【レッツ宝探しっ!】月からの謎掛け?

■シリーズシナリオ


担当:深洋結城

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月07日〜04月14日

リプレイ公開日:2008年04月14日

●オープニング

 前回の調査から数日が経ったこの日。
 冒険者ギルドに、御馴染みティーナ・エルフォンスが現われた。
「おや、こんにちは。遺跡の調査の続きを依頼しにいらっしゃったのですか?」
「うん、まあそうなんやけど‥‥」
 冒険者が尋ねれど、その表情は悩ましげ。何事かと首を傾げるも、その手に抱えられている物を見て、合点がいった冒険者は。
「‥‥それは、あの村から借りた書物‥‥? ‥‥未だ解読が‥‥捗っていない‥‥って感じ‥‥?」
「いんにゃ、書いてある事自体は大分読み取れたんや。‥‥三割方やけどな。それで分かったんやけど、この書物は先代があの村の住民に何かを伝えようとして遺した物みたいなんやわ。例えばここ、見てみ?」
 そう言って、集まった冒険者達の前に古代魔法語で書かれた書物を広げるティーナ。
 とは言っても、それを見たところで意味を理解できるのは彼女しか居ないのだが‥‥。
「ほら、ここや。『精霊、現われる、時、声、聞く』書いてあるやろ?」
「はあ‥‥それはつまり、『精霊が現われた時、その声に耳を傾けよ』と言った所でしょうか?」
「正解や! そしてその為に、遺跡の奥へ進め言う事で、そっから先には遺跡内部の罠とか仕掛けなんかの事が書いてはる」
「あらあら。それでは前回でそこまで判明していれば、罠に掛かる事も無かったかも知れませんね〜」
 一人の言葉に「うっ‥‥」と表情を淀ませる一同。
 恐らく全員が考えている事は同じ。前回起動させてしまった虫トラップの事を思い出して‥‥。
「ま、まあ、過ぎた事は仕方ないさ。それにしても、そこまで分かってんのに一体何を悩んでるんだ?」
 冒険者が尋ねると、ティーナは顔を俯け。
「う〜ん、問題はその中の一部‥‥恐らくは次に行く事になるであろうエリアの事なんや。ほら、ここや。『3、時、同じ、押す』で、その先はよう分からへん所が続いて、『地、風、火、水、陽、月。新しい、月、時、根、流れ、浴びる、芽生え』‥‥ウチに分かったんは、こんなもんやわ」
 ティーナの言葉に、頭を抱える冒険者達。
「それは、鍵を手に入れる為の暗号か何かでしょうか?」
「多分なー。それと見た感じ、六種の精霊の属性の後の部分は、一つの文として繋がってる感じなんや。せやけど、ウチもそこまでぱっと読みきれる程古代魔法語に精通してる訳でもあらへんし‥‥」
 言いながら、目を伏せるティーナ――の頭を、冒険者の一人は優しく撫で上げ。
「いえ、これだけでも十分ですよ。出発までにまだ時間はありますし、それまでこの文の意味を一緒に考えましょう」
 彼の言葉に、ティーナは「うんっ!」と大きく頷くのであった。

●今回の参加者

 ea0163 夜光蝶 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1466 倉城 響(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8745 アレクセイ・スフィエトロフ(25歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4286 鳳 レオン(40歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4326 レイ・リアンドラ(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4333 エリーシャ・メロウ(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)

●リプレイ本文

●遺跡を護る『謎』
「おお、なんだか本格的な宝探しになってるみたいだな」
 遺跡のある村に着くと同時に、村長宅を訪ねたティーナと愉快な仲間達。
 彼等の話を、今回初調査と言う事で後ろに立って聞いていた鳳レオン(eb4286)(以下鳳)が、感心した様に声を漏らす。
「ティーナの奴はガセネタにすぐ飛びつく性格で失敗してるだけで、『本物』さえ見つければ、トレジャーハンターとしての知恵は並以上って事なのかな」
 そう言う彼は、過去に何度かティーナの眉唾宝探しに付き合った一人。同じくレイ・リアンドラ(eb4326)や倉城響(ea1466)、レオン・バーナード(ea8029)(以下レオたん)も、意外(過ぎ)なティーナの一面に認識を僅かに改め始めていたりした。
「今回の調査に関しても、無事に許可を頂けましたね。いざという時にはギルドへ救出依頼を出しても頂ける様ですし」
「さっすがエリっち! 頼りになるわ♪」
「‥‥」
 村長との交渉の際に主体となって話を進めたエリーシャ・メロウ(eb4333)。
 彼女は交渉が終わるなり嬉々と抱きついて来るティーナを無表情で押し退けると。
「それにしても‥‥今までの情報を鑑みるに、明らかに奥へと誘っていますが、現状忍耐力を試す為の仕掛けしか無いのが不可解ですね」
「確かに。前回の虫トラップと言い、今回のリドルと言い‥‥一体どの様な意図で設計されたのでしょうか?」
「そもそも、一体何時頃に建造されたのか‥‥。まだまだこの遺跡は、多くの謎に包まれていますね」
 エリーシャにアハメス・パミ(ea3641)、そしてレイが頭を抱える脇で――更にメモを片手に頭を抱えて居るのはアレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)にレオたん、夜光蝶黒妖(ea0163)(以下夜蝶)の三人。
「むむむ‥‥全然わからねーっ!」
 叫びながら頭を掻き毟るレオたんを、夜蝶とアレクセイは苦笑いしながら見据え。
「まあ‥‥実際の仕掛けを見てみない事には‥‥机上の論議になるばかりだし‥‥」
「ええ、実物を前にして上手く解読できると良いのですが。‥‥もう虫はりごりですからね」
「って言うか、そもそもなんでもっと分かりやすく書けないんだ? おいらなら回りくどいことしないで『3つ押せ間違えたらひどい』って誰にでも理解しやすく作るのに」
 愚痴っぽく言うレオたん。すると、ティーナは不意に萎縮して。
「ゴメンなー、ウチが未熟なばっかりに。肝心な部分が読み取れれば、その位分かり易かったんかも知れへんけど‥‥」
「いえ、ティーナさんに古代言語の解読を行っていただけて助かりました。こういうリドルは力押しでは攻略不可能ですからね」
 そう言って、朗らかな表情でティーナの頭を撫でるレイ。
 ティーナはと言うと、少し照れ臭そうに頬を掻きながら、遺跡の入口へと目を向けるのであった。



●六つの部屋
 準備を済ませた一同は、罠探索係の夜蝶とアレクセイを先頭に、遺跡内部へと足を踏み入れて行く。
 入口を入って間も無く、一同の前に現われるのは五つの扉。その中で調査の成されていない扉は二つ。
 その内一方を前回入手した石盤を用いて開け放つと、奥へ向けて足を進めて行く一同。
 前回が前回だけに、皆が皆慎重になって進んでいたのだが‥‥一同の予想を裏切る様に一切の罠も無いまま、問題の仕掛けの部屋へと辿り着くと。
「‥‥あ、やっぱりありましたね〜」
 言いながら、壁から飛び出るスイッチらしきものを指差す響。
 それが罠に繋がっていないか等を夜蝶にアレクセイ、そしてアハメスが調べるも、それらしき気配は現時点では皆無。
 だが、探せどその属性を示すと思わしきものは見当たらず‥‥。
「‥‥いや、皆天井を見てみてくれ」
 そう言う鳳の声に一同が頭上を仰ぐと、そこに描かれていたのは岩を象ったと思われる巨大な絵。
 そして、その部屋に連なる様に更に五つの部屋が連なっており、いずれの天井にも精霊の属性を思わせる象形画が描かれていた。
「成程、どうやら皆さんの推測通りと見て、間違いなさそうです」
 そう言うエリーシャは、一つの意見に執着しすぎて他の考えを疎かにする事が無い様にと、敢えてすり合せの無い穿った意見を考えていたのだが‥‥その必要も無さそうな様子で、安堵の息を吐く。
「しかし、部屋ごとにスイッチが分かれているとなると‥‥分担して正解のスイッチを押す以外に手がなさそうですね」
 アハメスの言葉に頷きながら、一同は思い思いに各属性の部屋に分散し、調査を――。

「あっれー? このスイッチ、固うて押せないわ」

「!?!?」

 声のした方に目を向けると、そこにあったのはなんと炎の部屋のスイッチに手を掛けているティーナの姿。
 彼女を慌てて鳳に響が取り押さえてスイッチから引き離すも――幸いな事に、どうやら罠等は何も作動しなかった様子で。
「もしかすると、スイッチを起動する為の仕掛けがあるのかも知れませんね〜」
 そんな響の推測は正しかったらしく、最奥にある月の部屋には、他の部屋にあるスイッチとは別に一部盛り上がった床が存在していた。
「よーし、これだな。それじゃ、早速」
「あっ、待って下さいレオンさん。それも罠の可能性が‥‥」

 ガゴン――――ズズズ、ドォン!!

 アレクセイの制止も虚しく、床が押し込まれると同時に閉まる月の部屋の扉。そして、閉じ込められてしまった5人の頭上からボタボタと音を立てて降ってくるのは深緑色や黒色のゲル状生物。
「なっ‥‥ビリジアンスライムにブラックスライム!?」
「あらあら、これは困りましたね」
 扉越しに聞えてくるのは、5人の動揺の声(?)。
 その外部で、残された夜蝶、レイ、鳳、ティーナの4名は――。



●謎解明!
「み、皆さん! 大丈夫ですか!?」
 固く閉ざされた石扉の向こうから響く戦闘を物語る物音に、狼狽えながら声を張り上げるレイ。
『だ、大丈夫です! それよりも、早く‥‥っ!』
 聞えてきたエリーシャの声は、何かを叩き切る様な音に掻き消される。
「もしかすると、この仕掛けは正しいスイッチを押せば、解除されるのかも知れない‥‥!」
「うん‥‥アレク達の為にも、今俺達に出来る事‥‥やってしまおう‥‥」
 鳳と夜蝶の言葉に頷くと、レイは円陣を組み、どれが正しいスイッチかの最終相談を始めた。
「で、結局どれを押すことにしたんや?」
「俺の考えでいえば‥‥押すスイッチは‥‥根(土)から流れ(水)、浴びる(陽)で芽生える‥‥で、『土・水・陽』かな‥‥とか‥‥」
「そうだな、俺もその意見に賛成だ。新月の時に正しいボタン3つを押せって事かとも思ったが‥‥『陽』のスイッチを押すだけでも、十分なのかも知れない」
「そうですね、それならば文としての意味も通じますね。となると、『根から水が流れ、陽を浴びて命が芽生える』と言った所なのでしょうか?」
 この場に及んで纏った意見に頷きあうと、それぞれ地、水、陽の部屋へと散って行く夜蝶、鳳、レイの3人。
「とりあえず‥‥やってみる価値は‥‥あるよね‥‥」
 未だ物音の絶えない月の部屋の扉を見据えながら夜蝶が一人呟くと、次いでティーナの声が響き渡る。
「用意は良えなー!? それじゃ、いくでー!! いちにーの‥‥」

 ガコッ――ズズズズズ‥‥。

 三つのスイッチが押し込まれると、同時に開く扉。その先ではレオたんとエリーシャを先頭に、部屋の隅に追い詰められながら多数のスライムを相手にする仲間達の姿があった。
 だが、今まで一同を苦しめていた広さの制限もなくなり、人数も増えた事で戦況は一気に逆転。
 瞬く間にスライムは全滅し、遺跡内部に再び静寂が戻ると。
「夜蝶の考えが正しかったのですね? お陰で助かりましたよ〜♪」
 自分よりも10cm程身長の低い夜蝶をぎゅっと抱きしめ、頭を撫で撫でするのはアレクセイ。
 けれど対する夜蝶は、やはり無表情なまま――あ、いや、多少口元が弛んでいる様に見受けられる。
「エリっちも無事でよかっ‥‥」
「‥‥しかし、今回の仕掛けは以前に比べて危険な物でしたね」
 ひょい、と飛び掛ってきたティーナを避けつつ、何事も無かったかの様に言うエリーシャ。
「そ、そうだな。下手したら、おいら達全員あのスライムの栄養にされていたかも‥‥」
「けれど、正しいスイッチを押したら仕掛けが解かれた辺り、やはり最初のスイッチは誰かが押さなければならない物だった様ですね〜」
「ええ、急な事で驚いてしまいましたが、結果オーライになって良かったです」
 苦笑しながら言うアハメスの言葉に、仲間達は何とも微妙な表情を浮かべながら頷く。

 ともあれ、リドルを解き明かし、無事に次のエリアへと繋がる鍵を手に入れた一同は、それを村の村長に預けるとウィルへの帰路を辿って行くのであった。