てると、それで胸を一つ突いて来た。
「勘違いするな。私の所領の運命を占う大事な試合だ。これに関してはお嬢様もおっしゃってた通り、伯爵家はジャッジメント、中立だ。他に頼る訳にはいくまい。お友達のキノーク・ニヤーも街の代表としてミミナー商会を出すだろう。そういう事だ」
「けっ! 船底に穴でも開けてよこすんじゃねぇのか!?」
「そいつは思いつかなかった。早速そうするか」
「馬鹿野郎〜」
ニヤリとするキャプスタンの胸を拳で小突く。
「生憎と、うちは金持ちじゃ無いんでな、やるなら他所でやるさ。せいぜい気を付けるんだな」
「ああ、無傷で返してやるさ」
「ふ‥‥その言葉、忘れるなよ。『レガッタ』をやるからには上位を目指してくれよ。出来れば良い漁場が欲しいからな」
「おい‥‥」
いいのかよ、そんな事、俺たちに任せて、と言い出しそうになって言葉を噤んだ。
ひょいひょいと岩場を跳んで去るキャプスタン。
「あの野郎、ただで俺達を使う気だな」
口元を歪ませる様に、笑みを漏らした。
●ノワール帰還時
「まさに9回裏満塁ホームラン、同点延長戦と言った具合で御座いますね」
皮肉なのか、染之助闇太郎は静かに帰還した冒険者達を見回した。
「ちぇっ! 見当違いだったぜ! でも、おいら達は負けない!」
大理石のパイプを振り回し、意気込む冒険者。
「その意気です。戦場では、諦めた者から死ぬ」
「運が悪い者もね〜☆」
横からひょいと顔を出すリリム。最近ではこの真っ赤なバニーガール姿も珍しいものでは無くなりつつあった。
「特別に、あたしも一人選んじゃうんだからね」
にっこり。リリムはその愛らしい口元をきゅっとすぼめて、一人一人の顔をじっと見つめて回る。
「誰にしようかなぁ〜♪」
「おい、そいつはどういう事だよ!?」
「もう一人、二人分って事なのか?」
「だってしょうがないじゃない? 貴方達がいけないんだも〜ん☆」
クスクス笑うリリム。闇太郎は静かにその頭を撫でる。
「ですが、考え様によっては、これはチャンスでもあるのですよ。それに精神的ダメージは、必勝の状況をひっくり返された側の方が大きい」
「ほんとだよね〜☆」
そう言って、リリムは愉快そうに天井を仰ぎ見た。
「頭抱えて寝込んじゃった♪ 後は任せるって☆ だから、あと一つなの〜♪」
「そりゃ、お前の取り分って事かよ」
じっと見返すリリムの青い瞳。ふっと大人びた表情で微笑んだ。
●ショア街代表
「急な話になりますが、お任せ致しますよ、ミミナー商会さん」
その会合では、街の実力者や年寄り達が、町長のキノーク・ニヤーを中心に集まっていた。
「わかりました。若輩者ですが、このナガオ・カーンにお任せ下さい」
うやうやしく平伏するナガオ。
すると別の商人も、うんうんと頷いた。
「良い機会だ。実に良い機会だ」
「あんたも、この2年ですっかりショアの水になじんだ様だね。どうだい、そろそろ身を固めても良いんじゃないかい?」
「いつまでも一人身でいちゃいけないよ」
「しっかりしたご内儀を持たないと。良かったら良い見合い相手を紹介して差し上げましょう。知り合いの商家で、丁度よい娘さんがね」
「もしかして、あそこの‥‥」
「いえいえ、それはですな‥‥」
年寄りの長話はいつまでも続く。それを笑顔で乗り切るナガオ・カーンの姿がそこにはあった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――■レガッタ■
ボートレースの事である。
4月になると、ショアの湾に面する全領地から一隻ずつ参加し、湾を一週する大レースが開催される。
この勝者から、領地毎に網を張る場所を決める権利が与えられ、豊かな漁場を手にした領地は、領民領主ともども豊かな一年を過ごせるのである。
使われる船は、漕ぎ手が10人、左右5本ずつのオールを漕ぐ形になる。そして、漕ぎ手の音頭を取る鐘や太鼓を叩く者、合計11名が乗り込む。
スタート地点はショアの港であり、湾内を時計回りに回る。
各地点には定められた通過目標があり、それを順繰りに周る。途中、湾の入り口を横切り、ゴロイの岬の前を掠める様にして湾内を一周するのだ。
一斉にスタートし、一番にゴールした船が優勝である。
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●リプレイ本文
●ゲームの始まり
一人、また一人と闇色の扉をくぐり、闇の符号に招かれた冒険者達が集う。それを出迎えるのは、黒一色を身に纏う自称日系アメリカ人、染之助闇太郎。独特の跳ねる様な髪形で静かに出迎える。
「いらっしゃいませ。ようこそノワールへ。もう皆様、お集まりの様で御座いますよ」
恭しく一礼すると、店内に招き入れた。
「負けたら魂も体もおめーにやらぁ、リリム」
ルーレットの卓へ近付くや開口一番、アリル・カーチルト(eb4245)は宣言した。すると、目の前の青い瞳をしたバニーガールは、ぷうと頬を膨らませ、ぷいっと横を向く。
「じゃあ、いらなぁ〜い」
「な!?」
一瞬、言葉を失うアリル。その肩をポンと叩く者。
「いけませんね。ここでは、ルールに従って戴きませんと」
「どういう事だ?」
目の前に闇太郎の闇色の瞳が、じっと見詰めて来る。
「アリル様、選べるのは勝者のみ。その権利を放棄した時のみ、ジャッジである私が選ぶので御座います。貴方にそれを決める権利は御座いません」
「ちっ、判ったよ‥‥」
バツの悪そうに離れるアリル。そして集う仲間の元へと戻る。
「‥‥お判りになっていませんね‥‥良いが悪いに、悪いが良いに‥‥奴等の望む物は、貴方の最も望まぬ物‥‥」
そっと口の端にこぼす闇太郎の呟き。それは誰の耳に届くのか? 否‥‥それは‥‥
「‥‥相手のほうが一枚上手だったとはいえ‥‥何かむかつくなぁ‥‥」
眉をひそめ、腕を組むイオン・アギト(ea7393)は、そのほっそりとした小さな体でカタカタと足を揺らし、その場の空気を代表する様に、そのくすぶる想いを露にする。
そんなイオンの袖を、更に一回りおちびさんのチカ・ニシムラ(ea1128)がそっと引き、首を左右に振る。
「あ‥‥ごめんね‥‥」
ペロリと舌を出し謝るイオンに、チカはぷるるんと横に首を振り、ぎゅっとその手に力を込めた。
「うー、絶対負けない! 負けたと思ったら負けだよね。最後まであがいて、大切な想いは守るよ。お兄ちゃん達、お姉ちゃん達、頑張ろうね♪」
そのまま一同を見渡す円らな青い瞳。その双眸より溢れ出る想いの丈に、冷え冷えとした胸の内を熱くする者も出る。口を真一文字に結び、首から下げた数珠をただ冷たく、重く感じる者もある。
「それでは、皆様。良いゲームを‥‥」
闇太郎は戸口の横で見送る。
二人は残った。そして十六名のプレイヤーは、茜色の射す海辺へ。
●ゴロイの岬
そこはこのゲームのスタート地点に相応しい地と言えたであろう。荒々しく波打つ飛沫に、海風がびょうびょうと吹き付ける。恋人達の岬には、闇色の扉が開き、その向こうで闇太郎が一礼して閉じる。すると、まるで墨汁の染みが掻き消える様に、その黒い扉はまるで最初からそこに無かったかの如く姿を消す。一面、自由自在に掘り込まれた様々な文様が楽しげに踊っていた。
ウィルから徒歩でショアまでは10日。そこから船で半日の距離に、僅か一瞬で辿り着いてしまう。
「う‥‥」
唐突に、チカは息苦しさに胸を押さえ跪く。
「どうしたの?」
「顔色が悪いな。どれ‥‥」
アリルが手を伸ばすと、サッとチカは身をよじって立ち上がり
「大丈夫だよ! ほら、もう何とも無い!」
「ほんとかよ? 唇が真っ青だぜ」
「この風の性だな。移動しよう」
地球からの天界人、伊藤登志樹(eb4077)が横から、チカをひょいと抱え上げ、すたすたと歩き出す。
「大丈夫、大丈夫だから‥‥」
ちょっと頬を赤らめるチカ。当の登志樹はお構いなし、当然の如きお姫様だっこ。皆で慌ててその後を追いかける。
すると、一行の上を巨大な影が覆う。
「見ろ!! な、何だあれは!!?」
悲鳴と共にゴロイの灯台で兵士が騒ぎ出す。
「よ〜おっ!!! もうこっちを見つけやがった! 可愛い奴! おめぇら、紹介するぜ! こいつは‥‥」
得意満面で胸を張るアリルの声に、真っ直ぐ飛来する巨大な影は、そのくちばしにぐったりとした鞍や鐙の半分付いた栗毛の馬をぶら下げ、一同の前にズシンと着地。血生臭さがぶわっと広がって行く。
「こいつは‥‥フェイト‥‥駄目だろうが! 勝手に喰っちゃ!」
ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!
人の耳では聞き取る事も適わぬ高周波の嘶きが、周囲をビリビリと振るわせる。ぶわっさぶわっさと翼を羽ばたかせ、暴風を巻き起こし首を左右にいやいやするフェイト。その翼たるや、その辺の民家二件分はあり、正にモンスターの面目躍如。巨大な鉤爪と嘴は、その引き裂かれた馬体から威力の程は推して知るべし。
大理石のパイプを取り落としかけ、ジム・ヒギンズ(ea9449)は改めてアリルの顔とフェイトの顔を見比べた。
「なるほど、これでミミナー商会の船を‥‥おいら思いもしなかったよ!」
「その前に‥‥レース‥‥めちゃくちゃに‥‥」
「これは良い歌の題材になります♪」
「いや、そうじゃねぇって! 俺達が不正を働いてどうする!!?」
「その手があったか‥‥むむむ‥‥しかしそれは騎士道に悖る行為‥‥」
両腕を組み、うなるグレイ・ドレイク(eb0884)。どこまでが本気か、一同はアリルがこのモンスターを手なずけている様を眺め、口々に感想を漏らす。
●大怪獣フェイト
イオンの提案に、フェイトは誰を食べていいのかと、ぐるりと美味そうなのはと値踏みする。その意思は感覚的に判る。
テレパシー。
たった今、馬一頭を平らげたばかりの悪食ぶりに、更に食欲を覚えている様子で、体の大きな者を二三人くれと、その身振りからも判る。
イオンはふうとため息をつき、アリルを視た。
「やっぱりキミに頼むのが、一番手っ取り早いみたい」
「仕方ねぇなぁ〜! 送るだけだぜ!」
「何を言っておる! こんなデカ物、差し向けおって! 誰が一目見ても大騒ぎであろう!」
「お前に言われたかね〜や」
アリルは胸を張るグレナム・ファルゲン(eb4322)を一瞥し、その足元にいる犬と、不思議な少し大きくなった妙な塊を見やる。
長居は無用。
この数分後、仲間にキールソン家への伝言を頼んだアリル、イオン、サラ・ミスト(ea2504)、そしてその連れの二人を背に、フェイトは大空を飛翔していた。獣脂にべとつく巨大な鳥の羽の下は、その匂いやそこに住まう虫達を我慢すれば意外と暖かで、高速の移動にも冷え切る事は無い。
だが、アリルを除く4人は、ショアに着く頃にはすっかり気持ち悪くなっていたのだった。
●ショアの港町
日が暮れると、街の門は閉ざされ、不貞の輩を締め出すのはウィルとそう大して変わらない。だが、治安はウィル程ひどくは無く、人心は一時に比べれば落ち着いている。むしろ、あの鯨の騒動が、雨降って地固まるの如く、ショアの湾に住まう人々の心を1つに繋いだと言っても過言では無い。
大怪獣フェイトの飛来は、城壁や軍船からのバリスタ等の一斉射撃の出迎えを受ける。
まだ暗くなる前の事。街は鐘が鳴り響き、何事かといぶかしむ人々は遥か東の空を見やり、そのどす黒い紫色に変わった空に、黒い巨大な影がはばたくのを見、更にはその耳をつんざく怪鳥の嘶きに恐怖。城門には救いを求める者が殺到し、城から出撃する騎士達は、その余りの暴風と威圧感に、各自の馬をなだめるのに必至と言った具合。
アリルは、街の城壁にフェイトを着地させ、ふらふらになった4人を降ろすと、射掛けられる弓矢から逃げろと命じた。
ショアの港町は、大怪獣フェイトの手荒な洗礼を受けたのだ。
●ミミナー商会
日が落ちると就寝するのが、この世界では常識。だが、手荒に叩き起こされた人々は、まだ興奮冷め遣らぬ様で、平民には高価な蝋燭や、魚脂を灯してそこかしこで固まり、話し込んでいる。そんな中を、どうにかごまかして街へ入った4人は、獣臭さをぷんぷん臭わせながら、ミミナー商会の店先へと来ていた。
案の定、店先は門が開かれ、その騒ぎっぷりを物語っている。寝巻き姿で何人もが右往左往。
「いい気味だわ」
「同情するいわれは無いな」
イオンはそう嘯き、サラと顔を合わせて頷き、店先へ足を踏み入れる。
「頼もう〜!」
「うっ!? ど、どちら様で?」
あからさまに店の者は鼻をつまんで嫌な顔をする。興奮が、普段の商売人としての礼節を忘れさせている様である。そんな事は構わず、サラは言葉を続けた。
「ナガオ殿は居るか? 二三訪ねたい事がある。ナガオ殿が保護しているマリンの事でな」
「マリンの事で? あの娘が何か?」
「お前の気にする事では無い。分をわきまえろ!」
サラの一喝に、男は縮み上がり
「し、しばらくお待ちを。只今、立て込んでおります故。少々! 少々、お待ち下さい!」
そう言って、足早に奥へと姿を消した。
黄色い刺繍が可愛らしい水色の寝巻きに、ナイトキャップを被ったナガオ・カーンが姿を現したのは偶然。どうやら店内を見回りしていたらしく、手には燭台を持ち、左右にはスーとカーの二人の巨漢を従えている。
ペタペタとスリッパを鳴らし、ナガオは店先まで顔を出した。
「お〜やおや? これはこれは、確か‥‥」
「サラ、サラ・ミストだ。私達は、お前に聞きたい事があって来た」
鼻をつまみながら、ナガオは一行の顔ぶれを見渡し、にっこり。
「明日にして戴けませんか? 只今、立て込んでおりまして」
「すぐに済む。貴殿が保護したという話は聞いている。故に協力を願いたいのだ。人攫いを放置するわけにもいかんだろう?」
う〜むと漏らし、ナガオは目を細めた。
「お気持ちは判りますが、店はこんなですし、皆様も相当ひどい有様ですよ。お顔を洗って出直して来ては如何ですか?」
「そんな暇は無いのだ。私も忙しい身でな」
「強引な方ですねぇ〜‥‥勝負の前に、こうやってお会いするのはルール違反ではありませんか? いらぬ誤解も生じるというものですよ。どちらが勝つにせよ‥‥」
不敵な笑み。
「マリンを保護したという場所や状況を詳しく聞かせて欲しいだけだ」
「詳しい状況など何も‥‥夜中に売りたいものがあると妙な連中がやって来て、港に乗り付けた小さなボートに転がされていた、縛られた娘を買って助けてやっただけだよ。何ならマリンに聞いて見るが良いさ。おい、誰かマリンを呼んで来ておくれよ」
「あの‥‥私なら‥‥」
どうやら、他の店の者と一緒に、奥で店先の悶着を眺めていたらしい。マリンは、自分の名前を呼ばれると、質素な麻の寝間着姿でとことこと廊下を進み出て
「凄い臭い、肉食獣ですね。サラさんにイオンさん、こんばんは☆ あら? そちらの方は?」
「挨拶はいいわ」
それを遮り、イオンはナガオを睨みつける。
「もっと詳しくお話を伺いたいものだね。そうそう、忘れたっていうんなら銀二がリシーブメモリーで記憶を見てもいいし、私がメロディーのスクロールを使って思い出させてあげてもいいよ? 後ろめたい事が無いなら、何ら問題ないでしょ?」
するとナガオは満面の笑顔。右の人差し指を1本ぴっと立て、ミミナー商会の天井を指し示す。
「忘れたも何も、あの時の連中も妖しい連中のご多分に漏れず、黒いフードを目深に被り、顔は見せなかったし、ボートも流民達が普段使っているような小船で、その後何日も放置されていたらしいねぇ。声はまぁ今夜のサラ様やお嬢チャンには負けるが、ドスの聞いたくぐもった声だったから聞き覚えは無い‥‥スーさん、カーさん、お前達はどうだい?」
「覚エ無いネ‥‥後腐れナイする‥‥あの手ノ連中‥‥」
「そうアル‥‥悪い奴、どこニでもいるヨ‥‥」
ナガオは軽く頷き、マリンを見た。
「マリンはどうだい?」
「えっと‥‥二人とも初めて見る人達で、旦那様に助けて戴くまで、ほとんど気絶してたから後の事は判りません。でも、あいつらはアレクセイさんや黒妖さんを探していました。この間、岬でお見かけした時は、お二人ともご無事でしたよね? あれから何もありませんよね? まさか、お二人に何かあったんですか!? あったんですね!!?」
大きく目を見開き、悲痛に顔を歪めるマリン。ここからなだめるのに一苦労。
それから、マリン本人のたっての希望で、リシーブメモリーでその記憶を貰うと、それを手掛かりにすると店を出る4人。街中は騒然としており、街のそこかしこでかがり火が焚かれ、兵士が配備されている。その夜、ショアの港町は、寝静まる事が無かったようだ。
●暗雲立ち込めるゴロイ 2日目
翌朝になると、ショアの湾全体は騒然とした様相を呈していた。
空をドラゴンとは違う、巨大な怪物が飛んでいたと、目撃情報がそこかしこで沸き起こり、各地で警戒態勢がしかれ、騎士という騎士、兵士という兵士には招集が掛かる。
ご多分に漏れず、キールソン男爵家の領地でも、昨晩より厳戒態勢をとり、ゴロイ村はもちろん、外洋側の直轄地、表ゴロイ、ハトック・アフト卿、フットック・アフト卿親子の所領であるステーム、湾内ではキールソン家にとって本家筋に当たるアリダット・キール卿、スクライブ・キール卿兄弟の治めるキール、更にショア寄りのジア・パーシル卿、タイ・パーシル卿親子の治めるチラーと、総動員で伝令の馬が激しく行き交っていた。
無論、他の領主とも綿密な情報交換が為される。
船の出港は制限され、ゴロイの入り江でも早朝から兵士の手伝いに駆り出された漁師達も、物見役として浜辺や木々の上、船のマスト等の高みによじ登り、周囲の警戒を行う。少しでも早く迎え撃つ為ではなく、領民を少しでも早く逃げ隠れさせるためである。当然、女子供は表に出る事無く、屋内でじっと息をひそめている。
こうしてキャプスタン男爵以下、他の騎士達はその義務を果たす為に、甲冑に身をつつみ、レガッタの訓練どころではない。
そんな早朝に、弓を手に桟橋に陣取るオーロ爺を見かけた難波幸助(eb4565)は、海水で重くなった板をギイギイと踏みながら近付いてみた。
海風に目を細め、じっとショアの湾を眺めるオーロ爺。ぼさぼさの白髪が、風に揺れる。
幸助はその真横に立ち
「やあ、オーロ爺さん。お元気ですか?」
横を向いたまま、オーロ爺は幸助を無視する。
「少しの間にずいぶんと耳が遠くなったんですね」
「ふん。今ごろ何をしにきおった?」
ギロリと横目で睨みつけるオーロ爺。
「お前さんも天界人。いざとなったら逃げ出すんじゃろうが!?」
「そ、それは言い過ぎです! 彼も好き好んで‥‥このウィル全体で、困っている人は他にもいっぱいいるんです。きっと彼も‥‥きっと‥‥」
それ以上の弁解の言葉は出なかった。どう言い繕っても、この場に居ない者は居ない。そして、この騒ぎの原因も‥‥
上空の風はまだ冷たい。それを突っ切る様に、二人は空を飛んだ。下界では大騒ぎとなっている空飛ぶ怪物は、その飼い主と共にその姿をどこかに隠している。
「じゃあ、行くよ〜! 手を離すよ〜!」
フライングブルームからのびるロープを離すと、チカはふわふわ自力で空を飛ぶ。ふんわりと、アレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)はその横へ付けた。
「お空の散歩〜♪ とと、そうじゃなかったにゃ。んっと‥‥とりあえず一回空からコース回ってみるかにゃ〜♪」
「ねぇ、やっぱり箒に掴まった方が速いよ」
「うにゅ〜、いいの〜♪ こっちの方が海が、よく見えるし〜♪」
こうして少し高みから海を見下ろすと、湾の中心が深く青みが増している様が良く判り、そして潮の流れもはっきりと、その色が違って見える。
「あれが、漁師達の言っていた、潮の切れ目か‥‥」
「そうみたいだにゃ〜♪」
湾に北側から流れ込む冷たい水。その様がはっきりと見える。それはコースを真っ向から逆らう形の流れ。ここをいかにうまく乗り切るかで勝負が決まるとも言う。
上空から見て回って、海底に妖しい物がある様には思えなかった。
「それは何ですか?」
「ん? ああ、これ? これはプロパンガス‥‥」
そう言って、膝まである金属の卵型に近い球体を、鬼島紀子はポンと叩いて見せた。
コ〜ンと乾いた金属音。粗末な衣服。その背には、二人の赤ん坊を背負う母親。それが今の紀子の印象。赤い蛸の絵が書かれたたこ焼き屋の赤と白の垂れ幕を引っ張り出し、それを表の荷台に積み込む。既にそこには何に使うのだろう? 幾本もの金属の棒や、丸く綺麗に凹んだくぼみが幾十もある金型が。
トリア・サテッレウス(ea1716)はその布地に触れてみる。
「どうするんです?」
「うん。もうすぐお祭だからね。屋台を街へ持って行くんだ」
う〜ん、これは困ったぞと、同行している幸助を見やるが、どうしようというサインがその表情から送られて来る。
仕方ないなぁ〜と話し掛けるトリア。
「もうご存知かもしれませんが、僕らの仲間が例のレースに参加する事になりましてね」
「あ、聞いてる聞いてる〜♪ というか、あの場にあたしも居たじゃない。やだなぁ〜楽士さんは。まぁ、頑張ってネ」
やたら細長い箱を両手で持ち上げ、紀子はにっこりとウィンク☆
「そこで、貴女に音頭取りをお願いしたいのです」
「あははは、無理無理!」
コロコロと笑う紀子に、トリアはやれやれと頭を掻く。母親が笑うとそれが嬉しいのか、背中の二人の赤ん坊もキャッキャと声をあげた。
「あ、ごめんごめん。起こしちゃった〜?」
よしよ〜しと語りかけながら背中をゆする紀子。それに合わせて、大きなバストもゆ〜らゆら。
トリアは苦笑しながら、言葉を続ける。
「詳しくはお話出来ずに申し訳ありませんが‥‥岬に宿りし人の想いを守る為に。いかがでしょう?」
「でもさ〜、この間の商人のお兄さんに、粉の仕入れとか、場所の件とかお願いしちゃってるし、ほら」
そう言って箱の中身を見せると、木屑の中に2m程の長芋が数本。
「自然薯だよ。凄いだろ? この辺でちょっと山に入ると採れるんだぜ! こいつを擦って混ぜると美味いぞ〜。まぁ、アースダイブですっと引っこ抜くから楽っちゃ楽だよな、あっはっはっはっは!」
勝ち誇って高笑い。紀子はそれを荷台に降ろす。
「あとはマヨネーズだ! 蛸は何とかなるしな!」
パンと手を合わせ、紀子はニヤリと不敵な笑みを浮かべ
「やってやる! アトランティスでたこ焼き屋を、絶対やってやる!」
それからきょとんとした表情で、トリアと幸助を見た。
「何だ何だ? 大の男が二人も揃って変な顔しやがって! あんた達が頑張れば良い話だろ? 音頭取りなんて、楽士さんのお手の物じゃないか? 山育ちのあたしの出る幕じゃないね」
腰を手に当て、少し怒った表情の紀子。軽く二人を一喝した。
●初訓練
時は昼過ぎ。
特別に船を出す許可を得た冒険者達は、オーロ爺を船頭に、トリア、グレイ、ジム、登志樹、吾妻虎徹(eb4086)、アリル、グレナム、幸助に、2人の漁師を漕ぎ手に加え、更に夜光蝶黒妖(ea0163)とリール・アルシャス(eb4402)が舳先の方に乗り込んでいる。
練習とコースの下見もかねているのだ。湾の中は、比較的波も穏やかで、練習にはもってこい。不機嫌そうなオーロ爺は、一度空をぐるりと見回し、腹のそこから声を張り上げた。
「いいか〜! 先ずは一人一人の実力を見るぞ〜! ワシの叩く太鼓に合わせ、漕ぐんじゃ〜!」
「「「「はい!!」」」」
ドン!
一拍すると、ぎこちなくバラバラにオールが動く。
ドン!
更に一拍、ばしゃばしゃガツガツと音を発ててオールが動く。
「ええ〜い! 止め止め止め〜!!」
ドンドンドンと顔を真っ赤にしたオーロ爺は怒鳴り散らす。
「あんたら、本気で勝つ気かね!?」
ぶるぶるバチを持つ手を震わせ、一同を睨み据えたオーロ爺は、次に深いため息を1つ。
数刻後、船はぷかぷかと湾の中を漂っていた。皆、身体を横にして安め、オーロ爺は何事か思案にふけている。
「何を考えているんです?」
幸助が問い掛けると、オーロ爺は不機嫌そうにじろりと見、への字に曲げた口を開き
「湾を右回りに行くから、力のある漕ぎ手を左に配置する必要があるんじゃ。一番はどうみてもグレイ殿だな」
「お? 俺か?」
「ああ、あんじゃ。この中でもオールの扱いはマシな方じゃしな。左のトップをお任せしたい」
「心得た!」
グレイは力強く頷き、その逞しい胸を叩いた。
「じゃあ、右のトップは?」
「お前がやるんじゃ、幸助殿」
「やったー!」
「残念な事に、お前が一番うまい」
がくりとくる幸助。
「何ですか、それ〜!?」
「褒めておるんじゃ。天界人にしてはオール捌きが上手いとな」
仏頂面でオーロ爺はじろりと幸助を睨む。赤褐色の顔がますます赤く見えた。まるで赤鬼だ。
「大体、判ったのじゃ。左の2番はグレナム殿」
「うむ。お任せ戴こう。ディアーナ様の為、この魂を賭けるのである」
ピンと背筋を伸ばし、グレナムは胸を張って一同を見渡す。その言葉、額面通り。
「次に右の2番をジム殿」
「え!? おいら!?」
「ああ、椅子を用意せんとな」
「判ってるじゃないか、爺さん。もう、俺、無理な姿勢で疲れたよ」
そう言って、自分の目の高さより上で漕ぐ様を見せるジムは、にっかりと笑う。皆、横にした身体を起こし、オーロ爺の話を聞いていた。
「こうなると左の3番は登志樹殿」
「俺か〜。優勝したら祝勝会開こうぜ!」
ニヤリと笑い、グッと腕を挙げるや、ドッと笑いが船上に沸き上がる。
「右の3番手は虎徹殿に」
「いいだろう‥‥」
虎徹は静かに両手を軽く挙げて見せた。
「左の4番手にはトリア殿」
「これはこれは。予定では補欠でしたのに〜。この栄誉〜必ずや勝利を我等に♪」
にこやかにトリアは口ずさんだ。
「そして右の4番手をアリル先生に」
「だからよぉ〜、その先生は抜いてくれって」
「年よりは面倒臭がりなんじゃ! ええか! 先ず、コースの説明をしておくぞ! この湾には、湾の入り口、北の方から潮が流れ込んで来る! 丁度、スタートしてから進む進路に真っ向からじゃ!」
オーロ爺の潮に関する話が始まった。黒妖とリールは、その話を確認する様に、海に目をやる。
「じゃが! 潮の流れは2つある!」
「2つ?」
思わずリールは復唱。
「そうじゃ、リール殿。表の流れと、冷たい流れが下からこう入って来るのじゃ! これが、海の底に当たり、下から上にめくれあがる様に湧き上がって来るんじゃ! それが、上の流れと湾の岸との間に一定の流れの緩いゾーンを作り出す! ワシ等はそこを行くんじゃ!」
「それでは‥‥大回り‥‥」
囁く様な黒妖に大きく頷き、オーロ爺は指で指し示す。
「あれを見るんじゃ! あっちで漕いでいるのが、去年優勝したグリガン男爵様の船じゃ。今年も優勝を狙っておられる事じゃろう」
その指し示す先には、見事なオール捌きで海上をすいすい進む一隻のボート。水面がキラキラと陽光を反射して、ほとんどのものには良く判らなかった。
「浅瀬は、暗礁も多いが、グリガン男爵様はその辺を熟知されている。レガッタでは20隻がいっぺんに漕ぎ出す大レース、潮目を読みながら一気に大外で抜くのがグリガン男爵様の得意とする所じゃ」
「それは‥‥危険‥‥」
「でも、マリンさんが向こうにいるという事は‥‥」
二人は目線を交わし、少しだけ唇を噛み締めた。
●ショアの街にて 3日目
街は物々しい空気。誰もが不安そうに空を眺めては、ため息1つ。そんな中を、箒を持ったチカとフードを目深に被るアレクセイは、時折地元の人や、明後日のレースに出場する為にやって来た船に声をかけ、前回の話を聞いてみたりと動き回っていた。
昨年優勝者はグリガン男爵で、その他に名前の上がった領地はどこも鯨に網を破られた所と共通。
「当日って言ったら、いっぱい船が出てなぁ〜。その中に、伯爵様の旗を掲げた船が何隻かあって、その陸側を漕いでいかなきゃならんのよ」
船付き場の荷揚げ人足達は、気分良く色々と話をしてくれる。
「今年のショアの街の代表は、大丈夫かね?」
「ああ、ミミナー商会だろう? いつもだったら、街の代表って事で、良さそうな奴を集めてチームを組むのに、今回はそういうのは無いんだってな」
「寄せ集めは駄目なんだと」
「へぇ〜、そうなんだ♪」
「では、今回はミミナー商会さんだけでチームを?」
チカとアレクセイが相槌を打つと、男達は指差して教える。
「ほら! あれがショアの代表さ!」
その指差す先には、案の定の光景が。
「は〜い、頑張って下さ〜い♪」
「「「おう!!」」」
楽しそうにドンドンと太鼓を叩くのは、その金髪を結い上げたマリンの姿。その手前には、隆々とした筋肉を波打たせる、スーとカーの巨漢がオールを漕いでいた。他の漕ぎ手も、そこそこ逞しい男達。
「おかしいな‥‥」
「みゅぅ〜、何か黒妖みたいな話方だね♪」
「ふふ‥‥こんな感じかな‥‥それにしても、彼等の肉体は良いですね」
その一言に、チカはポッと頬を赤らめ、アレクセイをまじまじ。気付き、アレクセイはクスリと微笑んでみせ。
「誤解しないで。あれはそうとうやる体つきって事です。しなやかで‥‥柔軟に‥‥獲物を狩る為の‥‥」
そう言って、アレクセイは目を細めた。
●ショア城
謁見の間には伯爵の姿しか無い。だが、話し声だけが静かに響いていた。
「ほう、では例の怪物騒動は?」
「我々の‥‥ペットが‥‥もう‥‥大丈夫です‥‥」
すると、伯爵は意外な言葉を告げる。
「ふむ、だが暫くは現状のままにしておこう。考えがある」
「お心のままに‥‥」
「レースは私も娘も楽しみにしている。精霊の加護が総てを決するだろう。冒険者の皆に、ベストを尽くす様に伝えて欲しい」
「判りました‥‥」
「報告、ご苦労‥‥」
その一言を告げ終わるよりも速く、その気配は立ち去った。代わりにふわっと夜風が入り込む。
「お父様?」
「ああ、ここに居る」
不思議そうにディアーナは部屋に入ると、あたりを見渡した。薄い夜着を肩にかけ、少し寒そうにし、小首を傾げ
「どなたかいらしたのではなくて? お話をされているのかと‥‥」
「いや、私一人だよ、ディアーナ」
伯爵はそう言って微笑む。
黒い蝶が、星明りに舞った。
●レガッタ!! レガッタ!!
ショアの湾は人の叫びが呼応して、ワンワンと響いていた。
大怪獣騒ぎもあり、初めから湾全体が妙な昂揚感に包まれて、その上のレガッタである。ただその恩恵か、この数日不心得者はなりを潜め、そっと嵐が過ぎ去るのを待っていた。警備が厳重過ぎるのだ。
色鮮やかに飾られた船舶が行き交い、今や遅しとその出発を待ち望む。ずらっと並んだ20隻のボート群。全員が息を飲んで、その出発の合図を待つ。
街から離れた高台に黒妖とアレクセイの姿があった。
「他の漕ぎ手が‥‥」
「ええ、おそらくは‥‥」
二人はそっと掌を重ね、その様を眺める。
「アリル殿も、気にしていましたよ」
リールは言葉すくなにキャプスタンに語りかける。
「‥‥言葉で言わなくては伝わらない事もありますよ」
「昔、婚約者がおりました。金髪の、青い目をした‥‥」
「まぁ‥‥」
「しかし、流行り病で‥‥正直、アレに重ねるところはあった。だがそれだけです。私はキールソン家の頭領です。次代を考えるに血は選ばねばなりません。それにマリンには噂の天界人マイケルが居るでしょう」
「あら? お二人で内緒話? お楽しみです事」
唐突にディアーナがこの会話に割り込む。白いドレス姿。口元を隠し、ププッと微笑んだ。
「たこ焼きはいらんか〜! 天界の食べ物がたったの1Gだよ〜!」
どこからか聞いた声が流れて来る。
「ディアーナ様‥‥」
「さて、どうでるか‥‥」
「今回は儲け損なってもらうぞ!!」
人々の緊張が極限に高まった、その時、ショア伯の手がスッと上がり、レースは最高の歓声を浴びスタートした。
●闇太郎
「危ない所で御座いましたね。精霊の祝福は貴方がたの元に‥‥お約束通り、二つの魂を解放致します。これで残るは十個」
闇太郎がそう宣言すると、天井の何も無い空間より、2枚の羊皮紙がふわふわと舞い降りる。他チームの練習不足のハンデと、潮に乗れた幸運が功を奏したのだ。
ジムはパッと駆け寄ると1枚を引っつかみ、パイプをぷかぷかとふかしてそれを近付ける。するとボッと火が付き、あっという間に燃え尽きてしまった。
「今回解放されたのはハッターさんとロッドさんです」
闇太郎に促され、リリムが微笑みながら窓を開ける。それはあり得たかも知れない大きな災い。開かれた窓からは、ゴロイの岬が、そしてショアの湾全域が高波に洗われる光景。地震に倒壊した様な建物ごと、おもちゃの様に総てを‥‥。
「では、次回の闇のゲームでお待ちしております」
闇太郎は恭しく一礼した。