12の関門4〜それは干支の伝承さ

■シリーズシナリオ


担当:マレーア

対応レベル:7〜13lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:12人

サポート参加人数:3人

冒険期間:05月15日〜05月20日

リプレイ公開日:2005年05月22日

●オープニング

 ドレスタットの自警団の団員募集はひとつの佳境を迎えていた。
 最初の試験で半数近くに減った人員であるが、それから更に絞り込むのだ。奸智に長けた──もとい──賢しくなった彼らに普通の試験では力不足かもしれない。
 だからといって非常識な問題を出せば、非常識な人材が自警団員に入る事になる。
 冒険者の裁量に委ねられた試験はウ、タツ、ミの3つの試験と今回はなる。心技体に長けたバランスの良い冒険者が生き残るか、はたまた冥途神社送りになるか、それは誰も知らない。
「では、皆様方。お任せいたしましたぞ」
 47人の志望者と、12人の冒険者乗せた船団は出航しようとするが、今日は些か波が悪いようだ。前回のように3日で、準備して、行って帰る事はできそうにないだろう。
 自警団としては試験を早めに切り上げたい意向があるため、出航を遅らせる、という選択はない。
 船を動かすだけでも金貨は飛んでいくのだ。その為、ギリギリの運営スケジュールが組まれている。冒険者達も不本意かも知れないが、それに従うしかない。
 そして、また船団は“島”へと向かう。そこに待つのは敗北か、お笑いか?

●今回の参加者

 ea1274 ヤングヴラド・ツェペシュ(25歳・♂・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea3738 円 巴(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3866 七刻 双武(65歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5985 マギー・フランシスカ(62歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6151 ジョウ・エル(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea6592 アミィ・エル(63歳・♀・ジプシー・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea6905 ジェンナーロ・ガットゥーゾ(37歳・♂・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb1259 マスク・ド・フンドーシ(40歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

オルステッド・ブライオン(ea2449)/ イレイズ・アーレイノース(ea5934)/ カヤ・ベルンシュタイン(ea8791

●リプレイ本文

●回想
 巳の会場で、ジョウ・エル(ea6151)は、如何にも古老めいた面持ちで問題を読み上げようとしていた。
(「うむ、うまくできればよいのじゃが」)
 不安気な面持ちであったが、前の試験を思い返して、自らを引き締める。
 4択問題を合計11問出すが、その配点は明らかにしていない。それを考えるのも試験の内である。
 言い換えれば『空気を読め』である。
「守護者殿。4択の中より、自分なら出来るもっと素晴らしいアイディアが存在した場合、どうすればいいのでしょう?」
 質問の声が上がる。
 落ち着きはらってジョウは答える。
「4択に付記して書く事。ただし、迂闊な事を書けば減点の対象じゃ」
 言い置いて、受験者が先日な投資をしてくれた円巴(ea3738)の準備した筆記用具と羊皮紙に向かった事を確認して、ジョウは問題を読み上げ始めた──しかし、心はここに在らず。
(「そう、最初の競技は小ヴラドが提唱したローマの球技に関してじゃったな‥‥」)

●タイムリミットは近い
「駄目だ! コナン流にも限界はある。武具じゃなくて、人間の方が開始予定時刻に間に合わない!」
 払暁、到着した船からファング・ダイモス(ea7482)が、己の鍛え上げた武具を振るい、そこいら中にある岩を持ち運べるサイズにまで分断しようとするが、あまりにも数が多い。
 船団内部をボートで行き交い、それぞれで細かいルール解説を行っている進行とも相まって、急ピッチで整地を進めなければならないが、時間の関係上、整地問題は根本的には解決されなかった。
「そもそもこの競技は羅愚美威(らぐびい)といって、華国のさる武道家が‥‥」
 一方、船内ではヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)が仰々しく、もっともらしい事を言っているが、細かい競技の進行となると頭を捻る面子が大量に出てくる。
「むう『羅愚美威』とは!? まさか、あの!」
「知っているのか!? 震電」
 土壌髭に禿頭。そこへ大発生と入れ墨をしたジャパン人、震電が唸る。問うは太い眉毛に、長い鉢巻きを靡かせた浪人、桃太。
「いや、知らん。言ってみたかっただけだ」
 ずっこけるジャパン人一同。
「そこ、五月蠅いのだ」
 ジャパン語は判らないが、一括するヴラド。

 ともあれ、ルールを纏めると──。
・1チームは6人。
・玉を持って相手のいる面後方のゴール地帯に到達すること。
・持って行った玉は10点の大1つに、1点の小3つ。
・敵への攻撃は可だが、相手を行動不能にしたチームは失格。
・魔法は禁止。
・勝負が決しなかった場合、試験官の判定で決める。
・装備は試験の共通ルールに即す‥‥すなわち定められた武具の着用可。
・試合の組み合わせは下記の通り。
一.1回戦は抽選で普通に4試合する。
二.1回戦の勝者達は、負けた者が次に進む逆トーナメントを戦い、1位タイ×2・3位・4位を決める一方、1回戦の敗者達は通常のトーナメントを行い、5位・6位・7位タイの2チームを決める。
三.2回戦の敗者は7位タイ、2回戦の勝者同士が戦い、勝った方が5位、負けた方が6位。

1位タイ:80+得失点差。
3位:70+得失点差。
4位:60+得失点差。
5位:40+得失点差。
6位:30+得失点差。
7位タイ:20+得失点差。

●羅愚美威
 そして岩場の卯の会場で競技は始まった。やはり地形効果の通用しないシフールは強い。小球を持って着実に点を取りに行く。上で広げられるは超軽量級のもつれ合い。地上では重量級のドワーフとジャイアントが大玉を相手に渡すまいと、正面からぶつかり合い、汗と血を流し合う。
 それを飾るはエヴァリィ・スゥ(ea8851)の歌、ガッツを溢れさせるアップテンポな歌である。のったバード達が即興で演奏をつけていく。
 ともあれ、この勝負は最早、勝負の前、チーム編成の段階で勝敗が決まっていた。
 シフールの重要性を戦術に組み入れなかったチーム。そして、数合わせの為に参陣した七刻双武(ea3866)を名声だけのオイボレと見て、声をかけなかったチームには連続しての敗北ロードが待っていた。
 このチーム分けではリーダーの資質と勧誘とで、殆ど全てが決まっていると言っても良かった。震電は双武が参加する知るや否や。問答無用で平伏して、自チームに迎え入れるよう、リーダーの桃太に促した。
「このお方がいれば、そして中途半端な層を捨てて、着実に点をシフールに取らせていけば、勝利は疑いない」
 そして、その成果は目覚ましく、双武は見事な『助っ人要員』として、受験者の力を引き立てる為にアシスト役やパスなどが行い易い位置に移動。声を積極的に出し、合図や、手薄になった所へ回り込むなどを行い、相手チームの攪乱と仲間のサポートへと特化し、確実にシフールに小球を渡し、1点ずつでも確実に点を取っていく。
 それを危険視してつぶそうとする相手には──。
「荒事には、荒事で持って対応させて頂こう」
 双武のタックルを回避できるものは誰もいなかった。
 こうして、志士の震電は見事な采配で圧倒的に1位を確実に取った。二桁の得点を叩きだしたのはこの競技全体でこのチームだけである。
 悲惨なのがエルフのウィザードというコースで、体力不足を足でカバーして、かき回そうとしたものの、早さでは所詮シフールには適わず、心身ともに上位のハーフエルフ勢に、逆襲を受ける始末であった。
 その点、大球を持っても平気で身軽なパラは中々つぶしが利くと判断され、この競技ではジャイアントとパラとシフールが居ればいい、という評価まで出来上がる始末であった。しかし、更地ならばその評価は変わっていただろう。
 同率7位を決める試合はお互い満身創痍で、エヴァリィから見ればかなり、悲壮きわまりない戦いであった。
 思わず涙がこぼれる。

●自由か束縛か
「うーむ、チーム作りを自由にさせると、リーダーの指揮能力や統率を見るのにはいいが、力のバランスが著しく崩れるのだ」
「いやぁ、かといってくじ引きとかだと、個人ではないチームの総合力がでたらめになってしまうのう。ここは試験官が競技に参加するのは今後、御法度にした方がよかろう?」
 試合時間を計っていたマギー・フランシスカ(ea5985)が双武がひとり入っただけで、一気にパワーバランスが崩れた第1試合を評して呟く。
 ともあれ、全試合の消化を待って、ヴラドは試験の今後の課題として、チーム試験の編成の難しさを改めて知るのであった。
 尚、全エルフウィザードは冥途神社行きとなった。
 アミィ・エル(ea6592)がとりあえず、試合でドロップアウトした面々のケアと増長防止に、何かと忙しい状況であった。
 冥途神社に向かったシフールもとっくみあいで羽根が傷んだりと、今後の試合には余波が無いと想定されるものの、洒落にならない傷を負う者が半数を占めた。まあ一週間あれば回復する程度だが‥‥。

●抗龍悔いあり
 辰の試練にはジェンナーロ・ガットゥーゾ(ea6905)、マスク・ド・フンドーシ(eb1259)、以心伝助(ea4744)。そして本来の守護者である少年シフール、アルフレッド・アーツ(ea2100)が待ちかまえる。
 それぞれ、ジェナーロが人間、ハーフエルフ担当。マスクはドワーフ、ジャイアント担当。伝助はパラ、エルフ担当。そしてアルフレッドはシフールのみの担当となる。
 何たる巡り合わせか、守護者に白の神聖魔法を使える者がおらず、受験者同士が冥途神社で有料で傷の回復を行う光景が見られた。それでも立ち上がる力を失った者は事実上の試験未参加となり、巳の試験で満点を出す、などの逆転を狙わなければ、上位に食い込む事は不可能そうであった。

 さて、辰の試験のルールであるが──。
1.試験官と受験者で一対一でサイコロを振り合って、大きい目を出した方が竹刀で相手の頭を殴る。
2.小さい目を出した方は自警団から貸し出された盾で、それを防ぐ。盾をとった後なら回避も可能。
3.先に相手の頭を叩いた方が勝ち。ただし、攻防は最大で五回まで。最後の五回目では回避はしてはいけない(引き分けを少なくするため)。
4.オーラパワーなどの付与系魔法は禁止。

 点数:1回目で勝てば百点。以下、1回やるたびに10点ずつ減っていく。
 攻撃失敗するたびに、10点減点。
 防御成功するたびに、10点加点。
 計算結果がマイナスになる時は、0として扱う。

 というルールであったが、マスクが5体1の変則レスリングを行うと宣言し、喜々として身体に油を塗り込んでいる所へ、アルフレッドが──。 
「すみません、マスクさん──ジャイアントが5人もいないので、このルールでやって下さい」
 と申し入れる。
 マスクはサムアップで爽やかな笑顔で返すし、エヴァリィに華麗なBGMを依頼し、困惑する彼女はそれらしい歌を即興で歌い上げる。
「はっはっは、連戦連勝!」
 興に乗ったマスクは高笑する。
 しかし──。
「うさぎの耳は勝利の証‥‥月に代わって折檻よ!」
 華国出身。ウサミミをつけた、ジャイアントの女武闘家氷華が90点をマスクからもぎ取ったのだ。
 サイコロで勝っても負けても4回目まで勝負に出ず、マスクの攻撃を卯の奥義で悉くかわしきったのだ。
「ぬぅ、これは逸材!
 英国が誇る最強騎士団(自称)! 筋肉騎士団(マッスル・ナイツ)が一騎!! この『ネイキッド・ファントム』が、お相手するであるぞ!」
「きっぱり、御免アルね」
 彼女は断言した。
「こういう形のタイマン勝負なら負けられはしないね」
 サイコロと楯と竹刀が交差しまくり、最後の回避は出来ない為、氷華がマスクから脳天に響き渡る一撃を受けたが、それでも90点という高スコアをマークした。
「マスクさんにも‥‥ひょっとこ面じゃなくて、ウサミミ装着させたいね‥‥」
 BGMを中断したエヴァリィがマスクの友人であるという事が良く判る一言を発した。

 閑話休題。
「え〜、今回君たち受験生の相手をさせてもらうことになったジェンナーロって者だ。びっしばっしいくんでヨロシク!」
 言いながら、木刀を素振りする。手加減しては自警団が求める人材以外も混じっちゃうから全力で叩かせていただく!」
 そして、サイコロで勝っては木刀を振るい。 
「燃えろ! 俺の何とか! 貰ったぁ────!!」
 サイの目で負けたときはすかさず楯を頭上に翳す。
「やらせはせん! やらせはせんよ!!」
 最も、ジェンナーロは受けきり、殴りきり、受験者を全員、粉砕した。桃太も例外ではない。かたや、伝助は楯に飛びつき回避しまくるが、攻撃の最後の詰めが甘く、最後の一撃を受けきれず、相手に確実にポイントを与えてしまう。
 特に火のウィザードが自らの士気を向上させると、手に負えない。
「とほほ、これではウィザード相手にも負けるでやす、修行不足っすね」
 そして、肝心のアルフレッドくんだが──。
 楯はこっちだ──!
 己の直感に任せてサイコロで負けたときは楯を取ろうとするが、良く見ると持っているのは竹刀だったり、サイコロで勝ったのに、楯を持って、全力回避に入るという、うっかりぶり全開であった。
 結果、シフールは全員ドローで50点である。
「ううん、いいんだ──これが僕の精一杯だから‥‥」
 試験官なのに、冥途神社に羽ばたいていく姿は郷愁を誘った。

●冥途からの遠い道程
 一見すると厚化粧の20代女性のエミィは冥途神社で落ち込むアルフレッドに向かい──。
「ほら、坊の試験は終わり。じゃが、他の人の試験を準備する位できるじゃろう。それとも? それも出来ぬほど、腑抜けたかえ?」
「違う! 僕はまだ出来る事がある‥‥と思います」
「本当にそうなら、冥土になんぞ来ておらんで、娑婆へ帰らんかい。それとも自分の足で歩けないのかえ?」
「エミィ、それは言い過ぎではないか?」
 巴がとりなそうとするが、キッとなったアルフレッドは横たわるウィザード達を尻目に、冥途神社から自らの翼で羽ばたいていった。
「ほっほっほ、臥龍が、昇竜になりおったわい」
 そのやり取りを見た巴は、ああいう『いい』年の取り方もあるのだと一種の啓示を得た。
「なるほど、見守るだけが愛ではないという事か。まさしく愛の鞭だな。エミィも予め年を知らなければ──二十代で通るのだろうが、そこまで真似はしたくないが」
 最も当人は自覚こそ無いが、保存食を調達しなかったヴラドに保存食を有償で渡し、愛の鞭を実践していたのだ‥‥。

●賢者への道
 そして、最後に残るは巳の試験であったが、ジョウの作った問題で最大のツッコミがあった。それは自警団としての判断を求める問題のひとつ。
 言葉の判らない相手から、道を尋ねられたらどうするか? という設問に対し、大半の返答が『言葉が判らないのに、どうして道を尋ねているのか判るのか?』というものであった。
 特にウィザードからの疑問が多く。これは全能の賢者などというご大層な称号を返上せねば、と船内で反省する事しきり。
 更に状況対応の問題で、状況が抽象的すぎて返答が出来ない。自分なら魔法でこうする。と言った個人の能力に依った返答が頻出し、確認の為、帰りの船団ではアルフレッドが飛び交った。
 試験内容の大半が自分の出来る行動範囲は4択で絞りきれないという事が判明し、受験者の成長ぶりをジョウに印象づけたのであった。
 そして、合格者は20人に絞り込まれ。自警団の本部の前に張り出されたのであった。
「ふうむ、この震電などは筆記試験でも良いところに行っておるのう。これは未来の幹部コースかのう」
 ケース・バイ・ケースを紙上で判定するという、煩雑な仕事をやっていたジョウが、巳の試験で見所のあった者を未来の幹部候補として、自警団長に申し送りをしていた。
 人数が絞り込まれた事で船は次回からは一艘立てで行く事が決定。
 今までのトップ3位は一位から順に震電、桃太、氷華である。後はダークホースのパラが団子状態であった。アルフレッドの為、意外とシフールは中堅どころに固まっている。
 一方、自警団の方に、ナイトや神聖騎士も含む魔法使いから魔法禁止の解除要求が突きつけられたのであった。
「あなた達は武芸の達人を雇いたいなら、最初の求人で書いておけばいい。我々は剣や弓を取るために修行したのではない。魔法使いが最初から不要ならば、これまで浪費した時間に見合う給料を支払って貰う」
 冒険者達が応じる否かは次のお題である。