『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記5』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 21 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月09日〜03月17日

リプレイ公開日:2005年03月17日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目だけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

「前回の闘いで出てきた山姥って言うのは初めてみる強敵よね? ひょっとしたらコボルトより強いかも‥‥」
 娘ソレイユは屋敷の食堂で、護衛メイドのクレッセントと食事を取りながら、前回の闘いの苦い経験をよみがえらせていた。
 裏山に住むコボルト達が用心棒に山姥を雇ったのである。そしてそのために敵との戦いに勝利することが出来なかったのである。まぁ負けたわけでも無いのだが。
「少なくてもコボルトよりは頭が良いと思われます。人間の言葉も分かるようですし、少なくてもお嬢様よりは頭が良いのでは無いでしょうか?」
 クレッセントの言葉にソレイユはぐーの音も出ない。
「よし、山姥を倒すために何か作戦を考えよう。クレッセント、貴方も何か意見を出しなさい?」
 ソレイユの言葉にクレッセントが眉をひそめ、デザートのアップルパイを口に運んでいる。
「メドイです。でも苺のタルトなら作っても良いと思います」
 クレッセントの言葉に今度はソレイユが眉をひそめる番だ。
 考える‥‥考える‥‥考える‥‥考える‥‥そしてその日の夕方、ようやくクレッセントが言おうとしていることにようやくソレイユは到達した。

『冒険者の皆さんへ。裏山にするコボルト達が山姥と手を結んで困っています。何かコボルトと山姥を退治する良い案は無いでしょうか? 苺のタルトを焼いてお待ちしておりますので、良策を持って提案に来てください』

冒険者ギルドにそんな一文が載れされたのはそれからまもなくしてからであった。

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1057 氷雨 鳳(37歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea2941 パフィー・オペディルム(32歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5428 死先 無為(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea6764 山下 剣清(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6780 逢莉笛 舞(37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea7148 柳川 卓也(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea9885 レイナス・フォルスティン(34歳・♂・侍・人間・エジプト)

●リプレイ本文

●メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記5

 雪のまだ残る3月の午後。ソレイユさんのお屋敷で苺のタルトを囲んでみんなで午後のお茶会が開かれました。
「そもそも、裏山のコボルド退治の理由はなんなんだ? 退治とは真逆になるが、共存つーか、住み分けみたいなのができないのかね? 畑を荒らすだの人を攻撃するだのがあれば、大義名分掲げて狩りに行けるんだけどな。コボルドだから山姥だからって理由はどうも好きじゃねぇんだよ、偽善だって言うならそうなのかも知れねーけど」
 紅茶を片手にマズ意見を出したのはリューガ・レッドヒート(ea0036)。苺のタルトをフォークで切り分け、小さな断片を口に運びつつ、ソレイユの反応を窺っている。
「えと、よく分からないけど、コボルトが居るんだよ? いつ襲ってくるか分からないんだよ? そんな状況は良くないと思うんだけど、クレッセントはどう思う?」
 意見を求められたクレッセントはリューガをジッと見つめていた。まるで穴が空くくらい。
「どうした? 俺の顔に何かついているのか?」
 リューガがクレッセントに質問するが、彼女はタダひたすらリューガを見つめ続けている。
「そんなにジッと見つめられたら、気になって安心して食えないじゃないか」
 リューガがそう言うとクレッセントはにっこり微笑んだ。
「その言葉を待ってたんです‥‥たぶん村人達もそう言う事だと思います。近くにコボルトが住んでいる。それだけで気になって安心して生活出来ないんだと思います。コボルトが住んでいたとしても、それを村人が知らないのであれば、彼らは何も知らずに日々の生活を過ごせるかと思います。でも、彼らはそこにコボルトが住んでいることを知ってしまって居るんです。そして、いつ襲われるとも分からないことを、前に家畜や村人が被害を受けていることで知ってしまって居るんです。だから、コボルトを倒すか出ていってもらわなければ、成らないと言うソレイユお嬢様の意見は理解して頂けると思います」
 そう言って紅茶を口に運ぶクレッセント。シフールメイドの彼女の意見ととても的を得ているものであった。
「もちろん‥‥メドイ事は嫌いですし、何で私たちが‥‥っと言う意見はありますが」
 そう言ってクレッセントは苺のタルトを口いっぱいにほおばった。

「まあ、とっても美味しいですわ。クレッセントさんはお料理がお上手ですわね」
 苺のタルトの味を楽しむパフィー・オペディルム(ea2941)。切り分けられた苺のタルトをフィークに刺して、ソレイユの口元に運ぶ。
「うふふ、わたくしが食べさせて差し上げますわ。あーんして下さいな♪」
 出されたタルトを口で受け取るソレイユ。
「山姥とコボルトなのですが、やはり相手の土地へ乗り込むより、どこかに罠を張ってそこに誘い込むと言うのはどうでしょう?」
 メイド服に着替えた、レディス・フォレストロード(ea5794)がお茶の席でクレッセントにそっと耳打ちする。メイド服のシフール二人がテーブルの端で和気藹々、チョット和やかな雰囲気が当たりに流れる。
「それはとてもメドイですよ?」
 クレッセントがレディスにそっとつぶやきかけた。
「相手と戦う場所‥‥エンゲージポイントを考えると言うのは良いことです。でも誘い出すとなると‥‥餌が必要に成ります。コボルトが欲しがりな物でおびき出す‥‥とても大変で考えるのがとてもメドイです‥‥かんがえてくれますか?」
 クレッセントにそう言われ、レディスは静かに頭を抱えた。
「この紅茶とタルト、とても良い味です。イギリスで食べた苺のタルトと紅茶に少しもひけを取らないですね」
 逢莉笛舞(ea6780)クレッセントに話しかける。クレッセントがアリガトウと言わんばかりの微笑を浮かべて頭をさげる。肝心のソレイユの目線は彼女よりも彼女の持ってきたラティスシールドにそそがれていた。目をランランと輝かせている。
 その脇で小柄なメイドに化けて苺のタルトを食べているのは柳川卓也(ea7148)。誰も突っ込みたいけどツッコミを入れないのでなし崩しのままでメイド姿でお茶している。
「今までの話を総合すると‥‥取りあえず雪解けてから戦おうって事ですね?」
 もの凄く当たり前だが的を得た回答がでる。
「まぁそう言うことになるわな。それにもっと戦いやすい場所に敵を誘い出して戦うことコレ課題だな」
 レイナス・フォルスティン(ea9885)がそう言ってソレイユに付け足す。もちろん『どうやって』っと言う部分は次回への宿題と成るんだろうが。

 そして‥‥

「クレッセントさん。後かたづけは僕も手伝いますから、後で紅茶の入れ方や苺のタルトの作り方、おしえてもらえまえんか?」
 食事が終わった食器をかたづけているクレッセントに死先無為(ea5428)が話しかける。
「ありがとう。でも、物には順序って物がありますから」
 クレッセントはそう言って微笑を浮かべた。
「まずはお茶の入れ方から教えてあげましょう。お菓子作りはまた今度、もっと簡単な物
から憶えた方が良いですよ?」

「よーし、いくよぉ!!」
 木刀片手にザッと構えるのはソレイユお嬢様。相変わらずの胸とお尻をきわどく隠したビキニアーマー(殆ど防御力の無いソフトレザー)を身に纏っている。しかも前回使用の赤いビキニに縁取りに白のファーが着いている。
(この時代にはもちろん水着やましてやビキニ等という物は有りませんが、現代のそれを想像して頂けると良いと思われます)
 それに対して木刀を構えるのは氷雨鳳(ea1057)
「さぁ、かかってくるでござる」
 その声に反応して一気に突進するソレイユ。
 けたたましい音を立ててソレイユの木刀が吸い込まれるように氷雨の額に叩き下ろされた。
 氷雨の額からじわりと血が流れる。
 っが、地面に崩れ落ちたのはソレイユの方だった。
 氷上は避けることをしなかった。
 代わりにカウンター気味に放った一撃がソレイユの逆胴を薙いでいた。
 攻撃の瞬間の隙をつく大技である。肉を切らせて骨を断つと言うのであろう。
 ソレイユは無防備なおなかを思い切り木刀で打ち込まれていたのである。
「うぅ‥‥」
 うずくまるソレイユの脇からひらりとクレッセントが舞い降りる。
「姫様もソロソロ何か剣の技を憶えた方が良いですよ‥‥メドイですが」
 木刀を構えて氷雨と対峙するクレッセント。氷雨はまたカウンターの構えを取っている。
「魔法も剣も一緒です。力押しばかりでは扉は開きませんよ? 色々知恵や技を駆使して事に当たるのです。メドイですが」
 氷雨の足にクレッセントの木刀の一撃がヒットする。もちろんシフールの一撃である。ダメージなんか殆ど‥‥いや全くと言って良いほど無い。‥‥だが‥‥。
 氷雨鳳は中を舞っていた。くるりと空中一回転してお尻からずどんと地面に落ちる。
 みていた一同も、そして技を受けた等の氷雨鳳ですら現状が飲み込めていなかった。
 着物の裾が露わな状態になり、旅装束の間から越中褌が見えている状態に築き、ささって着物の裾をなおしながら、氷雨はクレッセントを見つめた。
「トリッピングです。非力な私にも使える簡単な奴です」
 そう言ってクレッセントは木刀を置くとメンドそうにまた静かにギャラリーの隅に腰掛けた。
「案外強いんだな?」
 日向大輝(ea3597)が非力なメイドに見えるクレッセントに対して質問した。
「見た目通り非力なメイドですよ? 力もありませんし重い武器も持てません。木刀一つで飛べなくなってしまうくらい非力な小娘ですよ。でも小娘には小娘の戦い方が有るだけです。どんなに小さなナイフでも、使い方を間違えればケガをするでしょう?」
 クレッセントの言葉に感心する大輝。
「次は俺と相手をしてもらおうか?」
 山下剣清(ea6764)が木刀を持ってクレッセントに勝負を挑む。だが、それを受けたのはクレッセントではなくソレイユの方だった。
「よーし、復活。まだまだいくよ〜!!」
 猪突猛進良いところ成しにたたきのめされているソレイユだが、それでもなんだか幸せそうである。

 木刀での闘いも終えて疲れた一行はソレイユの家で夕食を頂いてから帰ることにした。
ソレイユは泊まっていけと勧めたが流石にそれはそれ、一行はおみやげにミートパイをもらいつつ江戸へと帰って行くのであった。

 どっとはらい