空飛ぶ葱よ!【対戦格闘編】

■シリーズシナリオ


担当:みそか

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 64 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月13日〜11月18日

リプレイ公開日:2004年11月22日

●オープニング

【前回までのあらすじ】(読んでも分からない人は「空飛ぶ葱よ!【ドッグレース編】」を熟読すること!)

「これこそまさに今世紀最大の、驚愕の、疾風怒濤の、阿鼻叫喚の、天衣無縫の、有職故実の温故知新‥‥ああっ!!」
 発明された脅威のアイテム。それは「空飛ぶ葱」だった

「このフライング葱は俺達カマバット三兄弟が頂いた!! 返して欲しくば新たな葱を持って地図の場所にくるんだなぁああああぬおおあああ!!」
 人類に希望の光を与えるであろうそのアイテムは、運命の悪戯か強大な組織に盗まれてしまう。

「‥‥あ〜〜〜‥‥‥‥、まあがんばってくれよ」
 この依頼を解決し、世界に平和を取り戻すのは諸君らしかいない! ギルド職員に送り出された冒険者達は、少数精鋭をもって三兄弟の末弟、ドリアンとの戦いに挑んだ。

「ここまでよくついてきたな坊や。だがここは俺の地元、走り屋の名に賭けてここで敗北はできないんだよ。この丘のポイントを知り尽くしているんだぜ!」
 しかし、その勝負は冒険者達にとって余りにも不利なものであった。限界走行が続く中、冒険者達は局部に襲い掛かる激痛に、意識さえ遠くなる。

「任せておけユウさ‥‥いや、友よ! お前の志、この十四朗しかと受け取った!!」
 だが、友情と愛情の芽生えは冒険者達を大きく成長させた。彼らは奇跡的とも呼べる戦いを演じ、勝利と葱をもぎ取ったのだ。


<冒険者ギルド>
 冒険者どもよ、よくも我らのかわいい末弟、ドリアンを倒してくれたな!!
 あれから俺達は夜もろくすっぽ眠れず、貴様らのことを考え続けている日々だ! こうなったら残る葱二本をまとめて賭けてやる、指定した場所まで来い!
 そこで今世紀最大の葱決定戦を行おうではないか!!


「‥‥あ〜〜〜‥‥‥‥」
 ギルド職員は依頼書とカマバット三兄弟から寄せられた手紙をテーブルに置くと、そのまま帰宅の途についた。

●今回の参加者

 ea0043 レオンロート・バルツァー(34歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0382 ハーモニー・フォレストロード(18歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0717 オーガ・シン(60歳・♂・レンジャー・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea2207 レイヴァント・シロウ(23歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea5386 来生 十四郎(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5534 ユウ・ジャミル(26歳・♂・バード・人間・イギリス王国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)

●サポート参加者

ソニア・グレンテ(ea7073

●リプレイ本文


●一幕
「さあ、いよいよ始まりました年に一度の葱−1グランプリ。解説は私、ハーモニー・フォレストロード(ea0382)がお送りします。今回も葉っぱ男からカマまで各種この手の猛者どもがこぞって参戦しています。‥‥わくわくしますね? シロウさん」
「はい。これはいわゆる第二次スーパー葱大戦です。ドンドンパフパフ。実況はこの私キャメロットのマスター魔境レイヴァント・シロウ(ea2207)。私の落ち着けこれは孔明の罠だといわんばかりの策略により看護士フォーム女性型(以下略)」
 のっけからアクセル全開で実況解説を始める二人。これが一体誰に対しての実況解説であるのかなどということは気にしてはならない。仮に意味がなかろうとも、それをしようとすること自体に意義があるのだ。

「葱にも大分慣れた。今後も精進するつもりだが‥‥どれだけやれるか‥‥」
「フッ、久しぶりだな、後藤! 俺はお前を倒すため、わざわざノルマンの収穫祭から戻ってきた!! 残念ながらデザイナーズフンドーシ99は手に入らなかったが、お前程度普通の褌で十分だ!!」
 秋風にひりひりと痛む尻をさすりながら不安げ呟く来生十四郎(ea5386)とは違い、前回の対決で頭のネジが少し緩んだのか、ユウ・ジャミル(ea5534)は高笑いを晩秋の空に轟かせながらマント、そして褌を投げ捨て‥‥丁寧にたたんでいく。
「お〜〜っと、これはいきなり前回の対決で愛情ならぬ友情を深め合った二人の登場ですねハーモニーさん」
「そうですね。噂によると前回の対決より、マンツー・マンで続けてきた練習で、二人の尻はかなり肉付きを増したとの情報も入っています。これは冒険者グループ、最初から一気に決めるつもりですよ」
「さあこれから始まる葱・ま! バトル。舞台となるのは、もう秋というより冬だろとツッコミたくなる要素満載の湖です。湖面には溺れる者は藁でもカルデネアスの板が(略)‥‥まさしく逝ってヨシです!」
「お〜〜っと、あれは何ですかぁ!?」
 十四郎達が葱に跨ったことで、俄然わけのわからなくなった解説が飛び交う中、西の方向から突如としてスモークが噴出される。そして、スモークの中から登場してきたのはお揃いの尻に穴の空いたパンツのみを身に纏ったカマバット三兄弟!
 ちなみに長男からヘモグロビン、ヘンターイ、ドリアンである。
「‥‥ドリアン。久しぶりだね」
「ああ‥‥できれば敵として会いたくなかった」
 なぜか頬を紅潮させながら言葉を交わすレイジュ・カザミ(ea0448)とドリアン。二人の間に過去何があったのかは勝手に想像してもらいたい。多分それで合ってると思う。
「何をしているドリアン! お前はそこで俺達の戦いを黙って見ておけ。誇り高きカマバット族の面汚しめ!」
 隆々とした肉体を誇らしげに突き出すヘモグロビン。葱に跨ると、躊躇なくそれを尻に刺して冒険者達を睨みつける。
「哀れだな中嶋‥‥お前にも教えてやるよ! 葱とは単に跨るための道具ではないってことをな!!」
 ユウが高らかに声を響かせる中、戦いの火蓋が切って落とされた。

●幕間
 報告書はよい子も読まれます。プレイングでぶっ飛ぶのは程ほどに。
 吟遊詩人からのお願いです。

●二幕
「ははははは! 貴様らの力はそんなものかぁ!」
 いざ戦いが始まってしまえば両者の力の差は歴然であった。前回のレースと違って、こと空中戦においては急旋回、急ストップが重要となってくる。尻強度が脆弱な二人では、長期戦になればなるほど不利は否めなくなってくる。
「逃げちゃだめだ、逃げちゃ‥‥うわああぁあ!!」
 局部でそそり立ったアヒルの奮闘も空しく、ユウは湖へ落下していく。
「ユウっ! ‥‥ちいっ、俺も限界か!!」
 尻からボタボタと爛れ落ちる鮮血の感触に十四郎は覚悟を決めると、カマバット三兄弟長男・ヘモグロビンの背後をとり、後方から一気に葱を殴りつける! 深々と突き刺さる葱!! 緩む十四郎の口元。
「‥‥何かしたかな? 残念だったな小僧! 俺の尻はそんな攻撃が通用するほど、やわじゃないってことさ!!」
「なっ、ぐああぁ!!」
 しかし、極限まで鍛え上げられたヘモグロビンの尻はその攻撃をいとも容易く受け止める。そして、お返しとばかりに放たれた一撃は十四郎の尻へ深々と突き刺さり‥‥彼は湖へと落下していった。
「むっ、敵もさる者のようじゃの。‥‥レオンロード、ヲーク! お前達の出番じゃ!」
「もちろんだ! 見よこの美しき肉体を〜〜〜」
「おう。このラージハンマー使いのヲーク・シン(ea5984)、出るっ!!」
 二人のかたきだと、レオンロート・バルツァー(ea0043)とヲークは、オーガ・シン(ea0717)のナビゲート(?)のもとに、一糸纏わぬ(正確に言えばヲークはマフラーだけ装着している)姿のまま葱をうならせながら出撃していく。
「ハハハ!! いいぞ、いいぞぉ! 腕も使わず、尻に刺すだけで空が飛べるとは‥‥なんと、なんと素晴らしきアイテム、正に人類の英知の結集! ‥‥今、俺の肉体が喜んでいる!」
「いかんっ! 突出しすぎじゃバルツァー。無理な突撃は‥‥」
「ハハハハハッ、素晴らしい、なんとすばら‥‥ぁ!!」
 余程フライング葱が気に入ったのか、後先考えずに回転しながら飛び回ったバルツァーが早々に次男・ヘンターイの毒根‥‥もとい毒手にかかる。今までに味わったことのないような強烈な攻撃を尻に受けたバルツァーもまた、力なく湖へ落ちていった。
「バルツァーさーーーん!!!!」
 水飛沫をあげる湖面に、ユウの悲鳴は波紋のように、いつまでも響いていた‥‥。

「てめええぇぇえ!!」
 マフラーが烈風に揺られてたなびき、大事な部分をギリギリのところで隠す中、怒りに眉を釣り上がらせたヲークがヘンターイへ突撃すべく、葱を強く握り締める。
「ヲーク、ファ○ナル○ュージョン承認じゃ!」
 そして彼は、ある意味でギリギリの台詞を放ったオーガの指令を受け、ついに葱と一つになった!!
「感じる‥‥感じるぜこの力! これならいける!!」
 常人であれば尻からおびただしい出血と共に激痛へ襲われそうなものだが、オーガに尻を鍛えられた(詳細は本人から聞いてくれ)ヲークにとって、この程度の衝撃はまさしく(力を)感じる程度のものでしかない!!
 彼は恍惚にも似た表情で葱をさらに深く突き刺すと、もう一方の手でラージハンマーを構えた。
「シロウさん、どうやらファ○ナル○ュージョンなるものは性‥‥成功したようですね!」
「その通りだハーモニー。これは‥‥くるぞ!!」
 実況解説の二人の声が大地を揺らし、オーガは地面に落ちていた丸く赤いお椀を握り拳で叩き割る!
「ゴル○ィオンハ○マー発動、しょーーーにん! ‥‥じゃ!」
「光になれええぇぇえええ!!」
 湖面に太陽光が乱反射し、二人を暖かい光で包み込む。ハンマーはヘンターイの心をも砕き、彼は微笑みながらヲークの手を取。‥‥紆余曲折の末、二人はもつれあいながら湖へ落下していった。
「これは‥‥‥‥いろんな意味で危険なようね。バルツァー、十四郎、二人を湖の中から救出してきて! そしてこの物語を綴った報告書が発行できるようにして!!」
「グッ、また湖の中か! 二人とも危ないぞ、今すぐ離れろーー!」
「泣いても笑ってもこっちはあと一人‥‥。頼んだぜレイジュ。ハッピーエンドは待つものじゃない。‥‥自分の力で掴むものなんだ!!」
 ソニアの指示を待つまでもなく、血相を変えて湖へ飛び込む十四郎を尻目に、バルツァーは冒険者組最後の一人‥‥レイジュへ向けて、親指を立てながら仮面の下の微笑を贈る。
「わかってるよ。敵を倒すのもそうだけど、相手はカマとは言え生身の人間。誰にも優しく愛に生きるのが、本当の英雄だからね」
 凛とした表情のまま、レイジュは透き通るような赤髪と葉っぱを風になびかせ‥‥今、皆の想いと希望を乗せて葱に乗る!!

「ハッ、笑わせるな小僧! いかにお前が仲間の声援を受けようと、このカマバット三兄弟長兄・ヘモグロビンの研ぎ澄まされた感覚についていけるものか! 世の中はそれほど感動的に‥‥‥‥ばかな‥‥‥‥」
「残念だけど、僕にとってこの葱は生易しいくらいのものなんだ。もっと太いものも経験しているからね。ヘモグロビン、君は確かに優秀な戦士だ。‥‥でも、どんな技術も、力も、必殺技も‥‥大切な仲間の声援には適わないってことを君は知らない。‥‥だから、それを知ってる僕を、君は絶対に倒すことはできない!!」
 気配すら感じることができずに背後を取られたという事実に、ヘモグロビンは全身から脂汗を流し、驚愕と戦慄を覚える。これが‥‥これが前ドッグレースを乗り越えた戦士の力だというのか!?
「兄貴―――、大丈夫だ! 兄貴なら絶対に勝てる!!」
 大地から聞こえるのはヘンターイとドリアンの声。何ら効力をもたないはずのそれは‥‥確実にヘモグロビンの精神を落ち着かせていった。
「ほら、君もわかったでしょ。仲間達の‥‥信頼する人たちの『信頼』という名の力を!」
「ほざけえええぇぇえ! 俺は認めん、認めんぞ!! 誇り高きカマバット一族の名に賭けて、貴様を倒してみせる!!」
 ともすれば己がこれまで抱いてきた信念を打ち消されてしまうようなレイジュの微笑みをヘモグロビンは必死に打ち消すと、勢いをつけるべく空中で大きく旋回する。
 長期戦で負ける気はしない。‥‥だが、ここで逃げれば冒険者どもを肯定することになる!
「レイジュさん、初めて葱に跨った日、あの頃の初めて感じたちょっぴり切なくて甘酸っぱく新鮮な気持ちを思い出すんだ!」
「ありがとうハーモニーさん。‥‥‥‥勝ってくるよ!!」
 敵の意を受け取ったレイジュはハーモニーと不思議な会話を交わすと、騎馬に跨った騎士の決闘のように、微笑みながら葱の高度を合わせた。
「俺は、俺は貴様を認めええぇえん!!」
「認める認めないじゃない! 僕達は、決して争うために生まれてきたんじゃないんだ!!」

 二人の叫び声は信念と肉体そして葱と共に、湖の中央で激突し‥‥‥‥二人のシルエットは柔らかな光照らされて、湖面で重なったのであった。


 ‥‥こうして、依頼は達成された。

●ピンナップ

オーガ・シン(ea0717


PCツインピンナップ
Illusted by 見田航介