見えない依頼人 中編 迫る黒い影
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:05月05日〜05月10日
リプレイ公開日:2006年05月10日
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●オープニング
「本当に、俺に力を貸してくれるのか?」
ベアリーと名乗った少年は冒険者ギルドのカウンターでそう問うた。
少女キャロルが拾った指輪が見せた夢、歌姫殺人事件は実在した。
被害者ミザリーの弟ベアリーは、冒険者達に連れてこられたものの、こういう場に慣れていないのか居心地悪そうにしながらも決意したように顔を上げる。
「信用するなら力を貸してくれると言った。なら、信じる。姉さんの仇を俺は討ちたいんだ!」
彼にとって、姉と呼んだ存在ミザリーはよほど大きかったのだろう。
簡単に敵討ちを助けてやるとは言えないが、できる限りの事はしてやる、と係員は約束した。
その言葉に頷いてベアリーは話をする。
彼の持つ、いくつかの情報。そして唯一の心当たり。
「姉さんは、ここ暫く変な奴につけられていたんだ。最初は普通のファンかと思ってたらしいんだけど‥‥、姉さんに因縁をつけてきたゴロツキが殺された事件があった。その時後ろから口を押さえられて『君を守る。君は私のものだ‥‥』って言ったんだ。普通じゃないって、少し怯えてた‥‥」
逞しい手で口を押さえたその男は右手の小指が欠けていたという。
そして以降、彼女もそしてベアリー自身も夜の闇の中に怪しい視線を感じるようになる。
最初はごく稀に。だが、だんだん、その視線を感じる頻度は上がっていった。そして‥‥なんとかしようと思った矢先‥‥
「姉さんは殺された。姉さんは俺達と違って裏に生きていても、そんなに人から怨まれるような奴じゃない。だから、心当たりと言ったらそれだけなんだ」
自分と姉をつけていた黒い影。それこそが犯人、もしくは犯人に繋がる重大な手掛かりなのではないか。とベアリーは言う。
「だから、俺は、自分を囮にして犯人をおびき出そうとしてたんだ。あんたらに邪魔されて失敗したけど。だから、その落とし前はつけてもらう。絶対に」
つまり、自分と姉をつけている影を捕まえるのを手伝え、ということらしい。
「何度も言うけど、俺は姉さんの仇を絶対に許すつもりは無い。だから、手伝ってくれないなら一人でやるからな」
きっぱり宣言してベアリーは立ち上がった。自分に連絡をつけるときは、ミザリーが歌っていた酒場に声をかけてくれと言い残して帰ろうとするが、ふと、立ち止まって振り向いた。
「あと、指輪返してくれ。あれは姉さんの大事な形見だ‥‥。恋人と交換したってどんな高価な宝石よりも大事にしてた奴だから。俺は、‥‥あんな男嫌いだけど」
そう言って今度こそ振り向かず、彼は去っていく。
吐き出された本音を残して。
夢から解放されたとはいえ、キャロルの依頼はまだ生きている。
ベアリー自身は冒険者をまだ信用しきってはいないうえに、依頼料などははなから持たない。
だから、この調査、いや捜査依頼はキャロルからの依頼の続きということになるだろう。
「しかし、ベアリーの言ってることは無視できない。あいつが言ったとおり、ある意味はっきりとした手掛かりは本当にそれだけだからな」
引き続き事件の調査をしながら、ベアリーが言っていた「ミザリーを尾けていた存在」を捕らえ正体を掴む。それが今回の基本方針になりそうだ。
「まあ、誰であるかはまだ解らないにしても、犯人は間違いなく殺人者だ。この依頼が危険で難しくなっているのは変わりない。気をつけろよ」
係員は真剣な目でそう言った。
歌姫の死の真相と言う名の首飾り。
今はバラバラに砕けたその欠片を全て集めた時、どんな真実が見えてくるのだろうか‥‥。
●リプレイ本文
●消えた石
「あれ?」
キャロルは、首を傾げた。
「この指輪持ち主の弟さんが返して、って言ってるんだ。返してもいいよね?」
メレディス・イスファハーン(eb4863)の言葉にキャロルは頷いたが差し出された指輪を見て目を瞬かせる。
「赤っぽい石がついていたと思ったんですが‥‥」
「石? そんなものあった? 僕が借りたときはただの指輪に見えたけど‥‥」
「でも、私が拾った時は確かに‥‥あ!」
彼女は指輪の表面の小さな点を見つけ、思い出した。
指輪を拾った時、土や埃をとる為に磨いた。その時指輪についていた赤いものが落ちたのだ。
何故忘れていたのだろう。そうだ、あれは石ではなかった。
「それはひょっとして‥‥」
指輪にはその痕跡は僅かな染みとしてしか残っていない。飾り気の無い銀の指輪。
だが‥‥
「固まるほど古い血が拭かれずに? まさか‥‥この指輪は」
「なら、指輪に聞いてみましょうか?」
今まで口を出さずに話を聞いていたギルス・シャハウ(ea5876)がそれに触れた。
指輪は、まだ何も答えてはくれなかった。
●隠された何か
待ち合わせの酒場でリーン・エグザンティア(eb4501)は腰に手を当てた。
「そんなに簡単に終ると思ってた訳じゃないけどね」
少女の夢から始まったこの依頼は殺人事件の調査へと発展した。それもどうやらただの恋愛の縺れで終ってはくれないようだ。
まぁいい。と思う。どちらにしてもやる事は一つ。
「こうなったらとことん付き合うわよ。そして見つけ出してあげようじゃないの、真実ってやつをさ」
「いいか? くれぐれも言っとくが単独行動は慎めよ。ベアリー。お前もだ」
陸奥勇人(ea3329)が窘めるように、横に立つ少年に語りかける。面白くないと顔に書きながらも彼は反発はしなかった。
「君がベアリー君? どうも初めまして。私はリーンっていうの。よろしくね」
リーンの言葉に対し無愛想にベアリーは返事をした。
「挨拶なんかいい。早く姉さんを殺した相手を探そうぜ!」
「まあまあ。焦ってはいけませんよ。まず落ち着いて、それから判断の材料を集めないと」
宥めるケンイチ・ヤマモト(ea0760)にますますベアリーは声を荒げる。
「落ち着いてなんかいられるかよ。こうしている間にも姉さんを殺した相手は!」
「だからこそ、だ。だからこそしっかりと情報を集めて犯人を絞り込む必要があるんだ。ふらふらしてちゃ本当に犯人を見つけ出すことは出来ないぞ。いいのか?」
「ぐっ‥‥」
冒険者とベアリーでは踏んできた場数が違う。
とりあえず従うと、素直になれない言葉の替わりに態度が告げた。
小さな笑みを隠してさて、と勇人は背筋を伸ばす。
眼差しの先にはこの酒場のマスターがいた。
「ようベアリー。冒険者の手を借りることにしたんだな。それがいい。無理はするんじゃないぞ。ミザリーは本当に良い子だったから、ぜひ犯人を見つけてやってくれ」
「ならマスター。ちょっと聞きたいことがあるんだが‥‥」
笑顔のマスターに勇人は真剣な面差しを向けた。
「あの晩、彼女が家に帰る時の事を教えてくれ。気付いた事があれば何でも」
「特に変わった様子は無かったと思うが? いつもの通り歌を終えてヒースは他の酒場でも歌うから、と先に帰りミザリーは酔ってはいないから、と一人で帰った。今にして思えば、酔っていたからこそ一人で帰る、なんて言い出したのかもしれんな」
普通なら、自分を付け狙う者がいるというのに、一人では帰るまい。それに、気付いていれば‥‥。
後悔を噛み締めるマスターに、嘘は無いように思う。だが‥‥リーンはさり気なく一つの質問をかけた。
「ねえ。この間、私、ベアリー君を付けていた影の顔を見たの。その人、以前ここでマスターと話をしていた人だったんだけど、知りあい?」
「さ・さあな? 酒場なんてしていると知り合いは山ほどいるから、誰のことやら‥‥。でも、そう悪人はいないと思うから心配は無いと思うぞ」
「どうしてそう言える? 俺はひょっとしたらミザリーの父親も何か関係してるんじゃないかって思ってるんだが‥‥」
「いや、それはないだろう。節操なしな所はあるが、あれはあれで悪い奴では‥‥」
「裏街の顔役が悪い奴じゃ無いなんてことあるかよ!」
冒険者とマスターの会話を聞いていたベアリーは大声で叫ぶと外に飛び出していった。
「待って。ベアリー君!」
リーンは慌てて後を追い、ケンイチもそれに続く。残った勇人も一度だけ振り返ったあと外に出て行く。
(「あいつは何かを隠している」)
その確心を胸に抱いて。
●細き指の吟遊詩人
「ねえ、何をしてるのかな?」
問いかけるような、確認するようなフォーリィ・クライト(eb0754)の呟きに
「さてな? フォーリィ殿に解らぬ事が私に解ろう筈が無い」
ロバート・ブラッドフォード(eb4464)は小さな声で答えた。微かな声のやり取り。だが‥‥
「静かに。気付かれたら厄介です」
それをイェーガー・ラタイン(ea6382)は指で制した。仲間達もそれに頷き、壁の向こうをそっと伺う。
向こうには階段がある。以前歌姫の命が消えたあの場所だ。そこで
「何をしているのでしょう。彼は‥‥」
仕事帰りの吟遊詩人ヒース。カンテラを掲げ、彼はうろついていた。まるで
「何かを探している感じ?」
ロバートは仲間の推察が正しいだろうと感じていた。
今日一日、仲間達と聞き込みをした。酒場は別グループや手伝いを申し出てくれたソウガ・ザナックスやバルバロッサ・シュタインベルグに任せて自分達は主にヒースの周辺を探っていたのだ。
ヒースは最近やってきた旅の吟遊詩人。安宿に一人で住んでいるごく普通の人間に見えた。
ただ
「時々ぶつぶつと独り言を言っているような時があるぜ」
「周りに誰もいないのに胸元に手を当ててな。ちょっと変な奴だよな」
そんなことを言う人物もいたのだ。
ミザリーの追跡者については実は結構絞れてきた。
路地で暮らす帰る家の無い男の中に小指を無くした男がいるという、話が聞けた。
彼は元兵士。戦の中、妻を失っていた。
亡くした妻はミザリーに面影があると彼を知る僅かな者は語ってくれた。
ミザリーのファンで彼女の顔を見るのが生きがいだと言っていたとも。
だが彼はミザリーの死後、酒場にも路地にも顔を出さなくなった。
「その人がミザリーさんの追跡者かな‥‥!」
「シッ! 誰かが階段から降りてきます!」
イェーガーの警告に、冒険者達は身構えた。ヒースも背後に近づく気配に気付いたようだ。手首を返し、カンテラを持ち上げる。
階段から降りてくる男の手にある剣が光を弾いて‥‥
「ミザリーの所へ行け! 行って罪を償え!」
「うわああっ!」
悲鳴と同時にそれは消えた。
「危ない!」「大丈夫?」「ヒースさん!」
隠れて見ていられる状況ではない。冒険者はヒースに襲い掛かった影に駆け寄る。
か弱い吟遊詩人。彼を助けようと。
だが‥‥。
「えっ?」
フォーリィは目を瞬かせた。ヒースの上に覆いかぶさっている男は、動かない。ヒュウと息を吐き出すのみ。
「何?!」
ロバートとイェーガーが慌ててその男をヒースから引き剥がした。地面に横たえ、そして‥‥カンテラを掲げた。
男は、首を横一文字に切られていた。見れば解る。もう、絶命寸前だ。
「た、助けてくださって、ありがとうございます。突然、襲い掛かってきたものですから‥‥つい、護身用のナイフを振り回してしまい‥‥」
ヒースはナイフを取り落とす。細い繊細な指は、指輪まで血に染まっていた。
「ひょっとしてミザリーを殺したのも、こいつなのでしょうか?」
「それは、解らないけど‥‥ん? なに?」
男は片手で喉を押さえながら片手で空を仰ぐ。武器を持つ無骨で太い指は一本が欠けていた。
「ゆる‥さ‥‥。ミ‥‥リーを‥‥ころ‥‥。私は見‥‥。まも‥‥れ‥‥な」
ぱたり。
手が落ちて彼は絶命した。
「こいつがミザリーを殺した犯人ですか。‥‥私はミザリーの仇を討てたのですね。彼女の‥‥」
俯き目元を擦るヒース。
だが、冒険者達は誰一人頷くことができなかった。
●もう一人のストーカー
「父親の部下ぁ? こいつらのか?」
捕らえ、組み伏せられた男はリーンの槍の下で勇人の頓狂な驚き声にこくこくと、何度も首を前へと動かした。
酒場を出て、暫くの後、冒険者達はベアリーと聞き込みがてら街を歩いていた。
「なあベアリー。なんでヒースをそんなに嫌うんだ? 大好きな姉さんを取られたからってだけの話でもねぇだろ。一体何が原因だ?」
質問にベアリーはふくれっ面で答える。
「あいつは姉さんだけを愛してる訳じゃない。大切な人の形見だとか言って指輪をいつも首から下げてるんだ。汚ったねえ指輪を、だ。それなのに、姉さんに言い寄ってちゃっかり恋人気取り。普通女に言い寄るなら昔の恋人のものなんかスッパリ捨てるのが‥‥!」
「いいですか? お二人とも」
ケンイチの声にベアリーが、横を向く。そこには臨戦態勢の勇人がいた。
「ああ、解ってる。‥‥知らん振りしてその角を曲がれ、そして、そこからいいと言うまで動くな。いいな」
「解った」
それから五分足らず。ベアリーを付けてきた男は、冒険者達に取り押さえられ、囲まれていた。
男は剣の腕も体術もそこそこの力を持っていたが、ベテランの冒険者を相手にするには一人では力が足りなかったようだ。
「こいつが姉さんの仇か!」
今にも切りかからんとするベアリーを止めて、お前は誰だ。と問うた勇人の質問に男は、自分は二人の父親の部下。彼に様子を見てこいと頼まれた。と答えたのだ。
「ミザリー様が殺されたと聞いて、主は心を痛めておいでです。だから私は主の命を受け、その犯人を捜しベアリー様を守る為に来ただけなのです」
その言葉にベアリーが驚いたように首を振る。ミザリーの父親が裏街で少しは顔の聞く者だとは知っていた。
今も昔も女好きで、気に入った相手は手当たり次第の奴だ、とも。
『父親としてはそう悪い人では無いんだけど、男としては最低。しかも兄弟が多いから家の中は毎日戦争よ。後継者争いでいつか血を見るわ』
『この前、私と同じくらいの子を無理矢理恋人から奪ったの。彼女は、ボロボロになって自ら命を絶ったわ。私は絶対、あの人を許せない!』
悲しそうに彼女は家を出た理由を語っていた。知らずベアリーの手が震える。
「そんなはずはない。何で俺までベアリー様、なんだ? 俺は孤児でミザリーが拾ってくれて‥‥」
「ミザリー様はベアリー様も主のお子の一人だと言っておられましたよ。『お父様が気まぐれで抱いた女の人の子。でもこの子にそんな事は知らせなくていい。跡目争いになんて関わらせたくないから』と」
「姉さん‥‥」
目を閉じてベアリーは顔を伏せている。
冒険者達は、突然の展開に正直状況をまだ完全に把握できずにいた。
だが、一つはっきりしたことがある。勇人は男にもう一度向き合った。
「ベアリーをつけていたのはあんたで、あんたはミザリーを殺していないんだな?」
「無論」
彼は真っ直ぐに頷く。
「犯人を捜し、捕らえよと言われています。主を怨む者なら山ほどいるでしょう。だが、優しい心を持つミザリー様に恨みを持つものはそうはいないはず‥‥。私が命じられたのは護衛と調査。貴方方とある意味同じです」
ならば、追跡者は二人いることになる。
そして彼は言葉を信じるなら殺人犯ではないのだ。
「厄介になってきましたね」
ケンイチの言葉が、今の状況を悔しいまでに的確に表していた。
●見えない依頼人達
目を覚ましてギルスはため息を付いた。
「大丈夫?」
心配そうに聞くメレディス。ギルスはまだ黙り込んだままだ。
「どうしたんだい?」
「『彼女』は本当にミザリーさんなのでしょうか?」
「えっ?」
例の夢を見てみたいと、ギルスが言うのでメレディスが付き添い一夜を過ごした。
指輪を抱きしめて寝た結果、夢はちゃんと見ることができた。だが‥‥
「どうしてそう思うんだい?」
違和感に悩むギルスが出した結論にメレディスは首を捻った。
「‥‥確かに殺されたのはミザリーさんで間違い無いと思います。ですがそれを見せているのがミザリーさんなのか‥‥と」
もし彼女本人ならばもっと感情が伝わってくるのではないかと思ったのだ。
闇を歩く恐怖、突き落とされた時の衝撃、そして殺される瞬間の怒りや恨み。
あの夢にはそれが無かった。まるで事件を彼女の中から第三者が見ているような感覚。
「この指輪。ベアリー君にお返しするとのことでしたよね」
「うん。ただ衝撃が大きすぎないかなあって、心配だけど」
「では、勇人さんが来たら確かめたいことがあるのです。聞き込みの手伝いに行きましょう」
身支度を整えたギルスの言葉にメレディスは頷いたのだった。
「背中を押されてから多分それほど経たないうち、ゆっくりと降りてきた人間がいて、カンテラの光が揺れた。そして伸びてきた細い指が‥‥」
戻ってきた仲間達の情報交換の後、二人は依頼のこと、指輪のこと、そして指輪が見せた夢の顛末まで全てをベアリーに話して聞かせた。
そして指輪を差し出しす。
「この指輪を持つと夢を見る。お姉さんの死んだ時のだ。君には違う夢を見せるかもしれないし、そうでなくても辛い夢だと思うけど、それでも返して欲しい?」
「もちろんだ! 姉さんの大事な形見。姉さんの復讐の為にもどうしてもそれが必要だ」
指輪と言葉を差し出したメレディスは頷いて、指輪をベアリーの前の机に置いた。
大事そうに指で摘まんだベアリーの動きが突然止まり、信じられないと、瞳を大きくする。
「‥‥復讐ねえ。まぁそれで君の心に区切りがついて、その後より良く生きるなら復讐もいいかもしれない。って‥‥どうしたの?」
「この指輪。姉さんのじゃない!」
「なんだって?」
驚く冒険者達。その中でギルスは一人小さく呪文を唱えた。白い光が彼を包む。
瞼を閉じた彼は、指輪に向けてデティクトアンデットの魔法をかけたのだ。
だが驚き目を見張る。
「えっ? 反応が二つ? どういうことです?」
『あの人の所へ返して‥‥』
指輪のゴーストが現れ語る。
そしてギルスのみ感じた沈黙のゴーストはベアリーの背後にいた。
二箇所に、二つ。ゴーストの存在。
そう。追跡者が一人で無かったように、見えない依頼人もまた二人存在したのだ。