チャンスだピンチだ3〜ダブルブッキング!

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月16日〜06月21日

リプレイ公開日:2006年06月19日

●オープニング

「や、やっばい! 助けてくれッ!」
 突然冒険者ギルドに走り込んできた一人の男。
 受付の職員は彼を見て小さく溜息をついた。
「どうしたんです、ルキナスさん?また何かなされたのですか?」
「俺が何かなさる顔に見えるか!?」
「はい、見えます」
 どきっぱり答える職員に、ルキナスと呼ばれる男はガクリと肩をおとした。
 が、すぐに首をふるふると横に振って職員に詰め寄った。
「頼む! 俺を何処かにかくまってくれ!」
「か、かくまうですか? え、えーと‥‥一体何したんですか?話は其処から‥‥」
「やべ、来たッ!」
 騒々しい数多くの足音が聞こえてくると、ルキナスは問答無用で職員がいるカウンターの下へと滑り込んだ。

 職員が首を傾げてルキナスが隠れた方を見ていると、勢いよく扉が開かれた。
 其処に立っていたのは2人の貴族らしき娘。
 そして、その後ろには用心棒のような家来のような黒服の男達。
「あ、あの。どういった御用件でしょうか?」
「ここに、ルキナス様が入って来るのをお見かけ致しました! 何処にいらっしゃるのですか!?」
「え、えぇ? ルキナスさんならこ‥‥」
 素直に答えようとした職員の足が突然痛みを感じた。
 恐る恐るカウンターの下を見ると、睨みながら足を抓っているルキナスの姿。
「ルキナスさんは此方にはいらっしゃっていませんが‥‥」
「嘘おっしゃい! ここに入っていくのを私は見たんですのよ!?」
「落ち着いてください!一体彼が何をなさったのですか?」
「私とデートするはずなのに、この田舎娘もお誘いになったのよ!」
「あら、私が先にデートを申し込まれたんです。貴方が後でしょう?」

 職員が2人を宥め、話を聞いた所‥‥。
 ルキナスに2人ともナンパされ、デートの約束をしたのだが‥‥。
 まぁ、簡潔に言うとダブルブッキング。二重約束をしてしまったのだ。
 ソレがバレ、お互い先にルキナスを捕まえた方がルキナス取得権を握れるという。
「そうですわ! 冒険者様にもお願い致しますわ! ルキナス様を私の下に連れて来てくだされば10G以上の報酬を出しますわ」
「なら私もそう致します。ルキナス様をどうぞ私の下に。そうすれば、私の騎士にして差し上げますわ!」
 そう言い残すと二人は、ルキナスを探すべく町へと飛び出して行った‥‥。
「い、行ったか?」
「行きましたよ。ルキナスさん、厄介な人達をダブルブッキングしたんですね‥‥」
「泣きたいぐらいだ‥‥片方はルーシェっていう優しいお嬢さんなんだが嫉妬深いし更には一人娘だ。片方はアンジェっていう高飛車でまさしくお嬢様! だしな‥‥」
「自業自得なんですけどね。で、どうするんです? あのお2人からの依頼受理しましたけど‥‥」
「じゃあ俺をかくまってくれる冒険者も頼むッ!」

 どうやら、この鬼ごっこは史上最大規模になりつつあるようである‥‥。

●今回の参加者

 ea0324 ティアイエル・エルトファーム(20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国)
 eb1182 フルーレ・フルフラット(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb3770 麻津名 ゆかり(27歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb4135 タイラス・ビントゥ(19歳・♂・僧侶・ジャイアント・インドゥーラ国)
 eb4141 マイケル・クリーブランド(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4209 ディーナ・ヘイワード(25歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4375 エデン・アフナ・ワルヤ(34歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4412 華岡 紅子(31歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●厄災
「もぉ〜自業自得だよ!」
「一つ聞きたいんだけど。今後も同じような事が起きたらどうするの? いい加減にその悪い癖を改めないと、身を滅ぼしちゃうよ?」
「悪い癖? ふ、失礼だぜ、お嬢さん。これは俺の必須なスキル‥‥そう、なくてはならないものなのさ。これがなくちゃ俺じゃない、違わないかい?」
「女性ならみんな好きって結局、皆嫌いなのと同じですよ? 結局、あなたは自分を一番愛してるだけです。そんなの幸せになんかなれる筈ありません」
 麻津名ゆかり(eb3770)が小さな溜息をつきながら、つかつかと追われる身であるルキナスに近づいていく。
 勿論、当人にとってそんな説得、糠に釘なのだが。
「一番? そんなの決めて何になるっていうんだか‥‥って今はそんな事を言ってる場合じゃなくてだな!」
「とにかく! これだけは言っておきますっ! あなたを助けるんじゃないですからね!」
「ゆかりさん、落ち着いて。彼に愛だのなんだの説いても無駄かも知れないわ、疲れるだけかも」
 ティアイエル・エルトファーム(ea0324)は既に諦めているようにも見える。だが、今は口論している場合ではない。追っ手は確実に彼に近づいているのだから。

●目指せ!? 世界一のレディ
「‥‥マジでそれ、やんの?」
 ルキナスが汗だくの笑顔のまま化粧道具を持った華岡紅子(eb4412)に尋ねる。
「当たり前よ! 確実な方法で逃げ出すしかないわよ? そう、その手段こそ」
「女装‥‥なのか?」
「ご名答♪」
「しかし‥‥」
「捕まって半分ずつに引き裂かれても良いの?」
 固まるルキナス。どうやら、脳裏に引き裂かれる様を想像してしまったらしい。真っ青な顔のまま、首を横にいきおいよくブルブルと振った。
「なら、決まりね? ギルドの人に部屋を貸してくれるように頼んであるわ♪ 洋服はゆかりちゃんとフルーレちゃんがもってきてくれるからねっ」
「それにしてもダブルブッキングなんてナンパ氏の風上にも置けないよね」
 ディーナ・ヘイワード(eb4209)が溜息をつきながら尋ねる。ルキナスはフッと笑みを浮かべ
「女性は皆素敵だ。そして、気高くて男に等しく癒しをくれる。独り占めにするだなんて、恐れ多くて出来ない。そういう事さ」
「いくらなんでもやりすぎだと思うけど?」
「其れは其れ、あれだよ。竜と精霊の意志と言うか‥‥」
「‥‥ほんっと、バカ?」
 ディーナの言葉がルキナスの心にグサリと突き刺さる。空笑いをあげながら、ずるずると紅子に引きずられ更衣室へ
「さぁてと。師匠の事は紅子に任せて‥‥おい、この事絶対に口外すんなよ?」
「分かってますよ!」
 マイケル・クリーブランド(eb4141)に不貞腐れながらいうギルド員。プンプンと怒りながら去っていった。

●でっきるかな?
 女性二人の怒りを鎮めるため、エデン・アフナ・ワルヤ(eb4375)は街を行く。この時、街の中は本当に悲惨な状況になっていた。黒ずくめの男が街中を走り回っていたり、傭兵風の男が黒ずくめの男達と対立して‥‥。ナイス害が呼んだ被害は、何処へいってもやはり大きなものだという事をエデンは痛感。
「る、ルキナスさん‥‥この様子じゃあ捕まれば確実に殺されますね‥‥。っていうか、傭兵まで雇うだなんて‥‥」
「ごめんあそばせ? 貴方、ルキナス様をお見かけになりませんでした?」
「え? あ、貴方は‥‥アンジェ様? でしたら、少しだけお話にお付き合いねがえませんか?」
「私、急いでいるのですけれど? 手短にしてくださるのなら、よろしいですわよ?」
「ルキナス様の何処がよろしいんですか?」
「当然! あの端麗な顔つき‥‥そしてお優しい声‥‥! 彼こそ、私に相応しい旦那様なのですわ!」
「でも、約束を破ったり、他の女の人も口説くような人ですよ? そんな人でも好きなんですか?」
「勿論ですわ! 他の女性に目が行くのは、私の魅力にまだ気付いておられないからに違いないわ。なら、私の魅力で振り向かせるだけですわ!」
 ダメだ。完全にルキナスに心を奪われている。
「大体貴方! いっぱしの冒険者である貴方が、私の旦那様になる予定であるルキナス様の悪口を‥‥赦しませんわよ?」
 実はエデン、エーガン王に対して何時でも意見しに行ける王の直臣身分なのだが、そんな風には全然見えないのが実に彼らしい。
「あ、いえ‥‥」
「それだけですの?」
 言い捨て、アンジェは黒ずくめの男を引き連れて行ってしまった。
(「少し言い方を整えたほうがいいみたいですね‥‥」)
「貴方、大丈夫ですか? 先程、アンジェに怒鳴られていたみたいですが?」
 声がして振り返れば、優しい笑顔を浮かべた女性が一人。
 彼女がルーシェであるという事が後ろの傭兵風の男達で分かる。
「あ、ルーシェ様! 探していたんです‥‥」
「なんですか?」
 ルーシェはアンジェと違って物腰が柔らかく感じる。同じお嬢様でも、ここまで性格が異なるのか。
「ルキナス様の何処が宜しいのでしょう?」
「初めて優しくしてくださった方なんです。家族以外の方に親切にされた事なんて無かったのですから‥‥」
「でも、他の女性にも同じ言葉を囁いているかも知れないんですよ?」
「其れは、私が至らないからなのでしょう‥‥。誠実な心と自分自身の魅力で、振り向かせるしかないと私は思っています」
 そうやんわりと答えると、ルーシェは苦笑を浮かべる。
「お話はそれだけですか? 私はそろそろルキナス様を探しにいかなくてはいかないので‥‥」
「あ、はい。お忙しい所ありがとうございました!」
 ルーシェの背を見送ると、エデンはホッと一息。2人の心を聞けた。それだけで収穫はあったかも‥‥?

●女だけじゃ飽き足らず?
「おーい、紅子。そろそろ出来たかぁ?」
「後はこの口紅をこうして‥‥これでよしっ♪」
 キスして紅を馴染ませる紅子。その行動にルキナスは天にも昇るような気持ちを覚えたのかほんわかしている。
 しかし、彼の今の姿は女性。そう、貴婦人のように綺麗なドレスを着こなし、傍から見れば本物の女性のようである。
 紅子がルキナスを更衣室の外へ出すと、マイケルは軽く口笛を吹いた。
「へぇ。知らなきゃ本気で惚れちゃいそうだよ師匠」
「土台が良かったっスね♪ これからは二丁目のルっちゃんて名乗っても問題はないと思うっス!」
「冗談じゃありませんことよ? 女性になるだなんてこれっきりにしたいでございますですわ」
 裏声が妙に可愛い。
「‥‥紅子。お前、なんて女性言葉教えたんだ?」
 マイケルが深い溜息をつくと、紅子の方は面白がってケラケラと笑っている。ゆかりやティアイエルも笑いそうなのを堪えているのが現状である。フルーレ・フルフラット(eb1182)はクスクスと笑いながらも更衣室の後片付けを始めていた。
 そんな時である。思いっきりルキナスの腕を引っ張る人物がいた。
「ルキナス殿! こうなったら旅に出るです!」
「ち、ちょっとお待ちになってくださいませな? 今この街から私が離れてしまったら、この街に地図絵師がいなくなってしまいますことよ!?」
「だから旅なんです! 貴方がキチンと仕事するまで帰らない旅です!」
「仕事はしているつもりですのよ、これでも? ただ、価格が高いでございますから、お客の入りが少ないだけでございますわ!」
「ただ単にやってないだけっス! それじゃ同じっス!」
「でも、確かに師匠の言うとおりかも知れんぜ? 師匠がこの街から離れれば、この街の伝統地図絵師がいなくなっちまうからなぁ‥‥それに、ルキナス目当てで来る女性もいるだろっから‥‥寂れちまうぜ?」
 マイケルの一言によりタイラス・ビントゥ(eb4135)はむくーっとふくれっつらを見せた。
 どうやら納得出来てないようだ。それもそのはず。彼は確実にルキナスを更生させる為には旅に出すしかないと考えているのだから。しかし、厄介なことに地図絵師は領主の許可がない場所等は歩けないのである。軍事機密を暴かれてはたまったものではないからだ。
「とりあえず、ここにいても見つかるだけだわ。急ぎましょ?」
「そうですね、それじゃあエデンさんと合流して急いで何処かに‥‥」
「注意事項その1! ‥‥出来るだけ自然を装えよ? 見つかっても自然にな?」
 マイケルがそう言うと、その場にいる冒険者全員が大きく頷いた。ルキナスの歩き方も、今や自然とスカートに馴染む。もう完全に女性化している。
「しかし本当に綺麗っス! 紅子さんのメイク技術も凄いっスけど‥‥ルっちゃん、ここまで変わるんスねぇ‥‥」
「あら、そんなことないのよフルーレちゃん? ルキナスさんが綺麗だからこそ、お化粧のノリもよかったのよ? 唇も柔らかかったし‥‥?」
「な、何してたんですか!? ま、まさか紅子さんまでナンパしたのでは!? 唇の柔らかさだなんて、不純もいいとこ! 分かってるですかぁ!?」
 ゆかりのストレート顔面パンチをまともに直撃して、よろけるルキナス。慌てて弟子であるマイケルが支えると、ハハッと苦笑を浮かべた。

「あら? 其処のお方、お待ちなさい」
「は、はい!?」
「‥‥つ、遂にこの時が来たっスか‥‥。切り抜けられるッスかね‥‥?」
「ルキナスさんの演技に期待するしか‥‥」
「貴方、ルキナス様に似てらっしゃるわね‥‥?」
「あら、ルキナスって何方ですの? 私と似ているだなんて、偶然ですわねぇ‥‥」
「‥‥もしやルキナス様ではありませんわね?」
「そのようなお方ではございませんですのよ? 私は無関係でございますから」
「あら、アンジェ? 女性とお話出来る程余裕があるんですね?」
「むっ‥‥ルーシェ! 貴方みたいにのろのろと捜索してるわけではありませんから?」
「言ってくださいますわねぇ‥‥殆ど部下にやらせていた癖に‥‥」
 ルキナス達の目の前で女の戦いが始まってしまった。こっそり逃げれると思ったのだが‥‥突然逃げると正体がバレてしまう。逃げたい気持ちを抑えていた冒険者であったのだが、
「まぁまぁ、お嬢さん方? そんな怒った顔は似合いはしないよ。いいかい? 俺は、君達に争って欲しくはないんだよ。何故なら、俺は2人とも愛しているからね‥‥?」
 台無しにしたのはルキナス本人。
「し、師匠オォォォォォ!? アンタバカか!? なぁ、筋金入りのバカか!?」
「え? 俺、なんかダメな事言った?」
「言いました! バレバレじゃないですかあぁぁぁ!!」
「ルキナス様、変装までしていらしたのね!?」
「さぁ、今日こそはっきりして貰いますからね!?」
「「どちらの婿になってくださいますの!?」」
 ヤバイ。このままではルキナスは無理矢理結婚させられてしまう。どうしても避けたい。どうしても結婚だけはしたくない。
 そんなピンチを救おうと、まずはディーナがフォローに出る。
「いや、こういってはなんですけど、ルキナスさんはあぁいう人ですし捕まえたとしてもすぐ他の女性に手をだしますよ? それでもいいんですか?」
「私達はルキナス様を絶対に振り向かせます!」
「「彼は私の魅力に未だ気付いていないだけなのだから!」」
 そう声を合わせて言うルーシェとアンジェ。
「でも、見ての通り彼は変装してるでしょ? これ、どういう事か分かる?」
「ルキナスさんは女装癖があるっス! どう見てもただの変態っスよ!?」
 ならばと作戦変更する紅子とフルーレ。
「まさかルキナス様‥‥!」
「そうそう、だから素直に諦めてほしいっス!」
「其処までして女性の気持ちを理解し、私に尽くしてくださるだなんて!」
「え? あぁ、いや、それはそういうことではなくて、俺は‥‥」
 弁解するルキナスの声など、恋する乙女には届いていない。2人とも既に自分の世界モード爆進しているようである。
 今にもルキナスに抱きつきそうな雰囲気が漂うその時である。救いの神は、舞い降りたのである。
「師匠、赦せ‥‥!」
「え゛?」
 振り向き様に塞がれたルキナスの唇。
 塞いだ人物はなんと、マイケルである。じたばたするルキナス。唖然とする仲間達。絶句する乙女2人。
 唇が解放されても数分間時は止まったまま‥‥。
「実は俺たち‥‥愛し合っているんだ!!」
「ちょ‥‥! 人の神聖なる唇を勝手に奪っておいて挙句にそれは‥‥!」
「ふ、ふふ‥‥お知りになりまして? 障害物は多ければ多いほど‥‥」
「実に手に入れたくなるのです! 燃えるという事ですっ! 今更ライバルの一人や2人、覚悟しておりましたッ!」
「今回はそこの殿方に完敗しましたけれど、次はこうはいきませんわよ? 覚えておいてくださりませ!?」
 捨て台詞のようにそう言い放つと、二人の乙女はいそいそと帰って行ってしまった。予想外の展開に、マイケルは呆然としていた。諦めてくれると思っていた。だから最終手段にした。なのにどうだ。ライバルだと勘違いされるという結果に陥ってしまった。

「こ、これ‥‥任務完了、なんスかね‥‥?」
「‥‥実に被害は大きかったようです。とりあえず、私達で街の修復だけはさせて貰いましょう!」
「そうね、ルキナスさんも手伝うのよ? 貴方が起こした騒ぎなのだからね?」
「それは勿論させて貰うよ。このドレスを脱いだら‥‥ね」
 ルキナス自身もショックを受けているようだ。どうやら男に唇を奪われた事が初めてだったようだ。
「ルキナスさん、一つだけ質問していいですか? 真面目な質問なんです」
「なんだい、ゆかりさん?」
「ルキナスさん、今は地図絵師を止める前より本当に幸せですか?」
 唐突な質問。真剣な眼差しでゆかりはジッとルキナスを見つめていた。そんな目を見て、小さく溜息をつくとルキナスは小さな声でこう呟いたという。

「幸せかどうかは、まだ分からないな。幸せって、そんな簡単に感じるものじゃないと俺は思うんだ。だって、幸せというのは‥‥やりたい事をやって、いまわの際に感じ取れる。それが幸せだと、俺は思ってるから」

 この依頼の後日。
 ルキナスが時々ドレスを着て街を歩いているという噂を紅子は耳にした。
 ただ、もう一つの噂では‥‥どうやらルキナスが真面目に筆を見て悩んでいる事があるようになったという。