真田獣勇士2〜狙われし首

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月07日〜08月12日

リプレイ公開日:2006年08月09日

●オープニング

 真田獣勇士。
 其れは、ウィンターフォルセお抱えの特務部隊。
 その全貌は、一部の者にしかあかされてはいない。
 いわば極秘部隊の一部である。名前は知られていても、活動内容は不明‥‥。

「聞いた? ウィンターフォルセ、アカデミーとか作るんだってサ」
「へぇ、アカデミーねぇ‥‥いいなぁ、俺も行きたい‥‥」
「アンタはダメに決まってるでしょ? 大体、ロクに仕事もしないで遊んでばっかなアンタじゃ無理よ!」
「遊ばせてるのは何処の誰!?」
 悠が怒鳴れどラシェルは無視。
 こんな事は日常茶飯事である。
「‥‥鳩、来ました‥‥故、お静かに‥‥」
「あら、早いわね。読みあげて頂戴」
「了承‥‥。主の首‥‥狙う者あり‥‥。影を持って‥‥制裁‥‥故に、帰還せよ‥‥」
「んー? どーゆーことー?」
 首を傾げるマリア。
 藍音は小さく首を横に振ると、ジャスティスを見つめる。
「つまりは、領主様が狙われているから早く戻って来なさい! そういう事ですよね?」
「な、なんか緊張する〜! まるでシリアスだよぉ☆」
「わっ、私も‥‥緊張するのですぅ〜‥‥」
「バカ! シリアスみたい、じゃなくてシリアスなの! 急いで戻るわよ!」
「‥‥私達の事は‥‥極秘です故‥‥隠れ蓑が、必要かと‥‥」
 藍音の言葉にラシェルが動きを止めた。
 そして、指をパチン☆と鳴らすとニンマリと笑った。
「こーゆー時こそ冒険者! よねぇ?」
「あら、同じ事考えてましたね。意外です、ラシェル」
「いっぺんどつくわよ、ジャスティス?」
「でも、どうして今頃になって狙うのでしょう?」
「簡単だよ。ウィンターフォルセにはもう新領主が派遣されていて後は就任披露宴をすれば終わりだ。なら、ここで今の領主を討てば少しでも先延ばしは出来るし街としての機能も混乱する狙いだと思う」
「アンタ、よくそんな事考えつくわね? 其れこそ今更じゃない! 復興だって始まってるのに!」
「だからこそだよ。街は復興しつつあり、民の心も冒険者達や新領主に集まっている。安心しきっている所で領主が死ねば‥‥冒険者達は『領主を守れなかった』と噂され、また心は離れる。まさかとは思いたいけど、この地にゲリラみたいな団体があるのかもね」
「‥‥フクザツ〜☆」
「とりあえず、策は練るよ。こういう事態の策は結構簡単だからさ。密書によると、今回から手助けしてくれる傭兵が一人。いるみたいだしさ?」
 悠がそう言うと、ラシェル達は頷いて主が待つ地へと急ぐのだった。

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            任務書

 真田獣勇士の隠れ蓑を主とせよ。
 主の首を狙う者を首尾よく捕らえられたし。
 相手はプロだと思われる為、警戒されたし。
 尚、この任務の間。真田獣勇士と区別がつかないよう
 【獣耳】と【尻尾】を着用する事。

 真田獣勇士の事が表沙汰となった場合、無条件で失敗とする。
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●今回の参加者

 ea0914 加藤 武政(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1314 シスイ・レイヤード(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)

●サポート参加者

シルバー・ストーム(ea3651)/ グレイ・ドレイク(eb0884

●リプレイ本文

●前夜
 城内の一室。集まった冒険者達と、獣勇士達が集められていた。
 その中に、一人だけ顔も知らない新しい人も混じっている。
「‥‥ちょっと、待った。貴方、そのお面はどういうつもり?」
「耳と尻尾じゃなくてもいいだろ?」
「バカ! それであたし達の存在がバレたらどうしうよもないでしょうに! とっとと耳と尻尾つけなさい!」
「耳と尻尾を外すって選択はないのね、ええわかってました」
 耳着用を拒否していた加藤武政(ea0914)にラシェルが無理矢理耳と尻尾をつける。これがないともしバレた時、対処しようがない。隠れ蓑にもなれやしないのだ。
「‥‥あちこちに‥‥沢山仕掛けたんだな? 仲間引っ掛かったら‥‥かなり危なくないか?」
「其れは無論承知している。但し、教えられるトラップは限りがある」
「どういう意味だ、其れ?」
「いざという時のトラップも仕掛けてある。つまり、いざという時にしか使えないトラップもあるという事だ。其れに関しては教える事は出来ん」
 傭兵風の男がそう言うと、シスイ・レイヤード(ea1314)はふむ、と考え込んだ。
「ウィンターフォルセが、やっともとにもどろうとしてるのに、じじをねらうなんてゆるせないの。そんなふとどきものは、おしおきなの」
「プリンセス、くれぐれも無茶だけはなさらないように‥‥」
「わかってるの!」
「まぁ、トラップについては大丈夫なのじゃ♪ 罠解除に最適な人材がおるゆえ」
「‥‥さ、寒気してきた」
 悠の背筋に悪寒が走る。ヴェガ・キュアノス(ea7463)の言う最適な人材というのが誰なのか分かったような気がしたからである。
「因みに、此方が今回の私達の配置になりますわ」
 ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)が冒険者達の配置書を悠に手渡す。一瞥するや、悠が怪訝な表情を浮かべた。
「プリンセスが城内‥‥? まさかとは言わないけど、城内で魔法は止めてくれよ? 策が全て吹っ飛ぶ。其れから、怪しい人を見つけたら近くのメンバーに伝えてくれ。策の内容は全てラシェル達に伝えてあるから」
「よし! それじゃ各自配置につこうぜ!」
 陸奥勇人(ea3329)がそう言うと、皆小さく頷いてそれぞれの持ち場へと向かうのである。
 悠とその傭兵の男だけを残して‥‥。
「プリンセスの見張りについてくれるか? まさかとは思うけど‥‥魔法を使う、という傾向が見られたら‥‥」
「肯定だ。俺もそう思っていた所だ。任せておいてくれ、怪我はさせん」
「頼むよ。‥‥これ以上何かやらかされると困るからね」
 妙な胸騒ぎを隠せない悠なのであった。

●警戒態勢
「さぁて、今回の仕事は宜しく頼むぜ?」
「はいはーい。ボク達の方こそよろしくねー?」
「で、俺達は街を歩いてればいいのか?」
「そうだねー。自警団の人に絡まれてる間に眺めるーとか、そういった方が結構怪しまれないんだよね」
 エリィがそう言うと、勇人は小さく苦笑いを浮かべた。ここまで御気楽なナイトを見るのは結構久しぶりのような気もするからだ。
「にしても、その耳似合ってるねー? エルシアと同じだし♪」
「被るのはご愛嬌ってとこだが、これくらいが丁度いいよなぁ」
「そのうち癖になると思うけどね」
「こら、其処の冒険者三人! なんだ、その耳は!?」
 自警団の一人に声をかけられる三人。丁度其処は街の広場。怪しい輩がうろつくにはうってつけの場所でもある。人が沢山集まる場所。其処は、怪しまれずに動ける場所だからである。
「最近は冒険者だってこの程度は洒落は利かすんだぜ。似合ってるだろ?」
「似合ってるって‥‥怪しいにも程があるぞ?」
「えー? 冒険者の間ですっごく流行ってる此れ知らないの? ボクなんかこれ手作りだよ〜?」
「そ、そんなにも流行ってるのか?」
「うんうん、流行ってる、流行ってる!」
 エリィが自警団の人間の気を逸らしている間に、勇人が辺りに目を配る。街角。大通り。商店街。全ての方角を見、怪しい人がいないか確認する。噴水の方を確認した時。其処に一人その場には相応しくない者がいた。
 漆黒のマント。顔に仮面をつけた者。其れは、どう見ても怪しい‥‥。
(「アイツ‥‥」)
「まったく! 騒動だけは起こすなよ!?」
「はーい♪ ‥‥どうだった、勇人?」
「とりあえず怪しい連中の割り出しだが、何か策は?」
「そっか。見つけたんだね」
「‥‥すぐに行動を、起こすな‥‥起こすと‥‥バレやすい。その男の特徴‥‥可能な限り、この地図に書け」
 地図に何かを書き込むという動作。此れは決して怪しまれる事はない。
 特に、宿に向かいながらだと次の目的地を決めているパーティと見られる事もある。
「仮面?」
「あぁ、つけてたぜ、仮面」
「‥‥臭うな。伝書鳩‥‥こっちはこのまま対応するぞ‥‥」
 こうして、一羽の伝書鳩が大空を飛び立った。

●攻めて来た!
 動きは夜になってもなかった。城内にも、城門にも何処にも。
 しかし、ここからが作戦の本番である。
「悠さん、本当に大丈夫なんですか?」
「何で俺が囮になったかは察してくれ。天界人だという事がバレなきゃ領主として間違って貰えるんだろうケドさ」
「冒険者服も借りれましたし、それで何とかなると思いますよ?」
 犬耳をピコピコとさせながらルイス・マリスカル(ea3063)がそう呟く。
 夜になると城内は深い闇に包まれる箇所が多い。その為、蝋燭やランタン等は必須となってくる。
 異変が起こったのは夜半。
「暗いわね‥‥二人とも、ランタンきっちり持つのよ?」
「はい、任せてください」
「それにしても、アンタの格好‥‥破廉恥過ぎるわよ、少しは考えなさい? 目立つって、そっち方面に目立つじゃないんだから」
 ラシェルがイリア・アドミナル(ea2564)の服装を注意する。ある意味隠れ蓑になれるが、今後の作戦に結構響くかも知れない。
 しかし、着替えさせる余裕はない。
「仕方ありませんわ、ラシェル様。少しは大目に見ないと‥‥」
「大目に見るのも限度が‥‥」
「ラシェルちゃん、あれ!」
 マリアが声をあげた。マリアが指差す方角。其処には、ランタンの光でぼんやりと浮かび上がっている人影。漆黒ローブの仮面の人影。其れは、報告を受けた者と同一人物。
「ちょっと、其処のお方? 止まって頂けますか?」
「‥‥」
「動かないわね‥‥どういうつもりかしら?」
「‥‥! ヤッバイ! これ、ファンタズム!! 幻影ッ!」
 おかしいと思ってその人影に近づいたマリアが叫ぶ。マリアがその人影に触ろうとすると、スルリと手が通り抜けてしまうのだ。
 敵は何処へ? 何処から? ラシェルはジャクリーン達に頼んで城内へと入らせるのだった。

「しっかしヒマだなぁ‥‥」
「あらあら、加藤さん。そんなにヒマヒマ言ってるとそのうちヒマじゃなくなりますよ〜?」
「俺はその方がいいんだけどねぇ‥‥」
「無駄話は其処までだ。殺気」
 クロトがそう告げると、ジャスティスは一歩下がり、武政がジャスティスをガードするかのように前へと一歩出る。
 月が照らす裏門。其処に不気味な風が吹き抜ける。
 ゴクリ。三人がツバを飲んだ瞬間である。光る矢がクロトに向けて放たれた。
「くっ‥‥!?」
 矢が飛んできた方角へとクロトが矢を射るが、其処に手応えはなかった。クロトは掠り傷を負うものの、そんなたいした威力ではない魔法だった為無事である。
「大丈夫ですか、クロト!?」
「あぁ、こっちは大丈夫だ! あの矢‥‥ムーンアロー‥‥? まさか、相手は月魔法所持なのか?」
「その可能性は大だ。そうなると俺達で止めれるかどうか不安だな‥‥」
 武政の嫌な予感は的中する事となる。沈黙するその場。何処から攻めて来るか分からない。そんな静寂を裂いた音。
「しまった! シャドウボムか‥‥!」
「中に入られてしまいました! 加藤さん、急いで中へ! 食い止めてくださいませ!」
「中はウィザード達が守ってる‥‥少しは楽に対処出来ると思う!」
 こうして、暗殺者‥‥漆黒のローブ、仮面の者は城内へと侵入したのである。

●城内決戦
「‥‥!」
「どうしたの‥‥藍音‥‥?」
「皆様‥‥来ました‥‥警戒を、お願いします‥‥。窓、全て閉めて‥‥」
 藍音がそう言うと、レン・ウィンドフェザー(ea4509)とシスイは全ての窓を閉めた。
 今までの冒険者達からの報告からして相手は月魔法の使い手。闇の中では凶悪なシャドウボムは防げる。
「後は‥‥悠さんが上手くやってくだされば‥‥」
「こっちです、悠さん!」
 そんな声が、藍音達の耳にも入る。
 ルイスが悠を連れて城内を逃げ回る。暗殺者は彼の囮作戦に引っかかったようである。
「ルイス、出来るだけ‥‥しつこく逃げ回ってくれ!」
「分かってます! トラップの場所は何処です!?」
「大半は部屋の前と聞いてる! 踏ませながら急いで‥‥!」
「‥‥!」
 ムーンアローが悠に命中。その事により、悠にも少し恐怖感が滲み出てくる。
「い、威力ないからって此れは此れでこえぇぇぇ!」
「落ち着いてください、悠さん!?」
「落ち着けるか! ってうわあぁぁっ!?」
「あちゃ‥‥そんな所に網トラップがあったんですね‥‥」
「いいから、解いてくれよっ!」
 しかし、その声にピタリと暗殺者の動きが止まる。
 ‥‥気付かれたのだ。囮であると。
 瞬間、踵を返して領主の部屋へと向かうのだった。
「しまった、気付かれたか‥‥!」
「私が行きます、悠さんは出来ればトラップの位置の把握を!」
「おっけー、任された!」

 領主の部屋の前。緊迫した空気が流れていた。
 無音。何処までも静かである。
「不気味じゃのう‥‥一体どうした事であろうか?」
「‥‥藍音」
「了承‥‥皆様、暫しの間宜しくお願いしまする」
 戒那がそう言うと、藍音はインビジブルを唱え姿を消した。
 此れで一名減った、と考えてくれればいいのだが。
 そんな時、綺麗な歌声が聞こえてきた。
「‥‥!」
「‥‥来た、みたいだな‥‥」
「みんな、頑張って抵抗するのじゃ! こんな歌に耳を傾けてはならぬのじゃ!」
 ヴェガがそう言うと、三人はコクリと頷き何とか踏ん張る。その様子に見兼ねたのか、暗殺者は三人の前に姿を現した。
「ほほほ、此処はこのヴェガが通さぬぞえ。みなの者、やっておしまい!」
「どうにかして‥‥切り抜けるしかないか‥‥!」
「皆さん、援護します!」
「ルイス、助かるなの!」
 ルイスがレン達の前に盾を掲げ立ち、その隙にシスイがウインドスラッシュを放つ。
「‥‥ッ!」
「させねぇっ! 行け、颯!」
「待つのじゃ! 相手は月魔法所持なのじゃ! 無意味にペットを向けては‥‥!」
 勇人がその決戦に間に合い、ペットである犬を差し向けるのであったのだが、ヴェガの予想通りである。
 暗殺者の体が銀系統の淡い光に包まれたと思った瞬間。犬は逆に冒険者達に牙を剥いた。
「なっ‥‥!?」
「コンフュージョンじゃ‥‥! この暗殺者、かなりの場数を潜り抜けておるというのか!?」
 ヴェガ達が驚いて一時手を止めた隙を狙って、暗殺者は領主の部屋へと侵入。
「しまった‥‥! このままじゃヤバイぞ!?」
「こうなったら、さいしゅうしゅだんなのー!」
「待て、レン! 其れを使うには最大限の配慮が!」
「じじを討ち取られるよりはマシなのー!」
 勇人の制止も聞かず、魔法詠唱を始めるレン。誰もが覚悟しただろう。城その物が崩れ落ちることさえも。
 しかし、その凄まじい音は聞こえては来なかった。
 勇人達が恐る恐る目を開けると、其処には暗殺者を縄で捕らえている藍音。
 暗殺者にクナイをつきつけている戒那。
 そして、レンを睨むように傭兵が一人立っているだけだった。
「こ、此れは一体‥‥?」
「はぁ‥‥はぁ‥‥間にあっ‥‥」
 ガコーンといういい音。シリアスな場面であるのに、追いついてきた悠が部屋のトラップ、金ダライに引っかかったのである。
「だ、台無しじゃ‥‥台無しなのじゃ‥‥!」
「と、とにかく! 勇人さんの犬は、とりあえず気絶させる事に成功したよ。この場に関しては‥‥藍音にはインビジブルでこの部屋に待機しておくように言ってたんだ。もしもの時は、領主の身代わりになれるようにってね」
「インビジブル‥‥前の報告書でも使ったってあったな‥‥」
「戒那に関しては忍の仕事をさせたまで。暗殺者には暗殺者を、ってね」
 悠が頭を抑えながらそう言うと、戒那は仮面の暗殺者の首の後ろを軽く叩く。すると、暗殺者はその場に崩れ落ちる。気絶させただけのようだ。

「‥‥!」
「レン‥‥? ‥‥喋れない、のか?」
「プリンセスに関してはご覧の通り。彼に前持って警戒しておくようにと頼んでおいたんだ」
「まさか城内でローリンググラビティとかやらかすのではないだろうか? という懸念でな」
 先手を打ってサイレンスをかけたというのである。こんな所であの凶悪な魔法ぶっ放されたらたまったものじゃない。
 暫し待ち、効果が切れた事を確認すると、悠が溜息をついてレンを見た。
「あのね、プリンセス? まさか、城内であの驚異的な魔法使おうとしたなんて‥‥ありえないよね?」
「う‥‥でも、いのちにはかえられないなのー‥‥」
「主様なら、この報告聞いて余計に寝込んだよ。頭が痛いってね」
「だから、俺は要請してからと言ったんだ‥‥」
 勇人がやれやれと溜息をつくのだが、悠のキツイ一言は彼等にも注がれる。
「そっちもそっちだ。猫やら何やらを城内に入れて。普通は入れない、犬や猫が城内で粗相をしたら、どうするつもりだったんだ?」
「其れは‥‥すまない。逃がさないようにする為、手伝って貰おうと‥‥。まさか、町中で行動を起こさないとは思わなかったしな‥‥」
「あの場で即行動なんか起こしてみろ。すぐに此方の警備がバレていただろう。この暗殺者、手だれているからな」
 そう言うと、傭兵は暗殺者の仮面に視線を落とした。
 見覚えがある、というのだ。
「此れは‥‥ゲリラ集団がつけている仮面だな。死神の仮面とも言われている。やはりこの地にゲリラが潜んでいると考えてもいいだろう」
「その事に関しての調べはそっちに任せていいかい?」
「了解。此方で調べておく事にする」
「助かります」

 こうして、暗殺者は無事捕らえられ、領主の命も死守。なんとか真田獣勇士隊の事は表沙汰にはならなかった。

 だが、領主はこの事が精神ダメージとなり寝込んでしまったという知らせが届いたのだった。