●リプレイ本文
●出航の刻
早速だが、エヴァリィ・スゥ(ea8851)と、マスク・ド・フンドーシ(eb1259)は焦っていた。乗船の前に召集を掛け、これまでの愚痴を聞いたり今回の試練内容の主旨を述べようと、待機していたのだが‥‥。
しかし、期間初日は航海で潰れる事が判っている為、これも受験者を引っかける為の最初の試練であるか、時間感覚を確認する為の引っかけであると勘違いし、誰にも現れなかったのだ。何より、本来の集合場所は港なのである。
「あの‥‥お二人は早朝から何をやっているのでしょうか?」
と二人は自警団長にせき立てられ、気がついた頃には船が出る刻限であった。
「いかん、いかん。また失敗する所であった。エヴァリィ殿、行くぞ!」
「はい」
船は幸い二人の試験官を待っており、ドレスタットに置き去りにされるという最悪の事態は免れた。
「遅かったですね」
言いながらも、ファング・ダイモス(ea7482)がエヴァリィをマスクと共同で持ち上げ、船縁を越させる。
「ちょっとしたケアレミスなのである。許してもらおう」
「ごめんなさい」
マスクとエヴァリィがそれぞれ謝る。
ジェンナーロ・ガットゥーゾ(ea6905)が最後の乗船者たちを確認すると、船長に号を飛ばす。
「行くぞ、出航だ!」
「うぅん、相変わらず、人間の男の子が少ないよねぇん」
等と、何時も通りがっかりするエリー・エル(ea5970)。
「エリーよ‥‥義父は悲しいぞ。折角の器量なのに、嫁に行けぬではないか」
ジョウ・エル(ea6151)は白髭の翁の顔に一瞬、涙を浮かべるが、気を取り直して呟いた。
「何か、今回は準備に本番と忙しいのぉ」
と年寄り染みた感想を云った後はクールな態度を取り戻し受験者達に呼びかける。
「お主らも、自警団になる身じゃし、わしが色々な言語を教えておいても自警団としても、将来的にも、損はないと思うてのぉ」
敢えて高圧的な態度に出るジョウ。応じたのは白鳥、桃太、純、シャレット、アルフリート、イスカンダルであった。後に判る事だが、彼らはこの行動により1ポイントを加算される。他の者はいずれも世界を股に掛ける覚悟を決めていたので、既に多くの言葉に堪能であった。故に敢えてジョウの高圧的な態度に乗る事はないと思ったのだ。
後々これが明暗を分ける。それにしてもこの取りこぼしは、一流に秀でていることが必ずしも良き教育者ではない事を明記せざるを得ない。否、青雲の志を抱く優れた人材を、たかが自警団と言うチンケな枠に閉じこめる事を嫌っての深謀なのであろうか?
●孤島にて‥‥
船はマスクとエヴァリィの遅参が有ったにもかかわらず、何とか定刻通りに島についた。エリーは受験者、試験官合わせて24人分の食物をを引っ張り出す。受験者の内、幾名かがその手伝いに入る。それが終わると、早速に冥途神社でヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)はヴラド節全開で、試験内容の公開を始める。
「ふははははは〜、久しぶりだな勇者の諸君! よくぞここまで来たのだ! 見事試験を突破して自警団になるがよいのだ〜〜」
‥‥悪役路線マキシマムであった。
「ではでは今回の試験の説明なのだ! 試験の当面の目標は『試験官円 巴の撃破』なのだ。しかし、これは指針であって最終目標ではないのだ。諸君らには各自10ポイントの点が最初に与えられ、試験内での行動によって加点、減点されてゆくのだ。ちなみに試験は出航した瞬間から始まっているのだ。殺人・四肢切断・アイスコフィンでの全身凍結は禁止であり、即失格となるが、それ以外は失格となる行動は存在しないのだ。さらに、各試験官はそれぞれ独自の加点条件を設定していて、それに当てはまる者に1ポイントずつ加算するのだ。条件というのは例えば円殿なら‥‥『円巴と闘うよりも困難な状況』の者に1ポイント加算するのだ。さらに、加点・減点の状況に関わり無く、自警団にふさわしいと判断された者が最大3名まで特別推薦枠として次の試験に進めるのだ。この条件は今回と次の2回の試験官がやはり独自の観点で選出するのだ。通過できる人数は9人、と決まっているのだ。試験時間は昼から夕方。この間に禁止事項以外のことは何でも行ってよいのだ。では、諸君の健闘を期待しているのだ〜〜」
「待て、何故アイスコフィンだけが禁止魔法なのだ。ストーンにコアギュレイト、シャドウバインディング、スリープといい、一撃で相手を行動不能にする魔法は幾らでもあるだろう」
白鳥が異議を申し立てる。
「むう、これらは試験官各位で厳正に決めたものなのだ。なので、以前の魔法使用禁止以来のジレンマに終始符を打った決定として受け入れてもらいたいのだ」
「異議を言った事は公式に記録してもらいたい。ポイントが減っても構わないからな」
白鳥は言い捨てて、主張を停止する。
その言葉を受けて‥‥。
「ここが私の領域だ」
‥‥円巴(ea3738)は宣言すると、真鍮箔の鎧を身に纏って、同じく鳥の意匠が施された兜を被ると冥途神社の奥へと入っていく。
彼女は振り返り様に‥‥
「君達が私を許容するなら、私も君達を許容しよう。敗北、卑怯な手段、受験生への攻撃、ただの減点対象だ。時間内での情報収集、試験官や受験生を口説き、あるいは兄貴と呼ぼうと自由。勿論私に普通に勝って10点で抜けてもかまわないが、他がそれ以上なら落ちる可能性もある」
‥‥と、口上を述べる。
●受験者達
「では、早速ですが‥‥私は円様ほどの剣客と戦って、打ち倒す自信がないので、回復と祝福を担当させてもらいます」
完全バランス重視のイスカンダルは自身の10ポイントの保全に努めるべく、神聖魔法の切り売りを始めた。
それを聞いた、マギー・フランシスカ(ea5985)は自分から何をするのかを表明しているので聞くまでもなく、早速にアルフレッド・アーツ(ea2100)に耳打ちする。と言ってもエルフのマギーが、スコアをつけるシフール少年のアルフレッドに耳打ちするというのは相当滑稽な光景ではあるが。
それを見た震電はアルフレッドに尋ねる。
「拙者のポイントは今、何点か? 後、全員のポイントを知りたい」
「えっと、震電さんのポイントは変動があって、11ポイントです 後は‥‥」
と、アルフレッドはジョウの講座に参加していたメンバーが12点になった事を告げる。無論、ジョウの名前はおくびにも出さないが。しかし、震電は大体察しがついたようであった。
「成る程、情報を聞けば、ポイントが貰えるわけではないのか?」
「それほど、シンプルな試験ではありませんよ」
この震電の11ポイントというポイントはは七刻双武(ea3866)が船内でそれとなく、受験者の荷物を確認していた所で決定したポイントである。皆ともに基本である保存食などを疎かにしていない。故に金とその他の冒険者も1ポイント加算されている。
一方でその他の1ポイントを得るために共闘する者もいた。シャレットとパンツァーである。この精霊魔法、高速詠唱系の速成コンビは円の設定条件である『円巴と戦うより困難な状況』を果たそうとしている。
二人はノルマンの実力者として名高いファングを獲物とすべく、ジャイアントの苦手な魔法である、火の精霊魔法『ファイヤーボム』と、月の精霊魔法『ムーンアロー』のコンボで撃破しようというのだ。尤もこの二人はそれ以外出来ないという根本的な欠点を抱えているが。
●情報いくさって大事
ロープ使いの忍者、炎は直接戦闘に入る前に、情報屋としてドレスタットで一、二を争うとまで噂された赤毛の忍者、以心伝助(ea4744)を探す。同じ忍者同士。何か円に関する情報を得られないかと踏んだのだろう。試験開始直後だけあって、まだ距離を取っていない伝助を炎が補足。そこで早速本題に入る。
「すっぱりと聞かせていただきます。各試験官の独自の加点条件とは何でしょう?」
「いやぁ、それはご勘弁でやんす」
オーバーアクションで仰け反る伝助。
「まあ、ヴラド坊は『普通じゃない』事。アルフレッド坊は『巴さんとの戦いに関して』でやす。円殿はヴラド坊が言明されていた通り。七刻老は『基本』でやす。あっしに関しては『問いそのもの』が返答っす。エリー殿はなしっす。マギー様はもう、ポイント加算は終わったので答えません。ジョウ老に関しても同じでやす。ジェンナーロ殿は『死んでいない事が大前提』となりやすね。ファング殿は『思想が大事』っす。エヴァリィ嬢とマスク殿はなしで」
ジェスチャーをつけながら、解説をつけていた伝助は12名分の解説を終えた所で、力果てた。
「では、続けて聞きます。円殿の技は?」
「陽動攻撃。狙い打ち。返し技。掠め斬り。遠当。居合い抜き。陽動攻撃と狙い打ち、居合い抜きは奥義の域まで達していやす。何と言っても夢想流ですからね」
炎にジェンナーロの分も含めて2ポイント加算。
●大地に炎、月に光
その頃、ファングは壮烈な爆炎の中に巻き込まれていた。盾は魔法に対して有効である。しかし、これは但し書きがつく。魔法が盾に対して正面から飛んできた場合である。
パンツァーとシャレットのコンビはパンツァーが空中から偵察する事によりファングを発見すると、遠距離から回り込んで名乗りも挙げずにムーンアローと、ファイヤーボムの高速詠唱でファングが盾を向ける前に攻撃。
ジャイアントの精霊魔法への抵抗のなさにつけ込み、多方面からの攻撃で盾を向けさせる暇を与えはしない! 無論、ファングとて、座して攻撃を受けている訳ではない。しかし、高速詠唱の使い手の二人は移動しながらでも魔法を撃ち逃げしてくる。
「やれやれ、冒険者に囲まれたモンスターとかはこんな気持ちを味わうのでしょうね」
ファングは数発の攻撃を浴び、重傷を受けた時点で、二人に対し、負けを認めた。
「名乗りを挙げないのは卑怯な気もしますが、負けは負けです。不意打ちは別にルールに挙げられている訳ではないので、スペルキャスターのコンビが攻めてくるとは思いませんでしたよ。これは純粋に完敗です」
こうしてシャレットとパンツァーに情報収集のジェンナーロの分も含めて2ポイントが加算された。とは言え二人も高速詠唱の使いすぎで魔力不足になり、戦いからはリタイアする事になるのだが‥‥。
●驚愕
「何! ファングが倒れたって!?」
冥途神社に何人かの冒険者によって、ファングの巨体が担ぎ込まれたのを聞き、ジェンナーロは驚きの色を隠せなかった。
「エリーひとりじゃ手に負えないわ、どうしようかしらん?」
エリーは応急手当こそすませたものの後が続かない事で、くねくねと困っていた。
「では、僭越ながら‥‥」
と、言ってイスカンダルはリカバーを数度の試行錯誤の後、発動させた。
「格好良いわイスカンダルぅ〜v」
ファングはイスカンダルに礼を述べると。
「ふう。戦いは剣戟を交える事だけが全てではないのですね。さすがにこれだけ場数を踏むと、お互い洒落になりません‥‥」
苦痛の中から蘇ったファングは戦線に復帰する。
「待った!」
そこに目と目の間に一筋の傷がある黒髪のパラと、亜麻色の髪をした全身を雷に纏った二人のパラの姿があった。ジャパンの陰陽師と志士の四季櫻兄弟である。
「兄さん、本当に二人でやるの?」
「純‥‥オレは群れるのが嫌いだ」
言いながらも黒髪のパラ‥‥一騎である。が、ファングへの呪文を成就させる。イリュージョンだ。傷は全快しても、ジャイアントならではの精霊魔法への抵抗力の根本的な弱さは変わらず、この魔法により五感を一切途絶された感覚を見舞われた。
何も見えず、聞こえず、嗅げず、味わえず、触れる感触すら存在しない世界へとファングは放り込まれてしまう。そこを後ろから全身を純の雷を通電した鎖で絡め取られる。
「ご免なさい。でも、食い扶持の為です、すいません」
一騎はファングの黒金の城の様な体力に直接攻撃を叩き込むだけ無駄と知り、最初の精神への一撃のみ加えて、後は純に任せている。純の雷が巨体を蹂躙しきった6分後、ファングは再び倒れ伏していた。そこをスクロールを広げ、一騎がストームのスクロール魔法で吹き飛ばす。抵抗しきれずに空中高く放り出されるファング。
このあと、落下地点では、最後の魔力を振り絞り、イスカンダルがファングの傷を癒やす。これで純と一騎に1ポイントずつポイントが加算。
そのまま、勢いづいて冥途神社に挑む二人だが先客がいた。氷雪が吹き荒れている。
「遅かったか!」
一騎が叫んだ。
●さらば冥途神社! さらば円巴、黄金の魂の酉の守護者よ!
しかし、既にパーティーを組んでいたアルフリートと、桃太、死竜、マウス、白鳥、そして震電が組んで冥途神社へと雪崩れ込んでいたのだ。
だが、神社なのに、敷地は卒塔婆の如く、立ち並ぶロッドの山に埋もれ、普通人ならば3人以上は同時に戦えそうになかった。否、巴がそうなるべくこつこつと、この戦場を仕組んでいたのだ。
建造に大枚を支払ったのは伊達ではない。とはいえ、受験者にはアルフリートがいる。オーラソードと空戦を制するシフールである。これで前衛に立つのは4人。白鳥が先制攻撃を加えようと、アイスブリザードを唱えようとするが‥‥巴は驚かず騒がず‥‥。
「さようなら」
ロッドをひと振りすると飛び出した衝撃波が白鳥を直撃する。だが、打撃による負担を超えて、白鳥は淡く青い光を放ってアイスブリザードの奔流を生む。巴が氷と凍気の渦に巻き込まれた所へ‥‥。
「大発生!!」
‥‥こちらは桃色の淡い光をまとって、震電のオーラショットが撃ち放たれる。二個所の攻撃を同時に受けきれず、巴もそれなりの負傷を強いられる。更に空中からのアルフリートの剣状のオーラソードの4連撃が切って落とされる。
巴は対魔法戦に盾を向けていたので、魔法を付与されていないロッドで受ける事も適わず、ましてや彼女の技量では避ける事も出来なかった。
しかし、巴の鍛え抜かれた武人ならではの闘気の高さはオーラソードの斬撃をギリギリ耐えきる!
更に返しの一撃を最初の二手に入れてアルフリートを戦闘不能にした。
「ふぉぉおおお!」
そこへ、裸の上半身を染料で青く染め、逆立てた金髪と髭を石灰を溶かした水で、しっかり固めたマウスが、ごついクレイモアを振りかざし、卒塔婆の如きロッドの山を薙ぎ払いながらも、全力で、巴に一打を浴びせる。もはや、カウンターを返す余地もなく、棒の様に突っ立つのみの巴。
そして、ロッドを擦り抜けながら、淡く光り輝く日本刀状の桃太のオーラソードの一撃が巴を切り払う。続く乱打によって巴はついに倒れ伏す。そこへ、死竜が転がった兜を拳の一撃で粉砕する。
これが勝利の証。
「さあ私を越えて行くがいい」
巴の幽かに青ざめた唇から言葉が漏れる。それは、十二の試験の内、酉の試験の終焉でもあった。
夕陽が今、沈んだ。
アルフリートと、桃太、死竜、マウス、白鳥、そして震電も最も長く巴との戦いの場に立っていた者として、アルフレッドのポイントが1点加算。更にジェンナーロ基準で桃太、死竜、マウス、震電に1ポイント加算。
純に炎やイスカンダル、それにアルフリートにシャレットも、エリーの作る夕餉の支度と後始末を甲斐甲斐しく手伝う。これで5人に1点加算。
冥土神社でテキパキ働いているエリーを見てジョウは‥‥
「何故、多彩な才能があるのに、エリーは婿をとれないのじゃろうか」
‥‥と全能なる賢者とまで謳われたジョウは、完全なる親バカ的な視点で不思議に思う。エリーが既に心身共に若作りだからというのは一般論であろうか?
●結果発表! ポロリもあるよ(嘘)
「はあ、心安らぎます。これだけニンニクが入っていると」
「でしょ、でしょ」
と同郷のよしみもあってか、同じ食の好みを示すイスカンダルにすり寄るエリー。夕食の場での出来事であった。
「でも、このニンニクも捨てないと‥‥もう、故国が犯した罪はノルマンで償うと決めましたから」
イスカンダルは決意を新たに表明するのであった。
食事の後の試験官会議で、シャレット、一騎、白鳥もヴラド基準で1ポイント加算。広範囲魔法は往々にして派手に映るものである。
しかし、集計の結果、ポイント制の弊害が出た。1位はダークホース、シャレットであった。同点1位はイスカンダル。次点で、桃太、白鳥が続くと、後は全員同率最下位となってしまうのだ。
「脱落者なしか‥‥ここまで来たら、感慨深いものがあるのぉ」
エリーは一方で試験官達に‥‥
「まぁ、ここまで残ったんだからぁ、他のことでもぉ、うまくいくって!」
‥‥と持ち前の明るさで皆を励ます。
「うまく行ってないだろう」
とエリーに身も蓋も無いことをいうのはジェンナーロ。
この結果発表が荒れた事は言うまでもない。しかし、実際の武力、魔力行使に及ばなかったのは、自分達が受験生であり、この試験を否定しては次の食い扶持が無くなるという危惧感があったからである。
現に試験から脱落したもので悪事を働いている者もいるのだから。自分達がその芽と扼されて、試験官全員を相手に‥‥加えて、良いところを見せようとした、前の仲間達全員を相手に回す覚悟はそうそうあるものではない。
その点でエヴァリィの危惧は危惧に終わった。
●後始末
船がドレスタットに帰り着いた所で自警団長が顔役? であるヴラドに首尾を聞く。
「どうですか? 予定通り9人になりましたか?」
「それが、どうもうまくいかなったのだ。ポイント制にした弊害が出てしまったのだ。これでは主観による試験官の合議の方が『予定通り』に人数を減らすには向いているのではないかと、思えてきたのだ。団長殿? 相変わらず、採用枠は5人なのだな」
「変更はありません」
とりつく島もない返答であった。
「う〜む、こまったのだ」
ドレスタット特産の冷たい水を飲むヴラド。
「とにかく、人材を絞り込む、その為に皆さんを雇ったのですから、料金通りの働きはしてもらわないと困りますからね」
念を押すように自警団長に尋ねる。
「皆、かなり有望な人材だから、倍くらいの12人で手は打てないものか?」
後に控えた試験官二人には悪いが、そうなればラクになれるかもしれないと思ってヴラドが妥協を求める。
「将来の給料などに響いてきますので、それは遠慮させてください、ヴラド殿」
「それではしかたない。む〜、頑張るのだ」
●火の粉、自爆、誘爆、ご用心
そこで自警団長の矛先が向けられるのは、出発時に遅刻寸前であった二人組。
「ところでマスク殿、エヴァリィ殿? 報告書を読む限りでは試験場の島では何もやっていないようですが、これはどういう事ですかな? 当自警団としても何もやらないような御仁相手に給料を支払う程、資金が潤沢でないのは判っていただけますか? それとも、今後この依頼に入らないで欲しい、などの直接的な物言いをしなければ判っていただけませんかな?」
「自警団長殿、それはちょっと言い過ぎではないのかなのだ?」
そこへ困った顔で飛び出した、ヴラドが取り成しに入る。
「では、ヴラド殿の顔を、ここは立てておきましょう」
つまり、今のは脅しに過ぎないという事だ。
そして、まるで予定調和の様に、自警団長は今の提案を引っ込める。それを聞いてマスクとエヴァリィは‥‥。
「では、次回はハッスルさせてもらうのだ‥‥まあ、他の試験官のお株を奪わぬ程度にな‥‥はっはっはっは」
「できるだけ、頑張ります」
自警団団長へ未来に向けての抱負を述べるのであった。
ポイント制と主観性、どちらがより良い試験となるかは試験官達の選択基準に関わってくるだろう。
だが、どちらを取るにしても、5人にまで受験生を絞り込む必要がある。多すぎるのだ。今の数では、それが戌の試験に向けての課題であった。
そして‥‥刻は巡り、3日間の試験は終了したのであった。