【レッツ宝探しっ!】月精霊の守護者
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■シリーズシナリオ
担当:深洋結城
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月26日〜05月03日
リプレイ公開日:2008年05月03日
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●オープニング
前回の月遺跡調査から数日が経ったこの日。
冒険者ギルドに訪れたティーナの顔には、僅かな疲労の色が浮かんでいた。
「ど、どうなさったのですか?」
受付係が尋ねると、ティーナは乾いた笑みを漏らしながら。
「ああ、大した事や無いんや。あれから例の村に保管されてはった伝承をずっと解読してはったから、まともに眠れてなくてな〜。ちょっぴり眠いだけ‥‥ぐぅ‥‥」
言いながら寝息を立てる彼女を揺すり起こすと、口を開くのは彼女の姿を認め近付いて来た冒険者。
「それはご苦労様です。それで、解読は捗ったのでしょうか?」
「あ〜‥‥まあぼちぼちやね。流石に全部とはいかへんかったけど、差し当たって次のエリアに関する部分だけは完璧に理解できたわ」
そう言って、ティーナが取り出したるは数枚の羊皮紙。そこには解読に用いたのであろう、アプト語が所狭しと書き殴られていて‥‥とてもではないが、本人以外の人物が読んだ所で理解出来る様な代物ではなくなってしまっている。
その中の二枚をカウンターの上に並べると。
「まず最初に探索したエリアとその次のエリアは、罠でもって入って来た者の『根気』と『技術』を調べる為の場所だったみたいなんや。で、その次‥‥即ち前回のエリアは『知恵』と『資格』を調べる場所だったみたいやね。つまりは、守護者たる村の人達に認められた者にこの伝承が譲り受けられ、そこにある問題文を読み解いて回答する言う、妙に手の込んだ仕掛けだった訳や。そして、今度探索する最後のエリアに関してなんやけど‥‥」
そこで言葉を詰まらせ、頭を掻くティーナ。
冒険者の一人がそんな彼女に首を傾げつつ、ふと彼女の広げているメモに視線を落とすと。
「‥‥『守護者』?」
「せや、最後のエリアは『力』と『覚悟』を試す場所で、その為に守護者が用意されてはるみたいなんやわ。どんな奴なのかまでは、はっきりと書かれてへんけど‥‥」
「けれど、そこまで聞く限りだとかなりの強敵が用意されているのでしょうね。恐らくは、昨今村に響いている歌声の『固き猛き御手』と言うのが、そうなのではないでしょうか?」
「となると、やっぱしゴーレムかな? あ、こっちにあるような人が乗る奴じゃなくて、勝手に動く奴な。そうなると、下手したら武器を傷めかねない相手なんだよな‥‥」
「ともあれ、油断せずに臨むべきですね。準備は怠り無くする様に致しましょう」
さり気なく擦り寄ってくるティーナを押し退けながらの冒険者の言葉に、仲間達は大きく頷くのであった。
――薄暗い空間の中、飛び交うのは多数のエレメンタラーフェアリー達。
その中心に佇む者は、林檎の様に赤い唇に穏やかな笑みを浮かべ。
「もうすぐ‥‥もうすぐ、なのですね?」
一言呟くと、手に持った珍妙な形の琴を鳴らし、その演奏に歌声を乗せ始める。
心なしか、地上の村にまで届くその歌声は、どこか嬉々とした物が混じっている様に聞えていた。
●リプレイ本文
●最後の試練
「さぁ‥‥最後の試練と行こうか‥‥」
皆が黙々と準備を進める中、縄ひょうの手入れをしながらふと口を開くのは夜光蝶黒妖(ea0163)(以下夜蝶)。
彼女の言葉に一同は静かに頷き、村の中央に佇む遺跡の入口を見遣る。
今まで何度と無く足を踏み入れて来た遺跡。それが今回に至って異様な威圧感を放ちながら立ちはだかっている様に見えて。
「守護者‥‥『アルテ』とやらに会うための資格を得るための最後の試練ということですか。なんとしても試練を乗り越え、最後の鍵を手に入れましょう」
「はい。『アルテ』さんにはぜひ会いたいので、意地でも負けられませんね」
レイ・リアンドラ(eb4326)とケンイチ・ヤマモト(ea0760)の二人も、意気込みながら言う。
その傍らで、首を傾げながら話し込んでいるのはエリーシャ・メロウ(eb4333)。
「騎乗せずに動くゴーレム? そんなものが存在するのですか?」
守護者と聞いてレオン・バーナード(ea8029)が想像したのは、以前にまみえた事のある魔法の力で動くゴーレム。
その詳しい話を、エリーシャは伺っていた。
「成る程、今のゴーレムの基となった天界の技術ですか。となると、この遺跡を作ったのは古代魔法語時代の天界人‥‥もしや英雄ロード・ガイと関わりが!? と、いうのは先走り過ぎですね」
言いながら苦笑いを浮かべるエリーシャ。とは言え、数度の探索を経ても尚未だに多くの謎を残しているこの遺跡を前にして、勘繰りたくなってしまうのは無理もない。
それは、アハメス・パミ(ea3641)も同様で。
「このまま探索を続けて、その後は一体どうなるのでしょう? 『アルテ』に会った後は‥‥何か頼み事をされるのでしょうか?」
しきりに腕を組みながら考え込む彼女の様子を横で伺っていたレオンが、はにかみ笑いを浮かべ。
「まあ、実際会ってみなきゃ何とも言えないけど‥‥しかしここまで仕掛けがあって守護者がいるとなると、最悪太陽の宝玉が無くても、相当のものが中にあるのは間違いなさそうだな。でもそれが必要な大変なことって、何なんだろうな一体」
一緒になって考え込んでしまった。
「それにしても、『固き猛き御手』ですか。恐らくは守護者として遺跡の建設当時から悠久の時を守ってきた存在‥‥心して挑まねばなりません。我々は死力を尽くして挑むのみ。そして全員で無事生還することですね」
「ええ、遂に遺跡の謎も大詰めといった所ですね。この調子でアルテさんの元へ辿りつける様にしましょう」
レイとアレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)が言うと、一同は大きく頷き。
「その前に、持ち物の確認をしておきましょう。きっとこれが最後の探査になるので、準備を抜かりなくしないと〜。忘れ物の無い様に3回は確認しましょうね」
倉城響(ea1466)のほんわかとした口調に、一同の緊張が良い感じに解された事は言うまでもない。
●守護者の正体
「槍は得手ですが、私は鎚はあまり使い慣れず‥‥いえ、弱音は禁物ですね」
レミエラ付きのモーニングスターを握り締めながら、呟くのはエリーシャ。
そんな彼女に目を遣り。
「それにしても、覚悟とは何なのでしょうね〜?」
ふと呟く響に、エリーシャは首を傾げる。
「さあ‥‥。私においては騎士として主君への忠誠、国と民を想う心構えと、その為には命も懸け得る想いこそが覚悟と存在意義ではありますが‥‥」
「さっすがエリっち! 覚悟の仕方が騎士的やわ!」
ぐわしっ。
暗闇の中で案の定飛び掛ってくるティーナの顔面を、鷲掴みにして止めるエリーシャ。‥‥何やら彼女は妙にティーナに懐かれている様で。
「おいおい、あんまし動き回るなよ? もし罠なんかが作動したら、虫とかスライムとか良い思い出が無いしさ」
言いながら苦笑いを浮かべるレオンの言う事はもっとも。
そして、先頭の夜蝶も僅かに隣を歩くアレクセイに寄り添い。
「俺も、何でも賭けてあげるよ‥‥その位なら忍びになった時点で‥‥覚悟はついてるから‥‥。ただ‥‥アレクだけは何かされたら‥‥キレちゃうかもね?」
と言った感じで、程よく緊張感がブレイクされた所で(ぁ)一同の前に現われるのは、通路の両端に所狭しと並べられた石像の群。
その姿は、アトランティスにおいては余り見かけないもので。
「これ‥‥最近似た様なものをどこかで見た気がしますね〜」
そう言って首を傾げるのは響。けれど思い出す事無く、そのまま足を進めると。
――ズズッ。
「? 何でしょうか、今の音は‥‥?」
ふと足を止めたアハメスが呟きながら周囲を見回すと――なんと、周囲の像が一斉に動き出し、今にも冒険者達に襲い掛かろうとしていた。
「な‥‥これはガーゴイル!?」
「くっ、囲まれてしまいましたか‥‥拙いですね」
ケンイチが呟くと、各々武器を構えガーゴイル達と対峙する一同。
やがて、その内一体が飛び掛って来た事を皮切りに、冒険者達は一斉にガーゴイルの群へと散って行った。
●覚悟を示す者
――ガァン!
「くっ‥‥はあっ!!」
攻撃を盾で受け止めるや、すかさずガーゴイルの胴体部分にラージハンマーを叩き込むアハメス。
だがしかし、痛烈なカウンターアタックを喰らったにも関わらず、ガーゴイルの方の被害と言えば多少ヒビが入った程度で。
「やっぱ、ゴーレム程ではないにしても固いな‥‥! 長期戦になったら不利だ、全力全開で行こうぜ!!」
言いながら、掛け声と共にスマッシュEXとバーストアタックEXの複合攻撃を繰り出すレオン。
その一撃にはさしものガーゴイルも耐え切れず、三度も攻撃を受けた頃にはその砕け散る様が、彼の胸元で輝くレミエラの光点にも照らし出された。
そして直後、彼の両側面から飛び出すのはレイとエリーシャの二人。
「行きますよ、エリーシャさん!」
「はいっ!」
二人は目配せをし合うと、更に奥に居るガーゴイルに両側面から飛び掛り。
「「せやああぁぁっ!!」」
擦れ違い様、同時に両足へ繰り出されるハンマーとモーニングスターの一撃。
だが、やはり思った以上に固いガーゴイルに有効打を与えるには至らず、そのまま振り返ってレイに向けて爪が振り下ろされる。――だがしかし。
「はぁっ!!」
――ガキッ!
遠距離から飛び込んで来た響の打撃により、食い止められるガーゴイルの攻撃。本来ならソニックブームを撃とうとしたのだが、それには余りにも荷物が重すぎた為、止む無く肉弾戦に切り替えたのだ。
そして他のガーゴイル達は夜蝶とアレクセイが囮となって注意を引き付け、纏まった所にケンイチがシャドウボムを放ちながら少しずつ耐久度を削っていく。
ガーゴイル相手に、一歩も譲らぬ戦い振りを見せる冒険者達。
だが、それでも残っているガーゴイルの数は多数‥‥このままではいずれこちらが消耗して、不利になってしまう事は目に見えて明らかであった。
――その時、誰かの影が一同の足下を擦り抜けて飛び出して行く。
「な‥‥ティーナさんにアレクセイさん!? 危険です!! こちらへ戻って‥‥!!」
驚いたレイが引き止めるも、二人はガーゴイルの群も擦り抜けて通路の奥へと一直線に向かって行く。
「くっ‥‥ティーナ殿!!」
その後を追う様に飛び出すのはエリーシャ。彼女は二人に群がるガーゴイルを振り払いながら、その進路を確保する。
そしてアレクセイも、メイで知り合ったとある人物――幼い身でありながら自らに降り掛かった試練を、脅威的な精神力で乗り越えた娘の事を思い出しつつ、ガーゴイル達の注意を引き付け立ち回る。
二人の援護の下、やがて目の前に祭壇らしき物が姿を現した所でティーナは足を止め。
「はぁっ‥‥これや!! これに手を乗せれば‥‥!!」
――ガコン。
何かが動く様な音がしたかと思うと、突然にその動きを止めるガーゴイルの群。
かと思えば、彼らの内原形を留めている物はゆっくりと通路の端へと戻って行き、そして元あった様に石像としてその場に佇むのであった。
冒険者達が目を瞬かせる中、やがて通路の奥から戻って来たティーナとアレクセイ、そしてエリーシャに尋ねるのはアハメス。
「これは一体‥‥?」
「ええと、これが『覚悟』の試練だったんや。即ち守護者の攻撃を抜けて、その奥にある仕掛けを作動させると言う、な」
「私もつい先程ティーナさんに伺ったのですが‥‥どうも私達の事だから守護者等一捻りにしてしまうと思って、今まで言わなかったそうです。ところが、旗色が悪いと見て、あの様な行動に‥‥」
「そそ。まあ、無事に済んで良かったわ♪」
軽い調子でけたけたと笑うティーナ‥‥に、疲れた表情を浮かべる一同。
そうと分かっているなら、事前に言ってくれても良いものを‥‥。
「けれど、敵中を躊躇わず突破するティーナ殿の勇気は立派でした。この様子ならば、『覚悟』の試練も無事合格と言った所ですね」
「さよ? いや〜、エリっちに褒めて貰えるんが何より嬉しいわぁ♪」
――そしてお約束。
ともあれ、無事に最後の鍵を手に入れ地上へと戻って来た一同。
その中のレイは、ふと振り返り遺跡の入口を見据えると。
「さて、次はいよいよ『アルテ』と対面ですね。『太陽の瞳』の情報が入れば良いのですが‥‥」
僅かに目を細めながら、呟くのであった。