【ドラゴン・インパクト】竜の行方

■シリーズシナリオ


担当:深白流乃

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:10 G 95 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:05月14日〜05月24日

リプレイ公開日:2007年05月22日

●オープニング

「どこに行かれたんでしょうねー?」
 冒険者ギルドの一室。そこでギルドの女性職員と向かい合い話をしているのはメリア・ベレンテレール(ez1116)、とある貴族の娘である。
「洞窟の入り口周辺から目撃された場所までの間に通った形跡がないのなら、やはりさらに奥へ‥‥と考えるのが自然ね」
 二人が話しているのは、以前人里離れた洞窟の奥で存在が確認された一匹のボォルケイドドラゴン。とある事件をきっかけに、そのボォルケイドドラゴンの様子を確認すべく冒険者達がその洞窟の奥へ向かったのだが、残念ながら以前姿が目撃された場所ではその姿を見ることは出来なかった。
「という事は、今回はもっと奥まで行けるんですね♪」
「‥‥まあ、行って貰わないと困るわね」
 楽しげに手を鳴らすメリア。どうやら、今回も冒険者達について行くつもりらしい。洞窟までの道案内が前回のメリアの役目であり、それが必要ないのであれば一般人のメリアが同行する意味はないのだが‥‥メリアの護衛費として別途依頼料が出されるのであれば、強く同行を拒否する理由もないのである。
「次は姿が確認出来ることを祈っているわ」
「私も、もう一度ドラゴンさんに会ってみたいです」
「‥‥」
 ギルド職員の一抹の不安を他所に、再び出されるボォルケイドドラゴンの探索。
 ボォルケイドドラゴンの行方はいかに‥‥‥‥?

●今回の参加者

 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea8991 レミィ・エル(32歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea9344 ウォルター・バイエルライン(32歳・♂・ナイト・エルフ・ノルマン王国)
 eb1118 キルト・マーガッヅ(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb5634 磧 箭(29歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 eb6853 エリヴィラ・アルトゥール(18歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb7876 マクシーム・ボスホロフ(39歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 eb8106 レイア・アローネ(29歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)

●サポート参加者

ディディエ・ベルナール(eb8703)/ ヤグラ・マーガッヅ(ec1023

●リプレイ本文

 闇に蠢くモノ、そして、それを掃う者。
「まったく、限がないな」
 わずかな光の中、マクシーム・ボスホロフ(eb7876)が引き絞った弓から矢を放つと、それは一匹のホーンリザードに突き刺さりその身体を地面へと縫いつける。
「ここは地道に減らしていくしかないね」
 マクシームとは背を向けたエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)が目の前にいるグランドスパイダの足の一本を左手の篭手で受け止めると、その足を右手に持った剣で半ばほどから切り落とす。
「その通りだ」
 レミィ・エル(ea8991)がエリヴィラの後ろから二本同時に放った矢は、二本ともが今しがた足を切り落とされたグランドスパイダの身体に突き刺さり、その命を終わらせる。
「しかし、なかなか減った気がしませんね」
 矢を番えているマクシームの前に割って入り、向かってきたホーンリザードの腹を蹴り飛ばすウォルター・バイエルライン(ea9344)。
「この数で御座るからな‥‥」
 龍飛翔でグランドスパイダの一匹に拳を入れると改めて周囲を見回す磧箭(eb5634)。
「もう少し減らせれば、魔法も使いやすくなりますわ」
「あとちょっと、がんばりましょう」
 敵味方の距離が近いため広範囲に威力を発揮する魔法を使う事が出来ずにいるキルト・マーガッヅ(eb1118)とシシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)は、今はそれぞれウィンドスラッシュとウォーターボムの魔法で近づく敵を追い払っている。
「え〜と、私も何かお手伝いしましょうか?」
「いい」
「何もしないで」
「じっとしていて下さい」
「けっこうだ」
「手は足りていますので」
「‥‥‥」
「大丈夫で御座る」
 慌しいのを見てか、冒険者に囲まれたメリア・ベレンテレール(ez1116)が声をかけるが、それは各人によって逐一拒否(一名には無視)されたのだった。

「もう大丈夫みたいです」
 キルトがブレスセンサーを使い周囲を確認する。自分達以外の反応が全くない訳ではないが、すぐに危険が及ぶような反応はない。
「災難でしたね」
 順調に洞窟を進んでいた一行。休息を取っていた場所がたまたまグランドスパイダとホーンリザードの争いに巻き込まれ、運悪く自分達もその争いの一派に加わる事となってしまった。
 それぞれが多くの仲間を引き連れた間に入ったため、場はちょっとした乱戦模様となっていた。
 最終的には隙を突いてキルトがストームの魔法でグランドスパイダを吹き飛ばし、シシルのアイスブリザードで動きを鈍らせるとその間にお暇して来たのである。
「後は若い二人に任せて?」
「二人というか、二グループ?」
「集団お見合いですね〜」
「というか、若いのか? あれは」
「いえ、ツッコミ所はそこではないと思いますわ」
 などというやり取りはさておき、
「モンスターは前よりも増えているみたいですね」
 シシルがさっき出会った二種のモンスターをメモに加え、洞窟で出会ったモンスターを書き記したそのメモを上から見ていくと、モンスターは増加傾向にあることが分かる。
 ちなみに、シシルもエリヴィラ同様メリアと共に以前この洞窟を訪れ、一緒にドラゴンを目撃した一人である。
「そろそろ前回引き返した地点だね」
 エリヴィラがモンスターのメモと一緒にシシルが書き記している洞窟のマップを横から覗き込む。
「今日の所はそこまでにしておきましょうか」
「そうで御座るな」
 太陽の位置は洞窟の中では分からないが、経過時間や切りの良さを考えウォルターが提案すると、磧がそれに同意し、
「あそこは広い空間になっている上に出入り口が限られているからな」
「モンスターの警戒もしやすいだろう」
 レミィとマクシーム、レンジャーの二人もうなずく。
「もう先の方にはあまり反応がありませんわ」
 もう一度、ブレスセンサーを使用したキルトが報告すると、一行は今日の拠点を目指し洞窟を奥へと進んで行くのだった。


 そして、前回引き返した地点で一晩を過ごした次の日。
「さて、ドラゴンはこの先にいるのだろうか」
 支度を終えた一行が目指すのは、入り口とはちょうど反対側にある、更に奥へと続く道。
「また会えると良いですね」
 相変わらず気楽なメリア。
「まあ、見つけるのが仕事だから、会えるのに越した事はないんだけど‥‥」
 その様子を見てエリヴィラが口にする。
「では行くとしましょうか」
 ウォルターの言葉をきっかけに、一行は更なる奥へ‥‥

「まだ近くに反応はないですわ」
「しかし、どうやらこちらが本命のようだな」
 キルトがブレスセンサーでドラゴンの反応がない事を確認するが、マクシームは視線を地面へと向ける。
「地面が妙に踏む固められている感じで御座る」
「そうだな、身体の重い者が何度も行き来したかのように‥‥」
 これまでの地面とわずかに違う感触に磧、そしてレミィ。
「それにしても、どんどん下に深くなっていきますね?」
 洞窟の道を記しながら進んでいるシシル。進んだ距離の割りに、もうずいぶん深く降りてきている。
「道もずっと下りだし」
「それもまだまだ続きそうですな」
 エリヴィラが振り返り、ひたすら上に伸びる道を見上げると、ウォルターは逆に下に伸びる前の道を見下ろす。
「ところで‥‥だんだん暑くなってこないか?」
「あ、やっぱり」
「身体を動かしたから、という訳ではないようです」
 下に下に進むごとに、気温が上がっていくような感覚を覚える一行。
「ボォルケイドドラゴンがここを住処にしていたのは、これが理由でしょうか」
 一般的に、炎を操るイメージから逆に寒さに弱そうな印象のあるボォルケイドドラゴン。‥‥実際そうだという確証はないのだが。
「む、また広い場所に出るで御座るよ」
 磧が明かりを向けると、下り道は一度終わり、横に広い空間に出るようだ。
「ここが、一番深い所‥‥なのかな?」
 道は奥にまだ続いているが、どうやらそこからは登り道になっているらしい。
 そして、その場所にはもう一つ特徴的なものがあった。
「湖‥‥?」
 今いる場所と奥の上り道への入り口、その間には、この空間を満たすかのように水で満ちていた。
「すてきな光景ですねぇ‥‥」
「あ、暖かいです」
 メリアがぼんやり呟く横で、シシルが水に手をつけると、それはただの水ではなく温水であった。
「地下から沸いているのだろうか?」
「どうでしょうか。どこからか流れて来ているのかもしれませんね」
 レミィとウォルターが湖の底や壁に目を向けるが、ぱっと見では判明しない。
「下に進むほど周囲が暖かく感じていたのは、この暖かい湖のせいなんですね」
 キルトも、その不思議な景色をゆっくりと眺める。 
 ‥‥‥‥‥‥。
「さて、もう少しゆっくりしていたいが、そろそろ先に進むとしようか」
「そうで御座るな、またゆっくり来る機会もあるで御座るよ」
 今はまだ、別の目的がある。マクシームが気持ちを切り替えうながすと、皆も磧の言葉にうなずいた。

 湖を迂回し、先に見た上り道まで抜けると再び奥へと歩みを進める。
「こちらはずいぶんと急な上り道ですね」
「この分だと、下りの半分以下の距離で地上に出ちゃいそうです」
「モンスターもいないな。道が急なせいか?」
 急な上り道で体力の低い物には少々厳しいが、それ以外には障害らしい障害もなく、順調に上り道を登り続ける事しばし‥‥
「光が見えた」
 冒険者達には、久しぶりの太陽の光。
「という事は、ドラゴンは外へ‥‥?」
「ドラゴンが通れそうな大きな道は他になかったから」
「あの大きな生き物を見逃すという事もないでしょうし」
 実際にドラゴンの大きさを見たことのあるエリヴィラとシシル。
「困ったで御座るな」
「地上に出たとなると、探すのも難しくなる」
 面倒な事態に頭を悩ませる一同、悩ませている間にも地上は近づき、そして太陽のまぶしさに手をかざしながら洞窟の外へ‥‥
『‥‥‥‥』
 全員が、周囲の状況を確認しようと辺りを見回す。
「ドラゴンが外に出たのは間違いないようですね」
「そうだな」
 洞窟を抜けた先は、ぽつぽつと木々が立ち並び、豊かとは言えないが人の手を感じない、自然そのままの風景が広がっていた。
 しかし、洞窟の出口の周囲。そこは数箇所ほど不自然に地面がえぐれ、数本の木が薙ぎ倒されている。
「どっちへ向かったかは‥‥分からないな」
 レミィが辺りを見回すが、不自然な痕跡があるのは洞窟の周辺のみで、他に痕跡は見当たらない。
 木々はずっと先まで並んでいるが、『森』というほど密集しているわけではなく、ドラゴンの巨体でも木々を薙ぎ倒さず移動する事は出来るだろう。
「あら?」
 そういった考察をしている中、突然メリアが明後日の方向に目をやる。
「どうかした?」
「いえ‥‥」
 エリヴィラが一緒にメリアが目をやった方向を見るが、特に何かがあるわけでもなく。
「ふむ。あれは前、ミスメリアと一緒にフェアリーを見に行った山で御座るかな?」
 その場で唯一、磧がその理由に気づき、メリアの横に並ぶ。
 揃って眺めるのは、前方にある一つの小さな山。
「そうなんですか‥‥?」
「ええ、そうみたいです」
 キルトの言葉にうなずくメリア。
「それならここからの帰り道も分かりますかな?」
「任せるで御座るよ」
 磧も、ウォルターの言葉に自信を持って答える。
 行方知れずのボォルケイドドラゴン‥‥その姿を確認する事は出来ず、今一度、キエフへと帰還する冒険者達だった。