セーラ様が見てる3〜守れ、精霊祭!

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:12人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月23日〜05月28日

リプレイ公開日:2007年05月30日

●オープニング

 もうじき精霊祭がやって来る。
 貴族女学院ではこれに合わせて一週間の休暇期間を設け、同時に学院で精霊祭を祝うことになっていた。
 期間中、帰宅したい生徒は学院に届け出た後に帰宅し、残る生徒は精霊祭の準備に取り掛かるのだ。
 貴族女学院で行われる精霊祭の日は、普段関係者以外の立ち入りを禁じている学院の門が開かれる特別な一日になる。
 もっとも、やはり条件はあって学院長の印が押されたチケットを持つ者のみが、招待客として敷地内に入ることを許されるのだ。チケットは学院に残る生徒が必要枚数を申請して発行される。
 さらに今回は臨時講師や聴講生も準備段階からの参加を認められていた。この場合、チケットは必要ない。
 精霊祭の内容としては、各寮ごとにいくつかの出し物を決め、他寮と調整しながら一日を楽しく過ごすといった、地球の学校で言う文化祭といっていいだろう。
 今、学院内はその話で持ちきりであった。
「え、睦月、帰っちゃうの‥‥」
 寮も学年も違うとはいえ、入学式の時から仲良くしている睦月が、精霊祭休暇には世話になっているところに帰ると聞いて、ディーナは驚きと落胆を隠せなかった。
 それはセーラも同じだ。
「三人で楽しく休暇を過ごせると思ったんだけど‥‥それなら仕方ないわね」
 残念そうにしながらも、睦月を責めるつもりもなくセーラは申し訳なさそうにしている睦月を見た。
「ごめんね‥‥。手紙にしようかとも思ったんだけど、やっぱりちゃんと会ってここでのこととか話したいと思って」
「うん、そうね。それでいいと思うわ」
 今度はセーラもきちんと笑えた。
 ディーナも「気をつけてね」と微笑めば、睦月の表情もようやく明るくなったのだった。

「‥‥なーんて、見送ったはいいけど、やっぱり寂しいわ」
 精霊祭休暇一日目にしてセーラは自分でも予想外なほど落ち込んでいた。
 三人で休暇を過ごすことに、そうとう期待していたようだ。
 逆に、睦月が帰宅宣言をした時はとても暗い顔をしていたディーナが、今はわりと普通に過ごしている。
「睦月のいない一週間か‥‥」
 セーラは、聞いている者までどんよりしそうなため息をついた。
「セーラ、そんなに寂しいなら手紙でも書けば?」
「う〜ん、でもなんか、ちょっと恥ずかしいような‥‥」
「けどいちいち側で重苦しいため息もうっとおし‥‥じゃなくて、せめて精霊祭には元気になってね」
 精霊祭は休暇六日目に行われる。前後一日ずつで準備と後片付けだ。
「私、精霊祭サボろうかなぁ‥‥」
「えぇ!?」
「もぅ、そんなに大声で驚かないで。冗談だから」
 力なく微笑むセーラの様子からは、とても冗談とは思えないディーナだった。
 このセーラの落ち込みは意外な人物にも影響を与えていた。
 その人物に廊下で捕まったディーナは、彼女と二人して廊下の角からセーラの様子を窺う。
 何故かセーラは廊下を雑巾掛けしていた。
「何ですのあれ。あんなに従順ではまるで張り合いがありませんわ。あなたお友達でしょう? どうにかしなさい」
「また勝手なことを。セーラにかまわないでくれるのが一番なんだけど」
「そうですね。今のセーラさんには用はありませんね。だから、早く元のセーラさんに戻してくださいね。でないといじめがいがありませんわ」
 フラヴィは言いたいことだけ言うと去っていった。
 その自分勝手な行動にディーナは渋面になったが、ため息で流すとぼんやりと雑巾で同じ箇所を拭き続けているセーラのもとへ向かったのだった。
 何とかセーラを元気付けたいと思いながら。
 ところが、そんなのんびりもしていられない事態が発生した。
 夕食後、廊下を歩いていたセーラは一枚の紙切れを拾った。
 横にいたディーナと共に紙切れを調べてみると、とんでもないことが書かれていた。
 それは、予告状だった。
 二人は顔を青くしたり赤くしたりしていたが、やがて弾かれたようにリリー寮の寮長ユーフェミアの部屋へ走った。
 紙を見たユーフェミアはすぐにローズ寮とヴァイオレット寮の寮長達も呼び、紙切れの内容について話し合いを始めた。
 その様子を部屋の隅で見守りながらディーナが呟く。
「あの予告状を本人がここに投げたのだとしたら、いつでも侵入可能ってことよね‥‥」
「ディーナ、恐ろしいことを言わないで」
「でも‥‥」
「いいえ、ディーナさんの言うとおりよ」
 小声で話していたのに、ユーフェミアには聞こえていたらしい。
 彼女は目付きを鋭くして予告状を忌々しげに叩いた。
「こんな痴れ者に精霊祭をブチ壊されてたまるもんですか。捕まえて役所に突き出してやるわっ」
 正義感の強いユーフェミアの魂に火がついたようだ。
 しかしそれは他の寮長とて同じこと。
「誰にも気付かれずにこの者を捕えるためには‥‥正門と裏門、外壁の警備の強化を副学長先生にお願いしたほうがいいですね」
 ヴァイオレット寮長のシャーリーンは言った。
 門を開く精霊祭には万が一に備えて警備員が通常より多く配備される。副学長のトゲニシアにこの予告状のことを話せば、警備員達にもうまく伝えてくれるだろう。
 ローズ寮長のブリジットは、にっこり笑ってセーラとディーナを褒めた。
「二人とも、不用意に騒がずにユーフェミアさんにすぐに報告したのは良い方法だったわね。後は私達に任せて部屋へ戻りなさい。わかってると思うけど、このことは他言無用よ」
 セーラとディーナは神妙な顔で頷くと、部屋を後にした。
 帰り道、セーラは難しい表情のまま独り言のように漏らした。
「‥‥寮長達を信じないわけじゃないけど、知っている以上は私達もボーッとしてるわけにはいかないと思うの」
 ディーナは黙って同意を示す。
「私達も不審な動きをする人がいないか、周りに注意しておきましょう。あんな破廉恥な予告状を出したこと、後悔させないと。‥‥こんな時、睦月さんがいてくれたらなぁ」
 セーラは寂しそうにため息をついた。

『予告状!
 精霊が地上の者の感謝を受ける日、乙女の園にてそのぬくもりを包むものが使者に委ねられるだろう』

●今回の参加者

 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1643 セシリア・カータ(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea3651 シルバー・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7522 アルフェール・オルレイド(57歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea7891 イコン・シュターライゼン(26歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea8650 本多 風露(32歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 eb4344 天野 夏樹(26歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4410 富島 香織(27歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb5953 炎龍寺 真志亜(19歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

カルナ・バレル(ea8675

●リプレイ本文

●犯人に関する推測
 来る精霊祭前日の早朝。
 由緒正しき貴族女学院副校長執務室に、臨時講師または聴講生として参加する予定の冒険者達が集まっていた。
 この部屋の主、副学長トゲニシア・ラルは普段から厳格そうな顔をいっそう厳しくさせて、一同を見渡す。
 冒険者の他には、三寮の寮長とこの集まりの発端となった生徒、学院が雇っている警備員の責任者もいる。そのうち一人と冒険者からも一人、先に調査したいことがあるため、部屋を出ていた。
「では会議を始めるざます。今回皆さんに朝早くから来ていただいたのは、すでにご承知のことと思います。先日校舎内で発見された不審な予告状のことざます。リトンさん、あの予告状を」
 呼ばれたリリー寮寮長ユーフェミア・リトンは返事をすると、テーブルの上に羊皮紙を一枚置いた。
 そこには相変わらずの文字。
 トゲニシアは憎いものでも見るように羊皮紙を睨みつける。
「精霊祭当日に現れると思われるこの人物の犯行を阻止するべく、対策を練るのがこの会議の目的ざます」
「神聖な精霊祭を穢す者は断じて許せないわ。でも私達だけじゃ取り逃がしてしまうかもしれない。力を貸してください」
 ユーフェミアは意志の強そうな瞳で冒険者達に協力を求めた。
 代表するように答えたのはイコン・シュターライゼン(ea7891)だった。
 彼は穏やかな笑顔で言った。
「もちろんです。ところでトゲニシアさん。ひとつ、許可をいただいたいことがあるのですが」
 イコンの視線を受けたトゲニシアは、目で続きを促す。
「使うことがなければそれでいいのですが、万が一の時には武器と魔法の使用許可をくださいませんか? それと、校外へ逃げた時の追跡のために僕の軍馬を待機させたいのですが」
「あなたの軍馬はお預かりしましょう。ただし校内や敷地内では走らせないでほしいざます。武器・魔法は校舎内での使用は許可できないざますね。校舎外での使用に関してはあなた方の判断に任せますが、できるかぎり周囲に影響が出ないようにお願いするざます。 わたくしの希望を言えば、他の生徒やお客様にはいっさい気付かれずに犯人を捕まえてほしいのざます」
 なかなか無茶な要求をするトゲニシアだが、精霊祭を無事に終わらせるにはそれしかないだろう。
 それから冒険者達は作戦会議へ入った。
「それにしても、この予告状が意味するところは何でしょうね?」
 テーブルの上の羊皮紙に目を落とし、ひたすら首をひねるイコン。
「考えられるのは二つ。一つは生徒の誰かのイタズラ心。そしてもう一つは‥‥アレだ、ちょっとその‥‥そういう趣味なヒトとか、ね」
 肝心なところはゴニョゴニョとごまかすリオン・ラーディナス(ea1458)。
 しかし、ほとんどの者にはこれで通じた。
 通じていない、もしくはそういう考えをそもそも持たない者は‥‥。
「『ぬくもりを包むもの』というのは‥‥生徒達を包み込む立場の者ということでしょうか?」
「ははぁ、なるほど。ということは、人気の高い教師か生徒の方が狙われるかもしれませんね」
 シルバー・ストーム(ea3651)の言葉にイコンは深く頷いた。
 その時、他の者にはこの二人がとても純粋で神聖な存在に見えた。そして自分達が酷く俗なものに思え、受けなくてもいい精神的ダメージを受けた。
 とはいえ、その線も可能性はあるだろう。しかし自分の考えたこともハッキリ告げたほうがいいのだろうか、とリオンは仲間達を伺った。
 イコンとシルバー以外の者達を覆う気まずい空気を払ったのは、白銀麗(ea8147)だった。
「私が思いますに、『そのぬくもり』とは乙女の肌のぬくもりであり、『そのぬくもりを包むもの』は乙女の肌を包む衣服ではないかと‥‥。つまり、制服泥棒ではないかと思うのですよ」
 イコンはそっちもあったか、という顔をしたが、シルバーは制服なんか盗んでどうするんだ、と訝しげだった。
「アレよアレ。変態! 変態のしわざって可能性もあるってこと! 制服とか下着とか集めたい人がいるんだよ、世の中には」
「なるほど。そういう性癖のある人がいる、という話は聞いたことがあります」
 天野夏樹(eb4344)のあけすけな言葉に、シルバーは一応頷くものの、やはり「制服や下着を盗んだから何なんだ」という感じだった。
 そんな中、ディーネ・ノート(ea1542)が隣でもじもじしているリオンを不審そうに見上げた。
「なに照れてるの?」
「や、夏樹は堂々としてるなーなんて。俺はとても口に出せなかったよ」
 普段、軟派なことを口に出すくせに何でココだけ純情なんだと、ディーネは思わず吹き出してしまった。
 その間も会議は進んでいく。
 学院敷地内見取り図の他に、本多風露(ea8650)は現在の教師陣や生徒の状況に関する情報に加え、精霊祭の招待客のリストもトゲニシアに見せてもらった。
 長いリストだったが、どの名前も貴族や富豪のものばかりだ。もしこの件で捕まるようなことがあれば、どれだけの恥となるのだろうか。
 リスト外の者という可能性もあるだろう。
 その時、調査のために出ていた富島香織(eb4410)とセーラ・エインセルが戻ってきた。何か掴めたのか、二人とも難しい表情をしていた。
「何かわかりましたか?」
 と、尋ねる風露に香織は頷き返し、見てきたことを話し始めた。
 まず、香織とセーラは予告状を見つけた廊下に立った。
 それから香織がセーラにいつ予告状を見つけたのか、日にちと時間を尋ねパーストを使って過去を見ようと試みた。
「セーラさんが予告状を見つけたのは、これが放られてから二時間以内のことでした。その時間は夕食前ということで人通りがなかったようですね。その時にこの紙が運ばれたのです。この紙を運んだのは猫でした。開いていた窓から入って廊下に落としていったのです」
「犯人のペットと考えてよいでしょうね。‥‥確かに、猫なら敷地内に迷い込んでも誰も何も言いませんし‥‥」
 顎に手を添え、呟く風露。
「どこにでもいそうな茶トラ模様の猫でした」
「もし訓練された猫なら、当日も何かしでかすかもしれませんね。撹乱とか」
「人間と猫に要注意、だな。もしも制服狙いなら演劇をやるような集団は特によく見ておかないとな」
 アルフェール・オルレイド(ea7522)が威厳たっぷりに言った。
 彼は精霊祭の準備も手伝うので、その時にあちこち点検できるだろう。
 セシリア・カータ(ea1643)はやれやれと言いたそうに息をつく。
「せっかくの精霊祭を‥‥こんな脅迫するなんて」
 それはこの場の全員の気持ちだった。
 話し合いの結果、正門・裏門・壁付近を重点的に見回るグループと校舎内を中心に見回るグループとに別れた。
「見つけたら目立つようにするから、助けに来るのじゃぞ」
 あたいはか弱いオナゴじゃから、と言葉とは反対に偉そうに言う炎龍寺真志亜(eb5953)に校内見回り組が応じる前にレン・ウィンドフェザー(ea4509)の楽しそうで物騒なセリフが答えた。
「へんたいさんは、おんなのこのてきなの。おろかなしょぎょうをなげきつつ、おとなしく『どっかん』されるの♪」
 犯人が変態であれ誘拐目的であれ、悲惨な末路であることは決定された。

●楽しみは精霊祭準備から
 会議の後はさっそく精霊祭の準備である。この日は授業はすべて休講になる。
 大変なことになってしまったのはアルフェールだった。
 外見は威圧感溢れる勇猛な戦士なのだが、家事・理美容・調理という特技あるのは、この学院では周知のことだった。そのせいでうっかり廊下をあるけば生徒に呼び止められ、教室に引きずり込まれてあれやこれやとアドバイスを求められるのだ。
 まさに息つく間もないのだが、
「祭りは楽しくやらないとつまらないからな。全力で挑ませてもらうぞ」
 と、もとより意気込んでいた彼には、生徒達の活気は嬉しいものだった。
 女子校であるため、荒っぽい出し物はないがその分華やかさではどこにも負けないだろう。
 休暇で帰った生徒も少なくないが、それでも充分な生徒が残っていた。
 今、アルフェールは演劇をやるクラスのメイクについて助言をしているところだった。
「舞台メイクは濃いくらいでいいぞ。それくらいしないとぼやけた顔になってしまうからな。紅ももっと濃くていいだろう」
 指摘された生徒は頷いて作成中の紅を濃くするべく手を加え始めた。
 指導しながらアルフェールはこの部屋の作りをしっかり見ていた。
 侵入されそうな箇所や隠れられそうな場所など。
「無人になる時は戸締りを怠らないようにな。では、わしは他のところへ行くぞ。何かあったら呼んでくれ」
 生徒達は素直にその言葉を聞き、笑顔でお礼を言ったのだった。

 アルフェールが廊下を歩いていると、教室と教室の間にある空きスペースで見知った顔を見つけた。
「具合でも悪いのか?」
 歩み寄りながら話しかけたアルフェールの声に、夏樹が振り向く。
 彼女の前には、壁に直接備え付けられた腰掛に肩を落として座るセーラの姿があった。
 夏樹は困ったように口元だけで笑んだ。
 それを見ればだいたいのことは想像できた。
「友達がいなくて寂しいのか。ディーナはどうした?」
「準備に行ってるよ。セーラとディーナのクラスは軽食屋をやるんだって。ディーナは料理が得意だから、今頃レシピでも書いてるんじゃないかな」
「なるほどな」
 アルフェールは分厚い手でセーラの頭を軽くなでると、何も言わずに立ち去った。
「セーラさん、自分がいないせいで精霊祭を楽しめなかったって聞いたら、睦月ちゃんも責任感じちゃうよ。睦月ちゃんが戻ってきた時に、笑顔で祭りの思い出話をしてあげられるように、元気出してお祭りを楽しもうよ!」
 うつむいていたセーラは、ゆっくりと顔を上げた。捨てられた子犬のような目で夏樹を見上げる。
 しばらくジッと夏樹を見つめると、次に窓の外に目を移す。
 何も言わないセーラに夏樹が心配そうに声をかけた時、突然セーラは両手で自分の頬を強く叩いた。
「セーラさん!?」
「ごめんね。夏樹さんの言うとおりだね。帰ってきた睦月さんを心配させられないよね。ディーナさんも‥‥」
 言いながら、もう一度夏樹を見たセーラの瞳には、まだ本調子ではないものの頑張ろうという意志があった。
 夏樹はホッと息をつくと、ディーナのところに行こうと誘った。
 教室へ戻ると、思っていた通りディーナはレシピ作成に追われていた。
 少し離れたところでは、香織がレイアウト組と机の配置や飾りつけについて意見を出し合っていた。『落ち着ける軽食屋』にしたい、と言うので香織はそれに合った部屋の配色などを教えている。
 隣に静かに腰を下ろしたセーラに気付いたディーナは、落ち着いたセーラの表情と側に立つ夏樹の笑顔に口元を緩めたのだった。

 元気がいまいちなのは、何もセーラばかりではない。
 何かあるたびにセーラに絡むフラヴィ・ソレルもそうだった。
 トイレより出てきたフラヴィに近寄る小さな影。
「のぅ、あんた」
 唐突に呼び止められたフラヴィはビクッと肩を震わせた。
 振り向けばふてぶてしい表情の真志亜。
「いい話を持ってきたのじゃ」
「いい話?」
 胡散臭そうにフラヴィは真志亜を見下ろすが、真志亜のほうは笑みを濃くした。
「セーラの弱点を見つけるためには、近くで一緒に行動し、不意を突くのが上策だと思うがのぅ」
「あなた‥‥セーラの味方じゃありませんの? それに、あの子は今すでに抜け殻ですよ」
「それがそうでもないのじゃ。あたいらの仲間に元気付けられておっての。そろそろいつもの調子を取り戻すんじゃないかのぅ」
 その言葉にフラヴィは不快な話を耳にしたように目を細めた。あのまましおらしくしていれば何をするつもりもないが、元に戻るというならそうはいかない。立場というものを思い知らせなければならない。
「一応、情報ありがとうと言っておきます。ですが‥‥」
「ふふふ。あたいが不審か? あたいはそんなにお人好しではないぞ。慣れぬこの地では長いものに巻かれるのは基本じゃからのぅ」
 真志亜の媚びるような笑みは、無駄に高いフラヴィの自尊心をくすぐった。
「そう。まぁそういうことにしておきましょう」
 わざと素っ気なく言い、フラヴィは教室に戻っていった。どうやってセーラを困らせるか、取り巻き達と作戦でも練るつもりなのだろう。
 フラヴィの姿が見えなくなると、真志亜はフッと人の悪い笑みを浮かべた。
 これでセーラがやる気を出してくれればいい、と真志亜は思っていた。

 その頃、シルバーとセシリアは中庭で屋台を出すクラスの手伝いをしていた。
 木材を運んできたセシリアは、生徒達が作成中の商品棚を見てやや首を傾げる。
「木材はここに置きますよ。ところでその棚、少し歪んでませんか?」
「えぇ!? あっ、本当だ。ちょっと、曲がってるわよっ」
「えー、やだもぅ」
 授業の中に大工加工の科目もあるが、決して時間数は多くない。
「私が押さえてますから、釘を打ってください」
 そう言ったのはシルバーだ。
 棚が歪んでしまったのは、釘を打つ時にしっかり押さえておくことができなかったためだろう。
 その通りで、シルバーが押さえておいたため今度はきれいに仕上がりそうだった。
 そうやってあちこち見て回っては手伝いながら、二人は中庭の屋台の配置と精霊祭用に作られた通路を把握していった。
 当日、この一帯はけっこう混むだろう。犯人が逃げ込むにはちょうど良い場所と思われた。

●貴族女学院の門が開く
 翌日の定時になり精霊祭は開催された。
 門の前は長蛇の列で、門の両脇に設置された受付では順次招待状が切られていく。
 その様子を少し離れたところからユーフェミアがじっと見つめていた。
 通りかかったリオンが彼女の顔を見て小さく苦笑する。
「眉間に皺寄せっぱなしだったら他の生徒が不安がるよ」
「あ、リオンさん。‥‥そんなに寄ってたかしら」
「バッチリ寄ってた。そんなに睨んでもすぐに正体はあらわさないと思うよ。それに、折角の美人が台無しに‥‥おおっと失敬、つい本音がーっ」
 パチンと口元を押さえ、わざとらしくおどけてみせたリオンに、ユーフェミアは今日初めての自然な笑顔を浮かべた。
 良い具合に肩の力がユーフェミアにリオンも笑顔を返す。
「キミもそうだけど、あの予告状のせいで警備に当たったりで精霊祭を満喫できない人がいることも事実だ。早く解決しないとね」
「できれば被害が出る前に」
 次々と流れ込んでくる招待客を二人はまっすぐに見ていた。

 門が開かれて幾分か過ぎた頃、中庭の一画で銀麗と夏樹による『錬金術実験』が披露されていた。題して『錬金術実験:石鹸を使うとこんなに綺麗に洗える!』である。
 ホルレー領で以前に作った石鹸の効果を世に広めるため‥‥ということになっているが、実は予告状を出した人物への囮作戦でもある。
 もしも変態による制服泥棒なら、実験の後に洗われた制服を狙うのではないかと予測したのだ。さらには洗わない制服のほうが好みだった時のために、そちらも用意してある。
 実験には手伝いとしてセーラとディーナも来ていた。クラスとは調整済みだ。
 制服は三着用意された。どれも油汚れが付いてしまったものだ。それらは「もう着ないから」と寮長達から快く提供されたものだった。仮にも寮長の制服である。制服泥棒なら垂涎の的だろう。
 充分に人が集まったのを確認すると、最後に銀麗は実験スペースの近くに水の入った桶があるのを見る。この水も犯人対策の一つだ。
 そして、銀麗の司会で実験が開始された。
「ほら、どうです? 石鹸によりこんなにキレイに油汚れが落ちましたね。従来の洗い方とはずいぶん違うでしょう?」
 比較のため、石鹸で洗った制服、水洗いのみの制服、洗っていない制服に分けた。
 その差は歴然であった。
 実験スペースを囲む客達から感嘆のため息がもれる。
 中にはホルレー男爵に問い合わせてみよう、などという声もあったとか。
 その後三着の制服はそのまま南側の庭の片隅に干されることになった。すべて解決すれば後の二着も洗うが、今はこのまま。
 水を張った桶も移動させ、夏樹が見張りとしてその庭に残ることになった。

 貴族女学院の敷地は広い。
 正門と裏門の警備は万全だが、敷地を囲む外壁の隅々まではさすがに人数が足りない。
 イコンは、例えば鉤付き縄梯子など不審なものが壁に取り付けられていないか注意しながら外壁に沿って見回っていた。
 特に異常がないまま歩き続けていると、反対側から見回りをしていたセシリアと出くわした。
「どうですか?」
 イコンから状況を尋ねると、セシリアは首を横に振り何もないことを告げた。
 彼女はしばらく考えに集中したかと思うと、独り言のように呟いた。
「もしかしたら普通に招待状を持って入ったのかもしれませんね。‥‥だとしたら、何かが起こるのは外ではなく、内‥‥」

 そしてセシリアの予想通り、事は校舎内で起ころうとしていた。
 通常、生徒の入ることがないような広い洗濯場。ここに出入りするのは洗濯を仕事として学院に雇われている女達くらいだ。
 そこに今、レンが見張りとして身を潜めていた。
 高く積み重ねられた洗濯籠の陰にいるのには誰も気付いていない。
 女達の様子から、そろそろ昼食なのだろうと察したレンは、もしここを狙うなら彼女達がいなくなるこれからだろうと踏んだ。
 女達が洗濯場から出て行き、辺りは急に静かになった。
 どれくらい息を潜めていただろうか。
 ほんのわずかだが、足音がレンの耳に入った。
 耳だけで様子を窺っていると、もう少し音が大きくなった。何かを探しているか漁っているか。そんな音だ。
 しばらくの後、音が静かになるとレンにとってマズイことになっていった。
 足音が近づいてきたのだ。
 校舎内での魔法の使用はトゲニシアに禁止されてしまっている。
 このままこの人物が出て行ってくれれば、天井で待機しているペットのふーちゃんに追跡を頼みつつ自身は仲間達に知らせに走ることもできるのだが。
 もし逆に不審者に襲われたら、果たして対抗できるだろうか?
 できれば進路を出口に変えてくれ、とレンは祈った。
 しかし彼女の願いも虚しく、足音の人物はレンの潜む洗濯籠の前まで来てしまった。
 いったい何の用事があって籠しかないここまで来たのか。
 その答えは、その人物の独り言によって明らかにされた。
「もしかして、プリンセス方のものは特別扱いで隔離されてたり‥‥」
 期待に満ちた男の声だ。
 男はひょいと洗濯籠の後ろを覗き込む。
 そして、焦った笑いを浮かべるレンと目が合った。
 一瞬の沈黙の後、男は目を剥いて声を上げた。
「ななな何だお前は!?」
「あたしは、えーとえーと‥‥」
 レンが名乗る前に男は背を向けて駆け出した。手にはまだ洗われていない制服。
 ハッとしてレンはふーちゃんを呼んだ。
「ついせき、おねがいなのー! あたしは、みんなにしらせるよー!」
「らせるよー!」
 ふーちゃんは変な部分だけ繰り返し男を追っていき、レンもすぐに走り出したのだった。

「お昼どうぞー!」
 クラスメートにそう声をかけられ、セーラとディーナは昼食に出ることになった。
 軽食屋スタッフとして忙しくしている時は考える暇もなかったが、そこから離れれば気持ちはまた揺れてしまうセーラだった。
 夏樹からの励ましを忘れたわけではないが、記憶喪失故か『自分』という確固としたものが曖昧なセーラには、いつも側にいたディーナや睦月という存在はとても重要なものだった。
「セーラ、さっき話していたクラスに行こうか」
 そんなセーラを気遣うように声をかけるディーナ。
 彼女の気持ちを充分わかっているセーラは、小さく微笑んで頷いた。
 そんな彼女にどこからか叱咤の声が飛ぶ。
「そのような顔では睦月が心配するぞ!」
「真志亜さん」
「こんにちは。楽しんでる?」
 セーラはやや驚き、ディーナは親しみのこもった笑顔を現れた真志亜に向けた。
 真志亜はディーナに頷くと、目をセーラに向けて諭すように言った。
「睦月が帰ってきた時に笑顔で迎え、自慢できるくらい精霊祭を楽しまないと睦月に余計な心配をかけてしまうのではないかのう。世話になっておるのじゃろう。恩を仇で返すのは良くないのう」
「同じようなこと、夏樹さんにも言われたわ」
 セーラは苦笑するしかない。
 真志亜はそれにニヤリとした。
「耳にタコかのう」
 そして真志亜は「ではな」と短く言ってどこかへ行ってしまった。
 小さな後ろ姿を見送ったセーラは、肩をすくめると幾分晴れた顔で軽食屋の仕事中にディーナと話していたクラスを目指したのだった。
 一方、真志亜がセーラ達と出会ったのはただの偶然だった。彼女は見回りをしていたのだから。
 そのうち真志亜は実験室が並ぶ廊下へと出た。普段から人の少ない箇所だが今日はもっと少ない。
 が、真志亜はそこで奇妙な人物を見つけた。
背負うくらい大きな麻袋に必死で何かを詰め込んでいる男だ。二十代半ばか後半くらいの年齢だ。
 あからさまに怪しい。
 真志亜はサッと近くにあった彫刻の陰に隠れ、男の様子を窺った。
 慌しくしながらも麻袋の口をしっかり閉めた男は、廊下に誰もいないのを確認すると懐から細長い棒を取り出し、ドアノブの辺りでゴソゴソすると実験室のドアを開けて教室の中に忍び込んだ。
「鍵を開けおったのか」
 真志亜もすぐにその実験室へ駆け寄る。
 音を立てないようにドアを細く開け、中の様子を見ると麻袋の男は窓から脱出するところだった。
 その時、男は確かに真志亜に気付いた。
「ヤベェ!」
 声を残し、男は飛び降り、駆け出した。
 真志亜も教室内に踏み込み、開けっ放しの窓枠に足をかけて外に飛び出す。
 男の背を追いかけながら、真志亜はレンのフェアリーもいることに気がついた。

 学院を囲む外壁の中でも木々が林のように生い茂っている一帯を見回っていた風露は、派手な足音に腰の刀に手をかけた。
 木々の幹の隙間から接近してくるのは麻袋を背負った男。
 どこから見ても不審者だ。
 しかも男の遥か後方に見知った顔が見える。
 風露は男の進路を塞ぐように立ち、スラリと刀を抜いた。振り回すには不向きな場所だが仕方がない。
「止まりなさい!」
 切っ先を向ける巫女装束の風露に、男は慌てて足を止めるがおとなしくなる気はないようだ。素早く進路を変えるとそちらへと走り出す。
「待ちなさい! 何でこんなところにいるのです? その袋は何ですか!」
「アンタには関係ねぇよ!」
 風露の呼びかけに男は怒鳴り返す。
 追いかけっこを続けるうちにやがて林から抜け、日当たりの良い庭に出た。
 風露はすぐにそこが夏樹のいる場所だと気付いた。
「夏樹さん、その男を捕まえてください!」
 まるで待ってましたとばかりに脇の茂みから夏樹が飛び出す。その手にはスタンガン。
 男はいきなり出てきた夏樹にギョッとし、そして干されている制服に視線を走らせる。
 すると男は麻袋を夏樹に投げつけ、干されている制服をロープから剥ぎ取り、慌てている夏樹を突き飛ばして走り去っていった。
「大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫。それより追いかけないと」
 念の為、麻袋の中身を確認した二人は、予想通り制服であることにげんなりとなった。
 やがて真志亜とふーちゃんが追いついたが、二人とも死にそうなほど息切れしていた。
 これ以上追うのは無理な真志亜に麻袋を預け、夏樹と風露は男が消えたほうへと駆け出した。

 しかし、疲れているのは逃げる男とて同じだった。
 再び校舎内に潜り込んだ男は、抱えている制服をどうにかするため空き教室を探した。
 そこでまた適当な麻袋を手に入れようとしたのだ。
 ところが今度はそうはいかなかった。
 男が最初に遭遇したレンが、校舎内を巡回する仲間達に知らせていたからだ。
「見つけたわ! そこの男、止まりなさい!」
 怒りに目を吊り上げたユーフェミアが同じ寮長のブリジットとシャーリーンを連れて鋭い声を投げる。
 ユーフェミアの眉間には、リオンが指摘していた険しい溝がくっきりと走っていた。
 男は慌てて向きを変え、逃げ出す。
 いつもは全生徒の模範となるべく毅然としながらも清楚さを失わない三人のプリンセスを冠す女生徒が、いまやトゲニシアが許せば剣でも振り回しそうな勢いで廊下を走っている。
 その迫力に怯えながらも収穫物はしっかり抱え走る男の前に曲がり角が見えた。うまくすれば姿をくらませることができるかもしれない、と男は期待した。
 が、甘かった。
「あんたは、アホかぁぁあ!」
 気合たっぷりのディーネのスリッパが、ちょうど角を曲がった男の顔面を捉えたからだ。
 スパーン! と、小気味良い音が廊下に響く。
「お、お、お〜‥‥」
 さすがに目が回りかけたがここで気を失ってはお縄になってしまう、と男は踏み止まりヨロヨロしながらディーネの脇を通り抜けようと試みた。
「ム。また動けるのかっ。いい加減観念しなさい!」
 ディーネは容赦のない蹴りを男の脇腹に食らわせる。
 さすがに男も悲鳴をあげて膝をついた。
 そして彼は追いついた寮長三人にも囲まれてしまった。
「うぅぅ、すみません。出来心だったんです。もうしません、盗ったものもお返しします‥‥」
 やっと諦めがついたのか、男は世にも情けない声を出しうなだれた。
 あんまり情けない姿に、四人は顔を見合わせる。
 うつむけた顔の下で男はニヤリと笑みを浮かべると、一番小柄なディーネを突き飛ばして逃げようとわずかに目を上げる。
 しかし、彼女の背後に立った強面のドワーフに、その意志もあえなく砕かれたのだった。
 アルフェールに勝てるとは思えなかった。
 ディーネが手錠をかけている間、アルフェールはグズる男を呆れ果てた目で見ていた。
「せっかくの精霊祭を邪魔するなんて、野暮な話だな」
 寮長三人の蔑みの視線が男に突き刺さる。
 この頃になると周りに冒険者達が集まってきていた。
「裁きは副学長がするんだろうけど、なるべく穏便にすませてくれるといいなぁ‥‥なんて、冗談です、ハイ」
 リオンが言いかけたセリフに、男を見ていた寮長三人の突き刺すような視線がリオンに移り、彼はすぐさま前言を撤回した。そうしないと犯人の仲間にされそうだったからだ。
 男は副学長室へ連行された。

●課せられたもの
 連れてこられた男を見るトゲニシアの目は、この世で最も醜く汚らわしいものを見るような目だったとか。
 精霊祭終了後、前日に集まった面子が集められ経緯の説明をした。
 男はその説明を元に作られた報告書の写しと共に自宅へ帰されることになった。それなりの富豪の息子だったため学院側も気を遣って大事にはしなかったのだ。警備に当たった者達にも他言無用と言い渡した。
 副学長室を出た冒険者達は、招待客の帰った校舎内をゆっくり歩いた。精霊祭の名残りを追うように。
 寮長達とは事後指導のためにすでに別れている。
 セーラとディーナは、何となく彼女達についていく気になれず、冒険者達と一緒に歩いていた。
 不意にセーラが小さく笑いを漏らした。
「今日のこと、睦月さんに報告しなくちゃね」
「そうね。あ、そういえば真志亜。あなたフラヴィに何を言ったの?」
 咎めるような目で真志亜を振り返るディーナ。
 とっさに真志亜はとぼけようとするが、ディーナはそれを許さなかった。
「急に絡んできてほんっとうに面倒だったのよ。何だかあなたと思われる人がフラヴィの味方になったとか、あなたは話のわかるやつだとか何とか」
 真志亜がフラヴィの悪態をつこうとした時、イコンが彼女をかばうように割り込んだ。
「でも、セーラさんは元気が出たようですね。僕にも友人がいますが、この世界に共に来た友人は使命を見つけたとかでメイへ旅立ちました。少し違うかもしれませんが、記憶が曖昧で友人と離れたりして不安だったり寂しかったりするセーラさんの気持ちは、よくわかるのです」
 話すイコンにセーラは落ち着いた笑みを見せた。きっと今は不安はないのだろうと思われる笑み。
 その時、真志亜とイコンの足元でカツンと音がした。
 見れば、前に香織の手に現れたのとよく似た輝石。
 二人が拾った石を見たとたん、セーラの中に懐かしいものが甦る。
「これは‥‥『誠実』と『神のお告げ』」
 真志亜には『誠実』、イコンには『神のお告げ』。
「ああ、うん、そうね。そうだった。私‥‥私にもやらなければならないことがあったのよ。いつか来る暗い未来のために味方を作って備えなければならないの」
 やらなければならないことがどんなことで、いつかとはいつなのか、何が来るのかはわからなかったが、未来に危機が待っていることはわかった。
 けれど、一番わからない、という顔をしていたのは真志亜。
「『誠実』の石か‥‥嫌味か?」
 真志亜の手の中で、濃い紫色の輝石が小さく輝いた。