モンスターレディ2〜お祭り準備☆レース

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:13人

サポート参加人数:4人

冒険期間:10月12日〜10月17日

リプレイ公開日:2006年10月15日

●オープニング

「あら、今日は少し元気ですねぇ〜♪」
 朝早く起きたマリスが、ヒポカンプスを見て笑っていた。
 このヒポカンプスは傷つき倒れていたのをマリスが保護したものである。
「ファームもそろそろらしい事しなくちゃいけませんねぇ〜。フォルセの事もありますもの〜」
 前回のお祭りが失敗し、少し気力が下がっていたマリス。
 そしてフォルセ陥落危機事変。その時、マリスはファームにいた。
 敵兵がファームにまで来たようだったのだが、その部隊もマリスの強力によって数人のめされ、数人は北へと逃げていったのである。
 勿論、のした数人はマリスが預かっている。
「ほぉらぁ! 早く起きてくださいよぉ〜! お仕事の時間ですぅ!」
「もー少し寝かせて‥‥」
「起きないとお仕置きなのですぅ♪」
「‥‥げ!?」
 マリスの言葉にハッと気付いてガバリと起き上がるファイターの格好をした青年二人。
 どちらも見習いファイターといった様子で、若い青年二人である。
 この二人、一度はフォルセの軍師であるルキナスに尋問されたものの、自分達は傭兵の見習いで何も知らないらしい。
 詳しく言えばフォルセ城で身を投げた侍女の属する傭兵隊の見習いだったらしい。指揮官は吟遊詩人風の男だったと言うが、どこに行ったのかも二人は知らなかった。
 事変に参加していた理由は『見習いから格上げしてやると言われてのった』と主張。
 他のフォルセの騎士達は『フォルセに実害を与えたのだ! 仮令誰であろうと容赦はできん!』と厳罰を要求していたのだが、マリスの一声によりルキナスも同意。
 なにせファームに勇んで飛び込んだはいいものの、マリス定例の『素手で薪割り』を目撃してしまい、その異様な光景に声をあげる始末。
 そしてマリスに見つかり声をかけられた途端、跪いて命乞いするような程度の兵。捨て駒にされた者として、生かしても害を為せるような能力も無いとの事。但し、フォルセを襲ったには変わりない。
 彼等は降したマリスの権限の元、罰として無期限でファームを手伝っているのだ。
 捨て駒にされた者を殺してもフォルセには得はない。勝者の権利はフォルセとマリスに属する。更には城で死んだ侍女の仲間という事から心情もあるだろう。ならば生かして人手が足りないファームに回すのが妥当。何かしでかそうとしてもマリスに預ければ制止可能だという。
「さぁ、動物達の朝の餌やりですよ〜♪ しっかりあげてくださいねぇ♪」
「は、はい‥‥今すぐやります!」
「しっかし‥‥なんだってこんなファームの手伝いなんか‥‥」
「仕方ないよ。騙されたこっちも悪いわけだしさ。ファームだって、やってみると楽しいじゃないか」
「そりゃあ楽しいけど‥‥。あーあ、マリスさんがもう少し優しければなぁ」
「十分優しいと思うんだけど‥‥キレイだし‥‥」
「強力がなけりゃな」
 二人の青年はそう言うと、小さく溜息をつくのだった‥‥。

 その頃、マリスは考えていた。
 様々なペットが活躍出来るお祭りの企画はないだろうか? と。
 考えながらも預かっている馬等の世話をしている。
「動物さんが楽しめて、活躍出来る何かがあればぁ〜‥‥そうだ! お二人様〜♪」
「は、はいー?」
「次は何ですか?」
「ペットレースのコース場とか作れませんですぅ?」
「コース場‥‥ですか?」
「ですぅ♪ 障害物をいっぱい作ったコース場ですぅ♪」
 マリスがそう言うと、二人の青年は顔を見合わせた。
 つまり、障害物ペットレースをしたいと考えているのだ。
 ペットは躾をすれば賢くなるもの。そして、教えれば教える程其れに長けていく。
 ペットの其処を利用しようというのだ。
「犬レースとかもいいと思いましたけどぉ、他のペット達にも教えれば簡単なのが出来るかもですよぉ♪」
「でも、時間がかかるんじゃないですか?」
「そうですよ。直には覚えないでしょうし」
「ですからぁ、訓練合宿するのですよぉ♪ 勿論、冒険者さん達が選手ですぅ」
 ほくほくと嬉しそうに微笑むマリス。
 合宿の間はペット達に囲まれた生活をするからである。
 二人の青年は逆う事せず、すぐにコース場作成へを始めた。
 木材は森で木こりをして何とか入手。そして、土で土台等をかためていく。
 出来たのは立派なコース場。壁、水、振り子等の障害物を用意出来た。

「後は冒険者さん達をお誘いするのです〜♪」
「あーあ、マリスさんの目に映るのはペットだけかぁ‥‥」

 こうして始まったお祭りの準備。
 以前の失敗を取り戻す為、今度こそ成功させる為。
 今回は準備期間を踏んでいくのだった。

●今回の参加者

 ea0643 一文字 羅猛(29歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1984 長渡 泰斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7891 イコン・シュターライゼン(26歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)
 eb0884 グレイ・ドレイク(40歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3490 サクラ・スノゥフラゥズ(19歳・♀・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 eb4064 信者 福袋(31歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4333 エリーシャ・メロウ(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)

●サポート参加者

ヴァラス・ロフキシモ(ea2538)/ リーン・エグザンティア(eb4501)/ 越野 春陽(eb4578)/ マニ・ファクチュア(eb5913

●リプレイ本文

●提案
「レース以外の企画だが、ロバやノーマルホースで「乗馬体験」というのはどうだろうか。無論、引き手ありの方向でだが」
 マリスと合流し、ファームへと案内される道中で一文字羅猛(ea0643)が一つの提案を出した。
 其れは、皆に楽しんでもらえるようにと考え出された案だった。
「いいですねぇ〜♪ コースでしたら、少し短くても大丈夫だと思うですぅ」
「場所は、レースコースで使えるところを使うのもいいかもしれないと思っているが」
「なんでしたらファームの一角に作りますよぉ〜? レースコースは少しでこぼこしていますからぁ」
「現状はどうなんだ? 襲撃の事件があった時以来で気になっていたんだが」
 風烈(ea1587)が尋ねると、マリスはころころ笑ってこう答えた。
「大丈夫でしたよぉ〜? あの後、色々な人が来て馬等を預けていってくださいましたし〜」
「フォルセが襲撃されたと聞いた時、危険なペットが外に出られないように頑丈に作ったんで、占拠されて陣地代わりに使われたらと心配したが、無事で何よりだ」
「あはは〜。あれくらいでしたらどうとでもなるですぅ♪」
 寧ろ占領なんて彼女がここにいる限り出来る話ではないだろう。
 天然の怪力なのだから‥‥。

「純粋なスピードを求めるタイプのレースと障害走の2系統はどうであろうか?」
「それだと直線コースが必要ですねぇ〜? 検討してみますですぅ♪ 勿論、前向きにですよぉ?」
「鷹狩りというのはどうか?」
「そうですねぇ。見る人によっては凄い喜んでくれるですよ〜。でも、間違っても人の近くでやっちゃダメですよ〜? 近すぎると怖い迫力も見えちゃうですからね〜?」
 マリスの答えに長渡泰斗(ea1984)も頷く。
 今時そんな事をする冒険者はいないだろう、という安心感からでもある。
「‥‥あのフォルセ防衛戦から早一ヶ月‥‥マリスさんは無事だろうか‥‥もしや心と体に深い傷を‥‥いや、どう見ても無事なようだな‥‥心配して損したかも‥‥」
「何かいいましたぁ〜?」
「い、いや。何も‥‥それよりだ、‥‥折角だから、これからも定期的にこのような催し物が行えるような、しっかりした会場を作っておくのも手だな‥‥?」
「そうですねぇ〜。プリンセスがいいとおっしゃってくれるならもう少し土地を広げたいですけどぉ‥‥それはまた別の相談になっちゃいますねぇ?」
 これにはオルステッド・ブライオン(ea2449)も苦笑いである。
 フォルセの実権を握るのはプリンセス。
 マリスはその土地を『借りている』にしか過ぎないのだ。

「しかし、本当によく守りぬきましたね。ご立派です」
「うーん。守ったという意識は全然ないのですよぉ」
「え?」
「だって、私そういう事があったの知ったのつい最近ですからぁ♪」
(「あれだけの騒ぎだったというのに‥‥?」)
 アハメス・パミ(ea3641)は少し呆れていたかも知れない。
 守り通したという意識はないわ、そういう騒ぎあったのも知らなかった。
 どうやったらその調子でいられるのだろうか? と逆に感心するのであった。
「そうそう。こういうていあんをもってきたなのー」
 プリンセスであるレン・ウィンドフェザー(ea4509)の提案はこうだ。
 ファーム全域に、幾つかのチェックポイントを設置。
 辿る順番は各々自由で、全てのポイントを巡って最初にゴールした者が優勝。
 ポイントをどう回るかと言う戦術と、指示通りにペットが動いてくれるかを見極められるかが争点のレース。
「なるほどぉ〜♪ 面白そうですねぇ。簡単に見えて奥が深いですぅ♪」
「メリットとしては、準備がチェックポイントの設営だけと、予算や新規の設備を必要としないところなのー」
「問題はもしペットが制御不能に陥った場合の観客への安全の確保をどうするか、ですね〜? その点に関してはあのお二人と一緒に考えますぅ♪」
「マ、マリスさぁん‥‥僕達ですか?」
「はい、勿論です♪」
 笑顔で答えるマリスに、二人の青年はガクリと肩を落とす。

「騎乗動物とその他の動物のレースは分けて行った方が良いのではないか?」
「はぁい、其れは勿論考えてるですよぉ〜。でも土地関係がありますからぁ」
「それと騎乗動物は地上用と飛行用で分ける様にしては?」
 コロス・ロフキシモ(ea9515)の提案に一度二度頷いてマリスは返事を出した。
 前向きに検討したいとの事。問題はもう少し広めの土地が欲しいという事である。
「ペットから離れた場所に休憩所を設けてはいかがでしょうか?」
「そうですねぇ〜。私の小屋を休憩所として開放したりしてるですけど、中ですしねぇ」
「あと慣れていただく為に動物を題材にした書物なども置いておき理解を深めて戴ければと思うのですが‥‥」
「本を書く場合、大変なのがお金なんですぅ。書くための材料が高値なんですよぉ」
 困ったように笑ってそう言うマリスにサクラ・スノゥフラゥズ(eb3490)も苦笑いを浮かべる。
 確かに、スクロール等もこのご時勢では高い。
 一般人が何枚も買えるような代物ではない為、用意するのにも時間とお金がかかるのだ。

「さて、以前話した動物園のお話ですが。アレは様々な動物を集めてきて、観賞や研究を目的として飼育するものです」
「鑑賞‥‥ですかぁ‥‥」
 その時点でマリスは少し渋い表情を浮かべる。
 動物を愛する彼女にとって、その動物を見世物にするというのはあまり好きではないようなのだ。
「冒険者のペットを預かるというそもそものコンセプトとは全く異なる物です。動物の永住と短期滞在の違いですからね。しかし、動物にとって暮らしやすい環境を整えるという共通点はあります」
「では、後で一緒に視察お願いしますですぅ。説明はその時その時でよろしいですかぁ?」
「はい、私はその為に来ましたから」
「嬉しいですぅ。信者さんは優しいですねぇ」
 ころころと笑みを浮かべるマリスを見て、信者福袋(eb4064)も少し笑うのだった。
「お久し振りです、マリス殿。お約束通り再び参上致しました」
「あら、エリーシャさん。また来てくださったんですねぇ」
「入念な準備にて、先の失敗を補い得るほどの祭りの成功を目指しましょう」
「はい、私で出来る事があればなんでもやりますからぁ♪」
「経緯はともあれ、働き手が増えたのは良い事ですね。2人とも、今後も能くマリス殿を助け働く事を期待します」
「‥‥扱いさえ酷くなけりゃあなぁ」
「何かいいましたぁ?」
 マリスの声を聞いて逃げ出す二人を見て、エリーシャ・メロウ(eb4333)は苦笑いを浮かべるのだった‥‥。

●合宿開始
「驢馬のコロを連れて来たんだが、並走で力を合わせて走ってみようと思ってるんだ」
「あ、じゃあ私も見てます〜♪」
「コロ、いいか? 行くぞ」
 そう言うと、羅猛は驢馬の手綱を引いてコースを走り始める。
 水を少し怖がるものの、羅猛が声をかけてやると少しずつ乗り越えていく。
 何とも微笑ましい光景である。
「マリス、軍馬の事で少し教えて欲しい事があるのだが‥‥」
「はぁい? 一体何でしょう〜?」
「ああ、世話の仕方等を教えて貰いたくてな」
 軍馬に乗り歩かせながら烈がそう言うと、マリスは笑顔でいいですよ、と返事するのだった。
 すると、烈は一度馬を走らせてからマリスの目の前で降りる。
「軍馬といっても、大半は馬と同じなんですよぉ。例えば、ほら。こうやってブラシで撫でてあげると喜ぶでしょ〜?」
「ふむ‥‥確かに撫でてやると喜ぶな。しかし此れは一日何回もしていいものなのか?」
「一日一回でいいですよぉ。水浴びさせた後とかにやってあげるのもいいです〜。あ、水浴びはいきなりバシャーってやっちゃダメですよ?」
 そう言うと、マリスは水桶に水を入れて数個持って来て、手本を見せるように優しく馬にかけてやる。
 馬が少し身震いをして鳴くと、宥めるようによしよしと撫でてやるのだ。
「烈さんもやってみてください〜♪ 飼い主さんにやってもらった方が喜ぶと思うです〜♪」
「あぁ、ありがとう」
「後、水をかけてあげながらお話するといいと思うですよ〜? 動物は私達の言葉を理解してくれます〜。そうして仲良くなっていくと、そのうち動物の言ってる事も分かるのですよ♪」
 マリスがそう言うと、軍馬がマリスの頬に一度擦り寄る。くすぐったそうにしているマリスを見て、烈はなるほどと納得するのだった。
「其れともう一つ頼みがあるんだ」
「はい、なんでしょう〜?」
「哮天なんだが‥‥躾けたいんだ、教えて貰えないか?」
「うわぁ、カワイイわんこさんですねぇ♪ 子犬さんですから、今のうちに躾ければ出来るかも知れませんよ〜♪」
「ああ、まずは待てを教えたいんだ。首に縄をつけなくても飼い主から離れないように」
「うーん‥‥いきなりは出来ないですからぁ、少しずつ覚えさせるんですよ〜」
 マリスがそう言うと、烈は少し考え込んだ。
 今の状態で待てと言えば聞くだろうか? と考えたのだが、元気のいい子犬の事だ。理解せずに走り回ってしまうだろう。
「子供とおんなじようにしつけるといいんですよぉ」
「子供‥‥って俺にはそういうのはいないから分からないな‥‥」
「例えばですねぇ〜‥‥」
 ごそごそとポケットから犬の餌を取り出して、哮天の前に座る。
「縄、つけてて貰えますぅ〜? そうしないと、飛びかかってきちゃうんでぇ♪」
「ああ、しかしどうするんだ?」
「こうするんですぅ〜♪」
 掌の平を犬の鼻先に突き出し
「待て♪」
 とマリスが言う。哮天はもそもそしながらも大人しく座っている。立てば烈にまた座りなおしをさせられるからだ。
 そして、犬を数秒制止させた後。
「はい、おりこうさんです♪ よしっ♪」
 そう言ってマリスは哮天に数粒のエサを与える。嬉しそうに其れを食べる哮天を見て烈は少し感心していた。
「こうやって毎日20分程訓練する時間をとって教えるといいですよぉ? 勿論、今のやり方で♪ 座って待てば餌が貰えると認識させちゃうのですぅ」
「なるほど‥‥よし、今度からそうしてみるか‥‥おい、哮天。こっちへ来い」
 烈が手招きするものの、哮天はマリスの目の前に座っている。マリスは犬のエサを烈に渡すのだが聞かないのである。
「これはあまりやりたくなかったがしょうがない。哮天、おまえの主人は誰だ?」
「‥‥」
「れ、烈さん〜? 彼もまだ子供ですしぃ、こういう大きな所では遊びたがる‥‥」
「決着をつけねばならないようだな」
 闘気を放ちながらそういう烈に、哮天も少し驚きはするものの遊んで貰えると勘違いしたのか飛びかかっていく。
 まるでじゃれ合うような形になってしまった。
「‥‥あらあら〜。案外仲良しさんですぅ♪」

「犬なら街の皆も馴染みがあるだろ。きっちり躾けた犬と一緒に障害を乗り越えるってのは、その意味でも興味を引く催事になるんじゃねぇか?」
「ふふ、違いないですぅ♪ 勇人さんのわんこさんは賢そうですから、楽しめそうですねぇ♪」
「飼い主も犬も引っかからないようにしないといけないから結構大変なんだぜ?」
 陸奥勇人(ea3329)が苦笑いを浮かべてそう言うと、遠くで寂しそうに鳴く動物の声が聞こえる。
 勇人のチーターである。猛獣である為、大きめの檻に入れられ見学させているようだ。
「ほら、相手してくれないから怒ってますよ〜?」
「チーターは本気で走るとやたら速いから見物人も置いてきぼりにしちまいそうだ。だったら今度こそ段階を踏むって事で猛獣からでも皆に慣れて貰うようにしてみたらどうかと思うんだが」
「飼い主も、他の人も襲わない。大人しい子になったらそれも可能だと思いますよぉ? よければ今度ご用意してみましょうかぁ?」
 幸いこのファームには沢山の子供達が遊びに来る。
 もし、子供達が無事に触れるといった所まで出来たのなら、他の人にも試してみても問題はないとマリスは言う。
「マリス殿、ネトをネフェレトに乗せてみたいのですが‥‥」
「ですが〜♪」
「あらあら、フェアリーとネコさんですねぇ♪ 落ちないように、手綱をネコさんにつけてみたらどうでしょお?」
 そう言って用意したのは小さな小さな手綱。アハメスに其れを渡すと、アハメスが自らそれをネフェレトに結わえる。
 苦しくないように、細心の注意を払いながら。
「此れでまず乗せてみてください♪」
「そうですね。ネト、ここに乗るのですよ」
 アハメスがそう言うと、ネトも素直に従いネフェレトの背に乗る。
 すると、ネフェレトは元気よく走り出す。傍から見ればまるでロデオみたいである。
「楽しそうですねぇ♪」
「微笑ましいといいますか、のんびり出来てしまいますね」
「ふふ、其れがペットの力なんですよぉ♪」

「マリスちゃん、運営指針の相談がしたいのー」
「あ、はいですぅ。プリンセスには色々と報告しないとですねぇ♪」
「予算や設備のこともあるなのー。マリスちゃんは今後どういう風にしたいの〜?」
「何れは誰もが触れ合える動物と人の憩いの場にしたいんですけどぉ‥‥それにはやっぱり土地ですよねぇ。お借りしている分の土地では少し狭いのですぅ」
 マリスがそう言うと、レンもふむふむと頷く。
「それに、今後ももっとファームを知って貰う為に定期的なイベントを行いたいのですよ〜。ペットに関する事もそうなんですけどぉ」
「その為の施設の資金と土地が問題なの〜?」
「ですぅ。どうしようか迷ってますぅ」
「それじゃあ、それはレンが検討するなのー」
「はい、よろしくお願いしますぅ♪」
 そう言うと、レンは楽しそうにネコとフェアリーのロデオをぱたぱたと追いかけていくのだった。
 やはり可愛らしい子供だからだろうか。そう言うのを見るとホッとするマリスなのだった。
「マリスさん、このコースなんですが」
「はい〜?」
「当日はどのような形式で行うんですか? やっぱりレースですか?」
 イコン・シュターライゼン(ea7891)が尋ねると、マリスは少し首を捻って
「そうですねぇ。得点形式にしようかなと思ってるのですぅ」
「得点形式、ですか?」
「はい〜♪ トラップを一つクリアするごとにポイント加算をするですぅ。逆にひっかかればポイント減産。完走した時のポイントで決めようかなと〜」
「得意不得意もありますからね」
「後は、完走しきれなかったら勿論失格ですよ〜♪」
 マリスがそう説明すると、イコンは理解するかのように何度も頷くのだった。
 そして、連れて来たペット達と訓練を始めるのだった。

「マリス、馬上試合を俺はもう一度希望したい」
「あ、そっか‥‥皆さんの試合見てませんでしたものねぇ。あの時は残念でしたぁ‥‥」
「前回は結局出来ずじまいだったからな」
「あ、あはは‥‥反省してますぅ」
 マリスが頭を下げると、コロスも苦笑いを浮かべて首を横に振る。
「出来れば別会場でやりたいと思ってます〜。皆さんの試合、今度こそしっかり見たいですから」
「ほぅ! 其れは是非楽しみにしておくことにしよう! 後、ペットファイトについてどう思う?」
「ペットファイト‥‥ですかぁ? ペット達が傷つけ合うのは〜‥‥私としては賛同しかねますですぅ」
「あくまで、安全が確実に確保された上での話だ。一般人の感情の問題もある。何ならこの話は忘れてくれ」
「人々の安全も大事ですが〜‥‥ペット達の事もありますですぅ。もし其れを実施して、ペット達がストレスを溜めたりすれば二の舞ですぅ。ごめんなさぁい‥‥」
 またもや頭を下げるマリス。コロスは少し調子が狂わされているようだ。
「それと、あの青年二人を少し借りていいかね?」
「あ、はい♪」
「え?」
「俺達ですか?」
「おぬし等を少しばかり鍛えてやろう。同じファイターとして戦い方を教えてやる。来るがいい!」
「お、俺達手伝いがありますから!」
「頑張ってくださいねぇ♪」
『マリスさん、そんな殺生な!?』
 こうして青年二人はコロスに連れて行かれ、地獄のような訓練と特訓をさせられたとか‥‥。
「落とし穴だけが気になるが、馬だけは骨折を避ける為に、落とし穴抜きの障害物レースに出来ないか?」
 グレイ・ドレイク(eb0884)がマリスにそう相談する。
 しかし、マリスは笑顔のまま考える事もせずこう答えた。
「馬でしたら落とし穴なんて平気ですよぉ♪ それにあの落とし穴、そんなに底は深くないのですよぉ」
「しかし、もし足を挫いたりしたら‥‥」
「其れを防ぐ為の訓練ですぅ。見ててくださいね〜?」
 そう言うと、マリスは校舎から一頭の馬を連れて来た。其れは戦闘馬ではなく普通の馬である。
 それに跨ると、落とし穴に向かって走り出す。勿論、穴を確認出来るぐらいの距離からだ。
 次の瞬間、マリスが鞭で一度馬を叩くと馬は綺麗にジャンプをし、穴を飛び越える。
「っとと‥‥♪ どうです〜? 訓練すれば普通の馬でもこうする事は可能ですぅ。勿論、穴を隠さなければですけど〜」
「隠すのか?」
「とんでもないですよぉ。そんな事したら、馬さんが転んじゃいますから〜」
 苦笑いを浮かべるマリスだった。

「其処のお二人。あのレースを見てどう思いますか?」
「え? どうって‥‥」
「馬だよなぁ。賢い」
「チーターとかがもし走っていればどのようにお感じになられますか?」
「遠めで見ればすっげー! って思うよな?」
「でも近くで見るのは怖いかな。だって、凄くでかいしな?」
 エリーシャは二人の話を聞きながら、あーだこうだと話を進めていく。
 二人も一般人なのだから、意見ぐらいは聞けるからだ。
「自分が騎士だって事‥‥忘れそうな時が‥‥自覚足りませんかね?」
 戦闘馬の黒夢に乗ってふと気付くサクラ。其れを聞いて苦笑いを浮かべる勇人。
 サクラはその隣でクスクスと笑っていた。
「馬に乗らない騎士もいると思いますから、いいと思いますよぉ?」
「で、でも騎士としての自覚はあったほうが‥‥?」
「サクラさんらしくいればいいと思いますよぉ?」
 マリスがそう言うと、サクラはチラリと勇人の方を見て顔を赤く染めた。
 彼等は彼等なりに何か話があるのだろう。そう察したマリスはそろそろ話を聞きに行こうと校舎へと戻るのだった。

「お待たせしましたぁ♪」
「いえいえ、ご苦労様です。それで、ペット達の様子なのですが‥‥ヒポカンプスの元気があまりないようですね」
「まだ私を信頼してくれてないのですぅ。もう少し、時間が必要で〜‥‥」
「では、このヒポカンプスはあまり人前にやらないほうがいいな‥‥ストレスが余計に溜まるだろう」
 オルステッドがそう言うと、マリスも信者も小さく頷く。
 そして、色々なペットを見回りオルステッドが知識を話す。そして信者が補足をしていくのだった。
 彼等二人の息はピッタリというべきだろうか。説明も分かりやすく、マリスは感心しているのだった。
「次は、これからどうするかですね。今のままでも冒険者からの餌代と使用料でまかなえる状態ですよね?」
「ですねぇ。後は私が少しずつ稼いでいるもので何とかしてますよぉ」
「だとすればプラスマイナス0ですから、継続して収入のある事業を起こすにはいい条件ですね。イベントを定期的に開催する以外にも、何か事業があれば安定した収入源につながるかもしれません」
「事業、ですかぁ‥‥私に出来る事ってあるでしょうかぁ?」
「地球の動物園みたくする手もありますが、ストレスといったペットへの負担と、ペットを檻に入れて見世物にする事へ、飼い主から抵抗があるでしょうね」
「それだけは絶対に避けたいですぅ!」
 マリスがそう言うと、信者も同感するかのように頷く。
 マリスに出来る新事業。此れは大きな壁になりそうだ。
 今後何か検討していかなければならないだろう。
 今の彼女に出来る事。其れが何なのか‥‥自分自身でも分かっていないマリスなのだった。