浪漫COME BACK!!【?】

■シリーズシナリオ


担当:みそか

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月22日〜01月29日

リプレイ公開日:2005年01月31日

●オープニング

<アレブカリフ・ルダーク城>
「グッ、何故だ‥‥。不完全とはいえ邪神の力を手に入れたこの私がどうして勇者風情に敗れるのだ!?」
 邪神が復活しなかったわけではない。現にこれほど傷ついた今ですらバームの身体には力が溢れるほどみなぎっている。だが、それゆえに何故!? ナゼユウシャフゼイニヤブレナケレバナラナイ!!
「力もないくせに一人前に俺の意識だけは乗っ取ろうとはな。‥‥早く最後の鍵を‥‥‥‥得なければ‥‥」
 溢れる力とは対照的に、気を抜けば奪われてしまいそうになる意識を気力で繋ぎとめると、ルダークの部屋へと繋がるドアに鍵を差し込む。ドアはきしむような音をたてながらゆっくりと開いていった。
「ルダーク、悪い報せだ。貴様の部下が、七騎士が、皆寝返った! 邪神は復活したが最後の鍵が‥‥魔力の強い者の生贄が足りない。こうなった以上、高貴な姫を生贄に捧げるなどと言っている場合でもなかろう。手っ取り早くお前の部下から魔力の強い者を選び生贄に捧げ‥‥‥‥ダァ‥‥ゥ‥‥」
 言葉を最後まで紡ぐ事もできず、天井まで鮮血を飛び散らし倒れるバーム。床に転がった彼の表情は、未だに自分に何が起こったのか理解できていないようでもあった。
「魔力の強い人間ならここにいるではないか。‥‥もっとも、御世辞にも高貴とは言えんがな。‥‥クク‥‥ヒヤァハーーハッハハッハハ!!」
 暗転する部屋、最後の鍵を受けてバームからルダークへと乗り移る邪神ゲンドムラル。‥‥血塗られた剣から紅い雫が落ちたその時、ルダークは自らの命の炎が燃え上がる事を感じとったのか、自嘲的な笑い声を城の中へ轟かせる。凡そ人間の笑い声とは思えないそれは、窓を覆う木材をガタガタと震わせる。
「ハハハ‥‥‥‥どうしたラエル。ドアの向こう側にいたのでは私を止めることも、殺すこともできはしないぞ。私はこの力を使いたくてたまらんのだ。‥‥主君のために最期の仕事をする気はないのかな?」
「ええ、ルダーク様。最期の仕事を果たさせていただきますよ。‥‥あなたの死によって!」
 ドアが勢いよく蹴破られ、その向こうから真紅の騎士・ラエルが姿を現す。主君に刃を向けるという行為にラエルは腕を震わせ、瞳に涙を溜める。
「懐かしいなぁラエル。昔はよくこうしてお前とラブラスに稽古をつけていたものだ。‥‥結果は覚えているな?」
「確かにあの頃の私達はあなたに触れることすら叶わなかった。だが今は違う。私は成長を遂げ、あなたは‥‥病魔に身体を蝕まれた。邪神に寿命を延ばす力も良心もあるはずがないのです。ルダーク様、領土の混乱を静めたならば私もすぐに参りますゆえ‥‥‥‥覚悟を!」
 刃を腕に、無念を心に持ちながら主君へ向かっていく真紅の騎士! ‥‥彼の霞む視界には、かつてのように微笑むルダークの姿があった。
「相変わらず太刀筋が鈍いなラエル。その程度では‥‥この私を殺すことはできんな!!」
「‥‥‥‥無念‥‥」
 視界の中で歪む主君の微笑みに、ラエルは一言呟き‥‥倒れた。


<冒険者ギルド>
 アレブカリフの山賊一派の首領、ルダークが邪神(と町の住民は言っている)にその身を乗っ取られ、暴虐の限りを尽くしている。
 至急ルダーク城(と付近の住民から呼ばれている場所)に赴き、山賊の鎮圧にあたって欲しい。

「‥‥山賊だったのか」
 ギルド職員は依頼書を片手に、勇者達に世界の危機を救うよう願いを託したのであった。

●今回の参加者

 ea0385 クィー・メイフィールド(28歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2634 クロノ・ストール(32歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3982 レイリー・ロンド(29歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea4665 レジーナ・オーウェン(29歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6151 ジョウ・エル(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

<ルダーク城・静寂の広間>
「波動がまた強くなった‥‥それだけ邪神の復活が近いということ?」
「さあな。‥‥ただ一つ言えるのは、早いところここから脱出しないと俺たちも‥‥こいつらもやばいってことだ!」
 城の奥へ進むほど強さを増していく邪神の波動を感じ取ったレジーナ・オーウェン(ea4665)へ、レイリー・ロンド(ea3982)は自棄混じりに返答する。彼らの目の前にいるのは崩れ落ちる城の中で尚剣を振るうことを止めない兵士たち。鬼気迫るその形相は、勇者達をもってしても前進する事を容易たらしめない。
「ぐっ‥‥どうやらやるしかないようじゃな!」
 ジョウ・エル(ea6151)の掌からほとばしった炎球が兵士達を包み込み、玉座へと続く道を作成する。
「皆今の内じゃ。一気に突破するぞ!!」
 ジョウの合図に合わせて一気に突破を図る勇者達。炎にたじろいた兵士達は出足が鈍り、進路を防ぐこともまかりならない。‥‥ただ一人の剣士を除いて。
「味方として現れた‥‥というわけではないようですね。邪神に心奪われたルダークに‥‥」
「貴様には一生分からないだろうな。主君は痩せても涸れても、仮に腐ろうとも主君たり続けるのだ!」
 橙の布は疾風を巻き起こし、その持ち主の剣は最後尾についていたレジーナの剣と激しく激突する! 激突は猛烈な衝撃波を生み出し、広間から回廊へとつながる入り口を崩した。
「やれやれ、わしまで取り残されてしまったか。‥‥なあ、紫の騎士よ。あんたはわしらの考え方に共感したのではなかったのか?」
「‥‥バームを倒す事は主のため。だが、ルダーク様を殺すことは主のためにならず! 僕は騎士道を全うする!」
 ジョウの瞳に殺気をレイピアに込めた騎士・ウェイラーが映る。これから待っているのは勝ったところで何も得るものがない戦いである。
「ならば、この全能の賢者・ジョウが改めねばならんな。‥‥考えよ、この世界を暗黒に包み込むのが騎士道か!?」
 だが、退くわけにはいかない! 勇者達は武器を握り締めると、二人の騎士と向かい合い‥‥そして同時に大地を力強く蹴り飛ばした。

<闇覆う玉座>
「ようやっと会えたなあ、ルダーク。それともゲンドムラルって呼んだ方がええのかな?」
 四名の勇者と一人の男が対峙する玉座の間にクィー・メイフィールド(ea0385)の声が響き渡る。
「人の城に土足であがりこんでおいて挨拶もなしか。無礼なものだな」
 四名もの勇者に囲まれようと、ルダークは玉座に座したままつゆほども動揺する気配を見せない。ただ身体中に湧き上がる力に恍惚するように口元を緩める。
 考えられぬ情景、刃を交えぬともひしひしと感じる絶大すぎる力を前に、勇者達はいつしか錯覚に陥れられる。『自分達は本当にルダークを包囲し、優位に立っているのか?』ということに。
「‥‥っ、レイリー、一気に決めるぞ! 蒼獅牙だ!」
「ルダーク、他者の命まで奪って何をなそうと言うのだ!!」
 言い知れぬ恐怖からか、先に足を踏み出したのは勇者達。クロノ・ストール(ea2634)とレイリーが放つは無敗を誇る必殺剣、蒼獅牙! 全てを切り裂くその剣戟は、獰猛な獅子の如くルダークへ直進していく。
「なるほどラエルには防げなかったかもしれないな。‥‥だが、今お前達の目の前に立っているのは一体誰だと思っているのだ?」
 全てを切り裂くはずであった刃はルダークへ届くことなく軌道を変える。この状況で湧き出るはずもない脱力感を覚えたクロノとレイリーは、わけもわからぬままに壁に激突する。
 ‥‥ルダークはまだ玉座から立ち上がろうともしていなかった。

<静寂の広間>
「何故ですかラブラス! 主が腐っていると知りながら、どうしてそれを正そうとしないのですかっ!」
「黙れ! 我らにルダーク様を殺すという選択肢などないのだ。貴様らをこの場で切り伏せ、再度説得する。それしか我等の取るべき道はないのだ!」
 激突した衝撃の大きさは互角! 力が込められているのも忘れさせるほど動かない刃。ただ、両者とも腕に掛かる猛烈な力を受け止めようと、全身から脂汗を浮き出させる。
「ラブラスさん、今援護を‥‥っ! 年寄りは引っ込んでいたらどうなんだ!?」
「引っ込んでいろとは無理な相談じゃのう。‥‥わしを接近戦もできぬただのウィザードと思うと痛い目を見るぞ!」
 掌から再び炎がほとばしり、レジーナへ側面から斬りかかろうとしていたウェイラーを包み込む!
「僕を‥‥この紫の騎士ウェイラーを甘く見ているのはお前の方だーー!!」
 紫のマントが炎の中をかいくぐり、ジョウへと一直線に突進する。ジョウは回避姿勢を取るが、ウェイラーの稲妻の如き一撃はジョウの回避など問題とせず、一気に弾き飛ばす。
「いいぞウェイラー。そのまま‥‥」
「余所見をしている暇などないと思いますがっ!」
 味方の攻勢に一瞬集中力が途切れたラブラスの隙を見逃さず、レジーナが息をつく間もない連撃を仕掛ける。動くことすら忘れたかに見えた二つの力はここにきて激しく、幾度にも渡って激突し、発生した衝撃はもはや名ばかりの『静寂の間』に大きく響き渡る。
 徐々に劣勢にたたされるラブラス。必殺を狙うレジーナ。それを援護しようとするジョウ。阻止しようとするウェイラー。勝負は次の一瞬で間違いなく決まっていただろう。
 この城に、彼らの衝撃に耐え切れるほどの包容力がもしあったのならば‥‥。

 天井が瓦解し、四名の戦士を呑み込んでいく。
 それは本当にあっさりとした戦いの幕切れであった。

<闇覆う玉座>
「静寂の間が崩れたようだな。ここもそう長くはない。お互い時間が惜しかろう‥‥一気に勝負を決めさせてもらおう!!」
「クロノさん、防御を!!」
 自ら玉座より立ち上がるルダーク。床を蹴り上げた刹那に響くチェルシー・カイウェル(ea3590)の声。‥‥クロノが刃を構えた時、既に敵の攻撃は彼を打ち抜いていた。
「ルダーク、アンタは何故生きたいと思ったんや? それは、アンタを想ってくれる人たちを裏切ってまで為すべきことなんか?」
 クロノの弾かれた剣は天井に突き刺さり、彼自身は壁にめりこむ。無慈悲に追撃しようとするルダークへ切りかかるクィー。両手に握られたクレイモアは言葉と共にルダークへと迫っていく。
「我は生き延びる! 邪神の力を使いこなしてみせるのだ。そのための犠牲はカマワヌ!!」
 闇の光を瞳に蓄え、発狂したように武器を振り抜くルダーク。重厚なクレイモアが玩具のように弾かれ、クィーの両腕が天井へむけて投げ出される。
「コレデオワリダアァ‥‥!!」
 無防備をさらけ出す敵に止めを刺さんと刃を振り上げるルダーク。‥‥だが、彼がその刃を振り落とすことはなかった。
 突如部屋に流れ出した音楽と共に彼がクィーの背後に見たものは‥‥‥‥‥‥ただ一人の幻。
「なぜだ‥‥なぜそんな悲しそうな顔をする。もう少しではないか。もう少しで‥‥お前を復活させることができるのに‥‥‥‥」
 ゴトリと床に剣を落とし、壁へ向けて何かを話し掛けるルダーク。そこには邪神を取り込んでいた彼が持つ絶対的な力もない、畏怖もない、オーラもない。あるのはただ‥‥苦悩と悲しみ。

「どういうことだ。‥‥あいつには何が見えているんだ?」
「ルダークには婚約者がいたの。明朗でいつも明るい町娘だったわ。彼女は剣一筋に生きていたルダークと徐々に深く心を交わせるようになっていった‥‥」
 何が起こったのか理解しきれないレイリーへ、チェルシーは竪琴を演奏しながら先ほど書庫で見たルダークの過去を語り始める。
「いつしか二人は互いに心惹かれるようになり、ルダークは周囲の反対を押し切って結婚を決意することになったの。‥‥だけど、その幸せは長くは続かなかった。彼女は結婚式の前夜、反対派の人間によって刺殺されたの。‥‥それからよ、ルダークが彼女を復活させるために邪神の力を取り入れようとしたのは」
 何の前フリもなく明らかになった衝撃の事実に言葉を飲む勇者達。もしそれが事実とすれば、ルダークが今見ているものはかつての恋人の‥‥悲哀に満ちた表情なのだろう。彼女はただ悲しみ、彼の問いかけに答えようとしない。彼は彼女の悲しみの意味も知らず‥‥否、ただ彼女の悲しみの意味を知るために邪神までも取り込んだのだ。
「聞いてルダーク! 邪神に力を借りたところで‥‥そんな偽りの生を与えられても彼女は喜ばない! 彼女のためにも正気に戻って!!」
「ルィ‥‥‥‥‥‥ここまでか」
 玉座の間に響くチェルシーの声。その声が聞こえたのか、ルダークは頭を抑えて苦しみ始め‥‥誰にも聞こえぬよう呟くと‥‥‥‥‥‥再び剣をとった。
「もう戻れぬのだ!! 何がわかっていようとも、このルダークは‥‥ここで全てを終わらせてみせよう! 未来を‥‥切り開いてみせよう!」
「笑わせるな! 未来は今を生きる『人』が創るもの‥‥邪神に魂を売った貴様に未来などありはしない!」
 天井に刺さった剣が取れぬと見るや、紅の騎士ラエルが残した剣を拾い上げるクロノ。目の錯覚か彼の周囲で二色の波動が渦を巻いたように見え、そのオーラは紅の剣に集結する!!
「蒼き煌き、紅き焔‥‥今ひとつに重ね悪しき魂を断つ‥‥」
「あかんっ、クロノ。ルダークは‥‥!!」
「来い、勇者よ! このルダークをその一撃で貫けるのなら貫けええぇぇ!!」
 構えをとるクロノ。ルダークの異変に気付き、クロノを制止しようとするクィー。それを阻止せんと一気に突っ込むルダーク!
『蒼雷紅炎斬(ソウライゴウエン)!!!』
 制止は間に合わず、放たれるは二重の波動に包まれし必殺剣!! 鋭きその刃は‥‥戦いに終止符をうったのであった。

●余幕
「ルダーク、あんたは‥‥」
 倒れて動かなくなったルダークを眼前に、ポツリと呟くクィー。
「‥‥いや、いいんだ。ルダーク様は‥‥こうなることを望んでおられたのだよ」
 彼女の後ろから声をかけるラエル。見れば彼の後ろには他の七騎士とレジーナ、ジョウの姿もあった。


「ルィーラ‥‥すまない。‥‥僕は‥‥‥‥君を‥‥‥‥」
「‥‥いいのよルーク。あなたは私を愛してくれた。それだけで私は‥‥嬉しかったから」
「そうか‥‥ルィーラ。‥‥もう一度僕を‥‥その名前で呼んでくれて‥‥‥‥ありがとう‥‥‥‥」
 目を閉じたまま口を動かすルダークの頬にチェルシーはそっと手を置き、微笑みながらその一生を終えようとしているかつての敵を‥‥‥‥見送ったのだった。


<次回予告!>
 完全復活した邪神の力はアレブカリフのみならずイギリス全土を飲み込もうとしていた!
 だが、勇者達は諦めてはいなかった。残された浪漫を胸に今、最後の戦いが始まる!!
 次回、浪漫COME BACK!! 最終話『その浪漫、暁か?黄昏か?』 乞うご期待!