戦士と戦い<第三話>

■シリーズシナリオ


担当:みそか

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:7 G 47 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月02日〜10月12日

リプレイ公開日:2005年10月15日

●オープニング

<キャメロット近郊>
「‥‥だから俺はその時ああ言ってやったのだ。『愚か者は去れ!』とな! そうしたらその男、涙を流しながら逃げていきよった!」
「はは、それは凄いですねアグラヴェイン様。しかしアグラヴェイン様ほど高名な騎士ともなれば、周囲の男からの嫉妬は激しいでしょう?」
 エールハウスからの帰り道、アグラヴェインとその部下三名は、馬上で笑いながらキャメロットを目指す。少し酔っているのか、交す言葉の意味は通るものの、どこかろれつの回っていない印象も受ける。
「それはそうよ! 俺様ほどの男ともなれば当然『コレ』からも引く手あまただからなぁ。剣もできて身分も高い、おまけに顔まで良いとくれば、嫉妬する男の気持ちも分からんでもないがな!」
 ガハハと笑い飛ばすアグラヴェイン。聖杯探索の際はそれなりに苦労した彼ではあったが、そんなことも痛みが消えれば話のタネである。彼は大いに誇張した話を部下や女性に触れ込み、苦笑いとも尊敬とも区別がつかないような視線を向けられていた。
「はは。いやいやまったくその通りですな。私ももう一度生まれるならアグラ‥‥ヴ!!」
 おべっかの最中に肩を抑え、落馬する部下の一人。アグラヴェインは最初『何をやっているんだ』と笑っていたが、やがて彼の肩に刺さっているものが矢であることを確認すると、一気に表情を変える。
「十‥‥いや、十五か? どうやら今までの会話が聞こえなかったらしいな。俺達がかよわい乙女の御一行にでも見えるか?」
 刃を抜き放ち、下馬するアグラヴェインとその部下五名。数からいえば圧倒的に不利な状態ではあるが、彼らの顔色に焦りなどは微塵も感じられない。
 そしてそれは、山賊などとは一線を引く敵の姿を見たとしても変わることはなかった。
「誰に頼まれたのかは知らないが、俺を殺せるなんて考えるとはとんでもない愚か者だ。ここにいるのは俺で、こいつらは俺の部下だ。きょう二度目だが言ってやる‥‥愚か者は、去れ!!」
 爆発するオーラと叫び声。‥‥襲撃者達はそんな芝居のかかったアグラヴェインの挑発にも動じることなく、あくまで冷静に彼らを取り囲んだ。

<冒険者ギルド>
「‥‥戦いの末、何とか襲撃者を撃退したのだが、敵は思いの他強く、こちらもかなりの深手を負ってしまった。アグラヴェイン様までもが傷を負うほどの腕前だ。襲撃者は山賊の類ではなく、何かもっと別の‥‥存在であることが予想される」
 言葉を濁しながら、冒険者達に依頼内容を説明するアグラヴェインの部下。いかに奇襲であったとはいえ、正体不明の襲撃者に傷つけられたということが余程恥ずかしいのか、彼は冒険者達と目を合わせようとしない。
「本来ならば外出を控えるか、我らが警護を固めるべきなのであろうが、円卓の騎士が臆病風に吹かれたとあっては笑い者であるし、我らとて生活があるので四六時中アグラヴェイン様の警護をするということもできない。そこで今回諸君らには十日間、アグラヴェイン様の警護をお願いしたいのだ。‥‥諸君なら知っているとは思うが、我らから見てもなかなか個性的な方なので、苦労するとは思うがその分報酬ははずもう。‥‥どうだ? やってくれないか?」
 冒険者はあの個性的で身勝手な円卓の騎士の警護ということに一瞬躊躇したが、高額な報酬につられてか、それともそれ以外の目的を抱いてか、この依頼を受けることにしたのであった。

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea0163 夜光蝶 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea0370 水野 伊堵(28歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3970 ボルジャー・タックワイズ(37歳・♂・ファイター・パラ・ビザンチン帝国)
 ea4329 李 明華(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb0117 ヴルーロウ・ライヴェン(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0711 長寿院 文淳(32歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0970 ゴルス・ヴァインド(50歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)

●サポート参加者

サイラス・ビントゥ(ea6044

●リプレイ本文

●一幕
「うむ、あの悪名‥‥ゲフッ、ゲフフン! 高名なるアグラヴェイン卿の警護とは、また名誉な仕事ですねい」
「伊堵さん、あんまりアグラヴェイン様の神経を逆撫ですることを言っちゃいけませんよ。あの方は‥‥自分の気持ちに素直な方ですから」
 アグラヴェインと合流する手はずになっているエールハウスの前で、わざとらしく咳き込む水野伊堵(ea0370)を李明華(ea4329)は言葉を選びながら注意する。
「素直‥‥なるほど、たしかに‥‥素直かも」
 エールハウスの扉に手をかけながら、クスリと笑う夜光蝶黒妖(ea0163)。その微笑がいかなる意味を秘めているのか、一見ではわからなかったが、恐らくいい意味ではないだろう。
「どちらにしろアグラヴェイン卿は今回の依頼人だ。仕事を全うすることを第一に考えるべきだ」
「へ〜〜い。わかっていますよ。一応それなんかもコミコミで依頼を受けたつもりですから」
 吟遊詩人と情報屋の差か、ヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)の注意にも伊堵は間延びした声で返答する。彼女にとってみれば依頼主云々よりも報酬の方が大切なのである。
 そして、それは決して間違っている考え方ではない。
「ねえアグラヴェインさん! 襲ってきたあい‥‥」
「まあ待つのじゃ。ここでは人が多すぎる」
 今回の依頼に強敵と戦いたくて参加したボルジャー・タックワイズ(ea3970)はエールハウスに入るや否や早速アグラヴェインに襲撃者に関する情報を聞き出そうとするが、それはゴルス・ヴァインド(eb0970)によって制された。小柄なパラの肉体はドワーフの腕に敵うはずもなく、あっさりと持ち上げられる。
 アグラヴェインが襲撃者相手に負傷したという事実を周囲に知られるわけにはいかないのだ。
「フン、襲撃者のことか? 奴らは物騒な武器を持った十五名程度の集団だったが、所詮俺様の相手ではなかったな。七人はこの剣で突き、残りは尻尾を巻いて逃げていきおった!」
「‥‥なるほど。それは素晴らしいことです」
 そんな冒険者の心配などお構いなしに、誇張した話を大声で話すアグラヴェイン。長寿院文淳(eb0711)は精一杯驚いたような声を出すが、彼の話が嘘だということなどわかっていた。
 だが、それでもそのことを口にできないのが雇われ者のつらさである。冒険者達は素晴らしい話を聞いた御礼にと、エールハウスを渡り歩くアグラヴェインについていくことを決心する‥‥ように見えるよう心がける。
「やれやれ、しばらくは永くてややこしい夜になりそうだ」
 敵を倒すだけならともかくとして、いろいろと条件が課されたこの依頼に、マナウス・ドラッケン(ea0021)は一日目から頭を抱えるのであった。

●二幕
「ハハハハハ!! 見たかあの男の醜態を! 俺の正体がわかったとたんに‥‥」
「アグラヴェイン様、少し飲みすぎですよ。こう連日飲まれてはお体に障りますよ」
 きょうもきょうとて酒を飲み、千鳥足で歩くアグラヴェインを支える明華。献身的な彼女とは違い、アグラヴェインの愛馬を引くマナウスは溜息が絶えない。
「まったく、どういう‥‥!」
 伊堵の言葉にマナウスが合いの手を入れようとしたとき、アグラヴェインの眼光が一気に鋭さを増す。
 そして彼はそれで一歩引くほど間抜けではない。迷うことなく武器を握り締めると、闇に蠢く存在へと視線を移す。
「円卓の騎士を襲撃‥‥肝が据わってるのか、無謀なのか‥‥無謀だね」
「気を‥‥抜かないほうが。かなり‥‥やりそうですよ」
 言葉を交しながら、敵の影を探す黒妖と文淳。闇の中に紛れる敵の姿は、カチカチと布越しに鎧が擦れる音の向こう側に、うっすらと浮かんでくる。
「アグラヴェイン卿、こいつらまた懲りずに出てきたようですよ。三度目の正直ってコトで、いっちょあの‥‥どうやら空気が読めないみたいですねぇ!!」
 駆けつけた伊堵の台詞が終わる間際、彼女の頬を鋭い金属が掠める! 伊堵は頬から流れ出た血液をひと舐めすると、目の前の剣士へと刃を振り落とす!
「‥‥‥‥!」
「かわされ‥‥!?」
 振り落とされた刃は地面へ激突して砂埃を巻き起こす。夜の闇に舞った砂は、月明かりに照らされてキラキラと光って見えた。
 きらめく砂を掻き分けて彼女に迫るは漆黒の刃。肩口は必死に横へ移動しようとするが、刃を振り落とした直後ではそれもままならない。
「パラの戦士は防御も‥‥できるんだぞっ!」
 肩口の向こうに一本の線がはしり、耳に轟音が轟く。攻撃を受け止めたボルジャーは、相手の強力に弾き飛ばされ、伊堵と共にゴロゴロと大地を転がる。
「‥‥‥‥!」
「やらせるものか! 啄め、ワスプ!!」
 二人が転がった先にいた襲撃者にレイピアを突き出すブルー。側面からの攻撃を受けた敵は、脇腹を抑えながら後退していった。

「これは‥‥」
「予想通りだ。敵の数は15! 個人の実力はそれほどでもないが、抜きん出た奴が‥‥二人!!」
 黒妖と交換し合った情報を頭の中に思い浮かべながら、敵の足めがけてナイフを投擲するマナウス! だが、彼が期待した肉の裂ける音は耳に入らず、代わり彼の視界には‥‥炎を刃に纏わせた男が、跳躍している姿が飛び込んできた。
「下がれ!! 外れ二人は俺様に任せて、貴様らは残りをやれ! 油断さえなければこんな‥‥」
 アグラヴェインの放った白きオーラが敵を打ちぬいた刹那、彼自身に‥‥炎を刃に纏わせたもう一人の襲撃者が迫る! 円卓の騎士はバックステップを踏むが、敵の前進する速度はそれを凌駕する!
「アグラヴェイン様を傷付けるのは駄目です!」
 襲撃者とアグラヴェインの間に入る明華の腕! 敵の刃は彼女の腕を掠め、文淳の体当たりによって横に逸れた。
「ありがとうございます文淳さ‥‥」
「武器を握るのじゃ! あやつの護衛はわしが引き受けよう!」
 明華が視線を移した先には、大地に倒れ、血をとめどなく流す文淳の姿があった。ゴルスは明華を一喝すると、深手を負って動けない仲間の前に立って護衛となる。
「余計なことをするな! 円卓の騎士が女に守られたなどと‥‥」
「それどころではないだろうアグラヴェイン卿! こいつらの正体に心当たりはないのか? 卿を狙うほどの連中だ。何か‥‥!!」
 口をせわしなく動かしながらも、レイピアを引くブルー。一度は後退させた敵の攻撃を肩口で受け止めると、痛みが全身を駆けめぐる前に、渾身の力を込めて敵へと突き出す!!
「くだらない質問をするな。世の中には話せることと話せないことの二種類がある。何か大きな行動を起こそうとすれば、必ず何者かに狙われることはあるということだ!」
「つまり心当たりが有りすぎるということですねぇ。しかし‥‥こんなっ!!」
 アグラヴェインに返答しながらもいわゆる『外れ』めがけて伊堵は刃を突き出すが、またしてもその攻撃は夜を光らせるだけに終わる! カウンター気味に突き出された敵の刃はボルジャーのガードを掻い潜り、彼女の横腹を引き裂いた!
「大丈夫‥‥」
「ではないですねぇ。ですが致命傷は‥‥!!」
「捕獲云々言っていられる段階じゃないなっ!」
 再度伊堵と黒妖めがけて突き出された刃は、マナウスが放った矢によって僅かにスピードを緩める。二人は顔を合わせることなく、漆黒の髪を闇になびかせながらその一撃を回避する。
「さぁ、こい!! お前が強いかパラの戦士が強いか勝負だ!!」
 背後に迫っていた襲撃者を一人薙ぎ払ってから、『外れ』へと正面から刃を突き出すボルジャー。彼のようなパラの戦士にとってみれば、上から下へと振り落とすような一撃は不要だ。下から昇るように‥‥勇気をもって身体を躍動させればいい!
「お前の強さは知っているよ。‥‥だが、相手が悪かったなぁ!!」
 叫ぶ襲撃者。突き上げられた一撃を小手で薙ぎ払うと、炎纏う剣を構え‥‥バックステップを踏む。既に体勢を整えた伊堵と黒妖、そしてマナウスが迎撃体勢にあったのだ。彼は倒れた仲間の前に立つと、回復させるまでの時間稼ぎを行おうとする。
「そんなしみったれたことを‥‥!」
「しみったれているのかどうかは自分自身に聞いたらどうだ!?」
 ボルジャー達を援護しようとアグラヴェインは剣を握り締めるが、それは襲撃者達の牽制によって阻止される。
「これでも‥‥!」
 明華は敵の隙をつくりだそうと拳を突き出すが、敵は腕でそれを弾き、彼女の腕へと刃を向ける。炎纏ったその刃は、彼女の体内に秘められた鮮血が飛び出す様を想像させ、一気に距離を詰めていく!!
「お前は俺を誰だと思っている? ‥‥円卓の騎士の前で、女を殺せるとでも思ったのかぁ!!」 
 アグラヴェインは覚悟を決めたように絶叫すると、背後の敵などお構いなしに深い踏み込みから大地を真っ二つに切り裂くほどの勢いで刃を振り落とす! 襲撃者が装着していた仮面が真っ二つに割け、中から血に染まった髪を持つ男が現れる。
「ッ!! こんな‥‥!」
「美しい物語に襲撃者は不要だ。このあたりで退散しておけ!!」
 下がり、背後からの攻撃を受けて膝から崩れ落ちるアグラヴェインへ攻撃を仕掛けようとする男。だが、ブルーは一瞬男にできた隙を見逃すことなく、ワスプレイピアを敵に穴をあける気迫で突き出した!
 鮮血が飛び散り、男は撤退の合図を仲間へと送る。『外れ』二人は仲間を捕らえられまいと最後まで戦ったが、冒険者達は追撃の末、一人の襲撃者を捕縛する事に成功したのであった。

●余幕
 アグラヴェインの部下の手により尋問が行われたが、襲撃者は結局喋ることなく、自らの舌を噛んで自害した。
 しかしその後男の持ち物を調査した結果、ベガンプから男がやってきた可能性が非常に高いことが判明した。アグラヴェインは『この結果を重く考え、今後の行動を考える』との言葉を冒険者に話し、依頼期間を終えたのであった。