精霊の声3〜精霊達の悩み
 |
■シリーズシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:易しい
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:12人
サポート参加人数:6人
冒険期間:10月20日〜10月25日
リプレイ公開日:2006年10月28日
|
●オープニング
その日、マルクスは騒動の舞台となった森に来ていた。
何時ものように光が差す広場で祈りを捧げていると、小さなフェアリーが此方を見ているのだった。
(「そう言えば、報告では精霊は何処にでもいて悩みを持っていると言ってたな」)
もしかするとあのエレメンタラーフェアリーも何かしら悩みがあるのかも知れない。
マルクスが声をかけようとすると、彼女は素早く逃げていってしまった。
無理もない。人間に見つかったと思えばすぐに消えてしまうのが彼女達だから。
次の日も。その次の日も。
マルクスはその広場へと足を運び、祈りを捧げていたのだが。やはりあのフェアリーがずっと此方を見ていた。
最終的に、帰ると見せかけてパッと捕まえたマルクスだった。檻等には入れず、丁寧に言葉を伝える。
「待ってくれ! 俺は別にキミに何もしようとは思ってないんだ!」
『わーわー! ‥‥え? 何もしないの?』
「あぁ、約束する。しかし、何で毎日俺の事を見てたんだ?」
『‥‥悩みがあるの』
(「やっぱりか」)
マルクスの睨んだ通りだった。彼女は悩みを抱えており、誰かに相談したかったのだろうが相手がいなかったのだ。
だから毎日来ている彼をじっと観察していたのだと言う。
「どういう悩みなんだい?」
『最近、私達エレメンタラーフェアリーが冒険者のペットになっているって知ってる?』
「らしいな。前に依頼した時、冒険者が連れて来ていた」
『私、知りたいの! どんな感じなのか、本当に大丈夫なのか‥‥仲間達、いなくなっちゃうんじゃないかって‥‥』
何とも可愛らしい悩みだろうか。もし自分がフェアリーを持っていたなら紹介してあげたかったのだが生憎持ってはいない。
珍しいペットである為、更には一般からは不気味がられている為である。
「なんだったら冒険者を連れて来ようか?」
『本当!? だったら嬉しい!』
「確か、一人俺と気が合う奴がいてな。そいつも精霊に詳しいんだ、聞いてみるのもいいんじゃないか?」
『人間にもそういう人いるの?』
「あぁ、とても詳しい人だ。興味があるだろう?」
マルクスがそう言うとフェアリーもうんうんと頷く。
人間で自分達に詳しい者がいる。好奇心があるのだ。
何だかこのフェアリーはどうやら人慣れしているようだった。挨拶を済ませると、マルクスは急いで冒険者ギルドに急いだ。
其処にはあの精霊マニアも依頼探しの為突っ立っていた。
そして、フェアリーを連れて来ていた立派な女戦士も。
「いたいた、二人共!」
「マルクスさん‥‥? どうしたんだ、そんな息を荒げて?」
「マルクス殿がここにいるという事は、依頼ですか?」
月のエレメンタラーフェアリーを連れた女性が尋ねると、大きく頷くマルクス。
「エレメンタラーフェアリーに会ったんだ。それで、飼われている仲間が見たいといっているんだ。頼めないか?」
「飼っていないのか?」
「世間のフェアリーに対する感情は冒険者なら理解してるだろう? 其れがあって手が出せてないんだ。本来ならば欲しい所だ」
「なるほど。なら私のこの子が役に立ちますね」
「ね〜♪」
月のエレメンタラーフェアリーがそう言うと、マルクスは頷いてもう一人の黒髪のウィザードを見やる。
「勿論、キミにも来て欲しい。分かるな?」
「精霊の事とあらば行くが‥‥」
「精霊マニアとしては悪い話ではないはずだ」
「だからマニアはやめろって!」
そんな言い合いをしながらも、依頼書は作成されていくのだった。
●リプレイ本文
●エレメンタラーフェアリーのいる森へ
昼食時をだいぶ過ぎた頃、冒険者一行はマルクスの屋敷へ到着した。
門の前で自ら彼らを出迎えたマルクスは、使用人にティーセットの用意を命じると冒険者達を広い客間へ案内する。
全員がソファに腰掛け、紅茶が行き渡るとようやくマルクスが口を開いた。
「久しぶりだな。今回もまた、よろしく頼むよ。あぁ、マニア殿も元気そうで何よりだ」
突然不名誉な呼ばれ方をされたジェンド・レヴィノヴァ(ea4714)は思わず紅茶を吹き出しそうになった。
「誰がマニアだ、誰が!? おまえらもそんな目で見るなっ」
仲間達の生温い視線に、威嚇の目で応戦するジェンド。
「じゃあフェチで」
「マルクス!」
つい呼び捨ててしまったジェンドだが、マルクスはまったく気にすることなくおもしろそうに笑っていた。周りからも笑い声がこぼれる。
笑い声がおさまると、少々神妙な顔でアッシュ・クライン(ea3102)が話を切り出す。
「少しお話ししたいことがあるんだが、内容が内容なんで今夜にでも時間が取れないだろうか?」
「屋敷の者らが寝静まった頃がいいのだな? いいだろう。人払いもしておこう」
マルクスが頷くと、アッシュとイェーガー・ラタイン(ea6382)は目を交し合った。
そして、日付が変わる一時間程前に冒険者達は再び客間に集まった。客間周辺に人の気配はない。それを確認するとアッシュは声を落として話し始めた。
「俺がこの世界に来る前、ジ・アースのとある港町でフェアリーの密売組織を調査し、壊滅させるという依頼を請けた」
フェアリーの密売という言葉に、マルクスはかすかに眉を寄せる。
「実際はフェアリーと称したシフールだったんだけど、ここでもそういうことを考える人は出てくるかもしれない。そんな奴らに巻き込まれないように、フェアリーを守っていく体制が必要だと思うんだ。‥‥できれば、フェアリーには知られずに。自分達が密売の対象になるなんて知ったら、傷つくだろ?」
「ちなみに、そういう類の話の噂を聞いたことはありますか?」
続いたイェーガーの問いに、マルクスは首を振って否定する。
「確かに、必要になるだろうな、いずれは。ありがとう、参考になったよ」
翌日、朝食が終わるとさっそく冒険者達はエレメンタラーフェアリーが出たという森へ向かった。
「森と言っても広いが、向こうから来てくれるといいな」
「まぁ、黒い霧もなくなって危険もなさそうですし、散歩の気分で行きましょう」
アリオス・エルスリード(ea0439)に言葉の割りに特に感慨もなく答えるシルバー・ストーム(ea3651)。アリオスの肩には連れてきたフェアリーのクローディアがちょこんと腰掛け、シルバーはブラウンとホワイトの二頭の馬を連れている。
二人のすぐ後ろを歩いていたエイジス・レーヴァティン(ea9907)が木の陰などに小さな姿がないかと注意しながら呟く。
「大勢で来てるから驚いて隠れちゃったのかな」
「なら、呼んでみるか」
短く答えるなりリュウガ・ダグラス(ea2578)は森の奥まで届くように声をあげた。
「おーい! 会いにきたよ! チャムと話がしたいエレメンタラーフェアリーがここにいると、マルクス男爵に聞いて来たのだが、姿を見せてくれないか!」
声が響き渡った後の沈黙の後、リュウガの側を飛んでいたフェアリーのチャムが何かに反応して彼の頭上をくるくると飛び回った。
「‥‥いた」
エイジスが見つめる木の幹の向こうに、フェアリーが顔を半分だけ覗かせていた。
「おいで。お話しよう。仲間も連れてきたよ」
穏やかなジェンドの声にエレメンタラーフェアリーはようやく冒険者達の前に姿を現したのだった。
●マシンガンフェアリー?
おそるおそる出てきたエレメンタラーフェアリーに、クウェル・グッドウェザー(ea0447)が進み出て丁寧に挨拶をした。
「こんにちは。僕は白の神聖騎士のクウェル・グッドウェザーです。よろしくお願いいたします」
それが良かったのか、エレメンタラーフェアリーの表情から硬さが消えた。
「はじめまして。私はジェンドだ。よろしく頼む」
「はじめまして。私はリーン。よろしくね。‥‥えっと、名前とかってあるのかしら?」
「誰が誰かは見ればわかるから、気にしてないよ」
エレメンタラーフェアリーの返事に一瞬戸惑ったリーン・エグザンティア(eb4501)だったが、すぐに思い当たって聞き返した。
「つまり、特に名前はないってことね。うーん、お話するのにあったほうがいいから、付けてもいいかな」
「いいよ」
「フレン、は? 確か天界の言葉で友という意味だったような?」
「友‥‥友達? 素敵!」
フレンは空中でくるくると回り、回りすぎてふらついた。
案外マヌケなその姿に微笑みつつクウェルが尋ねる。
「フレンさんの他にエレメンタラーフェアリーさんはいないのですか?」
「どっかにいると思うけど‥‥どこにいるんだろうねぇ。ねね、それより、その‥‥」
けっこう重要かもしれない問いをあっさり流し、フレンは冒険者達が連れてきたフェアリー達にちらちらと視線を送る。フレンの意識は別のことに支配されているようだ。
気づいたリュウガがチャムを促す。
「チャム、出番だよ。‥‥フレンが君と話をしたいらしい」
チャムがフレンへ近づけば、リース・マナトゥース(ea1390)のティアやアハメス・パミ(ea3641)のネト、アリオスのクローディアが後に続いた。少し離れたところでフェアリー達はご対面となった。
「フレンは会話も巧みですが、そうではないネト達とはどのように会話するのでしょうね」
何気なくアハメスが呟いた時だ。
そのフェアリー達の輪から笑い声が沸き起こった。
「フレンが一人でしゃべっていたように見えたけど‥‥」
「ネトは特に何も言ってませんでしたね」
同じく様子を見ていたエルトウィン・クリストフ(ea9085)の呟きに同意するアハメス。
冒険者達が見守る中、フレンが一人で途切れることなくしゃべり、それを冒険者達のフェアリーがニコニコと聞いては笑うという光景がしばらく続いた。
冒険者達はすっかり蚊帳の外。寂しい、というのが正直なところだ。
「テレパシーか?」
「どういうことです? ジェンドさん」
「もしかしたらフレンはテレパシーでティア達と会話してるのかな、と。私もはっきりはわからないけど、フェアリー独特のテレパシーとかさ」
「ふむふむ‥‥」
「私も混じってこよう」
「え?」
と、リースが顔を上げた時にはすでにジェンドはフェアリーの輪に混じっていた。
ジェンドがフレン以外のフェアリーと会話ができるわけではなかったが、どういうわけか何の障害もなく会話が成立していた。
「あれも立派な才能だね」
「だから男爵にマニアとかフェチとか言われるのよね」
エルトウィンが感心と呆れの入り混じった声で言えば、同じような色でリーンが返した。
エルトウィンは傍らの驢馬を見やり、苦笑する。
「あたしの驢馬ちゃんはペットだけど、半分は荷物持ちなのよね。妖精さんにはそれはキツイしね‥‥甲斐性も余裕もないあたしには縁のない存在だよねぇ」
「人それぞれで」
フェアリー達の様子を見つつ、連れてきた馬にブラシをかけるシルバーが答えた。
そうしているうちに、ジェンドがフェアリーに囲まれるようにして冒険者達のところへ戻ってきた。
すっかりハイなジェンドだが、フレンはさらに上を行っていた。
ブラッシングの手を止めたシルバーが向き直ってフレンに問いかける。
「ところで、私達が連れているフェアリーも成長すればちゃんと話ができるような知性が身につくのでしょうか?」
「よくわかんない。ドラゴン並みになるって聞いたこともあるけど、見たことないし。もし私がそんなふうになれたら、世界征服できるかな!? そうなったらあんなことやそんなことや‥‥キャー! 楽しそう! あぁもうっ、みんなに会えて良かった! いつでも来てね、毎日でもいいよ。今日はもう眠れないよー。それじゃ!」
危険思想も交えていっきに吐き出すと、フレンはサッと手をあげて行ってしまった。
小さなフェアリーの大きな勢いに飲まれてしまった冒険者達が我に返ったのは、十数秒後だった。
●森の音楽隊‥‥ではないよ
「た、大変ですっ。追いかけましょう!」
「リース、落ち着いて。闇雲に追いかけてはいけない」
「ででですがアリオスさん、早く行かないとどんどん距離があいてしまいますよ!?」
リースの言うことももっともである。
少し考え込んだアハメスは、ふと冒険者達そっちのけでじゃれあっているフェアリー達に目を向けた。
それから、ネト、と呼びかける。
ご機嫌でやって来たネトにアハメスはフレンを追いかけてほしいことを伝えた。
「チャムにもお願いするよ」
「するよー!」
リュウガの声に元気に返事をしたチャムはネト達共々団子のようになって、しかし迷うことなく進んでいった。
意見が割れるでもなく進んでいるはずなのに、いっこうにフレンには出会わない。そんなに遠くまで行ってしまったのだろうか。
「けっこう歩いたよね‥‥逆に呼んでみようか」
エイジスが思いついたようにリュートベイルを鳴らした。
一瞬後に陽気なメロディーが流れ出す。それに合わせてエイジスは高らかに歌い出した。
真っ先にのったのはフェアリー達だった。時々エイジスの歌詞を真似ては一緒に歌っている。
もともと少し音程が危ういエイジスに加え、そもそも音程など意識にないフェアリー達の歌声だったが、明るさだけはどんな歌にも負けていなかった。決して騒音ではない。たぶん。
何曲かが過ぎた後、やっと問題のフェアリーが現れた。
フレンは脳天を突き抜けるような歓声を上げてエイジスに体当たりをくらわせた。
●森の広場でフェアリーと
狙ったのか運が悪かったのか、ちょうど喉元に突撃されたエイジスは仲間に支えられながら先頭のフレンを追っていた。
「ここならゆっくりお話できるよ!」
そう言ってフレンが止まった場所は、森の中でぽっかりと開けたちょっとした広場だった。
「では、せっかくですからお茶を用意しましょう」
クウェルが手際よくハーブテイやらクッキーやらを用意しているのを横目に、エルトウィンがこっそりフレンに尋ねた。
「どうしていきなりいなくなったの?」
「えっと‥‥勢いで。楽しくて頭がパンパンになっちゃって、気がついたら‥‥」
消え入りそうな声で白状するフレン。
エルトウィンには何も言わずに微笑むことしかできなかった。
クウェルの呼ぶ声に冒険者達とフェアリー達は輪になって淹れたてのハーブティとおいしそうなクッキーの山を囲んだ。フェアリーの分は小さく砕いてある。ちょっとしたパーティのようだ。
「フレン、ちょっと聞きたいんだけど、フェアリーは皆卵から生まれるものなのか?」
アリオスの唐突な質問に、フレンはきょとんと首を傾げる。
「クローディアは‥‥チャムやティア達もなんだが、卵から生まれたんだ。もっとも、その卵がどこから手に入れてきたものなのかはわからないんだけどね」
「私は、生まれた時から私だよ。卵‥‥? 私以外の時のことはよくわからない‥‥」
「言われてみれば謎だな。チャムは友人から誕生日祝いでもらったんだよな」
クッキーに噛り付いているチャムにリュウガは苦笑する。
「同じ卵でも必ずしもフェアリーが生まれるとは限らないようですよ。卵の時の接し方でしょうか‥‥」
自分はどのようにしていたか思い出しながら言うアハメス。
ふと、嫌な考えにとりつかれたエルトウィン。おそるおそるそれを口に出してみる。
「フレンは男爵に、仲間がいなくなっちゃうのかとか言ったそうだね。それってもしかして」
「アハメス、卵への接し方って例えば話しかけるとか頬ずりするとか?」
エルトウィンの言葉を遮るように声を発したアッシュ。その目は、それ以上はここで言うべきではない、とエルトウィンに告げている。
幸いフレン達はそれに気づかなかった。
話題を変えるようにリュウガがフレンに話しかける。
「俺からも聞きたいことがあるんだけど、君はチャムが俺と冒険していることをどう思っている?」
「いいんじゃない? チャムもリュウガさんと一緒にいられて楽しいみたいだよ。私ね、みんなと話して人間と一緒にいる仲間達がどんな暮らしをしているのか沢山わかったよ。森よりおいしい食べ物はいっぱいあるし、人間達は優しいし、何より楽しいことがてんこ盛りだって。ねね、楽しいこと、何か聞かせて!」
意外なところで連れているフェアリーの心を知り、冒険者達はぽかんとした。
我に返ったイェーガーが、
「エレメンタラーフェアリーではなく、シフールやディナ・シーの話ですが‥‥」
と、切り出した。
皆と協力して、心に傷を負ったシフールに桜の花を見せて言葉を取り戻させた話。
ディナ・シーの王国の危機に対して、皆と協力して解決した話。
人に恋したアーモンドの木の精霊の話。
フレンは目をきらきらさせて聞いていた。
「そうだ、これを差し上げましょう」
話し終えたイェーガーが出したのはミニミニドレスだった。
困惑するフレンにイェーガーは優しく微笑みかける。
「人は大切な方に対し、物に自分の想いを込めて贈り物をしたりします」
「私からも贈りましょう。私はフェアリーを連れていませんので、どうぞ」
シルバーからも渡され、フレンは再び舞い上がっていた。二着のミニミニドレスを抱きしめて、コマのように回っている。
少々目を回しながら、フレンは期待するように冒険者達を見渡した。
「みんなにとって私達フェアリーは家族みたいなもの?」
彼らの答えはフレンが期待したとおりのものだった。
フレンは心から幸せそうに微笑む。
「良かった。ちゃんと繋がってるね」
ちらりと冒険者達のフェアリーを見れば、クッキーでお腹をふくらませて寝転がっていた。
その姿に苦笑しつつアリオスは食べ物について聞いた。
「何でも食べるよ。少なくともみんなが食べているものは平気」
それから再び冒険談を話したり、腹いっぱいで唸っているフェアリーをからかったりしているうちに、夕暮れが迫ってきた。
森の出入り口での別れ際、エイジスは黒い霧について聞いてみたが、フレンにはわからないとのことだった。彼女自身もそれについては不安に感じているようだ。
最後にリーンが問いかけた。
「‥‥冒険者と一緒に暮らす子が増えて、寂しい?」
フレンは即座に否定した。
「最初は不安だったけど、もう平気」
「もし寂しくなったら、ここの男爵様がきっと話し相手になってくれるわよ」
リーンが言えば、フレンは満面の笑顔を返した。