『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記4』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 2 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月16日〜01月26日

リプレイ公開日:2005年01月24日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目だけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

「新年あけましておめでとう。お雑煮も食べたし、おせちも食べたし、ソロソロコボルト退治に行かない?」
 新年そうそう相変わらずコボルト退治にはまっている放蕩娘のソレイユは、炬燵に入ってのんびり蜜柑を食べている護衛メイドのクレッセントに対してコボルト狩りへ行こうと誘っている。だが、炭団(たどん)で温かい炬燵の中でのんびり蜜柑を食べることに至福を憶えているめんどくさがり屋のメイド、メドイさんことクレッセントは雪が積もった裏山なんか絶対行きたくないと言った表情でモグモグと蜜柑を頬張っていた。
「お外は寒いしメドイですよ。それよりおとなしく蜜柑でも食べて、書き初めでもしましょう」
 シフールメイドのクレッセントは炬燵から出ようとしない。
 ちなみに他のメイドシフール達は元気に雪で遊んでいたりするが。
「そんなこと言わずに行こうよ。一緒に言ってくれたら、クレッセントがほしがっていた西陣織の褌あげるからさ、ね?」
 物で釣るお嬢様。物に釣られるクレッセント。
「え〜。本当ですかぁ? 今回だけですよぉ?」
 そう言ってめんどくさそうにコボルト退治の準備を始めるクレッセント。コボルトだってこの雪の中休みたいだろうに。


『冒険者の皆さんへ。今回もまた、私とコボルト(犬鬼)退治に向かってくださる方を募集致します。冒険者としてはまだまだ未熟な私ですが、そんな私に力を貸してくださる勇気ある冒険者の方を募集しております。一緒に冒険の旅に向かいましょう』

冒険者ギルドにそんな一文が載れされたのはそれからまもなくしてからであった。

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2941 パフィー・オペディルム(32歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4330 カノン・クラウド(32歳・♀・ナイト・シフール・モンゴル王国)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea6764 山下 剣清(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7270 蒼月 荒忌(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8191 天風 誠志郎(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb0654 レイヴァン・クロスフォード(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●雪中行軍北へ。
「すすめ〜♪ すすめ〜♪ ゆきぐ〜に〜♪ じゃまな〜♪ ゆきは〜♪ ゆきかき〜♪」
 オニューの鎧(リメイクバージョン)に身を包み、スコップ片手に雪山の雪を切り開いて行くソレイユ。場所は裏山、時刻は昼過ぎ、冒険者一同は荷ゾリを引く馬を進めるべく、雪をかき分け、前へ前へとコボルトの住む裏山へと進んでいった。
 事前に用意した雪わら靴とかんじきを履いて、ザクザクと雪を掘り進みながら山の中を進む一同。馬の手綱を握るのはクレッセント。馬の前でザクザクと先頭切って雪かきをしているのはソレイユ。普通なら逆になるのであろうが、二人はコレで合っているのである。
「確か2mって聞いてたんですけど‥‥、すごい豪雪じゃないですか」
 日向大輝(ea3597)がソレイユに質問するとソレイユは額の汗をぬぐいながら答える。
「えぇ、私もビックリです。でもまぁ場所に寄って多かったり少なかったりするのはしょうがないですから。とにかくがんばって掘り進みましょう」
 そう言ってスコップ片手に活路を開いて行くソレイユ。ちなみにいつもの赤いビキニアーマーの縁に、白いふわふわのファーたついており、ビキニアーマーは紅白の色合いに成っている。ジャパンには無いのだが、聖夜祭カラーに施された服装はなんだかとっても目立っている。
「あぁ、これ、せっかくだから服装もリニューアルしたんですよ。それに武器もお父様に頼んでオニューの刀をもらったんです。だからもう嬉しくて嬉しくて。あぁ早くコボルトをばっさばっさと切りたいなぁ〜」
 夢見心地でふわふわのソレイユ。相変わらずの露出度なのは変わらない。
雪山なのだから寒くないのだろうかと質問したくなるような服装である。
一応に背中にはマントを付けているのでそれで寒さを凌いでいるのだろうが。ちなみにマントも赤く、縁取りが白いファーである。
「寒いのは苦手です。メドイですしぃ」
 荷ゾリの手綱を握るのはクレッセント。わた入りの半天を着込み、その上から毛布をかぶってる。防寒対策バッチリな格好で、ソレイユとは根本的に両極端な格好になっている。
 そして、その隣に座っているのはレディス・フォレストロード(ea5794)。クレッセントの毛布に一緒にくるまり、ぬくぬくと荷ゾリに引かれていく。
「あの、私上空からコボルトを探しに行きたんですけど‥‥」
 フォレストロードは偵察に出たいらしいが、クレッセントは離さない。
「一緒に居てくれないと寒いじゃないですか。もう少し一緒に居てくださいな」
 そう言って肌を寄せ合うクレッセント。半分寝ているのか、うつらうつらと眠たそうである。
「そうだ、それいゆ。俺とどっちがコボルトを多く倒すか勝負しないか? 俺が勝ったらほっぺにキスしてくれよ」
 山下剣清(ea6764)がそう言ってソレイユに勝負を挑む。
「あら、奇遇だね。私もソレイユお嬢さんに勝負を挑むところだよ。今回も負けたら、霧刀を贈呈するよ。それに、この刀はしばらくお嬢さんに貸してあげるよ」
 そう言って雪かきをするソレイユに霧刀を見せる楠木麻(ea8087)。だがしかし、今回のソレイユは笑顔でそれに応える。
「勝負は受けるよ‥‥剣は欲しいし‥‥でも、大丈夫、今回は超特別な最強の剣持ってきたから‥‥じゃじゃーーん」
 そう言って腰に付けていた刀を抜いて麻に見せる。
 そのやや短め、やや反り身のオニューの刀の正体とは‥‥忍者刀であった。
「えへへ、昔お父様が手に入れたのを研ぎに出してもらって、譲り受けたんだ。これくらいの刀なら私もに扱えるもんね」
 胸を張って自慢げに忍者刀を見せるソレイユ。だが、刀マニアで収集家なのは変わらない。明王彫りの剣もしっかり荷ゾリの荷物の中に持ってきている。
「しかし、こんな寒いのにホンマに悪さしたんか、犬鬼?」
 蒼月荒忌(ea7270)がソレイユに確認する。ソレイユは額の汗をぬぐいながらコレに対して応える。
「最近は被害は減ってるみたいだよ。私たちのおかげだって村の人も感謝してた。でも、ここで気を抜いちゃいけない。倒せる時に倒しておかないと、いつ被害が出るかわからないから」
 ソレイユはそう言ってにっこりと笑った。
「さて、今日はこの辺にして、ソロソロテントでも張ってビバークしましょう。しっかり休んで体力を回復しないと、コボルトとぶつかっても負けてしまいますわよ」
 パフィー・オペディルム(ea2941)がそう言ってにっこりと微笑む。
 珍しく薄着の服の上からローブを着込んで寒さ対策をしている。ソレイユも汗を拭うとマントで身を覆った、一応に風邪を引かないように注意はしているようである。

 一行がテントを張り、ビバーク準備をしていると、偵察に飛んだカノン・クラウド(ea4330)が山の向こうから帰ってくる。
「陸の向こうにおばぁさんが行き倒れて居ましたので連れてきました」
 こんな山の中に? おばぁさんが一人で? そんな疑問が一同の頭に浮かんだ‥‥っが、ソレイユにはその様な疑問は浮かばなかったようだ。
「きっとコレもコボルトの仕業だよ。おのれコボルト、絶対に退治やるんだから」
 そう言って決意に燃ゆるソレイユであった。
「こんな山奥で人に合えるなんてなんと嬉しいことか、おまえさんたちがコボルト退治を繰り返している冒険者様ですな。ありがたや、ありがたや」
 そういってパーティに加わるおばぁさん。一同は雪を除雪し、テントを数点張ると、取りあえず身体を休めることにした。相変わらずクレッセントはレディス・フォレストロードを抱き枕の様に抱きしめた状態で離さない。ソレイユはリューガ・レッドヒート(ea0036)のテントにおじゃましてのんびりと酒を嗜んでいる。寒いときに身体を温めるのは、いつの時代も酒である。

 ソレイユの実家が用意した食料(餅)を七輪で焼いて夕食とする。七輪のおかげで雪の中でもテントの中は暖かだ。いっそかまくらでも作るのかと思ったが、そんな安は今回でなかった、ゆいつ思いついたクレッセントは「メンドイから立案しない」っと知らん顔でうたた寝を決め込んでいる。

「みんな、起きてくれ!! 敵だ、敵が来た」
 皆が眠りについたしばらくして、突然に皆を起こしたのはレイヴァン・クロスフォード(eb0654)。チョット外の様子がおかしいのに気がついて目を覚ますと、外の高台の陸の上に、月をバックに一匹のコボルトが腕を組み、マントを翻して立っていたのである。
 そして高笑いを上げている。
「わおーーーーーん」
 雄叫びを上げるコボルト。そして、陸の上には他に5匹のコボルトと‥‥老婆の姿が
「ひゃひゃひゃひゃひゃ。おまえたち、良くも今までこの山の犬鬼達を虐めてくれたね。私はこいつらに呼ばれてやってきた助っ人さ。おまえたちがこの山にまた犬鬼達を虐めに来るんじゃないかと‥‥根拠は無いが予想していた。だからおまえたちを迎撃するために、一週間も前からココに準備していたのさ」
 そう言って陸の上の老婆はにっこり笑って見下ろした。
 その老婆はさっきまで一緒にお餅を食べ、毛布にくるまっていたおばぁさんである。
「アンタ何で犬鬼の味方なんかするんだ?」
 天風誠志郎(ea8191)が老婆に質問する。老婆はまた似たりと笑ってその質問に応えた。
「それは私がこの山に住んでいる山姥だからだよ。同じ鬼族のよしみで手をかしてやるのさ。無論タダじゃないがねぇきしししし」
 そう言って老婆は満面の笑みを浮かべて冒険者達を指さした。
「さぁ悪知恵だったら負けないよ。おまえたち、やーっておしまし!!」
 老婆の号令で5人の雑魚犬鬼達が一斉に雪で作った玉を投げてくる。
 ガチガチに固められた雪の玉は、限りなく氷の玉に近く、当たるととっても痛い。
「おばぁさん。貴方に質問がありますわ」
 パフィー・オペディルムが山姥を名乗る老婆に質問を促した。
「私たちを殺すことが目的だったのなら、なぜ、私たちが寝ている間に殺さなかったのですか?」
 その言葉を受けて、無言で考える老婆。しばらく考えてから言い訳のように応える。
「それはうっかりしていたね。次からそうするよ」
 犬鬼達に軍師として雇われた山姥であるが、結構間抜けで良い奴なのかも知れない。
「たかが、コボルトの5匹や10匹」
 リューガ・レッドヒートが日本刀を抜き、雪山をザクザクと登っていく。だが、突然に足下に抵抗を失う。そう、落とし穴だ。彼はずっぽりと頭まで雪に埋まる。
「ひゃひゃひゃひゃ、数日前から準備をしていたと言っただろう。ココへ来る途中の道はそこら中落とし穴だらけだよ」
 老婆の言葉にソレイユは歯ぎしりをした。
「ならば、こちらも飛び道具で応戦です。皆さん雪玉を作って投げつけてやりましょう」
 楠木麻の言葉に、逃げまどっていた一行は、雪玉を作って応戦を始めた。
 人数的にはコボルト5+ボスコボルト1+老婆 と冒険者10人+ソレイユ+クレッセント。
 人数は倍だが、山の上という高低差、飛び道具での攻撃は圧倒的に上を取った方が有利である。人数差を差し引いても勝負は互角の展開へと発展していった。

「ふぉふぉふぉ、人間の冒険者よ。苦しめ、そして恐怖におののけぇ」
 老婆の陣頭指揮で雪玉を投げてくるコボルト達。普段統率の取れていない彼らも、軍師が一人いるだけでその戦力はがらりと変わっている。
「おのれー、唸れひっさーつ!!‥‥‥‥」
 ソレイユがオーラパワーを付与しながら雪の坂を駆け上がっていくが、途中に有った落とし穴に頭からツッコミ、下半身をじたばたさせながら埋まっている。
「ソニックブーム!!」
 蒼月荒忌が放ったソニックブームが犬鬼達の足下の雪をえぐる。そして、雪崩状態の雪がソレイユを埋めた。
 鬼のような雪合戦が朝まで続いた。死闘に継ぐ死闘の末に朝日が昇り、東の空が白み始めた。そして、月を背にしていた犬鬼達は、冒険者の後ろから昇る太陽に目をくらまされていく。
「くっ、このままでは分が悪い、今日の所は引き分けと言う事にしておいてやる。だが、おまえたちがコボルトを狩ろうとするのなら、私はイツデモおまえたちの前に立ちはだかるだろう。憶えておくが良い」
 そう言って老婆は犬鬼達を連れてその場を後にした。

「何か、メドイ事に成りましたね」
 クレッセントに言われながら、一同は埋まっているリューガとソレイユを掘り起こす。
雪まみれの二人の雪を払ってやると、ソレイユはふぅっと取りあえず息をついた。
「今回は引き分けと言うことで取りあえず帰りましょう。おうちのお風呂沸かしますから、みなさん入っていってくださいな。」

 そんなわけで荷ゾリを引きながら、一同は山を後にする。
 かなりの遺恨を残しながら‥‥。