Guild Wars #2

■シリーズシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月20日〜05月25日

リプレイ公開日:2007年05月30日

●オープニング

●目隠し鼻つまみ
 バの国におけるメイの間諜組織が、機能を停止した。
 王宮内は一時騒然としたが、バの国が即メイに侵攻するわけではないことは確認したので、とりあえず善後策を検討することになった。無論その中には新組織を構築するというのもあるが、今まで何年もかけて構築してきたものを叩きつぶされたのである。即どうにかなるとは誰も考えていない。
 つまりメイの国は、バの国にたいして目隠しされたも同然の状態である。
 検討された対応策は、冒険者による探索であった。冒険者――正確には天界人――は、バの国にも来落しており、とりあえず一番身分がばれにくいという理由からである。ただしバの国は過去天界人に痛い目に遭っているので、どこまでアテにしていいかは分からない。
 それと同時に、国内に存在するバの間諜組織――おそらくは闇ギルドであろう――の存在がある。その首謀者は『カタヤマ』という名で、首に特徴的な傷があるらしい。
 バの国の探索が出来るようになるには、当面少々時間がかかる。冒険者に頒布された依頼は、カタヤマなる天界人の探索である。まず内憂をなんとかしようというのである。
 ただ、手がかりはあまりにも少ない。しかし敵の行動目的は分かっている。冒険者権威の失墜である。
 ゆえにカタヤマをどうにかするには、まずその末端でもいい。彼らの尻尾をつかむ必要があるだろう。そのための方策を考え、実行してもらいたい。
 つまり、バの国の間諜組織を潰すのである。

●今回の参加者

 ea1504 ゼディス・クイント・ハウル(32歳・♂・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea5869 ルルイエ・イサ・クロウリス(28歳・♀・バード・人間・ビザンチン帝国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb0763 セシル・クライト(21歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb8542 エル・カルデア(28歳・♂・ウィザード・エルフ・メイの国)

●リプレイ本文

Guild Wars #2

●メイの国の諜報組織
 メイの国には、大きく4つの諜報組織がある。

1.王立戦地復興騎士団
 福祉事業を主幹とする集団で、表向きは『後方専門』の騎士団。別名『戦わない騎士団』と呼ばれ、王宮での地位も低くああり重要視されていない。
 が、その内部の1部所が内務諜報専門部隊となっていて、その士気は高く練度も戦闘能力も高い。その活躍の場所は宮廷内や貴族の元で、例えば不始末を起こした貴族を文字通り『始末』する仕事をしたりする、きわめて秘匿性の高い騎士団である。内務専門の、汚れ仕事を請け負う部所だ。

2.アートルガン懲罰隊
 懲罰隊と言うと、不名誉な行為を行った兵士や騎士が送られる、死体埋葬や罠処理を行わされる部隊である。だがこのアールトガン懲罰隊は懲罰隊に偽装した精鋭部隊で、どのような困難な任務も完璧に達成してきた、恐るべき超精鋭部隊である。ただし損耗率は並大抵ではなく、部隊の6割7割が戦死するのも当たり前。設立当初の人員は144名中12名しか居ないという、筋金入りだ。
 この部隊は先行偵察や強行偵察などで使用される場合もあり、また敵地での単独諜報任務も行う、きわめてスキル特化した部隊である。また部隊の性格上、部隊内に『公式に』カオスニアンが存在する唯一の部隊でもある。

3.コルザ
 『菜種』『雑草』を意味する言葉。メイの国の公式な『非公然』諜報機関で、外務が主任務である。
 雑草の意味するとおり、敵地への長期にわたる潜入調査が主任務で、主にバの国に対して広大な情報ネットワークを持っていた。今回潰されたのはこのネットワークで、課員の7〜8割と連絡が途絶している。
 もとより正確な名簿すら国内に存在しないので、今現在バの国がどうなっているかは、情報がまったくない状態である。

4.冒険者ギルド
 ご存じ、金で何でも仕事を請け負う冒険者のための互助会。しかしそのネットワークは侮れないほど発達しており、複数の頭脳による平行審査によって、個々では見えない事象にも形を持たせる能力に非常に特化している。他の組織が情報収集に特化しているのに対し、冒険者ギルドは『情報処理』に特化しているのである。

 このほかに盗賊ギルドやKBC(瓦版クラブ)など、民間(?)や個人の組織があるが、厳密に諜報機関とは言えないので外しておく。とにかくその一つ、『コルザ』が大打撃を受けたのは事実で、その目的が戦争準備なのは間違いない。
「ただし、この指揮を執ったのは日之本だ。多分、バの国の諜報戦のオプションを潰すのが目的だろう」
 と、目下日之本一之助のライバルとなりつつあるゼディス・クイント・ハウル(ea1504)は言う。
「義理人情など信じるに値しないが、効率という意味でヤツの選択は正しい。諜報機関が無ければ誤情報が流されることは無い。目隠しされているだけで、存在しないモノを見せられる心配も無くなったわけだ」
 誰もがゼディスみたいに、理路整然と物事を分析できるわけではない。しかしまっさらな状態で物を見たほうが、はっきり見えるのも確かである。それで利益を得るのは、国家そのものだ。文字通り、小を殺して大を生かすわけである。必要が無いからやっていないが、機会があればゼディスだって同じ事をするだろう。
 が、ゼディスのあまり気にくわないようだった。

●まずは現状把握
 冒険者たちの行動は、現状把握から始まった。ゼディスにイリア・アドミナル(ea2564)、ルルイエ・イサ・クロウリス(ea5869)、イェーガー・ラタイン(ea6382)、セシル・クライト(eb0763)、エル・カルデア(eb8542)の6人が、それぞれ情報収集にかかったのである。
 現状把握といっても、種類はいくつかある。が、全員がまずとった行動は烏丸京子のところを襲撃することだった。つまり、冒険者ギルドの情報を求めたのである。内容は一様に、『メイ国内におけるバの間諜組織の把握』であった。
「バの国は、諜報組織が豊富でちょっと把握できていないのよね。ただメイの国で活動している主な集団は、『ゼガー』という組織。これはゴーレムの運用も出来る、武闘派の諜報集団と言えるわね」
 武闘派諜報集団というのは矛盾しているかもしれないが、現代でも暗殺に爆薬が使われたりするのを見るように、別に暗殺が静かなものとは限らないのである。スパイは爆薬を設置し、標的をビルごと粉砕する。そのさい『5%ぐらい』の一般人の損耗は許可される。もっと乱暴な話をすると、電話ボックスで報告中のスパイが、敵対組織にロケット弾で吹っ飛ばされたという話もある。ガス爆発と処理されたが、実はこれ、治安が良いと言われる日本国内の話だ。
「『ゼガー』は実態をつかませないために更新の激しい組織でね。人材の切り捨てや使い捨てもしょっちゅうみたいだから、尻尾をつかむのは難しいのよ。ただ『闇ギルド』関連のほうだったら、『グリフ』っていう組織のほうだと思うわ。もっとも『グリフ』っていうのはカオスニアンの諜報組織で、その『カタヤマ』っていう人が統制をとれるような集団じゃないんだけどねぇ」
「『ゼガー』はメイの国内、『グリフ』はカオスニアン、『カタヤマ』は『推定天界人』‥‥どれが本命かわかりにくいですね」
 イリアが首をひねる。他の組織が絡んでいるのでなければ、闇ギルドはゼガーかグリフのどちらかを母体にしているはずである。
「何か‥‥おっしゃりたいことがあるのではないですか?」
 京子の様子を見ていたルルイエが、口を開いた。それに京子が、苦笑いをする。
「確証は無いんだけどねー。ただカタヤマ某が天界人で、この世界に対して先入観が無いなら、闇ギルドって『ゼガーの暴力』と『グリフの薬』をまとめ上げたものなんじゃないかなーと思ったのよ」
 京子が確証の無いことを言うのは珍しい。しかし、冒険者たちには十分納得できる話だ。良い意味でも悪い意味でも、天界人にタブーはない。アトランティス人とカオスニアンを組み合わせるというのは、別に無い話ではない。
 ただ‥‥。
「過程が思いつかないんだな?」
 ゼディスが言う。それに京子が、苦笑した。
「そ。例えばウチのギルドマスターって、東方じゃ十分な有名人なワケよ。でもそのカタヤマ某って、今まで名前すら出てこなかったワケでしょ? そんな『名も無き天界人』が、そこまでのことできると思う?」
「出来ます」
 と、即答したのはイェーガーだった。
「日之本さんは、やってのけました。バの国に日之本さんと同等の力を持った人が居ても、おかしくありません」
 メイの国における日之本一之助の知名度は、はっきり言って低い。しかし彼を通して成したことは、結果として城塞一つ建設するにまで成長している。
「カタヤマの目的は、やはりディアネー嬢なのでしょうか?」
 セシルが問いかけた。今彼にとって、一番か二番の懸案事項だ。
「それは変わらないでしょうね。ただそれは『手段』であって、本当の目的は相変わらず『冒険者権威の失墜』だと思うわよ」
「首尾一貫は作戦の基本だ。その結果得られるものが、カタヤマの報酬だろう」
 ゼディスが言った。
「王宮や阿修羅の剣探索隊にカタヤマが混じっている可能性はありますか?」
 と、これはエルである。
「現場に出るとは思えないわね。指揮官は近くに居ても、全体を見なきゃならないもの」
 京子が、人差し指をアゴに当てて言った。絵になる。
「結局は、藪をつついて蛇を出さなきゃならないわけですね」
 イリアが、嘆息した。
「リスクは承知の上です。まずはイリアさんの作戦をやってみましょう」
 セシルが言った。

●嘘の出航
『バの国を調査するために冒険者が旅立つ』
 そういう噂が流れたのは、その数日後である。メイディアの港に本当に1隻のゴーレムシップが用意され、冒険者たちが乗り込んだ。港は国の監視が厳しいから、出航してから何かアクションがあると冒険者たちは考えていた。
 そう、これは『囮作戦』なのである。藪を突いたのだ。
 しかし、結果は不発に終わった。何も妨害工作らしきものが、起こらなかったのである。
「どう解釈すべきでしょう?」
 ルルイエが言う。
「見落とした、ってことは無いですよね‥‥」
 イェーガーもやや困惑気味だ。
「簡単な話だ」
 と、ゼディス。
「カタヤマの目は、メイの国内に向いている。今冒険者権威を失墜させるのなら、オルボートかベノン嬢を潰せばいい。そういうことだ」
 実にシンプルな答えだった。
「この次は、オルボートに足を運ばなければならないかもしれませんね‥‥」
 セシルがつぶやいた。
 暗闘――ある意味冒険者の苦手な闘いが、しっかりと目標を見定めて始まろうというのである。

【つづく】