みっしょん参 鳥

■シリーズシナリオ


担当:松原祥一

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4

参加人数:10人

サポート参加人数:7人

冒険期間:10月12日〜10月22日

リプレイ公開日:2006年10月26日

●オープニング

「派手なのもやってみたい」
 育ちの良さげな青年志士は、分かり易い答えを発した。
「と言いますと?」
 依頼人の使いの男が聞き返すと、青年は腕を組んで考えた。
「そうだ、な。よく龍虎の対決だとか、風神雷神だとかの絵や像を作るが、実物の姿を見て作られた物っていうのは聞いたことがないな。命掛けで本物を探して、その姿を絵にしてみるというのはどうだろうか?」
「竜なら先日、依頼に連れてる奴を見たな」
 青年の仲間が茶々を入れる。最近は滅多に見られぬ筈の魔獣、精霊をペットとして冒険者が連れていたりする。
「ああ、まったくだ。越後屋の福袋はな。あれこそ本当に不可能よ」
「‥‥そう言われては、みもふたも無いが」
「なんでも越後屋直属の冒険者ちーむが在って、世界中から珍しいアイテムや魔獣を獲ってくるらしい。先日も彼奴らは華国で大昔の皇帝の墓を発掘し、大量の埴輪を仕入れたとか」
「何、本当か!?」
「ああ、嘘だ」
「‥‥」
 使いの男は、他愛の無い彼らの話を、何も言わずに最後まで聞いていた。


 それから約二ヶ月後。


 神聖暦一千一年十月、ジャパン、京の都。
 馬鹿馬鹿しき冥土騒動も人々が忘れかけた頃、使いの男は再び現れる。
「不可能依頼は、単に困難な依頼とは一線を隔したものでなくてはならない。
 成否の比較を放棄する程の、誰もが否と応える事こそ、それである」
 男はこれまで二度現れた。
 冒険者ギルドには頼まず、これと思った冒険者に直接声をかけるのだ。
 男は冒険者ギルドにかからなかった依頼を専門に扱う冒険者を求めている。
 くだらな過ぎる依頼、実現不可能な依頼、或いはギルドの性質上受けられない依頼などなど。

「そろそろと思っていたぞ」
「少し早い。だが、早急に仕上げる必要もある」
 男はまた前回の冒険者が言った話を持ち出した。
「本物を探してくるというアレか?」
 あれは不可能依頼というよりは難しい依頼のような気がする。
「そうだ。二体、期間中に探して絵にして貰う」
 何処其処にどんなモノが居る、といった手掛かりは無し。
 絵の題材は命懸けで探す程の本物であること。構図は自由。解釈も自由。
 使いの男は淡々と用件を終えて踵を返した。
「もしやる気になったら、明後日の晩、京のはずれの炭焼き小屋に集ってくれ」
 不可能依頼はギルドの仕事ではない。
 危険な橋を渡る関係上か、使いの男は必要以上の事は何も話さなかった。
 受けるか受けないか、それは自由である。

 なお、この依頼を受けてあなたが捕まっても殺されても恥かしい目に遭っても当局は一切関知しないのでそのつもりで。

●今回の参加者

 ea0042 デュラン・ハイアット(33歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea0085 天螺月 律吏(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 eb0132 円 周(20歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb1645 将門 雅(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb2483 南雲 紫(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2886 所所楽 柚(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3448 紅 珊瑚(40歳・♀・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 eb3609 鳳 翼狼(22歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

白鳥 氷華(ea0257)/ ウェンディ・ナイツ(eb1133)/ 所所楽 苺(eb1655)/ 日高 祥雲(eb1749)/ 日高 瑞雲(eb1750)/ ユーニー・ヴェルチ(eb2042)/ 将門 司(eb3393

●リプレイ本文

 不可能依頼を受けた冒険者10人が炭焼き小屋に集う。
 交わされる挨拶は変名、世間では英雄と呼ばれる者もこの仕事、この場では関係ない。
「やあ諸君。私はこーどねーむ「デュラン様」だ。あー、高名な冒険者デュラン・ハイアット氏とは別人だから注意したまえ。そう、不可能を収拾不可能にする男だ」
 初っ端に金髪の派手男、デュラン様が暗号名を地に落す名乗りをあげる。
「あの男、あれで通す気か」
「‥‥気にしないことだ」
 続いて武芸者の白河・深緋、馬廻りの鳥、メイドシフールのメイフライ、万屋の算盤、浪人の椿、教師の桂花、ジャイアントのコーラル、そして地獄から甦った出歯亀が名乗る。この9人は一度目、或いは二度目の仕事の経験者だ。成功の見込み無く名誉も無い、ギルドの依頼ですら無い半端な仕事に付き合う数寄者達。
「さて困った依頼を出してくれたものだが『本物』探しか‥‥ふむ、風神雷神に絞ってそこから攻めてみるか?」
 と言ったのはデュラン様。
「結果は言霊に左右されましょう」
 10人目、名乗らなかった子供巫女が口を開く。
「精霊、神仏を絵とするは大難事。定められた時と場所、条件を得なくては到底叶わぬ事と存じます」
 子供ながら巫女は確りした口調で話した。場数は踏んでいるようだ。
「闇雲に探しても見つからないって事よね。対象を絞るのは私も賛成よ」
 椿は巫女の言葉に頷く。妥当な判断だろう。鳥、深緋、算盤、コーラルの4人が風神雷神探しに賛同する。
「なあ、不可能っぽいことならなんでもオッケーなんだよね??」
 好奇心を刺激された出歯亀は違った。
「俺はねー、かぐや姫を探して、月まで昇って兎の餅つきを見て、その絵を書きたいな!!」
「は?」
 月へ行く。
 これほど不可能依頼に相応しい話も無い。要するに無理、故にあり。
「まぁどうせなら十二単の美人さんを探すほうがい‥‥はぁ、私も随分とそちらの方向に毒されて‥‥」
 メイフライは己の変遷に動揺しつつ、出歯亀に乗った。椿も「かぐや」探しに興味を示す。
「決まったようだな」

●太陽に聞く
「‥‥情報不足ですね」
 試しに桂花は風神・雷神・かぐや姫の所在を陽魔法で探したが、分からないと答えが返ってきた。
「何が足りないんだ?」
「特徴です。特に、外見を知らなくては話になりません」
 桂花の使う魔法は陽の照らす場所を遍く全世界規模で探知するが、太陽が見ている物に限られるので、名前や立場、目に見えぬ特徴では調べられない。
「それって、かなり大変なんじゃ‥‥」
「はい」
 魔法は万能ではない。所謂風神雷神の容姿を太陽に話しても答えは同じだ。顔にこんな傷があるとか、服にこんな模様が付いてるとか、個体を識別するに足る情報が要る。
「つまり、本人の事をよく知らないと探せない訳か。実際に会った人に話を聞くか、その人が残した絵や言葉を探すしか無いな」
 ひとまず手分けして情報を集め、集めた情報を元に探索を行う事になった。

●風神雷神調査
 一般に風神雷神と言えば、逞しい鬼の姿に虎皮の褌が相場だ。雷神は雷鼓を持ち、風神は風袋を持つと言われている。
「ほほぅ、それならば風神雷神は鬼の類か?」
「風や雷の暴力的な一面が鬼に例えられたのでしょう。昔は、鬼を神として信仰の対象としたとも言われていますが」
 デュラン様に頼まれて(?)、デュランは風神雷神の絵や像を持つ寺社を巡った。由来や作者を尋ね、そこから何らかの手掛かりを得ようとする。
「ここにあると聞いてきた素晴らしい風神雷神図。是非ともそれが描かれた由来をお聞きしたい」
「由来と申せば、当山を開いた上人様が荒行の末、嵐の夜に雷神を目撃し」
 どこでも尤もらしい答えが返ってくるものの、昔話の伝承ばかりで真贋は確かめようも無い。
「それではお聞きいたしますが、本来風神・雷神様を祀られている場所はどこなのかしら?」
 デュラン同様、深緋も寺社を訪ねていた。
「本来の場所? それを聞きたいと」
「何か知ってるのか? ‥‥いえ、知っているのかしら? 是非教えて欲しいものですわね〜」
 深緋は身を乗り出した。答えが得られたなら、すっ飛んでいきそうだ。喋りは変えても、その根は変わらないようだ。
「風の中、雷の中に神はおわします」
「へ?」
 立ち上がりかけた深緋は予想外の答えにつんのめった。伝説の女侍を転ばせた神主は静かに笑う。
「神は何処に在る、此処に在るというものとは違います」
「そんな筈は無いですわ。神といえど姿在る者、描く事もできれば、この剣でぶった切れ‥‥ととと」
 暴走しかけて深緋は冷静になると、座り直した。
「風神は風の吹く所、雷神は雷の鳴る所何処にでも居ます。形は仮初に過ぎないのですよ」
「あら。それはそれ、これはこれですわよ」
 深緋も笑う。言わせるのは冒険者の拘り。神も悪魔も鬼も、胸倉を掴んで張り倒すのが冒険者。この唯物論者は幽霊も神魔も実在を確信する故に信じる。
「それならば賀茂院で八詫烏、神泉苑で龍を探すように致さねばなりません」
 子供巫女は言った。風神といえば級長津彦命、雷神といえば建御雷神や八雷神等と神の名前を出す。では何処へ行けば逢えるのかと深緋に言われて巫女は困った。
「それは私より、桂花様が良くご存知ではないかと」
 桂花は、まだ若いが実は名の知られた陰陽師である。少し前まで、陰陽寮はジャパンで精霊魔法技術を独占し、唯一の精霊魔法研究機関であった。蓄積する物が違う。
 余談だが、精霊魔法後進国ながら陰陽寮は西洋の魔法使い達も驚く成果を幾つかあげている。例えば誰でも使える転移護符などがそれである。
 そして現在の陰陽頭である安倍晴明は鬼神も従えると言われており、風神雷神を知っていても何ら不思議は無い。それに学者であり、専門家でもある陰陽師達の言は重いと思えた。
「‥‥私が、ですか?」
 ギルドの報告書を調べていた桂花は巫女達にその事を質問され、頭を抱えた。彼女の専門はスクロール。呪文を扱うには長けているが、神や精霊の知識は別物だ。
「精霊魔法を極めることで、八百万の神を使役する事が出来ると聞いた事はありますが‥‥」
 そのような奥義に達しているのは晴明や名門賀茂氏など一部の者だけだろう。ギルドマスターの弓削是雄も昔は凄腕の陰陽師だったと聞いた事はあるが。
「限界はございますが‥‥何とか調べてみますね」
 ギルドの仕事では無いから表立って陰陽寮の有力者達には聞けない。桂花は文献を調べてヒントを得ようとしていた。

●かぐや姫調査
 コーラルはかぐや姫を調べる出歯亀、メイフライ、椿達に以前受けた依頼の事を話した。
「去年の暮れなんやけど、うちな、川姫の依頼で月の精霊やらに会ったことがあんねん‥‥」
 あの月道の発見に繋がった依頼をコーラルは受けていた。川姫といえば、出歯亀らが探すかぐや姫と同格とも言われる存在だ。
「川姫って美人さん?」
 そこが重要と言わんばかりに問う出歯亀。コーラルが頷くとハーフエルフの青年は満面の笑みだ。
「ホラね。俺の言った通りだ。かぐや姫も絶世の美人さんみたいだし、関係者も美人さんなら、当代きっての遊び人や軟派者とかに美人情報を聞いて回ればいいんだよ!」
「美人さんは好きですが‥‥その調査の方法は問題アリかと」
 メイフライに突っ込まれても、出歯亀は負けない。
「何でさ? 酒場とか引っかけスポットに行って、そこでイケメンどもから美人情報を収集しようよ!」
 さすが不可能依頼初回で屍になった男は言う事が違う。
「分かりました。そちらの調査は出歯亀君にお任せします」
 メイフライは出歯亀を切り捨てた‥もとい、観察する事にした。
「それじゃ私は月道関係から当たってみるわ。かぐやって月と月道に関わりがあるものみたいだから。後は伝承や文献だけど‥‥この人数じゃ、そこまでは無理かしら」
 椿は知り合いにも頼んで、かぐや姫と月の兎に関する情報を収集する。
「私も書物を調べるのは苦手ですね。どなたか月や月の精霊に詳しい人から話を聞ければ良いのですが‥」
 メイフライはコーラルを見た。現在の川姫の所在は分からぬという。メイフライは約一月前、東の地で別の神と邂逅した。だから条件さえ揃えば、神にも会える事を知っている。相手が望めばだが。
「特に気にしないと会う事は出来ても、逢いたいと思うと全く逢えない‥。なにやら恋のようですねぇ」
 シフールは薄笑いを浮かべる。
「尤もらしく聞こえるけど、それって当たり前の事じゃない? せいぜい頑張って探すことよ。もしかしたら、私達が探してる事に気付いて向うから会いに来てくれるかも」
 期待はしていない顔で、椿はそう言った。人間が探しているからと言って、それだけで興味が引けるとはさすがに思えない。向うにも会う理由があれば別だが。
「かぐや姫は江戸で月道が見つかった時に現れたと噂で聞きましたが‥‥ですが探し出すのは困難でしょう」
 京都の月道で陰陽師に聞いた所、答えてくれた。
「どうしてですか?」
「かぐや姫を探す人は多いのですよ」
 陰陽師は言った。絶世の美女と謳われるかぐや姫の伝承はジャパン各地にある。また、月道を司る精霊という説もあり、血眼で探す権力者や探検家もいるとか。
「‥‥残念ですが」
 或いはかぐや姫に会う方法はあるかもしれない。しかし、不確実である上に途方も無い。それだけの有名人では厄介事に巻き込まれる危険の方が高いだろう。メイフライは諦めた。


●嵐の山
 陰陽寮は風神雷神の事を知ってか知らずか身のある情報は無かった。
 となればもう実地に調べるより他に無い。
「やっぱ風神雷神やから雲の上なんやろか‥‥高い所に登らんと見れんのんかなぁ?」
 算盤は猫耳巫女装束秋冬版と称するふわふわ帽子に巫女装束の格好で山を登る。ちなみに、その格好で行商人や旅人相手に聞き込みをしたらしい。おかしな宗教と思われたのではなかろうか。
「だけど、本当に風神雷神は居るかしら?」
 寺社で否定された事が堪えたのか深緋は彼女らしくない疑問を口にする。
「疑ったらアカン。風神雷神ちゅうたら、嵐の中に空飛んでるんちゃうか? そういうのを見ようと思ったら、やっぱたっかーい所に行くしかないやろ!」
 コーラルの答えは明快だ。雲の上の存在なら、雲がかかるほどの高い山に行けば会えると。コーラルは仲間達が風神雷神の調査をしている間、ずっと山の事を調べた。
「高い山知っとったら教えてぇな!」
 京都周辺で高山と言えば、まず北西の愛宕山だろう。北東の比叡山も有名だ。後は少し離れるが近江の比良山系の山々か。風神雷神が高山を好むならば、それらの山のどれかに登れば良さそうではある。
「比叡山は駄目だ」
 と反対したのは鳥。比叡山には京都寺社に強大な影響力を持つ延暦寺があり、またその一角に鬼王酒呑童子の棲む鉄の御所がある。その庭先で風神雷神を呼ばわる騒ぎを起すなど、火に油どころでは無い。下手をすれば現在の京都の微妙なバランスを木端微塵に破壊する危険すらあるのだ。
「それほど凄い所なのですの?」
 目を輝かせて聞く深緋。
「これだけ煮詰まっているのに京都が暴発しないのは、周辺諸侯に比叡山を刺激する事への恐れがあるからだという者もいるぐらいだ」
 同じ理由で近江の蓬莱山にも鳥は否定意見を出した。京都には近江の兵も入っている。蓬莱山の豚鬼王国を挑発するような行動は慎むべきだ。
「え、蓬莱山は豚鬼の巣? それはちょいきついなぁ。せやったら武奈ヶ岳を推すで!」
「武奈ヶ岳は蓬莱山の隣じゃないか」
「えー。そんなら愛宕山かい」
「愛宕山には天狗がいる」
 有名な愛宕山太郎坊。こちらも最近になって時々噂を耳にするようになった。
「なんじゃそらー。そない言うとったら、高い山なんか登れんわー」
 有名な高山となればどれもこれも古くから信仰の対象とされ、或いは鬼や天狗の住処なのだった。
 色々と話し合った結果、コーラル達は今、愛宕山を登っている。比叡山や蓬莱山よりは危険度が低いと思われたからだ。
「デュラン様は来んかったなぁ‥‥」
「算盤さんは律儀ですわね。居ないのに様をちゃんと付けるなんて」
「しゃーないわ。本人の『りくえすと』には答えんと」
 深緋は登るうちに本領を発揮しだしたのかズンズンと進んだ。先頭を行く算盤を追い抜かん勢いである。
「ふー、道なき道を行くっていうのも楽しいものですわね〜」
 久しぶりに腰にさした剣の重みもまた、深緋を燃え上がらせる。それなりの荷物を背負っている筈なのだが、持ち前の体力と気力で疲れを感じさせない。
「命がけ、どんとこい! ですわよ」

 深緋を先頭に進む一団は山頂に近づいた所で稲光を目撃する。
「雷光? ‥‥まさか、俺達を呼んでいるのか」
 空を過ぎった一筋の雷は、まるで冒険者らを誘っているようだ。
「やばそうな雰囲気やな」
 算盤は嫌な予感がしたが、ここまで引き返す事は出来ない。何より、雷光を見た深緋が早足で前に進んでしまっていた。
「無用な争いは避けたいが‥‥」
 一人で先行させる訳にはいかないと鳥も走る。今回は戦いが目的ではないから弓は準備しない。
 彼らを歓迎するように風が吹き始めた。

 そして。
「待ちかねたぞ、人間達よっ!」
 山頂上空に佇んでいた。腕を組み、呆然と見上げる冒険者達を空中から見下ろす風神雷神‥‥ならぬ、豪華なマントをはためかせた一人の男。
 ライトニングサンダーボルトとストームで音と光を演出し、デュラン様は地上の仲間達に神の如く言い放つ。
「さあ、私をモデルにしたまえ!」
 ‥‥‥。
 あまりの事に一同、声もない。
 ‥‥。
「うわぁ」
 ‥。
「ん? どうした。なに、誰が「ホンモノ」だって?」
 焦れたようにデュラン様が雷撃を地上に落す。
「‥‥おい深緋」
 鳥は何かを諦めた顔で深緋を見た。
「え。なに?」
 気が付けば、他の仲間も彼女を見ていた。深緋は武士の心得で多少絵が書ける。そして登山前に彼女はこう言っていた。
「どのような姿であれ、どのような状況であれ、私は私の目にしたままを描き取るんですわっ」
「今が、その時だ」
「えーーっ!?」
 彼女らしからぬ情け無い声が、愛宕山に木霊した。


 そして、本物風神雷神図と題されたデュラン様の自画像が、依頼人に渡されたという話である。
「‥‥なるほど」
 使いの男は眉を少し上げて絵を見ていたが、納得したように立ち去った。


○登場人物紹介(超極秘事項)
デュラン様‥‥デュラン・ハイアット(ea0042)
白河・深緋‥‥天螺月律吏(ea0085)
鳥‥‥天城烈閃(ea0629)
メイフライ‥‥レディス・フォレストロード(ea5794)
子供巫女?‥‥円周(eb0132)
算盤‥‥将門雅(eb1645)
椿‥‥南雲紫(eb2483)
桂花‥‥所所楽柚(eb2886)
コーラル‥‥紅珊瑚(eb3448)
出歯亀‥‥鳳翼狼(eb3609)