12の関門6〜解き放てよもえる想い

■シリーズシナリオ


担当:マレーア

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 45 C

参加人数:12人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月15日〜06月22日

リプレイ公開日:2005年06月22日

●オープニング

 試験官一同の前に改めて、第2次までの予選突破者のリストが渡された。
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1位:刃 桃太
 ジャパンの人間。オーラソードの使い手。
2位:金 震電
 華国の武闘家で人間。足技主体の攻撃とオーラ魔法をまんべんなく使いこなす。
3位:李 氷華
 十二形意拳『卯』の使い手。カウンターをよくする。
4位:四季桜 純
 パラの志士。ライトニングアーマーを使い、二本の手首に結わえた鉄鎖を自在に振るう。惰弱という評判がある。
5位:四季桜 一騎
 パラの陰陽師。肉弾戦に長ける。イリュージョンとスクロールを使ったストームの使い手。
6位:多田河 死竜
 パラの浪人。陸奥流の使い手で、ストライクを良くする。
7位:氷河 白鳥。パラの志士
 アイスコフィン、アイスブリザード、クーリングの使い手。主に肉弾戦を好む。
8位、天満 聖夜
 パラの浪人。ダメージこそ低いが格闘のみなら達人級である。打たれ強い。
9位:火 炎
 ジャパンのパラ忍者、ロープを手足のことく駆使する。回避軽業に長け、疾走の術の術が得意。
10位:クシュリナ・エマセン
 インドゥーラのシフール。レンジャーで、スクロールから発動するサイコキネシスによって、血で鍛えたと自称する刀“音礼斗”を振り回す。
11位:サントール・バベル
 ドワーフのビザンツ人、黒の神聖騎士。人馬一体のランスチャージで相手を蹂躙する戦法が得意。
12位:マウス・サンク
 イギリスのジャイアントファイター。戦闘時は鎧を着けず、上半身裸で戦う。この戦闘スタイルは彼の先祖――ケルト人の風習らしく、武勇を示すそうだ。ひたすら重たい大剣の一撃に懸ける男。
13位:アルフリート・ヤング
 イギリス人のシフール。ナイトでオーラソードを良く使いこなす。基本格闘が高め。
14位:シャレット・ハイアー
 ノルマン人のシフール。ファイヤーボムをよく使う。高速詠唱も併記するあたりで、他に芸がないのが弱点。
15位:クレイ・ムーア
 ノルマンのシフール、バードでムーンアローとメロディーを使いこなす。平和主義。
16位:ガゼット・ツーリ
 ノルマンのシフールでバード。シャドウボム、スリープ、ムーンアローの使い手。基本レベルは低いが高速詠唱を織り交ぜてくる。好戦的。
17位:パンツァー・フォー
 フランクのシフールでバード、ムーンアロー一本槍で高速詠唱を織り交ぜてくる。
18位、ピルクル・ラント
 イスパニアのエルフでレンジャー。アイスチャクラとファイヤーバードのスクロール(初級)を所持。
19位:サルヴィナーヤ・サクタ
 ジャパンとロシアのハーフのシフール。ムーンアローとファンタズムを使いこなす。ロシア料理が得意で冥途神社でもボランティアをしていた。
20位:イスカンダル・ガルベラ
 人間で神聖ローマ出身の神聖騎士。国のローマ第一主義には睥睨しており、国籍変更も睨んで、自警団入りを目指す。武芸魔法共に隙が無いが、秀でたものがないのが現状。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「以上が今回の皆さんが受け持つ正式なメンバーです。では、よろしくお願いしましたよ」
 自警団員の見送りを背に受けながら、一同はドレスタットを後にするのであった。

●今回の参加者

 ea1274 ヤングヴラド・ツェペシュ(25歳・♂・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea3738 円 巴(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3866 七刻 双武(65歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5985 マギー・フランシスカ(62歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6151 ジョウ・エル(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea6905 ジェンナーロ・ガットゥーゾ(37歳・♂・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb1259 マスク・ド・フンドーシ(40歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

オルステッド・ブライオン(ea2449)/ マグナ・アドミラル(ea4868

●リプレイ本文

●いざ試験場へ
 ここは自警団詰め所。
「先の伝助君とツェペシュ坊たちの行動、責任はこの我輩にある」
 ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)と以心伝助(ea4744)を伴って現れたマスク・ド・フンドーシ(eb1259)は、騎士の礼に則った立ち振る舞いで自警団団長に謝罪を入れた。
「相談無く行動した責は我輩にある。よって二人を許して欲しいのだ」
「許すも何も‥‥。あの件については給金なしってことでチャラだ。次の仕事をしっかりこなしてくれりゃ、それでいい」
 難なく許され、船に乗り込む三人。
「‥‥でも、『内務調査的なことは別にやっています』みたいな一言は、予め欲しかったであるな。こっちも徒労じゃなくて済んだのだ」
 ちょっと拗ねてみるヴラドであった。
「うぅん、やっぱり人間が少ないなぁん。期待してたんだけどなぁん」
 勝ち残った受験生の中にかっこいい男が残っておらず、それがエリー・エル(ea5970)には残念。でも、お仕事はしっかりやる。島に向かう船の中で、エリーはジョウ・エル(ea6151)に神聖魔法のレクチャー。かたや20人の受験生たちは、これまでになく張りつめている。残った20人の中から最終的に選抜されるのは、僅か5名なのだから。
「希望者には地図を配布しますよ」
 板きれに手書きした地図を配布するアルフレッド・アーツ(ea2100)だが、不正確この上ないので受験生たちの評判は散々だ。
「我らを島で迷わす計略か?」
 金震電、地図を手にするなり高々と放り投げ、落ちてきたところに蹴り一発。バキンと音立てて地図は真っ二つ。
「あっ!」
「地図は役に立ったぞ。我が足技の的としてな」
 不敵に笑う震電である。

●午の試験
 マスクが現れた。
「ふっふっふっふっふっふっ」
 皆、早い者勝ちとばかり列を作る。噂に聞いていたレスリング勝負か? と、5人の組を作り無手にて勝負を挑まんとする。気の早い者はもう諸肌脱いでポキポキと指を鳴らす。
「待つのだ! 今日の試験は我が輩と闘うことではない」
 そう言えば、以前見たマスクはフンドシ一丁のスタイルであっが、今日はなぜか礼服を着用している。礼服を着たままレスリングで試験というのは普通無い‥‥はず。
 スピーチと演舞、そして他の試験官からの質疑に応答すると言う話だ。
「今回はなかなかまともじゃのう」
「そのようだな」
 と、受験生が私語を交わすその次の瞬間。
「演舞の相手は我が輩が務めるのだ」
 どばっとマスクは丸裸になった。下帯一つだ。何人かの受験生は転けた。
「どーせこんな事だろうと思ったぜ」
 苦笑する受験生刃桃太。マスクに対抗して、イギリス人の受験生マウス・サンクが上半身裸になる。
「裸で闘う。これイギリスの常識!」
「合格!」
 マスクが阿吽の呼吸で宣言する。
『違う。断じて違う! それは古代ケルト人の勇者の常識だ。イギリス人がみんなそんなんだとは思わんでくれ!』
 受験生アルフリート・ヤングがイギリス語で喚く。
「‥‥えーと。イギリス違う。ケルトの常識!」
 言い直したが、ゲルマン語にやや難があるようだ。

 傍らでジョウが受験生に質問する。
「デビルとの戦闘で魔法を使い切った場合の戦闘方法はどうじゃ?」
「むやみに自分の魔法は使わず、最初は相棒に掛けて貰うさ。自分の魔法が尽きる前に片を付ける。逃げて構わないなら逃げ出すかな。いずれにしてもこいつを使わなきゃ成らない前にどうにかするさ」
 刃桃太はにやりと笑い。印籠を開いて見せる。お守り代わりにソルフの実が一つ入っていた。同じ質問に金震電は銀製の特注ナックルを取り出す。
「接近戦で魔法詠唱をどの様に行うかのう?」
「使わないよ。接近戦なら一息に3回は殴れる」
 氷河白鳥は単純明快。
「では聞く、外見瓜二つの犯人と被害者がいた場合の攻撃法はなんじゃ?」
「ムーンアローで指定すれば良いと思いますけど‥‥」
 パンツァー・フォーは不思議そう。
「武器戦闘中に素早い行動を求められているとき使用する所持スクロールはなんじゃ?」
 ピルクル・ラントは胡散臭そうに
「ない。腕に着けたダーツを投げるぞ普通」
 質疑応答が続いて行く。

「ほほう?」
 七刻双武(ea3866)が感心したのはイスカンダルの答えである。
 大抵の人間が、被害の拡大を避け、人気のない方へと犯人を誘導する。と応えた『自警団として採用された際の初めての事件で、もっとも気をつけねばならぬ事は何か』と言う質問に対して、
「功を焦らぬ事だ。必要以上に相手を傷つけず、常に冤罪の可能性を考えて、思いこみで捜査しないことだと思う。聞き込みには状況を考えて、被害者をさらに苦しめぬよう配慮する」
 と答えた。双武の用意した模範解答よりも一段上である。

●未の試験
「調査捜索能力は、港町ドレスタッドや近隣の自警団員にとって重要な資質じゃ。今回の試験では宝探しでお主らの捜索能力を見せてもらう。10に分断した金色鎧のパーツを、この島のあちこちに隠した。それらを制限時間内に持ってくるのじゃ。評価は、鎧パーツ提出が100点。提出できずが0点じゃ。実際に自警団の一員になったつもりで参加するのじゃな」
 試験内容が告げられるや、受験者から異様な空気を感じた。一旦全員が不合格になった寅の試験を思い出したからだ。一日で3つの試験を行うことを思い出して欲しい。そう。要は時間が非常に限られているのだ。
 そして、マギー・フランシスカ(ea5985)の告げた2時間と言う制限時間を聞いて、一種殺気だった空気にさえ成った。
「見つかるのか?」
「試験が難しくは過ぎないか?」
「ダミーが有るんじゃないだろうな」
 ぶつくさと文句のような声が出る。しかし、試験は予定通り開始された。

「あぁぁぁ! なんてこったぁ!」
 岩を砕き、それらしき物を見つけたまでは良いが。肝心のパーツは判別不能なまでに粉砕されている。あちらでは、高い場所から発見したシフールが、重すぎて墜落しかけ、やむなく放棄したパーツらしきものが、海へ転がり水底の藻屑。空中から監視するアルフレッドは受験者の叫び声を聞いて頭を抱えた。空しく鳴らされるエリーの合図。
 結局、正確な時間測定のための魔法、伝助の人遁の術が解け、のべ10本のクリスタルソード作成と消滅が過ぎても、誰一人パーツを持ってくることが出来た者は居ない。冥途神社で待機していた円巴(ea3738)には、ついぞ出番は無かった。一生懸命に探し回ったが、成果をあげられた者無しという結果に終わる。
 パーツ以外はシフールを中心に発見したものがいるが、持ち逃げしたものはいない。寅の試験の再来であった。
「ご苦労! 全員合格じゃ。実はこの試験はパーツを探すためのものでは無い。自警団員として心根のさもしい者が居らぬかどうかの倫理試験であった。見つけたパーツ以外のお宝を持ち逃げした者は誰も居ない。故に全員合格じゃ」
 機転の利いたマギーの言葉に、暴動寸前の空気は一瞬に鎮火したのであった。

●申の試験
 申の試験は実技試験だ。
「海賊から人質を無事救出してください」
 これが課題である。志願者5人が1班となり、3人の試験官を相手にする。
 主試験官はジェンナーロ・ガットゥーゾ(ea6905)、補助試験官はファング・ダイモス(ea7482)とヴラド。人質役はエヴァリィ・スゥ(ea8851)だ。試験時間は1班30分。未の試験に引き続き、マギーのクリスタルソード作成で計測する。
 採点は戦闘技能30点、作戦・役割分担40点、人質救出30点の合計100点満点とし、技能・作戦・人質への対応等で失敗があれば、その都度減点する。なお志願者に対しては、試験官に深手を負わせる魔法の禁止が言い渡されている。
 第1班はリーダーの刃桃太を中心に、見事に統率されていた。道中でのファングの妨害を何なくやり過ごし、『海賊のアジト』に到着。そこに待っていたのは海賊の親玉役ジェンナーロだ。
「わっはっは! 七風海賊団のトナカイ、ジェンナーロ様だ!」
 桃太と死竜の攻撃は手強く、さしものジェンナーロも押され気味だ。
「貴様ら! 人質の首をへし折るぞ!」
 手下役のファングが、エヴァリィを羽交い締めにして叫ぶ。エヴァリィは囚われの姫君よろしく白いドレス姿で薄化粧。文字通り体を張って仕事に励んでいる。
 桃太は臆することもなく言い放つ。
「おまえ、後ろから狙われているぞ」
 さっと振り向くファングだが、背後には誰もいない。
「ふん! そんな騙しに通じるか‥‥」
 桃太に向き直った隙を突き、背後の岩場の陰からサントールが飛び出し、ファングを突き飛ばした。エヴァリィはサントールの腕の中へ。その瞬間、頭の髪飾りがぽろりと落ちてハーフエルフの耳が露わに。それを見たサントールは顔色を変え、あろうことかエヴァリィを突き飛ばした。サントール、大量失点。
「サントール! 何てことをする!?」
 桃太が興奮して怒鳴る。地に倒れたエヴァリィの体をファングが抑え込む。時間は残り僅か。救出作戦失敗か!?
「はい、そこまでね。お姫様から離れなさい」
 素早い動きで背後を取ったシフールのアルフリートが、オーラソードをファングの首筋に突きつけていた。
「抵抗すると、こうよ!」
 シフールのシャレットがファイヤーボムで牽制攻撃を繰り出し、その隙にエヴァリィはアジトを脱出。救出作戦はすんでのところで成功した。
 第2班はなんとファングの妨害に対し、力押しで強烈な反撃に出た。震電、白鳥、炎の3人でファングを徹底的に攻撃。激しい闘いの末、逆に人質とした。その人質を盾にしジェンナーロを牽制し、ついに人質の救出に成功。惜しむらくは志願者のシフール2人が白鳥のブリザードに巻き込まれて負傷し、ほとんど活躍の機会を与えられなかったことである。
 第3班の成績は酷いものだった。リーダーシップは定まらず、作戦は場当たり。なかなか捗らない救出に業を煮やし、李氷華がついにぶち切れた。
「おまえ、作戦の邪魔アルよ!」
 何かと独断専行するクシュリナに一発見舞い、それにクシュリナがやり返し、他の志願者が慌てて止めに入るも、もはやチームワークはガタガタ。見事な失敗である。
 そして第4班。5人の志願者たちはまとまりよく行動し、早いうちにアジトへ到着。ファングが人質を盾に取るや、信じられない事が起きた。
 二本の手首に結わえた純の鉄鎖が、あろうことか人質のエヴァリィに襲いかかったのだ。脳天をぶち割られ、エヴァリィは瀕死の重傷──ファングの目にはそう映った。
 それが一騎のイリュージョンによる幻覚であることに気づいた時には既に遅し。隙を見て組み付いたサンクがファングの行動の自由を奪い、イスカンダルがエヴァリィを脱出へと導いていた。
「ここまで来れば、もう安心です」
 安全地帯まで辿り着き、イスカンダルはエヴァリィに笑顔を向ける。人を安心させる笑顔だ。もしも自分が本当に囚われのお姫様で、イスカンダルみたいな神聖騎士に助け出されたのなら、とっても幸せな気持ちになれるだろうな──そんな想像を巡らせていたエヴァリィは、はたと気づいた。また髪飾りが外れて、ハーフエルフの耳が露わになっている。と、イスカンダルは優しい手つきで髪飾りを元通りに直してくれた。
「何も見なかったことにしておきましょう」
 その笑顔には何一つ陰りというものがない。
「実に見事な作戦であったな」
 見事なチームワークに心打たれたジェンナーロが賞賛の言葉を口にすると、志願者たちを代表して一騎が答えた。
「イスカンダルさんの立ててくれた作戦のおかげです。作戦成功の栄誉は、イスカンダルさんに」

●結果発表
 さて、選抜試験の結果発表である。
―――――――――――――――――――――――――
1位:イスカンダル・ガルベラ(人間)◎
2位:アルフリート・ヤング (シフール)○
3位:シャレット・ハイアー(シフール)○
4位:金 震電 (人間)
5位:四季桜 一騎(パラ)
6位:四季桜 純(パラ)
7位:刃 桃太(人間)
8位:火 炎(パラ)
9位:マウス・サンク(ジャイアント)
10位:多田河 死竜(パラ)
11位:氷河 白鳥(パラ)
12位:パンツァー・フォー(シフール)
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 世の中、何が運不運の分かれ目になるか分からない。運命の分かれ目となったのは何といっても申の試験だ。志願者の最下位に甘んじていたイスカンダルは、秀逸な作戦と人質への配慮のおかげで一挙にトップへ躍り出、咄嗟の機転で作戦を成功させたアルフリートとシャレットも、2位と3位に輝いた。逆に前回第3位の氷華は圏外に転落である。
 それでも上位3名を除けば志願者の得点は僅少差で、試験官たちは総勢12名の合格を認めざるを得なかった。ふるい落とされた8名にとって、試験の後に冥途神社にて供される食事はまさに最後の晩餐。巴の計らいで予算がふんだんに使われ、グレードが上がっているだけになおさらもの悲しい。
 しかしそんな中にも、心温まる光景が。
「申し訳ない。この震電がもっと智恵を働かせておれば‥‥」
 申の試験・第2班でリーダーを務めた震電が、同じ班でありながらも選抜に落ちた二人のシフール、クレイとサルヴィナーヤに深々と頭を下げていた。かつての羅愚美威の試験でのシフールの活躍に恩義を感じているだけに、その不合格が悔やまれるのである。
 それでもクレイとサルヴィナーヤは、屈託のない笑顔で答えた。
「出会うも運命、別れるのもまた運命。震電と出会えただけでも一生の思い出よ」
「私達の分も頑張ってね」
 気が付けば巴と伝助も、震電と肩を並べて二人のシフールを労っていたりする。
「こうして出会えたのも何かの縁があったんスよね」
「これからも縁があったら、またどこかで会おう」
 サルヴィナーヤがにっこり笑って巴に言った。
「おいしい料理をありがとう」

 そして、報告を受けた 自警団々長は
「そうですか‥‥」
 考え込んだ。
「受験生の方から、試験が余りにも慌ただしすぎる。との抗議も来ています。どうでしょう? 慎重に選ぶために、残りの試験を3回に分けてやってみては。そろそろ腕前を試して下さいね」
 今までとは異なり、以降の試験は準備とセットで行うことに成るようだ。